この素晴らしい世界に祝福を!アナザー・ユニバース・アイアンマン   作:Tony.Stank

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ドクターストレンジ2のショックがあまりにもデカすぎる
ソー4のストームブレイカーほんと好き


第42話 夜空を掛ける虹の橋

「めっちゃ怒ってるんですけど……」

「見りゃわかる」

 

 ドアから漏れる光を背に立つダクネスは、今にも緑色に変身してしまいそうな程激昂していた。

 

「ね、ねぇ……とりあえず話し合わない?」

「ゆっくりと話し合おうではないか、貴様らを締め上げた後でな……!」

(ヤバいよ! あんな怒ってるダクネス見た事ない!)

 

 半分涙目になったクリスがこちらを見てそう耳打ちしてくる。

 

 正直僕も初めて見るな……。

 

「あー……人違いじゃね?」

「しらばっくれるのも大概にしろ! 扉についてたこれはなんだ! デストロイヤーを倒した時に使ったものとそっくりではないか!」

 

 ダクネスがこちらに見えるように掲げたのは、ドアを開けるのに使ったミニリパルサーだった。

 

 あれをもぎ取ったのか……。

 

 ダクネスの常識外れの怪力に引きつつも、僕はカズマと適当に誤魔化すことにする。

 

「奇遇だな。カジノで知り合いに会うなんて。そう思わないか?」

「奇遇だな」

「貴様ら、この期に及んでふざけるつもりか!」

 

 もう駄目そうだ。

 ダクネス相手とはいえ、流石にこの状況で言い逃れは出来そうにないらしい。

 

 なら、正直に。

 

「……ダクネス、これは君を守る為でもあるんだぞ。君はあいつを倒すためになにか行動したか?」

『言い方もうちょっと何とかならないんですか?』

 

 めぐみんが咎めて来るが、あいにく勝手に口が動いた。

 

「慎重に動かねばならんのだ……。お前こそ、犯罪にまで手を染めて……! その行動が生む結果を考えたのか!?」

「ああ、考えた」

 

 ダクネスが言い切る前に、僕はミニリパルサーを再び起動する。

 

「!?」

 

 ミニリパルサーがダクネスの手を抜け、空で円を描いて彼女の横腹にピタリと張り付き……。

 

「お、おい──」

 

 ……リパルサージェットが接地面の反対側から噴射され、ダクネスの体を壁に叩き付けた。

 

「やりすぎ! トッ……下っ端君!! やりすぎだって!!」

「んああああっ! こ、この感覚はッ……まるで押し倒されているかのような……」

「……でもなさそうだね」

「さぁ行くぞ。ダクネスの頭は腹筋より固いからな。ああなったら止まらないだろう。説得は後回しだ」

 

 壁にめり込みかけているダクネスを尻目に、僕らは前と走る。

 

「……はっ! おい待て! このっ……!」

 

 ダクネスが力づくでミニリパルサーを引きはがしにかかる。

 あまり持ちそうにない。

 

 案の定、背後で何かを握りつぶすような音が聞こえた。

 ふと後ろを見ると、粉々になったミニリパルサーを投げ捨て、こちらに向かって走ってくるダクネスの姿が。

 

「助手君」

「はいはい!」

 

 カズマが弓に矢をつがえ、振り向きざまにトリックアローを放った。

 

 暴徒鎮圧用の非殺傷武器。強烈な衝撃波を放ち、対象を無力化する。

 ダクネスの鎧の胸部に装備されたソニックバーストを応用したものだったが……まさか本人に使う羽目になるとは。

 

「今のうちに金庫まで走れ! これで少しは足止めが……」

 

 ダクネスの元まで飛んだ矢じりが作動するその数瞬前。

 彼女はただ……顔の前で両腕を交差させて構えた。

 

 ただ構えただけ……それだけで、問題なく作動したはずのソニックバーストは、彼女を吹き飛ばすことはおろか、一ミリ後退させることすらできなかった。

 

 ドラゴンもひるみそうな鋭い眼光が、僕らに向けられる。

 交差したその腕の隙間から、ぎらりと。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

「凄いな。あー……アダマンタイト入りのカクテルでも飲んだ?」

「私を鋼鉄系モンスター扱いするのはやめろ!」

 

 鋼鉄系か岩石系か。僕には最早ダクネスがモンスターに見えて仕方がなかった。

 

