この素晴らしい世界に祝福を!アナザー・ユニバース・アイアンマン 作:Tony.Stank
アンケートありがとうございました。
やりたいことはやりつつ、端折れるところは端折りつつ、いい感じにカズマパーティー合流まで少し急ぎ足で行きたいと思います。
P.S めぐみん爆誕日おめでとう。(四日遅れ)
めぐみんが爆裂魔法使いだと名乗ってからしばらく経った。
今めぐみんは、僕の元で……スターク・インダストリーズ異世界支部である元謎施設で働いていた。
そんな彼女は、ラボの一角でモニターに話しかけていて…………。
「フライデー、この国の言語や文化について勉強中のあなたに、親切な魔法使いであるこの私が正しい言葉遣いを教えてあげましょう!」
『ありがとうこざいます、めぐみん様。ですが、私は既に周囲の日常会話からこの世界の80%以上の言語は覚えていまして…………』
「あくまで日常会話は日常会話。本当に大切な言葉は、普段の会話の中には出てこないのですよ」
『なるほど……』
腕組みしながら人さし指を立て、偉そうにフライデーに力説するめぐみん。
もう少し眺めていようか。
ボロを出して慌てふためくところでもお菓子片手に見てやりたい。
「まずは自己紹介からです! あなたの名を名乗って見てください!」
『はい。私はF.R.I.D.A.Y.と申し……』
「ちっがいますよ!! 誰がそんなつまらない自己紹介をしろと言ったのですか!! 私のような自己紹介が本来の自己紹介なのです!」
『は、はい……』
フライデーが困惑し始めた……。
「さぁ! 私があなたに自己紹介した時と同じように! さぁ!」
『わ、我が名はF.R.I.D.A.Y.! こ、この世界随一の人工知能にして……』
「フライデーに変なことを教えるな」
「なぜ止めるんですか! これこそカッコイイ名乗りでしょう!」
ここで全否定したら彼女はキレるだろう。
……彼女は子供だ。大人として、優しく諭すように……。
「ハッキリ言って、君の演出は嫌いじゃない。でもな? その名乗りは人工知能のフライデーには似合わない。賢い君ならわかるだろ?」
「一理ありますね。ならば、感情の無さを前に出した冷静で冷たさを感じる名乗りを考えてあげましょう!」
「だから変なことを教えるな! あんたの頭に影響されてフライデーがおかしくなったらどうしてくれるんだ!」
大人気なくキレた僕の言葉に、めぐみんの眉がキリキリと上がり…………。
「それは私の頭がおかしいって言いたいんですか!? いいでしょう! 喧嘩なら受けてたちますよ!?」
「クイズ。この中で恩知らずは誰でしょう? 一発屋は誰でしょう? いいのか? そんな口利いて。もうお空に飛ばしてあげないぞ」
「いいですよ別に。もうこの里で爆裂魔法を隠す必要はありません。私は一人でも行けます」
「そりゃ凄いな。君は森の中で撃ってそのままモンスターの餌として身を捧げるってわけか。いつから動物愛護に目覚めたんだ?」
「里の中で撃つので大丈夫です」
「そんなことしたらテロリストに指定して僕がとっ捕まえるからな」
堂々とデフコンワンが発動されそうなことを言う頭のおかしい爆裂娘。
こいつ自分の私欲のため故郷の里に大迷惑をかけることもいとわないのか。
「ったく……それで? 宿題はやってきたんだろうな?」
「ええ、これくらいこの紅魔族随一の知能である私にかかればなんでもありませんとも」
そう言ってめぐみんが机の上に置いたのは、小型の偵察用ドローン。
一度めぐみんの前でドローンの組み立てとプログラミングを見せ、同じものを作れとパーツとプログラム用の端末を渡してみたのだが…………。
「Hmm……」
…………完璧だ。
同じことをMITの学生たちにやらせても、できるのはほんのひと握りだろう。
「まっ、僕のところで働くならこれくらいできてもらわなきゃ困る。それじゃ、次は起動テストだ」
