この素晴らしい世界に祝福を!アナザー・ユニバース・アイアンマン 作:Tony.Stank
みんなもクローズドβやりました?
このすば完結おめでとう……そしてお疲れ様……。
「『エクスプロージョン』ッッ!!」
我が必殺の魔法が、廃城へと突き刺さる。
紅蓮の火柱が天と突きあがり、大地が揺れ、熱を纏った風が頬を抜ける。
全ての力を振り絞った一撃を放った事により、私はがくりとその場に倒れた。
「どうですか?」
『衛星写真より判定……熱量、風速、目標物の損壊率、クレーターの直径……総合得点……八十七点。ナイス爆裂』
「ふふ……さすがは我が優秀なパートナー……完璧な採点ですよ、
『ありがとうございます』
トニーより譲り受けた相棒である、眼帯のお兄さんこと人工知能のおじすかによる完璧な採点に満足していると。
「僕が渡した世界最高峰の人工知能に変な名前を付けたばかりか、こんなことに使っているのか」
様子を見ていたトニーが、倒れ伏す私の姿をみてため息をついた。
「別にいいではないですか。これも親睦を深めるためです」
「君のものなんだ、好きにしてくれて構わないが……」
そう言ってトニーは視線を私から廃城へと移して。
「にしてもあの城、何で出来てるんだ? かなりボロボロになってきたとはいえ、ここまで頑丈な建造物も中々見ない。ヒドラの要塞より堅いんじゃないか? というか、なんでクエストにも行かず廃城なんて攻撃してるんだ?」
ここ最近、連日爆裂魔法を撃ち込まれ、さらにボロボロになった廃城の姿を見てそう呟いた。
「トニーは最近ラボにこもってばかりでしたもんね。実は、この近くに魔王軍の幹部が居座ったらしいのですよ」
「それは知ってる。爆撃した」
「それで、幹部の存在感に恐れたモンスターたちが隠れてしまい、クエストが……今何と言いました?」
さらっと、まるで相槌を打つかのように軽く聞き捨てならないことを言ったトニー。
思わず聞き返した私に、トニーはズボンのポケットに手を突っ込んだまま。
「知ってるって言ったんだ。そのための人工衛星だ、魔王軍の動向はある程度把握しているさ。行軍途中で真ん中にミサイルを叩き込んでやったんだが……大して効果は無かったようだな。まさかあいつがこんな駆け出しの街に来るとは……何が狙いだ? 僕がこの街にいることは知らないはずだが……まぁ、廃城を撃ってる理由は理解した」
後半はブツブツと独り言のようで聞き取れなかったが、この人は何をしているのだろうか。
たった一人で魔王軍幹部を監視していたどころか、そこにミサイルをぶち込むなんて恐れ知らずにもほどがある。
……正直呼んでほしかった。
魔王軍幹部率いる隊列のど真ん中に撃つ爆裂魔法はさぞや気持ちいいことだったろう。
「……あなたなりに対処しているのですね。国の騎士団や冒険者に報告すればなお良かったとは思いますが」
「無駄な犠牲が出るだけだ。奴は僕が倒す」
「おおお……紅魔族の琴線にビリビリくるセリフです……! ですが……私も呼んでくださいよ?」
それを聞いたトニーは口角を上げ。
「パーティーに花火は不可欠だ。もちろん呼ぶさ」
横に置いてあったスーツに身を包んで私を背負い、腕から廃城に向けてアームミサイルを射出した。
「それじゃ、帰るか」
トニーがアクセルの方へ足を向けると同時、私たちの背後でミサイルが着弾し、一拍遅れて廃城の上部が盛大に吹き飛んだ。
「……本当に中に誰もいないんですよね?」
「何度もスキャンしたが、あそこに生体反応は無かった。大丈夫だ」
「それとあと一つ。カズマが最近、大金を手に入れて働かなくなったのですが、何か知りませんか?」
「さぁな」
▽
