この素晴らしい世界に祝福を!アナザー・ユニバース・アイアンマン 作:Tony.Stank
量子世界に囚われていた為、投稿が遅れてしまいました。
ネズミが外のスイッチを押してくれなければ、今もそのままだったでしょう。
MCUはドラマも映画も、色々公開されましたね。
このすばも爆焔アニメ化で、両方とも激アツです。
さて、アルダープ逮捕に向けて次の手を打とうなどと考える、青空広がるご機嫌な朝。
「━━━━!」
けたたましい警報の音が、屋敷の中に響き渡った。
屋敷やラボに近づいた敵対者を攻撃する自動迎撃システムが作動したらしい。
強欲な三流領主の財産を吹っ飛ばした後だ。
僕らの正体は分かっていないだろうが、つい先日の事なので警戒してしまう。
侵入者が何者か調べようかと端末を取り出すと同時、上の階からドタドタと複数の重なった足音が聞こえてきた。
「なんだなんだなんだ!? クッソうるせーぞ!」
「屋敷に警報つけたんだ。科学兵器であれ、魔道兵器や呪術的攻撃であれ即座に反応して防御する。呪いに関してはアクアの結界ありきだが」
この屋敷の要塞っぷりをカズマに得意げに自慢する。
そしてコーヒーを一口。
「人の家を勝手に魔改造すんな! アラームうるさすぎて飛び起きちまったじゃねーか!」
「でもおかげでどっかの誰かからの攻撃から身を守れたんだ、感謝して欲しいくらいだね。まぁ、音量に関しては改善しておこう。コーヒーいるか?」
「……二度寝する」
呆れた顔してすごすごと部屋に戻ろうとするカズマと入れ替わるようにして、他の面々も顔を表した。
「敵襲ですか? ここのセキュリティで止められない相手なら私も出撃しますよ? もしそうなら魔王と幹部の攻撃部隊が相手でしょうが」
「また変な改造をしたのか……。ところでトニー、その……良かったらでいいのだが……」
「アクセスコードを剥奪して侵入者としてセキュリティシステムに攻撃されたいとか言うのは無しだぞ」
「まだなにもいってな」
「あぁ、いい天気だな。部屋に戻って寝ててくれ」
それを聞いたダクネスが、悲しそうな顔をしながらボソリと。
「……もし戦う時は、私もクルセイダーとして前線に立たせてくれと言おうとしたのだが……」
「ごめんな」
昨日の今日でこの物言いは良くないな。
流石に自分のひねくれっぷりに少し反省……
「でもちょっと……よかったぞ」
ありがとうダクネス。おかげで僕の罪悪感が薄れたよ。
「それで、どうするんですか? 最強の防衛システムが起動したとはいえ、絶賛敵襲中ですよ?」
「アクセルの街自体にはなんの被害も出ていないようだ。敵は最初からここが目的で来たらしい。生け捕りにして情報を……」
『ターレット防衛ライン突破、レーザーフェンス防衛ライン突破、地雷原防衛ライン突破、ドローン部隊防衛ライン突破、衛星兵器攻撃ライン突破』
警報が立て続けに響き、即座に僕は戦闘態勢に入る。
リビングの床の一部が開き、中からスーツがせりあがってきた。
「う、うおおおおお!! なんですか今の!? トニー! 今のは!? 今のは一体!」
「あとで君の杖もジュース瓶も床から出てくるようにしてやるから落ち着け」
「約束ですからね!」
適当な冗談のつもりだったのだが……これで今夜は徹夜するハメになった。
それよりも……!