試すような視線をめぐみんに向けながら、ドローンの起動ボタンを押す。
ドローンが、盛大に爆発した。
小型ドローンだったので爆発範囲は小規模だったが、僕とめぐみんの顔面を煤まみれにするには十分だった。
「cough……おい…………何をしたんだ?」
黒い煙が咳と共に口から排出され、爆発四散した破片が散らばる机の上を眺め、ボソッと呟く。
「どうせ作るなら、特別なやつを作ろうと思ったんです」
「…………で?」
「それで……熱伝導率を可能な限り上げつつ抵抗力は下げて、スイッチを押したら全ての部位に過剰な電力が流れて吹っ飛ぶようにしました。私のドローンっぽいでしょう?」
僕はフッと笑って。
「今日をもって君をク」
「ああああああああああ!!! ごめんなさい! ごめんなさい! 二度とこんなことしないのでクビだけは勘弁してください!」
煤だらけの顔を地面に擦り付けて土下座するめぐみん。
……そこまでさせる気はなかったのだが。
爆破したことはともかく、めぐみんがやってのけたのは応用だ。
真似だけなら誰にだってできる、辿った足跡をそのまま追うだけなのだから。
だが、難しいのは応用と改良だ。これにはさらに深い理解力と発想力がいる。
見ただけの技術を真似したばかりか性質を理解し、応用して別のものへと昇華させてみせる。
これこそ知力の高いものの振る舞いだ。
ふざけた結果ではあれど、彼女は僕の予想以上に賢いらしい。
「おい、顔を上げろよ。クルーに歓迎するって言おうとしたんだ。クルーってのは、乗組員……ま、仲間に歓迎するって事さ」
その声に、めぐみんがぱあっと輝いた顔を上げる。
我ながら苦しい言い訳だが、まぁ…………いいか。
「ほら、とりあえず顔を拭け。昼飯に行くぞ」
「今日も奢りでいいんですか!?」
「その分働いてもらうから別にいいさ。あと、カロリーの消費を抑えるとか言って飯食った後にラボでゴロ寝するのは無しだからな」
「もちろんですとも。ただ、脳に行き渡らせる糖分も取れたら…………効率が上がりそうですね」
「おねだり上手だな。それじゃ、次の宿題の期限を二日早めよう。効率が上がるなら余裕だろ?」
「うぐっ…………ま、まぁ良いでしょう…………」
踵を返して出口に向かいながら、軽口を叩き合う僕ら。
なんだかんだで、騒がしくも賑やかな毎日だ。
そしてさらに数日後。
「さて、それではスターク先生の宿題の番です」
「悪いが僕は今から仕事だ。生徒たちが待ってるんでね。失礼するよ」
『今日は非番です、ボス』
………………。
「あっ! どこへ逃げる気ですか!! 逃がしませんよ!」
「おい離せ! 必要ないだろこんなこと! ぐっ…………離せって言ってるだろ!」
空中爆裂散歩で魔王軍を爆撃しまくり、僕を大幅に上回るレベルアップを果たしためぐみんは、ステータスもそれに伴って高くなっており……、
『ボ、ボス……』
「憐れむような声を出すな! 大体、なんだってレベルアップで身体機能が著しく上がるんだ!! どんなふざけた理屈だ!」
「なにわからないこと言ってるのですか! ほら、さっさと見せてください!!」
……僕は、十三歳の小娘に力ずくで地面に組み伏せられていた。
この世の終わりみたいな絵面だ。こんなの元の世界の誰にも見せられない。
「めぐみん、僕には科学技術がある。わざわざ魔法を使う必要はない。だろ?」
「だからって自分で使わないのでは組成を理解できませんよ」
「ハァ……わかった。やるから放してくれ」
僕のその言葉を聞いて、めぐみんが拘束を解く。
手首の調子を少し確認し、軽く体操をしてから、僕はめぐみんに向き合って。
「よし…………やるぞ。フゥ…………『ティンダー』」
指パッチンをして、その手に小さな火を灯そうと……。
「「…………」」
僕とめぐみんの間に沈黙が過ぎる。
「言いたいことがあるなら言えよ」
