オールマイトの拳が振るわれる。高速のそれは、ワン・フォー・オールの出力を引き出すことができるようになった緑谷からしてもかろうじて受け止められる程度の力だった。
(体格差か!? いや、ワン・フォー・オールの馴染み具合……!?)
どちらにせよ、現実を述べるならば……そう。つまるところ、オールマイトの攻撃を受け止め続ければ消耗し、先に倒れるというだけである。なら関係ない。いくら尋常ではない攻撃であれ、当たらなければまだ戦える。
オールマイトの拳が振られた。それを、緑谷は受け止めずに、正面に向けていた右半身から体を旋回させるようにして、オールマイトの姿を回避した。こうしていなすのであれば、消耗は少なく耐えきれる。問題は拳に付随する風圧だ───自分の背後には、市民の姿。流石に平和の象徴が敵となって現れたとなれば、集まっていた野次馬も当然のように逃げ出していくのだが、問題はその数だ。かなりの数がいたせいで、避難に時間が掛かってしまっている。めんどくさい。拳を振り、それで風圧を相殺した。
早く逃げてくれるのが一番楽なのだが、全員が撤退するまでは緑谷は『守る』戦いをしなければならない。そう、それが課題だ。だが問題はない。これだけの力を持って、オールマイトは平和の象徴として戦い続けていたのだ。前例があるのなら、無理だとなんだと言っているひまはない、オールマイトがやっていたのだ。そして今、同じ力を持っている。ならば緑谷はそれができるはずだ。考えろ。脳みそを作り変えるようにしろ。お前は今から平和の象徴がやってきたことをするのだ。緑谷出久の脳みその中身を憧れで満たすように、過去のオールマイトの行動から緑谷は戦う術を見つけ出す。
問題はない。それは今まで、何度も見てきた。今更脳内再生───そしてその模倣くらい、できないわけではない。命を燃やせ。今まで蓄えてきた、膨大なオールマイトファンとしての、一般公開された事例に対する対応。幼い頃からずっと見てきただろう? オールマイトの動きをしろ。象徴の代わりを今、果たさなければならない。
オールマイトの拳を、正面から受け止めた。かなり避難は進んできている。だがまだ人はいる。最悪だ。思う限り最悪の類だ。あんまりの衝撃に痺れを覚える右腕から意識を離した。痺れて拳がおかしいのであれば、その拳に意識を向けなければいい。腕が復活するタイミングでそちらに意識を戻せばいい。だから、オールマイトの猛攻には右腕を除いた四肢───いや、可能ならば頭も使え。頭突きもできるだろう。つまり五体だ。頭は右腕の代わりにならないと思うが、それでも十分以上の働きはしてくれるはず。オールマイトの拳が放たれた。だんだんと威力が増している。そろそろ向こうのギアも上がってきているようだ。このままあっさりとやられてしまうのだろうか? いや、それはさせない。体を張れ。オールマイトの、ますます上がってきた攻撃力に、自分もワン・フォー・オールのギアを上げることで応対する。
背後を盗み見た。避難は完了したようだ。よし、これで人を巻き込むことを気にしないパワーバトルが可能になる。戦闘経験が浅い自分は、能力を最大限に発揮できはしないのだろう。そこを、若さゆえの出力でカバーする。知っての通り、オールマイトは現状かなり弱っている。オールマイトである以上、今の相手はワン・フォー・オールの出力を全盛期よりも発揮できてはいない! 緑谷の判断を裏付けるように、緑谷がオールマイトに押し込んだラッシュはオールマイトの抵抗を押し切ってまでその体を吹き飛ばした。
緑谷は基本火力押しだ。相手よりも経験が劣る以上仕方ない。だが、だからこそ自らが信頼を置く火力に関しては疑うことなく、世界で見てもトップクラスの性能をしている。だが、そんな緑谷の、茶味から一瞬で意識を奪ったほどの連撃を受けても、オールマイトは堪える様子を見せない。ひょっとすると、見た目はオールマイトだがその中身は脳無のように改造されているのだろうか? わからないが、オールマイトはきっとそれほどのダメージを受けていない。不味い兆候だ。オールマイトが活動制限という限界を取っ払っているのであれば、このままだとジリ貧で敗北。……そう、敗北だ。そうなるとどうなる? きっと緑谷は死ぬだろう。そして、オールマイトという絶対的な敵を抱え、きっと日本は……いや、世界は混乱に陥る。だから負けられない。ぶつぶつと不気味に、狂ったようにつぶやいているオールマイトへと向けて、蹴りを放つ。