「ここのセキュリティを突破できるほどの敵がすぐそこまで来てるぞ! カズマとアクアを起こしてこい!」
めぐみんが装備を取りに行くついでに二人を起こしに行く。
ダクネスはスーツを装着した僕の横に立って構えを取った。
「いつでもこい……!」
人影が迫る玄関のドアめがけて光が灯る掌をかざす。
ガチャリと、まるで我が家に帰るかのように人影が……
「フハハハハハハ! どうしたどうした! 客人であるぞ!! 出迎え」
戯言を最後まで聞く前に、見覚えのあるヴィランの汚い仮面めがけてリパルサーを放った。
「おっと! 茶の代わりに光線が出てくるとは、なんとも物騒な屋敷であるな!」
「悪いがもう我が家は店じまいなんだ。とっとと出ていけ、三流道化」
僕の放つリパルサーをひらりひらりと躱しては癇に障る笑い声を上げるバニル。
横にいたダクネスが飛び出し、バニルに殴りかかる。
「悪魔め、そこになおれ! ぶっころしてやる!」
「フハハハハハハ!! つい最近まで自信喪失しかけていた、腹筋は固くても心はグラグラな」
「ぬあああああ!!」
顔を真っ赤にしたダクネスが猛烈なラッシュをバニルにかますが、やっぱり当たらない。
僕は掌をいったん下に向けて……。
「おや? 対話の時間か? 汝も鋼鉄の鎧を身に纏うにしては、大概……」
アームミサイルを展開し、拳をバニルに向けて狙いを定める。
「物騒ヒーローよ、武器を下げて話す姿勢に入るのか、徹底的に戦う姿勢をとるのかどっちかにしたらどうなのだ?」
「あんたの態度次第だ」
と、そこで。
再びドタドタと足音を立ててカズマ達が戻ってきた。
「ストップストップ!! 屋敷吹っ飛ばす気か馬鹿ども!」
「あー! こんのクソ悪魔! とうとう私の聖域に土足で入りやがったわね!? 今度こそ浄化して消し去ってくれるわ!」
「ノコノコと残機を消されに戻って来ましたか! いいでしょう、また爆裂魔法で灰にしてくれます!」
「どいつもこいつもなんでこんなに血の気が多いんだよ! やっぱお前らゴブリンだ!」
カズマが悲痛そうに叫びながら僕らを止める。
半分諦めているようだが。
「ふむ、では悪感情をいただくのはこれくらいにして、話に移ろうでは無いか」
「でしたら、まずは体を作り直していただけませんか? あなたの体、さっきからボロボロと土が床に落ちてきてるんですよ。今日の掃除担当は私なので、あまり汚さないでください」
めぐみんに崩れ掛けの体を指摘されたバニルが、面倒くさそうな顔をして押し黙った。
……あぁ、なるほど。
僕はアクアの横に立ち、飲み仲間っぽく気さくに肩を組む。
「なーに? どうしたの? 肩なんで組んで。この麗しい女神と朝から飲みたいの?」
「よく見ろ、アイツは君の結界と僕のセキュリティにやられて再生が困難になってるらしい」
「あっはははは! そういう事ね! ウケるんですけど! 大悪魔様が随分とみすぼらしい姿になってるじゃない!」
「土の補充なら庭からどうぞ。ウチの黒猫のお気に入りトイレスポットだ、たい肥たっぷりで栄養満点! おかわりはご自由に!! HAHAHAHA!」
アクアが邪悪の化身みたいな顔をしながらバニルを指さして笑い、僕はバニルに中指を突き立てながらセクシーダンスを見せつける。
スーツの駆動音が良い感じに裏拍を取っている。いいね、ノってきた。
バニルの様子はと言うと、心底ムカついたといった感じで、ギリギリと歯を噛み締めながら顔を歪ませていた。
「うわ……これが女神とヒーローの姿かよ……」
大悪魔を相手に大立ち回りを繰り広げる僕らの背中に、カズマが超ドン引きした視線を向けていた。
▽
「では、本題に入るとしよう」
家のソファに腰掛けたバニルが、神妙な顔つきで話の姿勢に入る。
「時に中年ヒーローよ、我輩が以前に汝にした忠告は覚えているか?」
「悪いね、ゆうべ何食べたかも覚えてない」
「サンマ定食ですよ。美味しかったですね」
「だな」
問いを冗談めかして受け流す僕に、バニルは呆れたといった感じに口元を脱力させた。