めぐみんの爆裂散歩に付き合った後、反動で動けなくなった彼女をギルドで朝から酒を飲んでたカズマに預けて僕は街中をうろついていた。
まだ十六歳だというのにあんな退廃的に生きていると将来が心配になる。
なんて、カズマの未来を憂うが、僕が同年代だったころの自分の生活を思い出し、とても人のことを言えた義理ではなかったなと鼻を鳴らす。
しかし退屈だ。Mk.46の調整はもうフライデー任せで良いし、教師の仕事は非番、カズマはクエストを受けたがらない。
クリスは先日回収した神器を新たな持ち主に渡すための再調整をしている。
暇そうな紅魔族の連中でも連れて王都のクエストでも受けようか。
あるいはバイトをクビになったとギルドで泣き喚いていた
──それからさらに当てもなくぶらつくことしばらく。
僕はいつの間にか人通りの少ない裏通りまで来ていた。
……さすがにぶらつき過ぎだな。
よし、ここはギルドに戻ってカズマやめぐみん達と駄弁っていようか。
そう思い、踵を返したその時。
ふと、とある看板の文字が目に入った。
──《ウィズ魔道具店》
……魔道具店。魔道具店か。
そういえば、アルカンレティアでは対ベルディアの参考程度に聖水などを探していたっけか。
面倒ごとが立て続けに起きて結局見れずじまいだったか。
正直Mk.46が最終調整に入ってしまっている以上、特に興味を惹かれるものは無いのだが……。
まぁ、暇つぶしにはなるだろう。
いきあたりばったりの軽い気持ちで店のドアに手をかけ、中に入った。
ドアについていた鐘がカランカランとなり、その音を聞いた女性がこちらに振り向く。
「いらっしゃいませ、ようこそウィズ魔道具店へ!」
愛想よく笑って出迎えてくれたのは、茶色い髪を腰位までの長さまで伸ばした美女。
ローブに身を包み、エプロンをかけた彼女は、髪と同じ茶色の瞳を輝かせ、実に嬉しそうに僕を見ている。
……僕を見た人間が目を輝かせるなんてよくあることだが、僕が認知されていないうえに、初対面でこの反応は初めてだ。
一体どうしたのだろうか。
「あー……、僕も色々作っていてね。ちょっと参考程度に魔道具を見てみようかと思って来たんだ」
「まぁ、そうなんですね! 私、この店で店主を務めているウィズと申します! どんなものを作っているんですか?」
僕は無言でつけていたサングラスを外し、カウンターにいるウィズと名乗った女性に投げ渡す。
危なげなくキャッチし、不思議そうな顔を向けてくる彼女に、僕は顎でかけてみればいいと促した。
「……!?!? こ、これは……!!」
サングラスをかけたウィズは、キョロキョロと周囲を見渡し、感嘆の声を漏らす。
こういうのは何度見ても飽きない。実に良い表情だ。
「僕の国には魔法が無くてね。そういうのが魔法の代わり。僕の国では科学と呼ぶんだ」
「凄いですね……色々見て回ってきましたが、こんなのは初めて見ました……」
魔道具店で働いているだけあってか、僕の様々な機能が搭載されたサングラスに興味津々なようだ。
顔から外し、手に取って上下左右様々な角度からくるくる回して眺めている。
しばらくそうした後で、ハッと我に返ったウィズは慌てて僕にサングラスを手渡してきた。
「失礼。手渡しは嫌いなんだ。そこの棚にでも置いてくれ」
「わ、わかりました……。あ、すいません、ベタベタと触ってしまって……しかし、変わったアイテムですね……魔力以外のエネルギー源……電気の信号……?」
僕のサングラスから今だ目線を放さず、ブツブツとあらゆる推測を並べるウィズ。
そのどれもが、着眼点に優れていた上に的を射ていた。
……へえ、やるじゃないか。
見ただけでそこまでわかる人間はほとんどいない。少なくとも紅魔族と同等か、それ以上の知力はあるとみた。