「私が来た!」
「───っ!」
空中へと打ち上げたオールマイトは、そのまま拳を背後へと放った反動で緑谷へと迫る。それよりもはやく緑谷は間合いに入り込み、アッパーカットのようにし、オールマイトを空中へと跳ね上げた。そのまま、緑谷は首を撫でる予感に従うように、頭を下げて体を前進させる。オールマイトの拳を辛うじて回避し、その後緑谷は指を立て、拳ではなく抜き手でオールマイトへと攻撃を仕掛ける。ワン・フォー・オールがその抜き手を、まるで細剣のように鋭く、鍛え上げた。緑谷は貫く。オールマイトへと振り抜いた抜き手が、その強固な肉をたしかに穿った。ダメージらしいまともなダメージだ。ようやく通ったか、と思う間もなく、その傷が再生していくのを見て、やはり体を改造されているのだろうと判断した。
そして、ぶつぶつと同じ言葉を呟く姿からもはや自我も残ってはいないのだろう。緑谷はだからこそ、オールマイトへは拳で相対する。いけない。感情的になっている。いや、それでもいい。感情は力の源だから。だから、感情を昂ぶらせて、頭の中から余計なものを排除する。体の中を戦うための機械へと作り変える感覚。そう、それが近いだろうか。だがその感覚で生まれた機械は、
戦え。その心のままに。オールマイトがその巨体で押し潰しにきた。とんでもない質量の相手が、尋常でない───音をも平然と超えた速度で向かってくる。周囲への被害を全く考えていない。ソニックブームが起こるほどの速度であり、当たれば緑谷はろくなことにはならないだろう。その巨体に対し、しかし回避する術はない。体で受けるか。ワン・フォー・オールを発動し、即座に衝撃に対してを考える。雷鳴が轟くような轟音と、内臓が破裂したかと勘違いするほどの尋常ではない体の痛み。見れば、オールマイトは緑谷へとぶつかり、そのまま長々と直進していたようだ。ストリートから中心駅まで相当離れていたはずだ。だがその駅を真っ二つにして尚、オールマイトは直進している。痛みが体から消えた。知っている。これは危険の証拠。ワン・フォー・オールを全開にして、オールマイトを蹴り上げる。自分は地に落ちるが、オールマイトは空高くに吹き飛ばされた。問題はない。地面に墜落して、緑谷は激しく咳き込んだ。
その中に血が混じっていることで、おそらく想像以上の深手であるのだろうことがはっきりした。それはそうか。オールマイトの全力の、手加減なしの突撃だ。今こうして生きていることこそが奇跡。まるで運命が誂えたかのように、上出来で傑作な奇跡だった。人をどこまで愚弄するのか、運命ってやつは! そんなことを心の中で叫びながら、首筋を撫でる死の予感から即座に緑谷は飛び退いた。先程までいた場所にオールマイトが墜落する。その威力を全く殺さず、地面へと派手に打ち付けられたオールマイトは、体の前面から派手に血を流し、その身を真っ赤に染めながらも立ち上がる。
普通じゃありえないほどのダメージだろうに、そのすべても一瞬で治ってしまうのだろう。なら、そんな化け物にどうやって勝てばいい? ふと頭の中をそんな疑問が掠めた。心が折れそうになる。一度考えてしまったら、悪い想像は無尽蔵にあふれ出てしまう。心の弱さを糾弾するように、緑谷は喀血した。なるほど、逃避は許されない、と言うわけか。戦うしかない。いや、もとよりそのつもりだが。その不吉な予感を断ち切るように冷静な思考力を破棄する。互いに血塗れだ。違うことといえば、緑谷はすでにかなりのダメージが溜まっているのに対し、オールマイトは未だ健在である。この差は大きい。ならどうやって勝つ?