「お頭! どうすんだよこれ! あいつの脚力じゃすぐに追いつかれる!」

「そこの柱を爆弾矢で根元から折って! こうなったら質量頼みだよ!」

 

 カズマが間髪入れずに小型爆弾付きの矢じりで近くの柱を爆破し、廊下を塞ぐようにして倒す。

 

「往生際が悪いぞ!」

 

 崩れた柱の後ろからダクネスのそんな声が聞こえて来るが、あれは流石に大丈夫だろう。

 被害額に関してはアクアがカジノに落としたお金で多分ノーカンだ。

 

「ねぇ、目的地まだなの!?」

「椅子レディ!」

『なんですか椅子レディって! 私にはちゃんとクリムゾン……あぁ、もう! スキャンによると、そこを右に曲がった先です!』

 

 潜入先の金庫の設計図やマップ、誰がどこに何を預けているかの情報は、めぐみんが操作するドローンにを資料室や警備室に侵入させることによって、既に把握済みだ。

 

 それを事前に建物全体をスキャンして手に入れた地図と合わせることで道案内に関しては万全だろう。

 

「さらに足止め仕掛けるからね! 『ワイヤートラップ』」

 

 蜘蛛の巣のようにピンと張った鉄のワイヤーが廊下を塞ぐ。

 

 安心したいところだが、廊下の先から空気の震えるような足音と共に、床から感じる振動が大きさを増しながらこちらに向かって来ているのを感じた。

 

 横倒しにした柱もなんなく持ち上げて突破したらしい。

 

「……数年前だったらパニック発作起こしてたかもな」

「確かに怖い! 早く進もう!」

 

 アルダープの金庫は目の前だ。

 とっととたどり着いて……外に運ぶ。

 

「ほらあそこ! 助手君! 鍵壊して!」

「任せろ!」

 

 カズマが即座に放った矢が、僕らの目の前に現れた鉄格子の扉の取っ手に突き刺さり、強力な腐食液を搭載した矢じりが鍵を溶かしきる。

 

「蹴破るよ!!」

 

 クリスがガタガタになった扉を蹴破り……。

 

 ……ようやく見つけた。

 

Back in game(ゲーム再開だ)

 

 ホテルの廊下のように、左右にネームプレートが書かれた部屋がいくつも並んでいる。

 その最奥の、僕らから見て真正面にあったアレクセイ・バーネス・アルダープの文字。

 

 今度は小型爆弾でドアのカギを吹き飛ばす。

 

「あたしの解錠スキルの見せどころが……」

「こっちの方が早いし楽なんだよ。追手に気づかれてるときはな」

 

 ちらりと後ろを見る。

 まだダクネスの姿は見えないが、ターミネーターみたいな足音は聞こえて来る。

 

 急がないと素手で捻り殺されそうだ。

 

「さっさとやるぞ。時間がない」

「ああ、でも……凄い財宝の数だな。ホントに全部ふっ飛ばすのか?」

 

 部屋を見渡すと……辺り一面美術品や骨董品、棚いっぱいの貴金属に山積みの札束……。

 田舎町の領主にしては、大分潤ってるようだ。……その0.00001%も領民に還元していないようだが。

 

 そんな金銀財宝を今から全て灰にしてしまうのは……。

 

「さぞ気持ちが良いだろうよ」

「うん。お前はそういうやつだよな。俺も借金とか無くなったから金にそんな執着ないけどさ」

「あたしはこういうの好きだよ!」

 

 素顔を隠したスカーフ越しでも、クリスの笑顔がわかる。

 やっぱりエリスはアクアにも負けないくらい根が破天荒そうだ。

 

「さぁ、椅子クリムゾン君。配置についてくれ」

『もうなんでもいいです……』

 

 画面の向こうにいるめぐみんが、盛大にため息をつきつつクインジェットを移動させる。

 

 僕らの今回の作戦の要だ。

 

「各員、シートベルトを締めなおしておくようにお願いします」

「こっち来るときも聞いたぞ、そのジョーク。……で、マジでやるの?」

「わかってて聞いてるだろ」

「だよな……はぁ……」

 

 カズマのそんな諦めの混じった質問を流しつつ、用意してきた特殊な装置を金庫の隅々に張り付けていく。

 

 

