エルフとヘルガスト兵   作:Casea

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「メリーネは何歳くらいだと思う?」

「んー……200代後半くらいじゃない?」

「そうかなぁ……300代前半位だと私は思うんだけど……」

「2人共さ……私達基準の年齢には彼は当てはまらないと思うよ……」


ただいま

 私の問題発言に対する2人からの追及を一時中断するきっかけになったのは天幕の外から聞こえる怒号、絶叫、そして悲鳴だった。メリス、メリーネと共に天幕から恐る恐る顔を出し外の様子を確認してみると、正に死体の山が築かれている真っ最中であった。ドグレイズに居た頃の魔物狩り時と同様にあの黒い金属の棒の向く先々に穴が開き、そこから血が噴き出る。革、金属関係なく鎧ごと体に風穴を開けていく。以前と違う点はその矛先が人間へと向けられている点、そしてあの特徴的な爆発音がしていない事だ。記憶が確かであればアレはもっと大きな音を立てていた筈なのだが、今はかなり小さな音をしている。

 ここに居る人間達には彼がさぞ恐ろしい存在に思えるだろう。悪魔の様な鎧を身に纏い、手にした未知の武器により近付く事も叶わず命を奪われる。挙句の果てに仲間の惨状に怯え天幕の中で息を潜めていても、どの様な手段を用いているのか天幕の外から感知され、天幕の赤い染みと成り果てる。

 気付けば辺りはしんと静まり返り動く者は極僅かとなった。その僅かな者達も負傷が原因で身動きを取る事が出来ず、そして彼の大鉈に因って容赦無く命を奪われていった。ドグレイズで1度見て分かってはいたが、やはり彼の命に対する価値観は私達とは大きく異なっている。彼は命を奪う事に何の躊躇いも無い。1度敵対すれば立ち向かう者も逃げる者も、命乞いする者ですら容赦なく殺める。草木も魔物も人間も、全て同様に刈り取っていく。ある意味では命に対して平等と言えるのかもしれないが、やはり私には、私達には永久に理解出来ない考え方だと思う。

 

 

 何時の間にか夜も明け木々の隙間から光が差し込み始めた森を4人で歩く。前を歩く私とその両隣に双子、その後ろから辺りを興味深そうに見渡しながらジャックさんが付いて来る形となっている。

 

「ねぇ、フェル……本当にあの人も連れて行くの……?」

 

 メリスは私の腕にしがみつきながらとても心配そうに訪ねてきた。彼女の心配せんとする事は良く分かる。あれだけの惨劇を見た事も確かにあるだろうが、その後の事もあるのだと思う。戦闘後、彼は人間達の死体を漁り貨幣や道具等使えそうな物を物色していた。旅をし生活する上でお金は重要という事は彼と行動する様になってから良く分かった事だが、やはり死体に平然と触れている姿は少し()()ものがある。ただ不快というよりは、死体という非日常的なモノに何時もと変わらぬ様子で接する姿を見た上で、どれだけの死と係わって来たのだろうという疑問からくる恐れだ。人間の恐ろしさを体感したばかりの双子からしてみればただの恐怖の対象でしかないだろうが。

 

「そんなに悪い人じゃないんだけどね……」

 

「『そんなに』って事はつまり悪人ではあるって事なんじゃ……?」

 

「でも酷い事はされた事ないよ? 何時も優しく接してくれるし」

 

「信じらんないわ……」

 

 見た目は重要なんだなと思ったところで先の事を思い出し、行動も大事だなと思い直した。

 

 森を暫く歩いていると、突然ジャックさんが私達を制止し前に歩み出て臨戦態勢をとり周囲を警戒しだした。この森は魔法や色々な術によりずっと昔から守られている。エルフやそれと同行している者以外はその仕組みにより森そのものに入れない様になっている。そんな場所で彼が警戒する様な相手が出て来るとしたらそれは森に住む動物か、さもなくば。

 

「止まれ!」

 

 木々の蔭から何人ものエルフが剣や杖を構えて現れ、木の上にも弓を構えた者達が居り総勢十数人程。セルメイアの護りを担っている守り人達だ。そしてその守り人達を纏めている長は――。

 

「そこの者、身に着けている武器を全て捨て手を上げてその場に跪け! 妙な真似をすれば即座に手足を射抜く!」

 

「姉さん、待って!」

 

 直ぐに彼の前に飛び出て守り人の長である実の姉、ファリクシアスに顔を見せた。

 

「……? ……っ!? レイフェルティア……!?」

 

 最初は怪訝そうな表情を見せていたが、私に気付いた途端今まで見た事が無い程驚きの表情になり剣を下ろした。が、表情を険しくし直ぐに構え直した。

 

「っ……貴様……私の妹に成り済まし森へ忍び込もうなどと……無事にこの森を出られると思うな……!」

 

「えぇぇ!? 姉さん、成り済ましてる訳じゃなくて本物です!」

 

「フェルは半年以上も前に姿を消した! 恐らく何かしら森の外へ出たのだろうが……のんびり屋でとろくてちょっと抜けてるが可憐で可愛らしく愛らしいあの子が無事でいられるとも思えん! であれば変化か、幻術の類に違いない……!」