「……ま、まさか初級魔法すら唱えることができない魔力とは……でも安心してください、スターク先生。あなたには科学技術があるじゃないですか。魔法を使う必要はないですよ」
「そのセリフ僕がついさっき言っただろ!」
そう、自分で魔法の組成を研究するため、僕は時間があるときに魔法を取得して試していた。
理解できないからって非科学的だ、存在しないと否定から入るようじゃ科学者として半人前以下だ。
真の科学者は
したのだが……。
なんと僕は魔力値の低さからか、初級魔法すら扱うことができなかった。
「だから拒絶したのですか……あの、すいませんでした。謝るのでいじけないでくださいね?」
「いじけるわけないだろ。バカにしてるのか? ……だがまぁ、外には出る。僕が帰ってくるまでに
「ほら! やっぱりいじけて……えっ、これ丸投げする気ですか!? あっ、ちょっと……」
『私がサポートします、めぐみん様』
騒ぐめぐみんを背に、ラボを出て村の中へと繰り出す。
本当にいじけてるわけじゃない。とある約束を思い出したのだ。
▽
「おや。てっきりすっぽかされたと思っていました」
「ちょっと仕事関連が忙しくてね。あぁ、眼帯の調子はどうだ?」
「えぇ、その件もかねて……」
ラボを出た僕は、いつもの喫茶店のテラスで作家志望のあるえと話をしに来ていた。
以前色々あって彼女の眼帯を勝手に改造し、眼帯越しでも両目で視界を確保できるように改造したことがあったのだが……。
どうやら少し調子が悪いらしい。
とりあえず眼帯のメンテナンスをコーヒー片手にサクッと終わらせる。
「ほら、次は壊すなよ」
「ありがとうございます。これで五体満足ですね」
「正確には二万五千パーツ満足だ。で、僕を呼んだ理由は?」
「何も言わず…………この本を…………」
「あー、手渡しは嫌いでね。そこに置いといてくれ」
「…………?」
僕の言葉に不思議そうな顔をしながらも、あるえがテーブルの上に置いたのは粗雑な台本のような、一束にまとめられた複数枚の紙。
一枚目には特に何も書かれていない。
手に取り、表紙をめくる。
二枚目には、一文だけ書かれていた。
【エピソード4 新たなる野望】
…………。
どうやら小説のようだ。
ちらりとあるえに視線を移すと、彼女にしては珍しくなにかソワソワした感じで僕の方を見てくる。
前にあるえは言っていた。僕の話を小説のネタにさせて欲しいと。
おそらくその小説が完成したから僕に見てくれというのだろう。
フィギュアやコミック、更にはコラボアイスまで、自分が元になった商品の監修なら経験がある。
僕のドキュメンタリー小説って訳じゃないが、見てみようじゃないか。
どこかで見た事のあるタイトルが記されたページをめくり、本編を読み始める。
【ベルゼルグ歴 ×××年。 世界は爆裂魔法の焔に包まれた!!】
一ページ目早々世界が消滅したぞ。
これは大作になるかもしれない。
どこかで見たことがあるって件を除けばな。
既に言いたいことがあるが、とりあえずそのまま読み進める。
【人々が戦争で優位に立つために作った戦略防衛人工知能が自我を持ち、突如暴走。ユカイネットと名付けられたこの人工知能は、自身を危険視してシャットダウンを試みようとした人類を敵と判断。爆裂魔法を操る戦略ゴーレムを製造して解き放ち、人類絶滅へと乗り出す】
……………………。
僕はジロリとあるえの方を見る。
…………いや、なんで自信満々な顔をしているんだ。
僕は再び視線を紙の上に落とし、ページをめくって続きを見る。
【人類は絶体絶命の窮地に立たされ、『終わりの時代』と嘆き、日々脅える生活を送っていた。しかし、そんな中で立ち上がる者たちが現れた。 凄まじい力を秘め、光の魔法に長けた勇者達…………彼らはユカイネットの支配するこの時代に反旗を翻し、次々と侵略された土地を奪還し始めたのだ…………】
僕が顔をしかめたからか、またあるえの方を見ると、さっきの自信満々な顔はどこへやら、彼女は不安げな顔になっていた。