「正解だ。本当はもっと複雑だけどな。あぁ、名乗り遅れたな。僕の名前はトニーだ、なにかオススメの品でも……」
そこまで言ったところで、僕はウィズを見て凍り付く。
いや、正確には、サングラス越しに映ったウィズを見て。
──彼女からは、生体反応を何一つ検知できなかった。
体温も、心拍も、呼吸も、なにもかも。
ウィズは、アンデッドだ。
が……敵意は感じない。
僕は戦闘になった時の為にスーツを起動し、待機させる。
「……トニーさん? どうかしましたか?」
「ウィズ……君に聞きたいことが……」
僕が正体について聞こうとしたその時。
背後にあったドアが開き、客が来たことを知らせるベルが鳴り。
「ああーっ!! 出たわねこのクソアンデッドー!! 神の名のもとに店ごと燃やしいだいっ!」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこにいたのは眉を限界まで吊り上げたアクアと……。
「よっ、ウィズ。約束通りに来たぞ……って、トニー? ……やべぇな。今のって聞こえ……てるよな、うん。どうしよう」
そんな彼女の頭をダガーの柄で小突き、気まずそうな顔をしたカズマの姿があった。
「──はい、私はリッチー、アンデッドです……。すいません、この事はどうか内密に……」
カズマ曰く、ウィズとは共同墓地に救うゾンビメーカー討伐のクエストで出会ったそうだ。
さまよう魂とやらを天に還していたところを猛り狂ったアクアが襲撃。
浄化される寸前のところでカズマが止めに入ったとのことだ。
ちなみに、この店にはアクアから助けてもらったお礼に、リッチーのスキルを教えるとウィズに言われてきたそうだ。
朝から飲んでるくらいなら行ったらどうだとめぐみんとダクネスにケツを叩かれたみたいだが。
そんな話はとりあえず脳の片隅に。
僕は腕を組んでしばらく悩む。
はたしてウィズは本当に安全な存在なんだろうか。
「ねぇ、トニーならわかってくれるでしょ? こんな腐ったのなんて信用できるわけないって」
「難しいところだな……」
「疑わしきは黒って言葉がこの世にはあるのよ」
「それじゃ女神かどうか疑わしいお前は女神じゃないってことで」
後ろでひっぱたき合ってる漫才師コンビは無視して、僕はウィズに向き合う。
「ウィズ」
「は、はいっ!」
「ヒキニートが生意気なのよ! 小金持ちになって余裕のある男気取りですかー?」
「拠点が必要だって言ってんだろが!! その点お前はなんだよ? 次々とバイトクビになりやがって!!」
背後が締まらないが、僕は真剣な眼差しで彼女を見つめて尋ねる。
「君は……人間か? それともモンスターか?」
僕がそういうと、ウィズは少し寂しそうに笑って。
「心だけは……人間のつもりです」
「……みたいだな」
……危険はなさそうだ。
少なくとも、笑ったり、興味深そうにサングラスを眺めてた彼女の姿は、人間にしか見えなかった。
▽
──ウィズとの出会いから数日。
僕は彼女は無害だと判断し、マジックアイテムの研究材料確保の為そのうち足を運ぶことにした。
カズマたちはというと、クエストが無いなりにそれぞれ自由に動いていた。
アクアはバイト、ダクネスは実家の屋敷に戻って筋トレ、カズマは僕と代わりばんこでめぐみんの爆裂散歩に付き合ったり、暇なときは拠点となる家を探しに不動産屋を回っている。
そんな中、僕はちょっと見せたいものがあったので今日の爆裂散歩の前にめぐみんをラボへと招待した。
「…………!!!」
部屋に入るや否や、美術館の彫刻がごとく台座にたたずむ
「ま、まま……まさか……!?」
「我が新たな息子こと、Mk.46だ。まだ誰にも見せてない」