指でトントンと仮面を叩きながら、ため息混じりに話を続ける。
「……先日のエルロードでの強盗騒ぎについて、なにか心当たりがあるのではないか?」
「ああ、新聞で一面を飾ってたな。あそこで強盗成功させるなんて、大した奴もいたもんだ」
「誤魔化そうとするのはよせ。そこのグータラ女神が放つ光のせいで見通すことは敵わんが、我輩の力がなくとも察することなど容易であるわ」
追い詰めたいというよりは、話をさっさと進めたいから早く明かせといった感じのバニル。
僕らを突き出したいって言うなら、屋敷に来た時点で警察をぞろぞろ引き連れてきているはずだ。
元魔王軍幹部だが、人に危害は加えていない。信用はしないが、一応答えるとしよう。
「それが事実だとして……君と何の関係があるって言うんだ?」
「ここまで来てまだはぐらかそうとする疑り深い中年よ。助言をくれてやろう、汝は人の心というものを学んだ方が良い」
「……Huh?」
あまりにも予想外過ぎる忠告に、思わずそんな気の抜けた声が出る。
「セラピーでも始める気か? 向いてないぞ」
だろ? と、笑い飛ばそうとカズマ達の方に顔を向けるが……。
「悪魔の言うことに賛同するのは癪ですが……」
「言えてるな」
「その……悪魔の言うことだ、流しておけ」
ちなみにアクアは賛同したいが、悪魔嫌いだから声に出したくはないって顔が言ってる。
「どいつもこいつも喧嘩売ってるのか? ……まぁ、一部認めよう」
「ふむ、その意気だ。さて、かの強欲領主であるが……問題なのは、汝のやり口だ。いくらなんでも強引がすぎる。我輩の言葉を覚えておらんのか? 『汝の」
「短絡的な行動、だろ? それが狙いだ。相手の力を削いで、選択肢を潰して、あいつの力の本質を暴く」
「……知った上での行動であったか……」
まるで呆れたとでも言わんばかりに、バニルがため息をつく。
「何が言いたいんだ?」
考えの読めない悪魔相手に、今度は僕が急かすように尋ねた。
バニルの口元が、ゆっくりと開く。
「未知の力を使う癇癪持ちを下手に追い詰めるなと言っておるのだ。相手と機を誤ると汝とて死ぬ」
そう口から漏らすと同時。
ドンッと、衝撃波で空気の震える音と共にけたたましいベルがまた響く。
つい先程も鳴った自動迎撃システムのアラートだ。
「!?」
その場の全員が身構えるが、僕のすぐ後ろで喚いて叫ぶやつが一人。
「ああああ──ーっ!!」
「落ち着け。アラートなら間に合ってる」
「悪魔よ悪魔! 悪魔に攻撃されたわ!」
窓の外を見るやいなや、バタバタと叫び散らかしながら玄関から飛び出していくアクア。
カズマ達も状況に追い付けず混乱し始めた。
バニルは面白そうに顔を歪めて僕らを見渡しながら、仰々しく手を挙げ語り始める。
「フハハハハ八!! 冒険者どもよ! 汝らが奴とどう戦うのか、我輩ちょっと楽しみであるぞ!! フハハハハハハ!!!」
「漫画本の悪役でも気取っているのか? そのダサい仮面のせいでキマってないぞ」
今の所、攻撃はアクアの作った結界によって止められているようだ。
口元を歪めて不愉快な笑い声を上げるバニルはダクネスに見張らせ、僕もアクアの後を追う。
屋敷の外に出ると、アクアが屋敷の庭で空を強く睨んでいた。
そのアクアの目線の先のものを、僕も見上げる。
結界にぶつかり続け、激しく振動している黒い塊を。
「フライデー、あれは何か解析できるか?」
『基本的には魔力主体の『呪い』と分類される攻撃に似ていますが、粒子放射線を検出しました。今までの呪いや魔術の攻撃には観測されなかったものです』
「粒子放射線……」
フライデーの解析結果を、うわ言のように繰り返す。
なにか、何かが分かりそうだ。
僕の直感が何かを告げようしている。
「なぁ、フライデー」
ただおもむろに、意識した訳ではなく、直感で言葉が漏れた。
「僕がアルダープ家を探ろうとした時に検知したエネルギーと、類似点があるか調べてみてくれ」
『照合中……完了。ボス、懸念通りの結果です。極めて類似しています』
────!