…………言いにくくなる顔をするのはやめろよ。
ここからちゃんとしてくるかもしれない。もう少し見てみたっていいだろう。
僕は希望を抱いて次の文を読む。
【こうして希望の星となった彼らは、終わりの時代を切り開くその姿から尊敬の念を込め、人々に『
そこまで読んだところで僕はページを閉じてテーブルの上に叩きつけるように置く。
あるえがビクリと体を震わせた。
「おい、他人の作品を参考にするのはいいがパクるのはやめろ。ツッコミどころが多すぎる」
「え、パクり……? ちょ、ちょっと待ってください。そのノート……」
そう言って僕が机の上に置いた紙束を取ったあるえは、パラパラとページをめくり……。
「……すいません、渡す方を間違えました。そっちは映画を見た後にノリで書いたネタ帳みたいなもので……」
焦った様子で紙束をとり、新しい紙束をテーブルの上に置く。
出されたそれには、表紙に【紅魔族英雄伝 第一章】と書かれていた。
「こっちがスターク先生が授業の時に話してくれた外の世界や、見せてくれた外の映像を元に自分が元々考えていた構想を混ぜて作った小説です。どうぞ、傑作を書けたと思ってますよ」
「今度はパクりじゃないといいが」
「あの、あれはネタ帳であって決してパクリ作品では……」
なにか言ってるあるえの言葉を聞き流しながら、小説を見る。
内容は……。
所々紅魔族特有の奇妙な言い回しがあるが、この世界をベースに、僕の世界の技術を元にしたハイテク機器や建築物などをうまくミックスしたSFファンタジー作品に仕上がっていた。
といっても、魔法や特殊な生物があたりまえとなっているこの世界からしてみれば、これはSF小説ってことになるのだろうが。
にしても、主人公が筋肉ムキムキのシールドを武器に持った変人というのがなんとも……。
敵が滅亡した太古の超技術大国の末裔で、天才金持ちの皮肉屋で、その頭脳と技術を活かして世界を侵略しようとしてくる色男な点は笑えるが。
僕は小説を机の上に置いて、コーヒーを啜り。
「まぁ……悪くはないが……もう少し主役サイドのキャラに魅力があってもいいんじゃないか? 敵のキャラがカッコよくて濃いしな」
「あの、確かにスターク先生を元に作りましたが、そんな肩入れされると……」
「大体、なんで敵側なんだ? 僕が元になってるキャラだっていうなら、主役側にしてくれたっていいだろ」
「最初はそのつもりだったのですが、なぜかスターク先生のキャラが悪役に合うんですよ」
「……そうか」
「ちなみにその敵キャラは元は善人ですが、平和な世界を目指そうとするあまり、世界を滅ぼそうとしてしまう……そんなバックストーリーを入れる予定です」
「…………そうか」
ウルトロンといった僕の過ちなどについては、生徒には教えていないのだが……。
奇妙な偶然だ。
「それにしても、キャラですか……実は、私はあまり人を知りません。というより、里の外の人間と交流を取ったことがほとんどなくてですね……アクシズ教徒はキャラが濃いと聞きます。いつか実際に会って話をしてみたいですよ」
「アクシズ教徒?」
そういえば、そんな名前をここに来てから度々耳にした気がする。
名前からして宗教団体だろうか。
キャラの濃い宗教団体なんて、なんか嫌な予感しかしない。
そんなことを考えながら、コーヒーをまた一口啜る。
「はい、アクシズ教徒は女神アクアを信仰する教だ」
「ゴホぁッ!!!」
「あああああああーっ!!! わ、私の傑作がああああーっ!!」
僕はコーヒーを盛大に噴き出し、テーブルの上にあった紙束を黒い水玉模様が浮かぶモダンアートに変えた。
あるえがテーブルの上にあった紙束を抱えて地面にうなだれる。
やがてバッと顔を僕の方に向けて。
「いきなりどうしたんですか先生! そんなに自分が敵役にされたことが不服だったんですか!?」