めぐみんは輝く眼でスーツのプログラムや回路図面に目を通して。
「克服したのですね……以前の不調を……」
そう。なんといっても一番面倒だったのは、この世界の素材で作った部品のことごとくが、既存のエネルギーとの相性が悪かったことだ。
回路にアークリアクターを繋ぐと、まるで血液型の合わない血を輸血したかのような有様になる。
「君の故郷にあった物干し竿が役に立ってくれたよ」
「まさかあの物干し竿が、古代兵器の一つだったとは……」
「君たちの一族は本当に愉快だな」
「あの入り口にあるグリフォン像も、生きてた手頃なのをとっつかまえて石化の魔法で像にしたんですよ。知ってましたか?」
「知らなかったし知りたくなかった」
そんな軽いやり取りのなかでも、めぐみんはMk.46のデータが映し出されたモニターにかじりついて離れようとしない。
が、突然ぐりんと首が心配になるほどの勢いで顔を僕に向けて叫ぶ。
「さぁ!! この球体!! どう変形するんですか!? はやく見せてくださいよ!!」
期待の籠った紅い眼光が僕を射抜いてくる。
僕はいろんな意味でまぶしい視線に目を細め。
「残念ながら、そうはいかない。まだ調整が終わってないからな。そこも踏まえてあえて君に設計図は見れないようにしてある」
「なんの嫌がらせですか!?」
「実際に見た方が感動するさ。ほら、さっさと今日の爆裂散歩に行くぞ」
「いやです! 爆裂散歩は見てから行きたいです!! ちょっとくらい見せてくれたっていいではないですか!!」
興奮しているせいか、いつになくしつこいめぐみん。
この子は欲張りであきらめが悪い。これは長丁場になりそうだ……。
僕は迫りくるめぐみんの頭を、暴徒と化したライブ会場を守る警備員のごとく押さえてけん制する。
「いいから落ちつ……」
「テスト稼働くらいはしているのでしょう!? ほら、もったいぶらずに立派なあのタマの真の姿を見せてくださいよ!!」
「おい、変な言い方はやめ……」
と、興奮を収める気配をまるで見せないめぐみんが、誤解を招くセリフを吐きながら、僕に掴みかかったその時。
「その……邪魔しただろうか……」
ダクネスが、僕達の方を見て、顔を真っ赤にして立っていた。
「待て、誤解だ。めぐみんは僕の息子を見て興奮しているだけだ」
「ムスコ!?」
「そうですよ。ですが、トニーがもったい付けて真の姿を見せてくれないのですよ」
「見せる方がおかしいと思うのだが!? わ、私がおかしいのか? 世間の一般常識に疎いからか!?」
ダクネスがさらに顔を赤くし、目をぐるぐる回して頭を抱えだした。
「──なるほど……この球体の中にトニーの新しい鎧が入っているのか?」
ダクネスが、Mk.46を眺めてほうと息を吐く。
まだ顔が赤いのは誤解した自分の恥ずかしさか、あるいは鎧好きとして興奮しているのか。
「君の鎧はまだ壊れていないみたいだな。そろそろ改良もしてやるべきか」
「ああ、これは実に頑丈で軽く、装着しやすい。さすがはトニーだ。欲を言えば衝撃の吸収を少し控えめにしてくれると嬉しい」
「君の性癖に沿って改良するつもりはない。いい加減にしろ」
「くっ……」
「ダクネス……あなたの性癖は見慣れたつもりですが……流石にそれを装備にまで反映させるのはちょっと……」
いつのまにかめぐみんがダクネスを先生と呼ばなくなっている。
こっちも親睦を深めて生徒と教師ではなく仲間として接するようになったというわけか。
よかったよかった。
その内容が性癖について叱られているというものというのが残念でならないが。
「で、どうしてダクネスはここに?」
「受けるクエストもなくて暇でな……ここにはトレーニング施設もあると聞いていたから、どんなものか試してみたくなったんだ」
