エルフとヘルガスト兵   作:Casea

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 フェル、覚えておきなよ? ただでさえあんたはエルフってだけで狙われる立場にある。それに加えてそんなモノまで使えると知られてしまったら、二度と安息の日は来ないかもしれない。だから、絶対に他人の前でそれを使わない事。もし使うのであれば、必ず相手に知られない様に使う事。もし知られてしまったら……覚悟を決めなきゃいけないよ。



回想四 ~やばい!~

 マチェットを一度鞘に納めながら現状を整理する。正面右に筋肉、左に魔術師、後方には刀傷。弓持ちは私の真左にある太い木の枝の上、仲間に射線を被せない様に上手く動き、他の3人も弓持ちの位置を常に把握し射線に入らない様にしている。真っ先に潰しておきたいのは未知の存在である魔術師である事に変わりは無いが、この場で一番厄介なのは間違いなく弓持ちであると自分では考える。

 私自身弾雨の中で戦ってきてはいるが弓矢というものに相対した事はこの森に来るまでは一度として無かった。昔の資料映像程度であれば興味本位で見た事はあるが直にとなると。弓矢を持ち歩く者達の姿を幾度となく見てはいるものの射る姿までは見た事が無かったのだ。どの様な武器かの知識はあるが戦法や武器としての限界が分からない状態。矢を番え、そして射る。それは理解していても、一射目から二射目までに掛かる時間、射程距離、威力、まるで知り得ておらず中途半端で曖昧な知識を持ってしまっている。それは非常に不味い。先の一合でも瞬時に数本の矢が放たれていたが、それがどの程度の腕の持ち主に当たるのかも分からない。剛の者として警戒が過ぎれば他が疎かになり、取るに足らない存在と侮れば虚を突かれる。だが少なくともあの女のこの場での役割だけは何となくだが理解は出来た。狙われていたのは恐らく脚、行動の阻害による支援と思われる。であればすべき事は1つ。

 

 戦闘再開の口火を切ったのは私の銃撃に因るものとなった。戦闘を有利に進める為には不確定要素となる魔術師を潰す事。そして弓持ちがそれを妨害してくるのはまず間違いない、ならば先にそれを潰すまでの事。弓持ちの立つ木の枝に向かって引き金を引くと、放たれた複数の弾丸は正しく枝のみを撃ち抜き弓持ちは小さな悲鳴と共に地へと落ち始めた。それを見届ける事なく魔術師へと全力で突き進む。地に落ちる女に気を取られてか他の3人の行動開始はワンテンポ遅れた様子だった。弓持ちを止めていられる時間はそう長くはないだろうがそれで良い、その僅かな時間遠距離からの妨害に警戒をせずにいられれば。

 弓持ちが行動可能になる前に魔術師を仕留めるべく一気に距離を詰める。右前方からは拳を固めた筋肉男がこちらを目掛け吶喊、真正面に据えた魔術師はその手に光が集まり始めた。筋肉男の攻撃をいなして上手く盾にしてやればお得意の魔法も使えまい。そうすれば後は潰すだけ、その筈だった。

 

「!」

 

 突然筋肉男がこちらへの吶喊を中止し横へと飛びのいた。理由を考えるより先に首筋がざわつき己の第六感が脳より先に体へと命令を下した。今すぐ止まれと。次の瞬間には目と鼻の先に矢が数本突き刺さり勘の正しさを示した。弓女の行動再開が想定していた以上に速すぎる。虚を突いたにも拘わらず空中で体勢を立て直し行動に移ったとでもいうのだろうか。

 ほんの一瞬の余所見であったが不味かった。気付いた時には肉塊が視界を覆っており最早避けるは不可能。いなしきれるかも怪しい。ならばと敢えて防御を捨て、相手の攻撃に合わせて強引に殴り掛かる。

 

「ぶへっ!?」

 

「ぐっ!」

 

 ほぼ同時に互いの拳が相手の顔面を捉えた。相手は兜の類はしていなかった為かもろに拳を受け数歩後退り、対して此方はマスクの装甲が破損して歪み口の中で鉄の味がしたが何とか踏み止まった。追撃にと落とされていた相手の太腿を踏み台にして右膝を顎に叩き込む。センサー上では後ろから猛スピードで迫り来る反応、間違いなく刀傷。筋肉男は放置し予めピンを引き抜いておいたスタングレネードを後方上部に放り投げる。ドグレイズでも用いた手だが、初見の相手であればやはり効果は絶大らしい。炸裂と同時に刀傷の動きが止まったのを尻目に魔術師を仕留めに掛かる。フェルや此奴の挙動を見ていた限りでは魔法を使用した際は手の平や杖の先等に光が集まっていた。それが発動の合図であるとすれば魔術師はまだ魔法を使い始めた様子はない。後は距離を詰めて叩き潰せば終い、そう思いながら拳を固めた。だがその拳が魔術師に届く事はなかった。

 

「――なっ……!?」

 