 

 褒められてるのか貶されているのか良く分からないが、どうやら私は原因不明の行方不明としてほぼ死亡したものとして扱われているらしい。そこの話は後にするとして兎に角今は私が本人である事を姉に信じてもらわなくてはならない。そして間違いなく私だと分かってもらえる方法があるにはあるのだが、如何せん物凄く恥ずかしい。しかしやらねば信じてもらえないので腹を括るしかない。

 

「……ファリク姉さん」

 

 姉に向かってゆっくりと歩いて近付き名前を呼び――。

 

「偽物風情が私の事を姉などと――」

 

「んっ……」

 

「っ!?」

 

 両手を前に差出す、所謂抱っこやハグを求める様な体勢をとる。もっと小さかった頃に私はよく姉に抱っこをせがんでいた。姉も姉でそんな私を溺愛していた。そんな私が突如居なくなり姉はどんな気持ちだったのだろうか。それ故に一刻も早く姉に私が無事に帰って来た事を信じてもらい少しでも心労を減らしてもらいたい。もらいたいのだが、恥ずかしくて今直ぐ消えてなくなりたい。今の私は他人からすればただ甘える様な仕草で何しているんだという状態であるが。

 

「ま……まさか……本当にフェル……なの……?」

 

 しかし姉は信じる。余計に恥ずかしい。誰か私を消してください。

 

「フェル……フェル!!」

 

 剣を他の守り人に放り渡し全力で此方に駆けて来る。危ないからせめて地面に置くか鞘に収めてください。そして私に抱き着くなり顔にキスの嵐、恥ずかしい。しかしそれほどまでに心配させていた事を悔やむと同時に、ここまで連れて来てくれたジャックさんと彼に巡り会わせてくれた神に感謝した。

 

「良かった……本当に良かった……もう2度と会えないと思っていた……」

 

 声の震える姉を抱き締め返す。

 

「ごめんなさい……。姉さん、ただいま」

 

「おかえり……フェル。メリスとメリーネも無事で本当に良かった。フェルの前例もあったから皆気が気ではなかった」

 

 2人も駆け寄り抱き締められていた。3人共無事に帰ってこられて本当に良かった。そしてそこで姉はこの場で最も強い存在感を放っているであろう私の恩人を見据え彼について私に尋ねた。私は簡単にだが彼に助けられここまで連れて来てもらった事を伝え、姉はそれを聞き終えると彼に向かい合い語りかけた。

 

「妹を連れて来てくれた事は深く感謝する。しかし貴方を里へと迎え入れる訳にはいかない。申し訳ないがここでお引き取り願おう」

 

「姉さん、どうして!?」

 

「フェル、申し訳ないとは思うが……信用出来ない人物を私の独断で連れては行けない。本当にすまないとは思うが――」

 

 姉はこの里の次の長となる事が決まっており、それなりに責任を負う立場にある為おいそれと許可を出せないのだろう。何より姉はまだその立場ではないので自分1人では判断し難いのは分かる。それは分かるのだがせめて一晩でももてなしてあげられないのだろうか。私の我儘かもしれないが、彼にはそれだけでは返せない程の恩がある。それを姉に伝えている最中、突然ジャックさんが前のめりに倒れた。

 

「ジャックさん!?」

 

 急いで彼の許に駆けより抱き抱え、また病状が再発したのか確認する為あやふやな記憶を頼りにマスクを外そうとする。

 

「確かここら辺を外して……」

 

 そして何とかマスクを外し彼の様子を窺うと――静かに寝息を立てていた。そうだった。良く考えれば病み上がりの身で日中走り続けた後に戦闘、挙句の果てに不眠のままここまで来たのだ。私をここまで連れて来る為に骨を折ってくれていたのだから、無事に辿り着ければ気も抜ける事だろう。

 

「姉さん……」

 

「はぁ……分かった、お婆様には私から話そう……。だが長居には反対だし監視もつけさせて貰う。聞いた通りだ。妹の恩人だ、丁重に運んでやれ。監視は交代で行え」

 

 守り人達に指示を出す姉に感謝を述べ彼を見やる。彼はこれからどうするのだろう。これから私はどう生きていくのだろう。色々思うところはあるものの今はゆっくり休んで貰いたいと思う。

 

「おやすみなさい……ジャックさん」

 

 そう言って安らかに寝息を立てる彼を抱き締めた。




月一のペースを何とかしたいと思いつつ中々時間が取れない……。
すいませんゲームもやってしまっていますごめんなさいディビジョン面白いですごめんなさいダクソ3出るどうしよう。

ちなみにジャックの現在の兵装を分かりやすく「戦術兵」と表記しましたが、KZ3の公式ガイドを見ると「LMG Trooper」で表記されています。買って確かめたから間違いない。
この作品では今後もマルチの兵種名で表記します。その方が分かりやすいですしね。

○レイフェルティア
フェルは愛称でこちらが本当の名前。

○ファリクシアス
フェルの実姉であり、若年でありながらセルメイアの護り手である守り人を纏めているリーダー。次期里長。

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