松原姉弟の日常はだいたいこんな感じ / 丸山の導き 作:ぼやーりん
スーパーマーケットの入り口、そこから少し外れた軒下で、ブレザーを着込んだ学生が1人、目の前を横切る通行人に忙しなく目をやっていた。
「……遅い」
そう言いながら、つま先が小刻みに震えていることに、本人は気づいていないようである。彼はもう一度スマートフォンを見てトークアプリの通知を確認するが、そこには先ほどと変わらず『もうすぐ着くから、入り口で待ってて』という10分前のメッセージが示されているのみだ。
さすがにそろそろ電話するべきかと思ったところで、画面に変化が現れた。
『ま、迷っちゃった……。お願いします、迎えに来てください……』
もれなく土下座のスタンプも一緒である。
薄々そんな気はしていたと、彼はすぐさま足を踏み出す。それと同時に通話を起動させ、このいつまで経っても改善の兆しが見えない方向音痴の姉を見つけ出すべく、行動を始めるのであった。
◇ ◇ ◇
ちょうど目につくところに公園があったようで、そこに待機してもらうことで、そこまで労力をかけずに発見することができた。10年以上もこんなことを続けていれば、迷子の対処法も慣れてくる。
まず1つ、なるべくその場から動かないようにさせる。2つ、近くに目印になるようなものがないか確認させる。3つ、そもそも迷子にならないよう、基本的に知らない道は1人で歩くな。
「そう言ってるのに、なんで姉さんはまた……」
「うぅ……。ご、ごめん……」
もうこの方向音痴を改善することは、ほとんど諦めている。言うなれば、これは天災である。人間ごときが抗えるものではなく、事前に対策をしておくことが一番効果的であると学んだのは、中学生になってからのこと。
「今日はバンドの練習なんじゃなかったの? いつも通りの道から来るかと思ったら、なんでこんなところに……」
「あはは……。実は、今日はいつものスタジオも、こころちゃんの家も使えなくて、みんなで少し遠い駅前のところまで行ってたんだ。」
なるほど。この人のことだから、大方みんなに送ってもらうのは申し訳ないとか思って1人で帰ってきたのだろうが、この近くまでたどり着けていることが奇跡ですらある。
「毎回探させられるこっちの身にもなってよ……。少し遅くなっちゃったし、早くおつかい済ませて帰ろう。こういう時、学校に財布持っていけないのが本当に面倒くさいな……」
「いつもごめんね……。でもね、ユウくんがこうやって私のこと探してくれるのは、ちょっとだけ嬉しいなぁ……なんて」
はたから見たら甘々な雰囲気を撒き散らして何やらほざいているが、恋人ならまだしも弟がそれで絆されるとか思ったら大間違いである。いや、たとえ恋人であろうと、こんな重度の方向音痴、勘弁してほしいはずだ。
「僕は全然嬉しくないから。むしろ、自分でお会計できるんだったら姉さんを置いていくまである」
「ふぇぇぇ!?」
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「——ん? あれは花音ちゃん? それと…………っ!? 」
学校では見たことのないような蕩けた表情をした花音が、後ろ姿しか見えないが学生らしき男の人と歩いている瞬間を偶然目撃してしまった丸山彩。
まずいぞ丸山! どうする丸山! 彼女の命運や如何に——!!
こんな感じで、思いついた時には垂れ流してます。