エルフとヘルガスト兵   作:Casea

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おふろ!

 宿に戻り夫人に頭を下げるとフェルも頭を下げ何か話していた。おそらくお礼か何かだろうと思われる。部屋に戻って買った荷物を下ろして一息付く。フェルに持たせるには多いだろうと荷物全てを持ち歩いた為非常に疲れた。しかしこの世界を歩き回るとなると必要な物は多く、今後も買い出しに出なければならない。また出費がかさむことを考えると頭痛がする。如何なる状況にも対応出来るよう少しでも武器を手に入れておきたいが、如何せん武器の価格が高く資金もそこまでないので明日から魔物狩りに出ねばならない。どれだけの金が手に入るかは不明だが何もせずに減らし続けるわけにもいかない。そうと決まれば明日に備える必要がある。

 

 買ってきた荷物を整理している最中に風呂があったことを思い出したので店主夫婦の許に向かい、風呂の方向を指差して銅貨3枚を見せる。それを見ると夫人は頷いた後に料金を受け取り風呂方面へと歩き出したのでついて行く。風呂場の扉には掛札がかかっており、使用中は文字が彫られている方を表にしておくらしい。何が書いてあるか読めないが「入浴中」とでも書かれているのだろうか。扉を開けて中に入って色々な説明を身振り手振りで簡単に説明され、大体理解できたところで一度部屋へと戻った。

 部屋の扉を開けるとフェルがベッドの上に買ってきたものを広げ嬉しそうにしていた。こういう姿を見ると散財するのも悪くないと思えてしまうから恐ろしい。私が部屋に入るとようやく気付いたらしくまた表情がぎこちなくなってしまった。やはりここは少しでも距離を近付ける為に共に風呂に入るのが良さそうである。アーマーやマスク等を外してからフェルを連立って風呂場へ向かうことにした。

 

 風呂場入口の掛札をひっくり返して中に入り脱衣所に置いてあるカゴに服を脱いで入れる。

 

(……何の説明もなしに脱ぎ始めたから今までにないくらい怯えておるぞ……)

 

 説明しようにも言葉が通じないし、身振りでどう伝えようかと考えるのも面倒なのでそのうち理解するだろうと説明は省く。フェルが怯えながらも服を脱ぎ始めたので脱衣所に用意されていた小さめのタオルを持って浴室へと向かう。浴室は広すぎず狭すぎずといった大きさで、浴槽も2人で入っても十分くつろげそうな広さがあり想像していたよりも良好だった。少しの間室内を見回し感心したところで早速湯船に浸かろうと考えたが、魔法で清潔を保たれるとはいえさすがに行き成り浴槽に入るのは良くないと思い先に頭と体を洗うことにした。浴室の隅にあった木製の椅子を運んでいると、伏目がちのフェルがタオルで前を隠しながら恐る恐る入ってきた。手招きして椅子に座らせてやると振るえていたため行き成りすぎたと反省した。

 

(「寒いのか?」とか考えていないようで安心した……)

 

 さすがにそこまで鈍いつもりはないが私自身に恐怖心を抱くのはまだ仕方がない。こういう機会を今後も設けて少しずつ慣れていけば良い。時間はある、急ぐ必要はない。

 桶を使って湯を汲み取りフェルの頭にかけてやる。

 

「ひぁっ!?」

 

 急にお湯を掛けられて驚いたのか今まで聞いた中で一番甲高く大きな声を出していた。そのような声を出されると此方が驚きそうになる。彼女の様子からお湯が熱かったわけではないと思われるので気にせずに頭を洗ってやることにする。

 女の、しかも子供となると力加減が分からないのでどうしたものかと考えていると爺が色々と口を出してきたのでそれに従って行うことにした。湯を髪に良く馴染ませてから洗髪用の石鹸を何度か手にこすり付けてからまず頭皮を洗うような感じでやってやれとのことだった。爪は立てずに指の腹で力加減は極力優しく弱過ぎず丁寧に。聞くのは簡単だが実践すると中々に難しい。

 マッサージするように頭を洗ってやっていると少しではあるがフェルの体の力が抜けたように思えた。髪自体には立った泡だけで良いとのことなので、梳くような感じで軽く洗った後に少しずつ湯をかけてすすぐ。しっかりすすげと言われたので念入りに湯を掛けておいた。髪を洗うだけでこれ程手間がかかるとは思わなかった。女というのは何故こんな面倒な思いをしてまで長髪を維持しようとするのか理解に苦しむ。

 

 流石に体まで洗ってやるのはどうかと思いそちらは自分で洗わせ自分も頭と体を洗っていく。時折こちらをちらちら見ているようだったが特に困っているわけではなさそうなので放っておいた。自身が頭と体を洗い終えた時にはまだフェルは体を洗っていた。綺麗好きなのかかなり丁寧に洗っているようなので先に湯船に浸かることにする。風呂に入るのを少し楽しみにしていたので気持ちが昂ってはいるものの、大の男が風呂を前にしてハイテンションでいるのは気色が悪いのでおくびにも出さない。