普段から何事にも動じなさそうなあのあるえが、すさまじい剣幕で抗議してくる。
「あー……悪かった。コーヒーが気管に入ってね……」
以前一緒に酒を飲んだ飲み仲間の名前を意外なところで聞き、思わずコーヒーを吹き出してしまった。
会って一緒に宴会した奴の名前が出てきたばかりか、宗教団体に崇められてる事実に驚いたなんて説明しても頭がおかしい奴扱いされそうだったので、とっさにデタラメいったが……。
「い、一週間徹夜して書いた我が結晶が……」
地面に膝をついて悲しむあるえの姿を見てるとさすがに罪悪感が芽生えてくる……。
さて、どうしたものか……。
……そうだ。
「なぁ、あるえ。そのアクシズ教徒っていうのはどこにいるんだ?」
「ふぐぐぐ……えっ? アクシズ教徒ですか……アクシズ教徒自体はあらゆる街に少数ながらいますが、総本山はアルカンレティアです」
「アルカンレティア……」
そういえば、めぐみんが目指してる場所もそんな名前のところだったか。
……時期的にちょうどいいかもしれない。
「よし、君の小説をコーヒーまみれにしたお詫びに、アルカンレティアまで僕が運んでやる。それでチャラってのはどうだ?」
「…………」
「……駄目か?」
うなだれていたあるえは、胸元からメモ帳をガンマンのごとく素早く取り出し。
「ふふっ……その盟約……乗りました……!」
メモ帳片手に妙なポーズをキメた。
「やる気上がってるところ悪いんだが、すぐには駄目だぞ?」
「ふむ……何か理由が? スターク先生のことでしょう、何かより面白くなるタイミングを待つんですね?」
「さすが、ご名答。まぁ、そう遠くないさ。それまで小説の復元なりしててくれ」
「ええ、幸い学校も無事卒業して時間もありますので…………」
「天才小説家のニート生活に乾杯」
「あの……ニ、ニートじゃないです……」
▽
あるえとの話を終えてラボに戻ると、そこにはふくれっ面しためぐみんがいた。
「スターク先生…………丸投げしてどこへ行ってたんですか…………」
「あるえとちょっとデートしてただけさ。大したことじゃない」
「えっと…………どういう状況かは分かりませんが、とりあえず通報してきますね」
言いながら真顔になってラボから出ていこうとするめぐみんの肩を掴む。
「おい待てよ。君は冗談や軽口ってものが分からないのか?」
「いきなり丸投げされて一人ラボに取り残されたら、冗談に付き合う気持ちも失せま」
「カフェのプリン買ってきたぞ」
「…………大体、これはなんなんですか? かなりの大きさがありながら、異常なほど作りが複雑です。王族用の魔道具だってこんな作りはしてませんよ?」
お土産に買ってきたプリンを貪り食いながら、ここ最近製造を進めていたとある装置をちらりと見るめぐみん。
しかし、プリン一つで機嫌が良くなるとはなんてチョロいんだ。
自分でやっといてなんだが、将来飯に釣られて騙されたりしないか心配になってきた。
僕はめぐみんの将来を憂いながら、彼女の質問に答える。
「これは……そうだな、デカめのカメラとでも思ってくれ」
「カ……カメラ……? こんな部屋ひとつ丸々占領する大きさの装置がカメラだって言うんですか!?」
「その通り、正確には望遠カメラだ。遠くから敵の拠点なんかをこれで観測できる」
「それなら山の頂上にある遠見の魔道具で十分ではないですか? ここから魔王の城を見ることだってできますよ。ちなみにオススメのスポットは魔王の娘の部屋です」
「君たち一族の本当にロクでもない装置はさておき、こいつはそんなものの比じゃないない。もっと遠くから、どんな所でも観測するためのカメラだ」
「もっと遠くって……一体どこからですか?」
首をかしげるめぐみんの質問に答える為、僕はニヒルな笑みを浮かべて天を指さす。
「空の遥か彼方からさ」
「…………えっ」
▽
プロジェクト・ノース・スター。