 ──金庫を破壊するに従って、どうしてもクリアしなくてはならない課題があった。

 

 それは、爆裂魔法が必要不可欠なこと。

 めぐみんに華を持たせる為だけに爆裂魔法の使用を提案した訳じゃない。

 

 金庫だけでなく、金庫の中の財宝はどれも超強力な魔術式防御が施されていることが事前に分かっていた。

 それこそ、超強力な攻撃魔法でも使わないと突破できない代物だ。

 

 ただ、爆裂魔法は閉所では使えない。

 

 そこで、今回使用するアイテムの出番というわけだ。

 

「やばい! もうすぐそこまで来てる!」

「体の固定を急げ!」

 

 金庫に細工を施してから入口の方に顔を向けると、薄暗い廊下の向こう側で断続的に輝く明かりが見えた。

 そして、それに伴う爆発音やら破壊音。

 

 逃げながら設置していた非殺傷の地雷やらブービートラップといったものを、ダクネスが耐久力に物言わせて強引に切り抜けながら向かってきているだろう。

 

 対人地雷を戦車で強引に踏みつぶす地雷処理とまんま一緒だ。それを人の身でやるんじゃない。

 

「あたしも助手君も体の固定完了したよ!」

「頼むぞクリムゾン!」

『任せてください! ですが、電磁気周波数の調節完了と突破経路上の市民避難まで少し時間かかります!』

「はやくはやくはやく……!」

 

 壁に固定されたまま、貧乏ゆすりみたいに小刻みに動く焦ったカズマ。

 そんなカズマの視線の先で……。

 

 限界まで目が吊り上がったダクネスがこっちにドスドスと向かってきていた。

 

「そこまでだ! 金庫室には触れるんじゃない!」

「悪いがもう触ってる」

 

 軽口もいい加減にしろと、ダクネスがため息をつき。

 

「トニー……私を助けようという気持ちには……本当に感謝している。その気持ちは本当だ」

 

 だがな、とダクネスは挟んで話を続けた。

 

「お前は勘違いしている。お前は強くても、一人の平民に過ぎない……。貴族相手に盗賊行為など、一族まとめて木の下に吊るされてもまだ有情と言えるほどだ……。それに……」

 

 先程までの吊り上がった目はどこへやら。

 

 ダクネスの顔は、悔し気に歪んでいた。

 

「私は守られっぱなしだ……借金の件も、デストロイヤーの件も……今度こそは……」

 

 ……なるほどな。

 一人で背負い込むその姿勢は、やっぱり昔の僕を……いや、それよりひどいかもな。

 

「ダクネス、勘違いしてるのは君の方だ。君がどれだけみんなを守りたいか、その気持ちは理解した。……でもな、結果の伴わない正義ほど足を引っ張るものはないんだよ」

「……!」

「ちょっと……!」

 

 クリスが僕を咎めるような視線で見てくる。

 

 こいつは言わなきゃわからないタイプだから言うだけだ。

 

「さっきも言ったが、君は口だけだ。アルダープを何処まで追い詰めた?」

「……」

「だよな? 無言が答えだ。慎重にとか言ってる場合じゃないぞ。ヒーローは遅れて登場じゃ話にならない」

 

 躍起になって空回りする前に、彼女には気づいてほしい。

 今のままじゃ自分すら守れないことを。

 

「ハッキリ言うが、清濁併せ吞めない君にアルダープは倒せない。だから、追い詰めるのは僕に任せろ」

「黙ってみていろと言うのか……守られるだけのお嬢様でいろというのか……?」

 

 彼女の態度で合点がいった。

 魔王城に調査に出ると言った時にやたら来たがったのはこのせいだ。

 

「適材適所だ。バニルと戦った時、君は身を挺してアクアを守っただろ。そういう時が君の出番って訳だ。……まったく、僕に親父みたいな説教をさせるなよ」

「……」

 

 守ることを信条とするダクネスが、逆に倒さねばならない宿敵から僕に守られた事で焦っているのだろう。

 

 若者(ティーン)め……。

 

「とにかく、焦るな。手は僕が打っている。今からクイーンを倒してチェックをかける所だ。で、君はルーク。キングへの直線ルートを作ってやるから、家でカニでも食べて──」

 

