ウイングダイバーでも艦娘になれますか? 作:魚介(改)貧弱卿
『八月六日、今日は艦隊決戦の予定日だ
今日こそ戦艦棲姫を倒して暁の水平線に勝利を刻もう』
『八月七日、戦艦棲姫撃破祝いに
建造を行ってみた所、
なんと大和さんが出てきた
なぜかウチにある掃除機に親近感を覚えるそうだが…一体…』
『八月十日、大和さんを秘書官に指定して、執務を行ってみたが、驚いた
素晴らしく早く、正確な処理が出来ている
大淀と那智と大和がいれば
提督などいらないという大本営の説も真実味が漂ってきた気がする』
『八月十一日、島風と競争する事になった、勝てない』
唐突だな提督、
もっと起承転結あるでしょ?
起結しかないじゃん
これでどう理由を察するのさ
「はぁ、、よくわからない」
『八月十二日、突然だが私には密命が下された
鎮守府を退任せよ、ただし機能は停止させない事、だそうだ』
下の方に書いてあった細かいところを読むと、どうも上層部、通称《大本営》は
『艦娘の艦娘による艦娘のための鎮守府』
構想を練っていたらしい
中、大型艦の中でも事務能力の高い艦娘は並の人間よりも頭を使えるため、鎮守府に人間がいる必要などない、艦娘だけに回させれば良い
と考えているらしい
兵器と呼ぶならコマンダーくらい大人しく置いとけよ、なんでそこに自律行動を求めるんだよ
反乱待ったなしでしょうが
敵味方を自動で識別して攻撃する兵器
確かに使い道は多い、だが
それは裏を返せば最強の兵器が自分たちの手綱に帰属しない事にならないか?
人的被害がどうとか言うが
艦娘が人格を持つ兵器だというなら、それが敵になった時の絶望感は分かるだろうに
ええい、
艦娘は単体では
いくら百パーセントを発揮できると言われても、足がなければ得意の足技は使えないのだから遠距離砲撃だの近接殴りだのと戦法が偏るに決まっているし
それでは本来のスペックどころか、艤装の性能すら活かせない
怯えろ!竦め!状態だ
艤装の性能を生かせぬままに沈んでいけ!と言われても困る、なにせ命がかかっているのだから
あぁ、だから私が呼ばれたのか?
私が提督の代わりに足になって戦えば、ネオとは言い難いが、パーフェクトくらいはいけるだろう(戦力過剰)
本来の要求スペックには届かないかもしれないが、現時点での要求値には届いているといったところか、、まぁそれはそれ
私が誰にもバレないで提督を演じ切るという大問題があるんだけどね!
何考えてるんだ大本営…
『九月7日、大和さんが掃除機のコードを首に繋げて戦艦棲姫の真似をやっていた
駆逐艦たちが怖がるからやめてもらったが、あまりにも似すぎていて確かに怖かった』
『九月八日、島風と競走する事になった
勝てない』
もうちょっとなんか情報ないの?
起承転結あるだろ?
これじゃ起結しかないじゃん
『九月九日、やってしまった
北上が轟沈してしまった
あぁ、私のせいだ………
私が撤退中を狙われる危険を予期できなかったせいで
大破撤退中の艦隊を逃がすために北上が殿になり、壮絶な戦闘の末に沈んだ
やはり私が提督になどならなければ良かったのだ……』
あれ?でも所属してる艦娘のリストにたしか北上はいたはず、、新しく出たのか?
『九月十日、北上が帰ってきた
制服と茶色の髪が黒くなっていたが
間違いなく北上だ、
青い血を零しながらも帰還してくれた
今日はただ、それだけが嬉しい
帰ってきた北上を抱きしめて、入渠ドックに放り込んだ』
うん?血が青い?
艦娘の血って青いのか?
『九月十一日、精密検査を実施した所
どうも強い衝撃が原因で、目が充血しており、色彩感覚も赤に強く寄っているらしい、全て私の責任だ
如何にすれば贖えるのかもわからない
今は、ただ深海棲艦を撃滅するだけだ』
『九月十二日、北上の復帰祝いに
北上旗艦で、春雨、阿賀野、赤城、瑞鶴、大和の艦隊でカレー島沖に出撃して行った、心配だが
出来ることはやった、最新武装も渡したし練度も十分だ
最古参の春雨は改修を積んだ改二発現艦だ、負けるようなことはないだろう』
『帰還後に、いくら心配したとはいえ
一人に集中しすぎだと瑞鶴に怒られてしまった、私のことをよく心配する艦のくせに…』
瑞鶴ェ……
「提督?入るわよ」
パタンとドアが開く
いつのまにか誰か来ていたらしい
「おう、どうした…瑞鶴」
「どうしたもこうしたもないでしょ!?約束よ!」
彼女は私の元へ来て、私の前で屈み込むような姿勢になり、目をそっと閉じた
え?これはアレ?キスしろってこと?
私には出来ないなー
キス顔撤退作戦だなぁ
「 早くしなさいよ!」
ぇ、、うん
私はそっと瑞鶴を抱き寄せて
髪を撫でる……さらっさらだぁ
なんでこんなに髪質いいんだろう
ぱっと見枝毛とか傷みも見えない
どれだけ気を使って髪を維持しているのか……
「ぅ、、ん」
エオォフ
おっと危ない…
危うくキスしてしまう所だった」
「えっ……?」
え?
「貴方いま…」
顔を赤らめながら特に嫌がる様子もない?これはイケるか!?
やめとこう、それは提督がすべきだし、私はレズルートに進む気はない
「いや、冗談だよ冗談」
手を離して、とりあえず誤魔化す
「……」
俯いてプルプル震えだした?
「どうした瑞鶴?」
「…この……」
ふわり、と髪が浮き上がる
さらっさらの髪は意外と軽かったんだなぁ
「この…無自覚タラシぃっ!」
ふおっ!カイヒッ!
突如として振るわれた腕を必死で回避する、メイクを崩されてはたまらない
「大人しくっ!叩かれ!なさいっ!」
ヒュンヒュン言ってる腕は殺傷力高すぎると思うよ?
「何が悪かったのか!教えてもら!えないかなっ!」
こちらも回避しながら声をかけてみる
すると
「全部よ全部!貴方が無駄にそんなことするから!勘違いする女が出るのよ!提督は私だけので十分なのよ!」
怖い怖いこわいいはいはい
腕をひとしきり回避した私は
軽く足を払うとあっさり転んだ彼女の
彼岸花のように浮き上がっていた髪が元どおりに下がり、床に広がっているのを見て、それはそれでよろしくない気分になった
具体的には押し倒してみたい
誘い受け属性なのか?
血迷うわけにはいかない私は
「んじゃあーこの辺で…サヨナラ!」
さっさと執務室から逃げるのだった