まだ名前すら知らぬエルフの少女を連れて夜の街を歩き宿を探す。少女は後ろから黙って付いて来ているが、簡単に逃げ出せそうなのにそれをしないのはおそらく諦めているからだろう。それが1度逃走を試みて徒労に終わったからか、それとも逃げても逃げなくても結局酷い目に合うのならと楽な方をとっただけか。
(それより……気を付けろよ。エルフの女を連れている以上今後命を狙われる可能性が出てきたからな)
それくらいは理解している。だからこそ金貨を1枚確保しておいたのだ。少なくともこれでアサルトライフルは買える。しかしさすがに疲れたし腹も空いたのでまずは宿を探す事にする。だが文字が分からないのに宿を探す事など出来るわけ――あった。看板にベッドやナイフとフォークのマークが示してあった。なんと分かり易い、これでなんとか寝所は確保出来そうだ。
宿と思しき家屋へと入ると多くの人々が食事をとっており、奥のカウンターには店主と思しき中年夫婦が料理を作っている様子から入口正面は食事処となっているらしい。とりあえず何か腹に入れたいと考え店主らの許に向かうと1人また1人とこちらを見ては釘付けになっている。街ですれ違う人々や兵士を見ていて分かったが、この世界は我々の居た世界から見たら随分技術レベルが低いらしく、武器は剣等の近接武器で遠距離はせいぜい弓や弩、防具も資料でしか見たことがない位昔の金属の鎧や革製品等であった。それ故に私が着ているようなガスマスクやアーマーは珍しいらしく視線を浴びた。
(そりゃあなぁ……マスクの目の部分は赤く光っておるしな……魔族やらに間違われないだけでも奇跡なくらいだぞ……)
意外と危ない橋を渡っていたようだ。くわばら、くわばら。
店主達の所まで来るとようやく気が付いたのか店主夫人がこちらを見てかなり驚いていた。そこまで驚かれると少し傷付く。夫人が恐々とこちらに何か尋ねてきたが当然理解出来ない。
「とりあえず食事がしたいのだが……」
伝わらないのを承知でこちらの言葉で話しかける。当然相手は何を言っているのかわからず困惑している。だがこれで良い、これで言葉が通じないのが相手に伝わっただろう。自分と少女を指差した後に何かを口に運ぶ動作をし食事がしたい旨を伝えると、相手も理解したらしく硬かった表情が少し緩み旦那と思われる男に何か言うと男は食事を作り始めた。夫人はカウンターのイスを手で示し着席を促してくれたので遠慮なく座るが少女は棒立ちしていた。こちらを不安そうに見ているところを見ると、言葉が通じないという事を彼女も理解したのだろうか。とりあえずイスを軽く叩き座るように仕向けた。落ち着かない様子で椅子に座る少女を見た夫人は少し複雑そうな表情をした。当然か、フードで見え難いとはいえ金属の首輪を付け表情は暗く、おまけに着ているものはほとんどぼろ布のような状態の年端もいかない少女を言葉の通じない怪しい風貌の男が連れていれば誰でもそうなる。今後その辺もどうにかするとして、まずは食事代にいくら必要か聞かねばならない。
夫人を手招きし銭袋から銀貨と銅貨をいくつか取り出してから見せて自分と少女を指差すと、意図が通じたのか手から銅貨を10枚程取っていった。銅貨5枚で1人分の飯が賄えるらしい。問題は貨幣の価値だ。おそらく金銀銅の順番で価値が高いのだろうが。
食事が来たので考えは後回しにし食事にありつく事にした。出てきたのはパン、スープ、サラダ、一口大に切られた何かの肉のステーキ。見た感じでは特に問題なく食べられそうだが果たして。とりあえずマスクとヘルメットを外して匂いを堪能する。肉の焼けた匂いが食欲をそそる。心配のしすぎだったか。
気付くと店主夫婦がこちらの顔をじっと見つめており、少女も驚いているようだった。何だその本当に人間だったと言わんばかりの表情は。若干複雑な気分になりつつも目を瞑り、手を顔の前で組み感謝の祈りを捧げる。目を開け食べ始めると少女はまだ手を付けていなかった。嫌いな物でもあったのか、それとも不安で食事が喉を通らないのか。食べるよう促すとようやく少しずつ食べ始めた。まさか食事の許可がなかったから食べ始めなかったのかのだろうか。