 クリスとカズマが僕の方を見る。

 皮肉や嫌味ばかりじゃなく、なにかフォローを付け加えろと言わんばかりの視線で。

 

 クリスはともかくカズマまでそんな目で見てくるなよ。

 ……まぁ、壊れたスーツだけじゃなくて、自分の悪い癖も直していかないとな。

 

「──だから、僕を信用してくれよ。僕が君を信用してるようにな」

「トニー……」

 

 ダクネスの目じりが下がり、あきらめたように……でも少しだけ嬉しそうに笑った。

 そして、僕の方へとゆっくり向かってくる。今度は威圧的にではなく、好意的に。

 

「いいね。和解の握手と行こうか」

「……お前が言った通りだ、私はお前を信じている。何をする気か知らないが……済ませて帰ろう……」

 

 ダクネスがゆっくりと手を差し出してきた。

 正直、手を取って熱く握手したいところだが……。

 

『磁場が安定しました。市民の避難も完了しています。いつでも脱出可能ですよ』

 

 そろそろ退場の時間だ。

 

「……どうした? なんで壁に張り付いてるんだ? 何かするんだろう?」

「あー……なぁ、さっきの話なんだが、僕を信用してくれてるって言っただろ?」

「あ、ああ……そ、そう改めて聞かれると、答えるのは少し恥ずかしいがな……」

 

 照れくさそうに頬をかくダクネス。

 

 ……なんだかちょっと罪悪感が沸いてきた。

 

「もしかして壁から外れないのか? どれ、私が剥がして……」

 

 そう言ってダクネスが僕の肩に手を伸ばした時だった。

 

 ──ボゴッ

 

 そんな、岩が割れるような音を立てて、伸ばしたダクネスの手から僕の体が少し後退する。

 

「……? おい、一体何をした?」

 

 壁という壁がめきめきと音を立て、その音と共にゆっくりと金庫全体が壁にめり込むようにして、呆然と立ってるダクネスから遠ざかっていく。

 

「なんだこれは!? 金庫が動いてないか!? 一体どうなって……おい、答え……」

「僕を信用してくれてる親愛なるダクネス君。いいか……? ──」

 

 

 再び大きい音を立て、金庫そのものが壁を突き破った。

 

 

「──これからすること、どうか怒らないでくれ」

 

 ダクネスにウィンクしたその数瞬後。

 一気に視界はダクネスから遠ざかり、周囲の視界が後方めがけて引き延ばされる。

 

 同時に感じる背中への複数の衝撃。

 

「あああああああ!! やっぱこの作戦どうかしてる!!」

 

 凄まじい速度で引っ張られるようにしてバックする金庫室の中で、カズマがそう叫んだ。

 

 金庫室の中の物品たちは、持ち出されないように魔法で固定されてるので、どれ一つとしてドアから零れ落ちたりはしていない。

 

 背中に通じる衝撃が二桁に到達してしばらくしてから、最後に大きい衝撃を経て……。

 

 僕らの眼下にエルロードの夜景が広がった。

 

「いい景色だ!! みんな楽しめ! 百万ドルの夜景だ!」

「ごめんゲロ吐きそう!」

「ちょっ! あたしにかかるから絶対やめてよ!?」

 

 それもそのはず。なぜなら僕らは金庫ごと宙づりになってるから。

 

 これが僕らの金庫奪取計画。

 金庫室が狭くて爆裂魔法が使えないなら、金庫を部屋から移動させればいい。

 

 キャプテンの盾に使用したマグネティックエレメントを応用して作った特殊電気磁石。

 

 張り付けた金属製の物体に特殊な磁気を付与し、それに唯一反応する正反対の磁気を持った電気磁石を、クインジェットのワイヤーフックに連結させることで、他の金属に一切干渉すること無くこの金庫のみを建物から引っ張り出すという仕組みになっている。

 

 ビーチの砂浜から磁石で金属製のゴミを取るのと同じだ。

 

 金庫の背が磁極となるように装置を取り付けたから、したがって僕らは入り口側を下にしてクインジェットからぶら下がっているというワケ。

 

 通路上の市民は、めぐみんがドローンを利用してボヤ騒ぎを起こす事で避難させた。

 

『お疲れ様です、トニー。とりあえず爆裂魔法をぶっ放しても騒がれない位置の平原まで移動しますね』

 

 めぐみんがゆっくりとジェットを動かし始める。

 だが、それでも金庫はかなり揺れ……。

 

「あっ……これ駄目だわ。……うぇっ」

「嘘でしょ助手君! まって! 本当に待っ」

 

 かくして僕らは、見事アルダープの金庫奪取を成功させ、エルロードを後にした。

 

 甲高い悲鳴と、わずかな虹の橋を夜空に残して。

 

 

 ▽

 

 

 朝起きて一番に、私の元に絶望の一報が届いた。

 

 ──エルロードにある私の金庫が丸々消えたと。

 

 ふざけるな。

 ふざけるな! ふざけるな! 