 私の拳より先に奴の杖の石突きが私の腹部にめり込んでいた。殴り掛かる勢いそのままにカウンターを食らう形となった為かアーマー越しにも拘わらず凄まじい衝撃が全身を襲った。ほんの僅かな時間ではあったが呼吸が止まると同時に思考が霧散し動きが鈍った。魔術師はその隙を逃すまいと杖による追撃を仕掛けてきた。杖術、棒術、槍術、将又その全てか分からないが動きの先が読めず捌き切れない上、マチェットを引き抜く余裕も無い。更には何時の間にか魔法を使用していた様で杖は燃え盛り、仮に防いだとて熱による苦痛が全身を襲う。ジェイドの用いていた様な武器に魔法を付与する類のものらしいが、奴と違う点は通常の魔法も攻撃の流れに加えてくる事。加えてこの男、攻撃のいなし方が非常に上手い。此方からの攻撃を受けるのではなく勢いそのままに受け流し、体術と杖術、魔法を織り交ぜて確実にダメージを蓄積させていく攻撃の型。万全の状態の私であればまだしも現状の私で抑え込める相手ではない。完全に見誤った。

 

「ぜぇぇぇぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 必死の防戦の最中辺りに轟く怒声。魔術師の相手に必死で筋肉男が迫っていた事に気付けなかった。

 

「しまっ――」

 

 凄まじい衝撃と共に体が宙を舞い、その数秒後にして漸く体が地面に叩き付けられその勢いのままに地を転がった。どれだけの力があれば私の体躯を殴り飛ばせるというのか。奴の顔を見るに先程の連撃が大分頭にきているらしく、怒りに身を任せた渾身の一撃なのだろう。無意識に身を守るのに使ったらしいアサルトライフルの銃身が無残にも圧し折れてしまっている。それでも尚殴られた部位の痛みに顔が歪む。脇腹付近であったが肋骨にひびでも入ったか。こちとら銃身とアーマー越しだと言うに。

 

「馬鹿力め……」

 

 脇腹を抑えよろめきそうになりながら立ち上がりぼやく。動く事は可能だが先程までの動きと同等の動きは不可能に近い。薬液を使用する事も考えたが、効果の薄い物ですら劇薬であるあれはそう何度も使える物ではない。まだ動けるのであれば痛みなぞ捨て置け、苦痛なぞ無視しろと自身に言い聞かせる。深く息を吐き出し、まだ戦えるぞと言わんばかりに連中を見やる。

 一方の敵方といえば私が立ち上がった事が驚きの様で、解きかけていた戦闘態勢を再び取り直した。気絶したふりをして後ろから奇襲をかけた方が賢明だったかもしれないが、それはヘルガストとしての私のプライドが許さん。四の五の言っている場合ではないのは分かっているが、そこを譲るわけにはいかない。だがその選択の行く末など誰が見ても明らかだった。

 

 消耗の激しい私がまだ体力十分の4人組を抑え込める道理は無い。だがそれでも相手の攻撃を最小限の損害に抑える事に全力を注ぎ隙を窺う。相手の猛攻撃を必死で耐え続ける。弓の援護は下手に味方に当たるのを恐れてか仕掛けてくる様子はない。魔術師も近接ではなく魔法主体に移っている為相手取るのは前衛の2人。筋肉男と刀傷の苛立ちと焦りを感じる。さぞもどかしい事だろう、手負いの相手を仕留めきれないというのは。仕掛けるなら今と、わざとよろけた様に膝を崩す。

 

「スカーラ!!」

 

 筋肉男が叫ぶと同時に大きく振りかぶった上からの打撃が迫る。これを避けて先ずは邪魔な筋肉男を潰す。そう、潰すだけの筈なのに。何故私は腹に打撃を受けているのか。奴の拳が地面に叩き付けられ、次の瞬間には腹部に激痛が走り軽く打ち上げられた。何とか倒れる事なく着地したがその隙を敵が逃す筈もなく、太腿に矢が突き刺さり膝をつく。痛みに耐えつつ前方を見やるとそこには石の柱の様なものが地面から迫り出しており、衝撃の原因がそれである事が分かった。

 

「魔法……?」

 

 何て質の悪い冗談であろうか。魔術師と思っていた男は近接戦をも楽にこなし、常に私に殴り掛かって来ていた男が魔法を使用する。しかもそれを初手から使わず温存し、完全に虚を突いてみせた。しかしここで折れるわけにはいかない。

 

「まだだ……まだ……」

 

「アーシス!」

 

 脚に突き刺さった矢を引き抜きつつ立ち上がる姿を見て筋肉男が叫ぶと同時にその場を急いで離れた。真正面に居たのは刀傷、そして手に光が集まり――。

 

 不味いと思った時には全身に焼ける様な痛みが走り意識が途絶えた。




もう少し早く投稿したかった……申し訳ないです。

最近色々やばいと生活態度を改めてはいるものの中々ダメですね。特に朝飯食ってなかったのとか脂肪が増えてきた事とか。早起きとか筋トレとかを習慣付け様と頑張ってます。1人暮らしはズボラな人間がやるとダメね。
尻叩いてくれる人でも出来ないかと某神社で良縁祈願してきました。自分でも努力せねば。

次話を7月中に投稿出来れば素敵な出会いがある、次話を7月中に投稿出来れば素敵な出会いがある!
よし、これで色々大丈夫。え、ダメ?そんなー(´・ω・`)

追記:タイトル修正 回想4 → 回想四
気付けよ自分……orz
その他気になる点微修正。
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