ピタリと、パズルのピースがハマる感覚。
「見てなさいトニー! 今から私がサクッと、あの気味の悪い塊を浄化して……」
「やめろ」
「いだいっ!」
光り放ちながら掲げられたアクアの手を、ぺしっと叩いて下げさせる。
「何すんのよ! あれは呪いよ!? しかも飛びっきり凶悪なヤツ! トニーってば時々悪魔みたいな顔したりするけど、とうとう本当に悪魔になっちゃったの!?」
「アクア、あの結界にぶつかり続けてるアレ……あのまま放置してても大丈夫か?」
「へっ……? そりゃ私の作った結界だもの、破られるなんて絶対ありえな」
「流石だな、ラボに来てくれ」
そのままアクアの手をグイッと引っ張り、ラボのエレベーターに乗り込む。
「ね、ねぇちょっと待って! 結界張った私にしか分からないけど、あれすっごくうるさいのよ!! ずっと首筋をつつかれてるのような感覚がするの!」
「マフラーでもしとけ」
「トニーに人の心は無いの!? カズマー! カズマさーん!! 助けて! お願い助けて!」
アクアの絶叫と僕を乗せて、エレベーターが下がる。
アルダープ、やっぱり短気を起こしたか。
これでもうチェックだ。
ブタ箱まで秒読みだぞ、ケツを守る練習でもしとくんだな。
▽
「ほう……実に興味深いな……遠い遠い異国の技術であるか……」
「下手にあれこれ触るなよ。その大切なセンスの無い仮面が焦げたりでもしたら大変だろ?」
「言われなくとも、我輩にそこまでの好奇心は無いので安心するがいい。何でもかんでも手を出して、取り返しのつかないことになるナンセンスな貴様と違って……なっ! フハハハハハ!!!」
こいつはいちいち癇に障ることを言わないと気が済まないのか?
「トニー、多分お互い様ですよ」
「君まで僕の頭の中を読むな」
さっきまで屋敷にいた全員をラボに集め、屋敷に受けた呪術攻撃の正体を探りにかかる。
当たり前のようにラボにいるバニルに対して、アクアとダクネスはかなり不満気な顔だ。
「トニーさーん? なんでこの害虫までラボに呼んでるのかしら?」
「そうだぞ……悪魔を家に招き入れるなど……」
「呪いに詳しいやつが必要だったんだよ。床はあとで掃除するさ」
「我輩を汚物扱いするのはやめていただこうか」
僕は部屋の中央にあるホログラム発生装置を起動し、屋敷を覆うバリアとリンクさせる。
浮かび上がるのは、未だバリアにぶつかり続ける気味の悪い漆黒の玉。
「で、こいつは一体なんなんだよ?」
質問には答えてこそ科学者というもの。
「量子放射線に似た物質だ。空間を構成する重力比率を変成し、リーマン幾何学的空間曲率運動を誘発する。接触するあらゆるエネルギー、もしくは時空間の量子化的現象のベクトルを湾曲させる性質を持ってる」
「ごめん、なんて?」
懇切丁寧に答えたものの、カズマはというと寝ぼけたジャイアントトードみたいな顔をしている。
そんなカズマに、僕はバカにするような目を向けながら
やれやれと肩をすくめた。
「お前マジで嫌い」
「フハハハハ! 思わぬ所で美味なる悪感情をご馳走様である」
「お前もマジで嫌い」
「やれやれ、仕方ないですねカズマは……この私が懇切丁寧に教えて……あっ! 痛いです痛いです! 謝りますからつねらないでください!」
僕の講義そっちのけで茶番プロレスを始めたカズマとめぐみん。
「その、すまないが……私達にもわかりやすいように頼む。アクアが寝そうだ……」
というか寝てる。
「それじゃ、簡潔に早い話が……現実改変能力だ」
「は……?」
ぴたりと、つねりあいをしてたカズマとめぐみんがピタリと止まる。