 足からゆっくりと湯船に浸かっていき大きく息を吐き出す。とても心地良い熱さでここ数日間で溜まっていた疲れが癒されていくような気がする。今後も1日の終わりにゆっくり湯に浸かるのも悪くはないが如何せん金がかかる。毎日入れるか否かは稼ぎ次第か。

 

(毎日風呂に入る人間もそうは居らんよ。普段は行水ですませて偶に大衆浴場に行くくらいだし、そちらも社交場としての意味合いが強い。そもそもこういう貸切風呂があるということ自体が珍しいしな)

 

 フェルが居る以上大衆浴場に行くことも出来んし今後旅をしていてもこのような風呂に浸かれる機会は少ないということか。少し残念ではある。

 世界の風呂事情にあれこれ悩んでいると体を洗い終えたフェルがこちらの様子を窺いながらゆっくりと湯船に浸かった。遠すぎず近すぎずという微妙な距離を保っているところから彼女の心情が窺い知れる。私が元の世界に帰るまでにこの距離が縮まることはあるのだろうか。だが元の世界に帰えることを考えるとあまり親密になるのも如何なものか。どこの世界でも悩みは尽きないが今はこの至福の時間を楽しむことにした。

 フェルはエルフという種族だと聞いたがこのように湯に浸かる習慣はあるのか今更少し心配になってきたので彼女を見ると、心なしか特徴的な長い耳が少し上下しているように見えた。感情の昂っているのは何となく解るがどういった感情かまでは読み取れない。そんな彼女をじっと見ていると視線に気付いたのか目が合ったがすぐに逸らされて俯いてしまった。そこで今更ながら彼女の眼の色がヘルガーンスパイダーのような綺麗な碧眼なことに気付いた。

 

(もっとマシな例えが出来んのか!)

 

 あれは獰猛ではあるが眼の色は綺麗だと思うのだが。

 

(解ったからもっとまともな感性を持て。頼むから)

 

 私が悪いのか。

 

 その後、時折フェルがこちらに視線を向けては逸らすを繰り返していたが、その時顔が赤かったので湯中りしていたのかもしれない。そうとは知らずに私の長風呂に付き合わせてしまったことを考えると悪いことをした。

 

 風呂を出てからはフェルの頭を念入りに拭いてやってから部屋へと戻った。途中店主夫婦がフェルを連れて出てきた私を見て驚いていたが、何かおかしなところでもあったのだろうか。婦人がフェルに詰め寄って何か聞いていたようだが、彼女が何かを答え旦那がそれに対し何かを言うと夫婦揃って今度は暖かい視線を向けてきた。結局それはよく解らぬままであった。

 

(知らない方が良いこともある……うん……)

 

 一体何だと言うのか。

 

(さて、それではしばらくお別れだ。用があったらこちらから話しかけるからな、達者でやれよ)

 

 頼み事だけ言って2度と話しかけないでくれる方がよっぽど好ましい。そんな考えを巡らせるも爺からの減らず口はなかった。居なくなって清々した。

 

(どこまでも失礼なやつだな……そもそもお主は――)

 

 さっさと消えろ爺。




髪の洗い方云々は適当に調べて書いただけなのでおかしいかもしれません。ゴメンネー。

物凄く間が開いてしまい申し訳ありません。忙しくなったりゲームの誘惑に負けたりまた忙しくなったり環境が変わったりPCがぶっ壊れたりしてました。
何度も書き直したり話を書いてはここでこの話はおかしいと違うの書いてみたりも一応してたよ!
そんなわけで書き方がおかしかったり色々するかもしれません。その場合はご指摘お願い致します。

次は早めに出せるよう努力致しますが、どうなるかわかりません。もしお付き合い頂けるならごゆっくりお待ちください。

○ヘルガスト兵の頭
ゲーム中でヘルガスト兵のヘルメットを飛ばすとスキンヘッドが目に付きます。
どれだけ飛ばしても目に付きます。
そこで理由を色々考えてみました。
①軍紀でスキンヘッドに
②ヘルガスト兵は「ヘルガーン星第3世代」と呼ばれ遺伝子調整で体を強化しているので、そこで髪を生えなくした or 生えなくなった
③偶々ヘルメット飛ばしたのがハゲだっただけちゃう?(鼻ホジホジ)

この作品では③が採用されジャック氏には髪があります。あるんです。

○ヘルガーンスパイダー
英語wikiにそのような表記があったためそのまま使用。
正式名称は不明。
でかくて人を襲うけど目が青い普通の蜘蛛さんです。
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