───オールマイトの死に様を思い出した。……そうだ。オールマイトは体を二つに割かれていた。あの強大な力でもオールマイトは死んだのだ。なら、問答無用で体を二つに引き裂けるほどの破壊力があれば……いや、そうではない。一瞬で相手を木っ端微塵にできるほどの力があればいい。そしてそのために必要だろう威力を捻出できるものは……そう、知っている。大丈夫だ、なんとかできる。……きっと、勝てる。
だがそれはオールマイトを殺す以外にないという証明。つまり、緑谷は試されている。今ここで死んでオールマイトを野放しにするか、オールマイトを殺し、
「───私が来た」
「───ありがとうございました、オールマイト」
緑谷はぼそりとつぶやく。そうしなければ決意が保てそうになかったから。そして、言葉にしたことで完全に決意を固めることができた。
オールマイトを殺す、という───決意を。
「私が───わた、ワタ死が、ワタしが……わ、だ───……み、みど……」
ノイズが混ざる。オールマイトの声に、ノイズが混じった。それに耳を傾けない。緑谷は恩師を殺すという決断をした。けどその決心は鈍ってしまいそうだったから。体の調子を確かめた。腕がほとんど死んでいる。体の調子は最悪のようだ。特に内部。ぐちゃぐちゃになっているだろう。マトモに戦えはしない。だが、立ち上がる。立ち上がれる。なら大丈夫。立ち上がれるんなら……とりあえず、まだ負けることはない。
「───や、み、ワ、私ガ……私、が───! 」
オールマイトの拳が緑谷を抉るように放たれた。もうぐずぐずに蕩けてもおかしくないくらい損傷した緑谷は、自らの狙いであるものがやってくるまで待ち続ける。殴打が腹部を刺す。血を吐いた。血、だけではない。なにかを吐き出した。喉の奥になにかがへばりついている。なんだろう、と思ったら、それは体の中から溢れ出た肉片だ。まずい、もう体が持たないか? 薄れゆく意識で、狙いを待つ。まだか? まだか? まだか? まだか? ───音が、した。
来た! 緑谷はろくに動かない頭で、ワン・フォー・オールを発動した。タイミングはシビア。だがそれ見計らって───いや、ほとんどなにかに導かれるように、オールマイトを吹き飛ばすつもりで、全力で───いや、全力以上で放ったワン・フォー・オールは、緑谷の腕を圧し折るという代償の代わりにオールマイトの巨体を跳ね飛ばした。すぐに地面を蹴り、オールマイトを逃げないように捕らえた。腕を両手で握って、拳を利用するオールマイトが、とっさに動かすことはできないように抑えつけた。そう、握る。強く強く、握りしめる。
「わ───私、が───!」
尋常でない速度で進む体は、同じくとんでもない速度で進むそれに向けて激突する。足で、オールマイトの脇を蹴りつけた。わずかに抵抗が緩んだ。ひょっとすると、弱点は治りきっていないのだろうか。だがこれはチャンス。オールマイトの力が緩んだ、ということはその堅牢な防御も多少は緩んだ。
「……僕も、貴方も───共に逝きましょう」
「───ワ タ シ が───」
オールマイトを倒すには、これしかないのだ。緑谷の実力で確実に仕留められる、と想像できるのはこれしかなかったのだ。だから、緑谷は自爆覚悟で向かう。
進行する新幹線───その車線上に。
横合いから、超速で突っ込んだ。ぶつかる! 回避することはできず、確実にぶつかる。自分を褒めてやりたい。あれだけのダメージで、ろくな意識はなくて、ぶっつけ本番の角度、タイミング調整。緊張が抜けていたのがよかったのだろうか? まぁ、そんなこと今感がけてもあやふやだ。どうせすべてが次の瞬間には無為に帰す。だから───と、思っていた緑谷を、誰かが後ろへと押し出した。