(おそらく許可なく食事をしないよう調教されておるのだろう)
再び苛立ちが募り始めてきた。止めよう、折角の食事が不味くなる。どうせ奴らはもうあの世だし考える必要もあるまい。
こちらの方が量が多いとはいえ、大人の男と少女では食べる速度が違うので当然こちらが先に食べ終わる。暇潰しに少女を見ると、碌な物を食べさせてもらえていなかったのか目に涙を溜めながら一生懸命食べている。一体どれだけ酷い目にあったのか考えるとやるせない気持ちになる。何の因果か私は彼女を引き取ってしまった、ならば面倒を見てやらねばなるまい。彼女がエルフだと知られればおそらく目の色を変えて襲いかかってくる連中も大勢いるだろうが、そういう輩には精精後悔しながら死んでもらうとしよう。
少女が食べ終えたのを確認したら食前と同じように祈りを捧げる。それから夫人に宿に泊まりたい旨をどう伝えようか考えていると、旦那の方が何か話しかけてきたがすぐに忘れていたというような顔をしてカウンター奥の黒い板を軽く叩いた。
そこへ夫人がどこからか取り出した杖を振ると2つのベッドの絵が板に描き出された。驚いて目を丸くしていると夫婦は共に笑っていた。
(これが魔法だ。と言ってもかなり簡単な部類に入るがな)
なるほどこれが魔法か、便利なものだ。旦那は2つのベッドが描かれた絵を指で叩き銅貨10枚の束を2つ見せ、夫人は杖を振り太陽から月、そしてまた太陽と並んだ絵を見せた。ベッド2つの部屋代は1日銅貨20枚ということだろうか。袋から銅貨を20枚取り出し手渡すと、部屋に案内してくれた。部屋にはベッドが2つにテーブルと2つのイスという簡素な造りではあったが、普段から綺麗にしてあるのか清潔感があった。ごゆっくりとでも言わんばかりに手を振り夫人は出て行った。
マスクやアーマー等身に着けている物を外しテーブルの上に置いてイスに座り一息つく。案の定少女は立ちっぱなしだったので、少女を見ながら対面にあるベッドを手で示した。少女はマントを脱いで椅子に掛け、ゆっくりとベッドの上に移動し弱々しく喋りかけてきたがやはり何度聞いても理解できる単語はない。
「すまないが、私には君の言葉はわからない」
その言葉を聞くと向こうにしても分かる単語はなかったのだろう、暗い顔をして項垂れてしまった。そういえばまだ名前を聞いていなかったと思い出し、少女のベッドまで移動し腰掛ける。隣に座った時の怯え方が尋常ではなかった。確かに悪人面ではあるが、襲われると思っているからだと思いたい。
「ジャック」
少女の目を見ながら自分を指差し名前を告げ、少女を手で指す。
「……ジャッ……ク……?」
少女は振るえる指で恐る恐る私を差しながら私の名前を呼んだ。頷いてやると自分を指差し名前を口にした。
「フェル……」
フェルと名乗ったと思われる少女に以後よろしくと頭を優しく撫でてやる。髪はさらさらというかふわふわというか、とにかく柔らかく肌触りの良い触り心地だった。
眠気も襲ってきたので早々に自分のベッドに戻りランプを消し横になる。さすがに色々な事があって疲れた。
「おやすみ、フェル」
とても長い1日であった。明日も長くなりそうな予感しかしないが。
少しするとフェルの寝息が聞こえてきた。余程消耗していたのだろう。
(お主もゆっくり寝ると良い。相当疲れておるだろう)
貴様のせいだという事を理解しろ、糞爺。
ようやく名前の出た2人。
ファとかフィとかフェとかが名前につくものはかわいい(気がする)。
・バイファム
・カタストロフィ
・フェルナンデス
ほ、ほらかわいい(白目
主人公が昔のこととか色々知ってるのはデータ化された古い文献等を読み漁るのが好きだからという設定。
○装備
剣と魔法と弓物。防具は金属製、もしくは革製。
魔法付与とか出来るからビキニアーマーとかもあるはず。はず!
でも主人公から見たら頭を疑われるレベル。