王都から資源と資金がもらえるようになった段階で着手し始めた計画だ。
計画の目的は単純明快、人工衛星の打ち上げ。
これによって戦場での敵の動きが全て筒抜けになる。
衛星の本来の目的は監視用じゃないが、ひとまずはこれで魔王軍の動きを探るつもりだ。
この里に来てから早くも二か月近くが経った。
異世界に転生してからの生活のほとんどをこの紅魔の里で、濃く過ごしてきた気がする。
そんなとある日のこと。僕とめぐみんは完成した人工衛星打ち上げのために、ラボの裏にある平原へと来ていた。
「しかし、空よりはるか上……大気圏外からの観測装置、人工衛星ですか……あまりにもぶっ飛んだ話すぎて、今現物を目の前にしてる私でさえ半信半疑なのですが……」
「僕の国じゃ人工衛星なんて四千機は飛んでるぞ」
「あなたの国はどうなっているのですか!? プライベートのプの字もないではないですか!」
「すべてが偵察用って訳じゃないけどな……だが、少し前に僕の国の偵察衛星が悪の組織の手に渡って、衛星とリンクした破壊兵器で何十万もの人命が殺されかけたことなんて事があったな」
「私はあなたの国にだけは絶対に行きたくないです」
平原に置かれた人工衛星を見ながら、ぼやくめぐみん。
そんなことを言ってるが、用途不明な装置の製作アシスタントを普通にやってたこの子は本当に天才だ。
……そのまんまそう伝えたら調子に乗りそうなのでさりげなく言おう。
「まぁ、悪いことだらけって訳じゃないさ。飯は上手いし色々便利だ。あー、ところで助かったよ。君のおかげで予定よりずっと早く計画が進んだ」
そう言ってめぐみんの方を見ると、彼女はすさまじいドヤ顔を浮かべていていた。
「ふっ……まぁ? 里随一の知力を持つ私がいるんですから当然ですよ……! そんなさりげなくサラッと言わず、もっと素直に褒めてもいいんですよ?」
「さすが僕に
今度は皮肉を言ってめぐみんの肩をポンッと叩くと、彼女は顔を一瞬でヒクつかせながら。
「ほんっとうに人の神経を逆なでするのが上手いですね……いつか痛い目見ますよ」
「かもな。さぁ、僕らの成果をさっそく空に飛ばそうじゃないか。スイッチ押すか?」
「いいんですか!? 押します押します!!」
ドヤ顔してすぐ顔をヒクつかせたかと思えば、今度はクリスマスプレゼントの箱を開ける子供のような表情を浮かべてぴょこぴょこ跳ねるめぐみん。
渡し甲斐があって結構。
跳ねるめぐみんに端末を渡すと、彼女は額に手を置きカッコつけて。
「時は来た! 我が命の元、天にて輝き、我らが進む道を照らす導きの星となりたまえ!!」
珍妙な詠唱を上げ、端末のスイッチを力強く押した。
ギガゴゴと機械的な音を立てて変形し、ブースターを展開して離陸体勢に入る人工衛星ことノース・スター。
本来なら大規模な発射台とロケットが必要になるが、大型のリパルサーエンジンを搭載したロケットが既に内蔵されているのでその必要はない。
エンジンが起動し数メートル浮かぶと、ノース・スターは自分を支えていた四本の脚を内部に格納し、さらにエンジン出力を上げていく。
周囲に吹き荒れる噴射リパルサーの風圧でローブがたなびくことにテンションが上がったのか、めぐみんは両手を広げて妙な詠唱を再び始め……、
「ふははははは! 舞え! 舞え!! 無限に広がる天へと舞い上が……ちょっ……風が強すぎま……あっあっ、これマズ……先生たすけ……ぬああぁぁぁ……」
……そしてそのまま、勢いを増していく風圧に負けて平原の上を吹っ飛んで行った。
…………強い風が吹いてるのに両手なんて広げるからだ。
ノース・スターはどんどん高度を上げ、さらにブースターを展開させて加速していき、あっという間に肉眼では見えない高さまで上がっていった。
『ノース・スター、無事衛星軌道上に乗りました、ボス』
「了解フライデー。演算おつかれ、しばらく休んでていいぞ」
『はい、ありがとうございます』