「───!?」
誰だ、と考える。いや、それは決まっていた。オールマイトだ。そう、オールマイトに決まっていた。だが、何故? 押し出して距離を稼ごうとした? だが無駄だ。オールマイトはそこにいる。逃げ切れはしない。何故だ? そう考えている緑谷の耳に、シャットアウトしていたオールマイトの声が届いた。それは新幹線の音にかき消されて、よく聞こえなかったが、それでも、それだけはたしかに聞こえた。
「───すま───な───い……しょ───ねん」
そしてオールマイトが新幹線に轢き潰され、弾け飛ぶ。
「───あ」
いくら攻撃を受けようと死にはしないオールマイトだが、それはすべて質量の伴わない拳だからだ、と推測していた。だから新幹線が直撃すれば弾け飛ぶだろうと推測はしていた。
───だが、それは……それは、あんまりじゃないか?
死に損なった緑谷は、まるで殺させないという意思を感じるほど都合よく木へと落下した。枝をクッションにして落下した。ワン・フォー・オールは衝撃で切れてしまったので、今のは落ち方によっては死ぬ危険すらあったわけだ。だが、それもさせてくれない。それが運命だというかのように、緑谷は都合よく生き残ってしまった。
「───は、は……」
また死ねなかった。オールマイトを殺すだけ殺して、緑谷は生き残ってしまった。最悪だ。気分として、最悪の気分だ。ゆっくりと歩く。体が痛い。もう動けやしない。倒れそうだ。それでも、最初の地へと向かわなきゃいけない。だってそこには
「───は、ははは……」
世界がどれだけ試練を運んでくるのかはしらない。だが、緑谷はこの戦いが終わったあと、ろくなことにはならないだろうと思っていた。当然だ。公共交通機関の妨害。到底許される行為じゃないし……そもそも、ヒーローの資格を持っていないのに
そうまでいかなくとも、なにかの処罰はあるだろうと思った。
オールマイト。オールマイト。オールマイト。ああ、憧れの人。自分にヒーローを目指す夢を与えてくれた人。ヒーローを目指せると言ってくれた人。そのための力を与えてくれた人。そんな人を、その手で殺しておいて……今更、なにをすればいいのか?
血を吐いた。
体は動き始める。そうすることで、痛みは軽減できた。戦うことが本懐であると言わんばかりに、戦闘を求め……『悪』を倒すことを求め、体は動き出す。一歩踏み出そうとして足が滑った。転んだ体を起こそうとして、うまくいかない。息を吸って、踏ん張って立ち上がった。息を吸うだけでも尋常ではない痛みがするし、うまく息は吸えない。肺が破れてしまったのだろうか? わからない。が、それでも立てた。だから歩き始める。
ゆっくりと。しかし確実に。
そうして、最初の大通りへと戻ってきた。
そこに、死柄木弔がいる。
「───化物かよ」
戻ってきた緑谷に、死柄木が言う。最早満身創痍であることは見て取れる。右腕は折れているし、体に疲労とダメージが溜まっているのだろう。足取りすら危うい。フラフラだ。だから、それは確実に勝てる相手であるはず───なのに。
鬼気迫る、といった風貌の緑谷に、どうして気圧されてしまうのか。
「───いや、勝てる。勝てるはずだ」
頭を振り、悪い想像を振り払う。死柄木は踏み込み、緑谷を殺すためにその腕を翳す。そう、それが触れた瞬間確実に殺せる。緑谷はその攻撃を確認することすら、緩慢な動作であり、それこそが死柄木に勝ちを確信させた。