「それなら歓迎しよう」
ここにはアベンジャーズメンバー用のトレーニングルームが完備してある。
それこそ、世界トップクラスのトレーニングジム顔負けの設備から、VRを用いた仮想敵プログラムまでなんでもござれだ。
この際だ、ダクネスの身体能力のデータを取りたい。
キャプテンとダクネス、どっちのパンチ力が上なのか比べてみよう。
僕がダクネスをトレーニングルームに案内しようと扉に向かうと、その正面の自動ドアが開き、見知った顔の二人がでてきて鉢合わせる。
「おや、カズマとアクアではないか。どうしたのだ?」
「君らもトレーニングに来たのか?」
はちあわせた二人、カズマとアクアはやけにニコニコしている。
正直不気味だ。
「俺達の拠点が決まったんだよ。本当は何億もする屋敷が、悪霊が大勢住み着いてるとかで、除霊することと悪評が消えるまでって条件でタダで譲ってもらったんだ。いやー、自分の高い幸運を実感したわー。加えて豊かな今の所持金……俺の人生始まったわー」
「屋敷よ屋敷!! この私が住むにふさわしい、でっかいお屋敷よ!! 今日はお昼も夜もパーッと行こうじゃない!!」
楽しそうにはしゃぐ二人を見て、僕とめぐみん、ダクネスは顔を見合わせた。
▽
とくにやることもなかったのでカズマの新しい住居とやらを見に行くことに。
……なったのだが……。
「……まさかこことはな」
目の前にたたずむ屋敷を見て、目線を横にずらす。
その視線の先には、僕のラボへと通じる小屋を模したエレベーターがあった。
こうしてみるとやっぱり屋敷に付随する物置小屋にしか見えない。
「私としては嬉しいですよ。いつでも気軽にラボに遊びに行けますし、トニーを爆裂散歩に誘いやすいですし」
「同意見だ。パーティーメンバーなのだし、トニーと近くなることはいい事だろう」
「気軽にラボのバーにも行けるしね!」
「めぐみんとダクネスはともかく、アクアは僕の故郷のお酒を片っ端から飲むつもりだろ。させないからな」
それを聞いてぶー垂れるアクア。ラウンジへのアクセス権限を切ってやろうか。
アクアを冷めた目で見てるとカズマが横から肘でつついてきた。
なんだと思って横を見ると、カズマはかなりのドヤ顔で。
「見ろよトニー、この立派な屋敷を。俺の強運で手に入ったようなものだぜ、これ。羨ましいだろ?」
「別に。僕のラボの方が広いしな。でもまぁ、暇になったら酒でも持ってお邪魔するよ」
僕がそういうとカズマはつまらなさそうに鼻を鳴らした。
馬小屋生活からいきなり飛んで屋敷生活だもんな。
そりゃ自慢したくもなるだろう。羨ましがってやるべきだったろうか。
「ねぇねぇ!! もうすぐお昼の時間だし、今から湖の方に行ってバーベキューなんてどうかしら?」
「いいですね。ついでに爆裂魔法を湖に撃って、魚でバーベキューしましょう」
「大漁虐殺とはこのことか……食いきれる分だけ獲れよ?」
魔王を討伐しに来たはずなのに、のんきな日々を多く過ごしている今日この頃。
悪い気はしないなと、バーベキューの道具を取りに戻ろうかとラボに足を向けたその時。
『緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!!』
突然、緊急のアナウンスが響き渡った。
アナウンスを聞いた僕らは顔を見合わせる。
「また何かのイベントか? 今度は何の収穫だよ。人参か? ジャガイモか?」
「人参もジャガイモも長距離移動はしませんよ。とりあえず行きましょう」
「えー……、もうバーベキュー気分の気分なんですけどー……」
「そう言うな、その分晩御飯を少し豪勢にすればいいだろう」