 

「ふざけるなあああああああっ!!!」

「ヒューヒューヒュー! 凄い! 凄いよアルダープ! こんな美味しい悪感情は初めてだよアルダープ! 僕、やっぱり君が大好きだよ!」

「黙れぇえ!」

 

 私の横で愉快そうに笑うマクスに腹が立ち、頭を思い切り蹴りつけた。

 

「がああぁぁ……!」

 

 怒りが収まらず、自分の頭をかきむしる。

 

 非常事態なんてもんじゃない。

 私の財産の大部分が無くなってしまった。

 

 何故よりにもよって私の金庫を……! 

 

「賊めぇ……ひっとらえてなぶり殺しにしてくれる……! マクス!」

 

 憎悪を殺意を煮えたぎらせ、マクスの名を叫ぶ。

 私に頭を蹴られて埋まっていたマクスが、何事も無かったかのようにぐにゃりと姿勢を戻し、ユラユラと聞く姿勢に入る。

 

「賊をここに呼べ! 私に首を差し出すよう仕向けろ!」

「うん! わかった、わかったよアルダープ! 君の物を盗んだ人をここに呼んだらいいんだね!」

「わかったのならさっさとやらんかぁっ!」

「うん! うん! 出来たら対価をちょうだいよ! アルダープ!」

 

 ニタニタ嗤う悪魔を一度睨み、そのまま答えず地下室を後にする。

 

 何が対価だ。踏み倒されてることにすら気づけない間抜けの癖に。

 

 自分の財産が奪われたという事実に、再びどうしようもない怒りに腹が煮える。

 

 ほかの貴族の笑われ者にされる前に捕まえて公開処刑せねば示しがつかない。

 

 賊をマクスの力で捕え、殺してくれと叫ぶまで嬲ったら……、

 

「この手で惨たらしく処刑してくれる……!」

 

 

 ▽

 

 

 華麗なる脱走劇の後。

 金庫は街から遠く離れた適当な平原まで運び、問題なく爆裂四散させた。

 

 アルダープが溜め込んでた金銀財宝も美術品も紙幣も。

 

 一切合切は全て灰燼に帰した。

 

 めぐみんはというと、月夜の下で燃え盛る財宝を背に、焼けた紙幣が舞い散る中で高笑い。

 それはそれは楽しそうだった。

 

 正直僕もあの光景には……スカッとしたな。

 

 

 それで、その翌朝の事。

 ダクネスは、僕らに置いてけぼりにされたアクアと共にテレポート屋を使って戻ってきていた。

 

 正直一発殴られるのを覚悟していたが……。

 

「トニー、話があるんだが」

「話って、もちろん口を使っての話だよな? その当たらない拳でじゃなくて」

「殴られたいならそう言え。……ちがう、その件では怒ってはいない」

 

 置いてけぼりにされたことにすら気づいていない程楽しんでたアクアはともかく、ダクネスすらその顔からは怒りが感じられなかった。

 

「じゃあなんだ?」

「先日の件だ。ハッキリ言って……お前が正しい……のだろう。ただ、わからないんだ。私が何をすればいいのか。浮足立っているというか……」

 

 ダクネスがもにょもにょと歯切れ悪くしゃべりだす。

 

 気持ちの整理がついていないらしい。

 

 そこから少し黙ってから……ダクネスが、絞るような声で小さくつぶやいた。

 

「私は……どう戦えばいいのだ?」

 

 ……脳裏にある男の姿がよぎる。

 彼の言葉を借りるとしようか。商標登録してなければいいが。

 

 

 

 

 

 

 

みんなで

 

 

 それを聞いたダクネスは少しあっけにとられてから、憑き物が落ちたかのような顔で笑った。

 

 

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