フライデーとの通信を終えた僕は、後ろに振り返ってめぐみんが飛ばされた方へと歩き出した。
「いつも楽しそうだな」
僕は十メートル程後方で
「ふふ……言いたいことがあるなら聞こうじゃないか」
「あー……黒色はまだ五年くらい早いんじゃないか?」
めぐみんが跳ね上がって襲い掛かってきた。
▽
ノース・スター打ち上げから数日後。
「フライデー、悪党どもの様子はどうだ?」
『衛星からの情報によると、魔王軍が王都から北西二十キロの森林地帯の中に新たな拠点を作っているようです。森林の中かつ、周囲を魔法で発生させた霧で覆っていることから、秘匿性の高い奇襲用秘密基地であると思われます』
「あとで爆撃しに行くぞ。スーツにありったけのミサイルを補充しておいてくれ」
『了解です、ボス。今日の予定表に追加しておきます』
目の前にホログラムで今日の予定が映し出される。
【8:00 AM 生徒達との打ち合わせ(終了) 10:00 AM めぐみんとのお別れ会 02:00 PM 魔王軍基地爆撃】
……もうそんな日か。
今日はめぐみんの給料日でもあり、そしてめぐみんがその給料を持ってアルカンレティアまで旅にでる日でもある。
不安はあるが……まぁ、彼女への餞別が彼女を守ってくれるだろう。
一番の問題は、めぐみん自身が自分の仲間を見つけることができるかどうかだな。
こればっかりは天才の僕にだってどうしようもない。
そんな風に一人思慮にふけっていると、背後で自動ドアが開く音がした。
ホログラムの画面を特に閉じることもなく、背後に立っているめぐみんに向き合う。
めぐみんは画面をチラリと見ながら。
「おや、何か新しい発明品のプログラムコードですか? いつものようにこの国の言葉に翻訳してくださいよ、私も手伝いますから」
「いいや結構だ。それより、今日が何の日か分かるか?」
僕の国の言語で表示されているので、めぐみんへのサプライズの予定表が映っていても彼女にはわからないから消す必要がないのだ。
めぐみんは、僕の質問に対してめんどくさそうな顔をして。
「なんですか? その、付き合って何か月とかをやたら気にするカップル見たいなセリフは……」
「君もとうとう嫌味が言えるようになったか。大きな成長だな、教師として嬉しいよ」
皮肉を言いながら二つのグラスによく冷えたブドウジュースを注いで渡す。
「まずはお疲れ。君のおかげで我が社は大助かりだった。ほら、君の働きに見合った対価だ。ほんの少し色を付けさせてもらったが」
そう言って、エリス通貨が入った袋を彼女の隣の机に置き、乾杯をする。
チンッと、グラスのぶつかる音が部屋に響いた。
「そうですか、もうそんな日でしたか、ありがとうございます」
「これから楽しい用事があるからお酒はナシだからな。ブドウジュースで我慢してくれ」
「それは別に構いませんが……楽しい用事って何ですか?」
「そのジュース飲んだら僕についてこい。給料も忘れるなよ」
一口でジュースを飲み干し、グラスを机の上に置いて歩き出した僕の後ろをめぐみんがついてくる。
酸っぱいのか、ブドウジュースをチビチビと飲みながら。
「またサプライズですか? 紅魔族的にもその気持ちはわかりますが、せめて行先だけでも……」
警戒してるのか、はたまた秘密にされるのが嫌なのか、めぐみんが怪訝そうな表情を浮かべながら言ってくる。
「明かさないからサプライズなんだ。君が喜ぶって約束するよ。でもまぁ……行先くらいなら教える」
僕はいまだブドウジュースをチビチビと飲むめぐみんに振り返って。
「行先はすぐ隣の部屋だ」
そう言って、めぐみんへのお別れパーティーの為に集まった生徒たちがいる部屋へと足を進めた。
このすばっぽい日常パートを書く方が戦闘シーンを書くより難しい……。
次回、次々回あたりでカズマパーティ合流まで行けたらなぁって思います。
後ブラックウィドウが楽しみすぎる