だが、死柄木の腕は緑谷の左手に弾かれた。
「───は?」
そして、緑谷の腕が握られる。そこに込められたのは、全力の緑谷の拳。明らかに危険を感じさせる緑谷の拳に、対し死柄木は対応することができない。
その拳は、握る動作の瞬間には死柄木の腹にめり込んでいた。
100パーセントの威力を受け吹き飛んだ死柄木は、腹を抑えて緑谷を睨みつけた。
「───また、強くなってやがる……!」
「……なんでだろ、なんか……しっくりきた」
どう見ても重傷。傷だらけのはずなのに、どうしてか緑谷に勝てる未来が見えない。死柄木は一歩後退する。オールマイトを前に臆すことのなかった男が後退する。それだけのなにかを、緑谷は持っていた。
───そんな死柄木の後ろで、一つの姿が動く。
「リーダー、逃げてくれ」
「……は? 何を言ってんだ。ここで確実に仕留めるぞ」
「駄目だ。なんとなくわかる。今のまま戦ったらリーダーはきっと、負ける。そうなったら俺たちの負けだ。……だから、リーダーは逃げてくれ。俺があいつと戦うから……」
「…………その傷じゃ死ぬぞ」
「……連合の中じゃ、俺が一番重要じゃない。捨て駒にするなら俺しかない」
「だからって死ぬのは駄目だ」
「そうしないともう駄目なところまで来てるんだ。だから俺を切ってくれ。頼むよ。あんたのために命を捨てるってんなら、それでもいいなって今は思うんだ」
「……………………」
死柄木は、少し考えるようにして、
「……わかった」
茶味の提案を受け入れる。
そしてワープゲートが開かれる。茶味を除く連合メンバーがその中へと吸い込まれていった。緑谷が超速でそれに続こうとするが、そこを茶味が蹴り飛ばし、妨害する。
「……すまない」
と、死柄木は言って消えた。彼にしてはわかりやすい、なにかを堪えているような表情で。
「…………はは」
取り残された茶味は、小さく笑った。
「怖いなぁ。泣きたいなぁ。やだな。怖いよ。ああ怖いさ。けどやんないとなんだよな」
ほとんど死に体の緑谷を前に、茶味は個性を発動する。
(母さん。そっちにいくよ)
個性が発動される。思考力が枯れた。茶味という存在がなくなっていく感覚がする。
自我が溶けた。
───そして、茶味という『人間』はこの瞬間、死亡する。
緑谷は見た。緑谷よりはるかに巨大なその姿を。人間の女性のような上半身に、奇妙な下半身。足が無数に存在し、目は無数に存在し、八本ある腕で下半身から生えた角のような、男性の上半身を抱えている姿。女性の顔はぐちゃりと潰れ、そこから血のような粘液を吹き出している。男性の顔は狂ったような笑顔だった。
尻尾にくっついた眼球が開き、そこから笑い声を響かせる。
右腕を動かすこともできない緑谷の前に、その怪物は立ち塞がった。
「───これが、『化物』」
かつて恐れられた化物一家。その代々受け継がれる個性の、本当の姿。
あまりに巨大で醜悪なそれに向けて、緑谷は拳を握る───こともできなかった。恩師との戦闘で、そんなことをできる体力さえも使い切ってしまっていた。だが、さも当然のように飛び出した化物が彼のまえに立ちふさがる。
どうしようもなく勝率のない勝負へと、緑谷は握れない拳を軽く振って挑む。ワン・フォー・オールが叫んでいる。ここではない。お前の死に場所はここではない。
もっと地獄へ。そう叫んでいた。
だから緑谷は化物が怖くなかった。もっと怖いのは、自らが立ち止まることだった。
───だから、緑谷出久は、無造作に踏み込んだ。
絶望が足りない気がしてきた