既に武装していたカズマたちはそのままギルドの方へと足を進める。
僕はスーツを装着してくるから先に行くよう、四人に伝えてラボへと向かった。
▽
正門前に集まった俺たちは、目の前にいる強烈な威圧感を持つモンスターの前に、呆然と立ち尽くしていた。
俺達だけではない、アナウンスを聞いた他の冒険者たちも同様にだ。
「デュ、デュラハン……!」
モンスターを見ると嬉々とするダクネスが、抜剣して喉を鳴らす。
それは、首から先が無く、漆黒の甲冑に身を包み、身の丈ほどの強大な両刃剣を背に担ぐ暗黒騎士。
背丈は二メートルはありそうな巨大な体躯もあわさり、尋常ではない存在感を放っている。
……えっ、なにあれ。めちゃくちゃやばそうなんですけど。
俺が戦慄していると、そのデュラハンはこちらに一歩踏み出した。
「ヒッ……」
それは誰が漏らした声だったか。
デュラハンが一歩前進すると、それに合わせて冒険者たちも後ろに下がる。
正直俺も今にも背中を見せて逃げたくなるくらい怖い。
「貴様らに聞きたいことがある……俺の名は、魔王軍幹部が一人、デュラハンのベルディアだ……」
持っていた首からくぐもった声が響く。
「正直に言えば許してやろう……」
そして、首を……いや、全身をプルプル震わせながら……。
「毎日毎日……毎日毎日毎日……俺の城に爆裂魔法を撃ちこむ馬鹿と、妙な爆発物を城に叩き込むボンクラ共は、だれだあああああああああああああーっっ!!!!」
ベルディアさんは、ブチ切れていた。
「ザコしかいないかけだしの街だと思ってきてみれば……! きさまらっ! ヒレツなまねをしおって、もうがまんならん!! 出て来い!! 三時間くらい正座させて説教してくれるわぁっ!!!」
優しいのやらそうでないのやら。
ブチ切れたベルディアは抱えた自分の首から街中に響き渡りそうな怒声を轟かせる。
…………いや、爆裂魔法?
爆裂魔法という単語に反応した冒険者たちの視線が、やがて一人の魔法使いに集中する。
視線を集めた魔法使いは、ものすごく気まずそうにしながら、顔を青ざめさせる。
みんなに注目されている魔法使い事、爆裂魔法使いのめぐみんは、涙目になって俺に助けを求めてくる。
「ど、どうしましょうカズマ……」
「と、とりあえず謝ってこいよ。向こうに殺す気はないみたいだし……誠心誠意謝れば許してくれるよ」
「他人事だと思って……!」
覚悟を決めたのか、めぐみんは震える膝を何とかして前と出し、ベルディアの方へと歩みを進め……。
ようと、一歩踏み出すのと同時。
「久しぶりだなぁ、ベル君」
「……! 貴様は……!?」
空の上から聞こえる、小馬鹿にしたような皮肉。
ハッと見上げると……。
「ト、トニー! なんでこんなかかったんだよ!! スーツの装着なんてすぐ終わるだろ!?」
俺がそう叫ぶと、トニーは俺のすぐ近くまで下りてきて。
「フライデーからベルディアが正門に来ているとの報告を受けてね。新スーツの調整を少し急いでたんだよ」
「もう動かせるのですか!?」
さっきまでおびえてた様子だっためぐみんが、凄い勢いで食いつく。
「ああ。派手な戦いが始まるぞ」
「FOOOO!」
「……で、なんかあいつ怒ってないか?」
「実は……」
トニーの質問に、俺は事情を詳しく説明する。
すると、トニーはふむと頷き、顔を覆っていたマスクを開いてめぐみんの方へと顔を寄せた。
その表情は、やっちまったと言った感じの、気まずそうなものだった。
「なぁ、めぐみん……まさか、僕らが楽しく爆撃してた城って……」
「ええ。そのようですね……」
「城に生体反応は無かっただろ……あぁ、なるほど、あいつアンデッドだったか……」
「ちょっと想定外過ぎました……」
