ウイングダイバーでも艦娘になれますか? 作:魚介(改)貧弱卿
「というわけで、私が着任しました、それに伴い前任提督は退職、つまりもう追いかけることはかないません」
艦娘全員を講堂に集めて
笑いながら説明する私に
殺意を込めた視線がぶつかる
「なに?文句あるなら、ヤル?」
私は羽を見せて臨戦をアピールする
いかに空母といえど、純粋な火力では私が押し負ける、だが私にはチャンスゲージが完全チャージ状態というアドバンテージがある
5、6人なら制圧できる、
ジョーカーを切れば全員制圧できる可能性もあるけど、それは私自身も危険だから避ける
「…私が異議を唱えたところで意味はありません、今回は折れます」
「ありがとう(にっこり)加賀ちゃん」
「ちゃんはやめてください」
嫌そうな顔になる加賀
「那珂ちゃんはセクシー路線からキュート路線に変えようかな〜」
そぅっと目をそらしながら言ってきた
シニヨンの少女に
「何言ってんの!セクシーが一番だよ!」
肩を掴んで揺する
「那珂ちゃん!ナカちゃん!目を覚ましてナカちゃん!」
「ちょっと発音がおかしいよ!」
慌てた様子で胸元を抑えるナカちゃん
その手の中にはナカちゃんの何があるのかな?言ってみなさい?
とまぁオッサン臭いセクハラをかました後はちゃんと講壇に戻る
「さて、良い?大本営公式として通達が来ている以上、私が提督である事に違いはない、いくら君達が病んでいようと、それには従わざるを得ないよ」
艦娘たちからはムッとした気配を感じるものの、駆逐艦あたりの幼い子はあまり深く考えていなさそうだ
「今回は告知だからあまり強くは言わないけど、私の首を狙うのならば好きにしなさい
ただし、全武装でお相手する用意はある」
強烈なインパクトを残して
私は講壇を去った
その1分後
執務室へ向かって廊下を歩いていると、
新規建造された天龍を提督に置き換えたらしい龍田と建造されたばかりの天龍による
新天龍型姉妹が話しかけてきた
それも各々の武器を持ち出して
「俺たちがお相手するぜ」
「天龍か、龍田と一緒に何してんの?
二人掛かり?」
「あ?んな事しねえよ!連戦だバカ!」
「それ結局卑怯だよね…」
笑いながらパワーランスを起動して
無造作に龍田の左腕を刺した
「なっ!てめえ」「なに?」
龍田の光に焼かれて大穴の空いた左腕が握力を失い
薙刀を取落す
「戦いに始めも終わりもないでしょ?そんなことも忘れたの?」
にっこりと、諭す様に
優しく声をかける
「私はさっき声をかけられた時は龍田が薙刀を出したのを知っていた、天龍に戦闘を持ちかけられて天龍に集中した瞬間に私の首を刎ねるつもりだったのに気づいていた
同じことを、戦闘特化存在である貴女達が出来ないはずがないのに、忘れてしまったの?」
私たちが相手にするのは宇宙から来たアリ、クモだけじゃない、人も、害獣もそう
だから先の先を取る事になれる
龍田の攻撃に気づくくらいなら簡単だった
でも、今の問題はそこじゃない
「ねぇ、貴女達もしかして
弱い?」
「んだとゴラァ!もいっぺん」「何度でも言うよ、弱い、それに近視眼的、龍田の方気にしてあげなよ、気絶しかけてるよ?」
パワーランスは強烈な電圧の共にアーク放電で溶解、蒸発した金属を射出しているゆえに、
命中部分は金属に焼かれ、擦られる
当然一瞬しか血は出ないが、傷周辺の神経ごとダメージになるし、なにより麻痺するだけじゃなく、激痛もある
複合的に龍田は大きなダメージを受けていた、んだけど、天龍はそれに気づかなかった、姉なのに、隣にいたのに
それで姉妹か?笑わせてくれる
姉妹ってのはもっと深い絆で根源的に繋がってるものだろ
慌てて救護班に連絡を取る天龍
これは勝ちましたわー
去り際に睨まれたが、まぁそんなものだ
「さぁ、提督業を始めようか!」
正直に言えば、こんな外道ムーブはしたくない
私が何事もなく振る舞えたのは
艦娘の攻撃に常にさらされるよりも
正面から挑まれるほうが効率的かつ生存率が高いと考えているからだ
それで人道を無視するのはよくないけど、生き残って提督を少しでも長く逃すためだ
もう元の世界に戻る方法がない以上
私はウイングダイバーとしての私、と提督としての鉋狩翼を分離する必要がある
もちろんお粗末な仮面だけど
まぁまぁ別人っぽく振る舞えたと思う
ヤンデレと化して提督のことしか見ていない艦娘を強引に従えるには恐怖政治しかない、その先が反乱による自壊だとしても
私はそれに乗り切った
「龍田の入渠費用と時間は大丈夫かな?」
やっぱり自分がやったから心配だ
「可愛い艦娘達に傷をつけたくはなかったけどねー、もし跡が残ったら責任とって私が貰う」
きっぱりと言い切りながら
手を止めずに作業を続ける
一応レベルではあるけど、執務の補助ノートもあったからね、私が来てから書いたっぽい
「っぽい!?」
扉の向こうからぽいぽいの声が聞こえた
愛称ぽいぬ、白露型駆逐艦四番艦夕立
語尾にポイが付く、改二で犬耳が生える
砲戦能力に優れた艦、高速
甘える、可愛い、狂犬病(愛)
とまぁこんな感じで情報が羅列してあったノートを暗記したわけだけど、この子は特徴が強くてすぐに覚えられた
「失礼するっぽい」
ガチャ、とドアを開き、夕立が入ってきた
「今日もがんばるっぽい!ぽ〜いっ!」
ほんとに語尾にポイつくんだね?
「B型砲、C型砲、水上電探装備で夜戦最大級火力の改二、しかし自滅しやすい突撃型、っとこんな所かな?」
「ん?なんの話っぽい?」
自分で気付いてないんかい!
まぁ、いいや
「夕立の話だよ、今夜は雨らしいから
早くおかえり、少し歩くだろ?」
「たしかに艦娘寮と鎮守府はちょっと歩くっぽい、でも雨が降っても提督さんと一緒なら大丈夫っぽい!」
「なぜ君はそんなに私に懐いているのかな」
すり寄ってきた夕立を撫でて
髪を優しく揃えながら抱き込む
「ん、ふぁ…ぽぃ〜」
色っぽい声だこと、夕立は体型も威圧感も戦力も重、軽巡の間に入っててもおかしくないレベルなんだから
もう駆逐艦卒業してもいいんじゃないかな?
「嫌っぽい!白露型からは離れないっぽい!」
心を読むの凄くない?あと白露型みんな駆逐より軽巡の性能してるよね?
暁型や漣、雪風とかは背が低いとわかっているけど、白露や時雨達は比較的長身だし
「絵師さんに聞いてっぽい!」
「おぉメタイメタイ」
夕立やっぱり可愛いなぁ
提督の交代で騒然となる鎮守府の中で執務室だけは静かに
しばし夕立を可愛がるタイムが流れるのだった