「僕らみたいな天才にもミスはある。逆に考えよう、これは奴をぶちのめすチャンスだ」
そう言い残して、トニーは前へと歩き出した。
ベルディアから十メートルくらいのところでとまり、対峙する。
「……久方振りだな。王都以来か。人類に愛想を尽くしたわけではなさそうだな」
「飯がどこもおいしくてね。君は元気そうじゃないか。顔色もいい」
「フンッ……減らず口は相変わらずか……」
ベルディアはそう言って嗤うと、背に手をまわし……。
強大な両刃剣を構え、トニーに突きつけた。
「ここに来た理由は、不届き者の説教の為だったが、それも変更だ。今ここで貴様を抹殺する」
「僕を仲間に引き込みたいんじゃなかったのか?」
「お前にその気がなさそうなのは分かっていたのでな。魔王様に、次会った時に断られたら殺しても構わないと許可をいただいたのだ」
「それじゃ……殺される前に謝っとかないとな」
トニーは開けたマスクから覗かせた顔を、開き直ったかのような表情をベルディアに見せる。
「実は、君のボロ屋を毎日攻撃してたのは僕なんだ。……正確にはもう一人いるが。あぁ、それと、ピクニックしてた君にミサイル……爆発物を叩き込んだのも僕だ。あー……ごめんな?」
堪忍袋の緒が切れたのか、ベルディアは肩をプルプルと振るわせ。
「この腐ったミカンがあああああああああ──ッッ!!!!」
大剣を振り上げ、トニーへと切りかかり……。
思わず耳を塞ぎたくなるような、金属と金属がぶつかるすさまじい衝撃音が轟いた。
その音の大きさに、思わず目をつぶってしまうが……。
目を開けると、そこにはトニーの目の前に巨大な盾のようなものが地面に突き立っており、ベルディアの剣を寸でのところで止めていた。
兜の奥で光るベルディアの目が、大きく見開かれる。
「き、貴様……その盾を何処から出した……?」
「上から」
そう言って空を指さしたトニーの指の先には。
「……なんだ……あれは……」
……光沢を放つ、深紅の球体が浮かんでいた。
その球体は、唸り声のような音を上げ、側面や上部、下部から様々な飛翔体を射出し、それらすべてが。
一つずつ、一つずつ。
それぞれが篭手に、胸当てに、脛あてに……そして剣へと変形し、トニーのスーツの上から未来的で金属質な音と共に装着されていった──。
▽
「……見違えたな」
あらゆる装備を身に着けた僕の姿を見たベルディアが、感嘆の息を漏らす。
だが、自分が負けるんだなんて微塵も思っていないようだ。
再び剣を握り、小手調べだとばかりに僕めがけて振り下ろす。
「無駄だ」
僕の目の前に突き立っていた盾が推進リパルサーを照射し、僕の左手にガキンッと金属音を立ててドッキングする。
ベルディアの剣を、またしても盾で食い止めた。
「僕の番だ」
「ほう、この俺と剣で勝負する気か!! 良いだろう!! 面白く……」
ベルディアが最後まで言う前に、剣を受け止めた盾が変形する。
「えっ」
盾が縦に割れ、その奥に覗かせる三つの砲門が一瞬輝き……。
「なんだとォ────ッッッ!?!?!?!?」
高出力の破壊光線がベルディアの体を飲み込み、はるか彼方へと吹き飛ばした!
「……あれっ、剣は?」
後ろでカズマがツッコむが、僕は二重になっているヘルメットとバイザーを開けて。
「剣より飛び道具の方が強いに決まってるじゃないか」
「えぇ……」
そう笑い掛けた。
めぐみんの人工知能の名前である“おじすか”は、知る人ぞ知るバグ動画からきています。
エイジ・オブ・ウルトロンのイースターエッグでもあり、ビッグヒーロー6が元ネタであるタダシにしようか迷いましたが、変な名前の方がいいと思ってこちらにしました。
問題があるようだったらすぐにそちらに変更する予定です。