「げ、現実改変……? チートの中のチートじゃねぇか…… 漫画の中だけだと思ってた」
「そこまで強力な能力など、聞いた事が……」
青ざめるパーティメンバーたち。
強敵には頬を染めるダクネスすらも、顔色は優れない。
そんな中で、一人ニヤニヤ歪んだ笑みを浮かべるヤツが。
「やるではないか。マクスウェルの能力を看破するとは……汝の国の技術は侮れぬな」
「僕の技術と言って欲しいね。それよりも、マクスウェルの能力って言ったか? 知ってるのか?」
バニルの口元を歪めたまま、面白そうに話す。
「マクスウェル。我が同胞にして、地獄の七大悪魔が一人」
「悪魔……?」
さっきまで船を漕いでいたアクアの目が、悪魔というワードにカッと開く。
「やっぱりあんたの身内じゃない! ふざけんじゃないわよこのクソ悪魔! トニー! これはチャンスよ! 今すぐここでコイツをぶっちめるの!」
「寝起きが良いじゃないか。ぶっちめるのは僕も大賛成だが、少し静かにしててくれ。そのまま寝てていいぞ」
「ひ、ひどいわ! さっきはあんなに私を求めたのに、要らなくなったら突き放すなんて!」
「変な言い方をするな!」
アホ相手に柄にもなく声を荒らげていると、バニルがうるさそうに顔をしかめ、大きくため息をいた。
悪魔の天敵が女神ってのは嘘じゃないらしい。
「……マクスウェルは、捻じ曲げる悪魔だ。思考も、事象も、真実も……都合のいいように捻じ曲げる。それがヤツの能力だ」
……なるほどな。アルダープが捕まらないわけだ。
「あの悪徳領主が好き放題できる理由はわかりました。……ですが、何故それだけの悪魔をただの人間が使役できてるんです?」
「その通りだ。大悪魔ともなると、対価も相当なものだろう? あのアルダープが、それを支払える人間だとは思えん」
めぐみんとダクネスの言い分はもっともだ。
この世界を支配してる魔王だって、バニルの事は持て余していた。
大悪魔とは、そう簡単に顎で使えるものではないのだろう。
僕の世界でも、それこそ悪魔ではないが、
「当然であろう。あの三流領主ごときが従えられる悪魔ではないわ。だが……ヤツは力こそあれど、頭が抜けていてな」
バニルはウンザリといった様子でため息をついて。
「願いを叶えても、対価どころか叶えたことすら忘れる。そんな頭の出来のせいで、ずっとこき使われておるのだ」
「ピーキーすぎるだろ」
「相性が良さそうで結構だ。そのまま地獄まで仲良くしてもらいたね」
「そこである」
ビシッと、バニルが僕に指を指した。
「我輩の目的は、こき使われる
またしても、バニルの口元が歪む。
さっきよりも、より歪に、悪魔らしく。
「──汝らが、マクスウェルを一度抹殺するしかない」
そう、言い放った。
「悪魔は死ぬと地獄に戻り、交わしていた契約の全てが破棄されるのだ」
「へぇ。その口ぶりじゃ、前者よりもあんたのお友達を殺して欲しいって言ってるように聞こえるんだが。マクスウェルとやらは友人に恵まれてるみたいだな」
「対価を支払わせる方法ではダメな理由でもあるんですか?」
「無論、我輩は最初からそのつもりで動いておったわ。だが……」
バニルは忌々しそうに僕の方を見て、わざとらしくため息をついた。
「このヒーロー症候群末期の中年鎧男がド派手に領主を追い詰めたことで、そうもいかなくなったのだ」
「Huh? なんで僕が悪者みたいになってるんだ? 倒さなくて済む手段があるっていうなら、最初から僕らに事情を話せばよかっただろ。悪者なのは知ってて黙ってた君の方じゃないか」
「隠し事が好きなのは汝だけではないのでな。そんなことよりも、汝のせいでもっとこじれたことになりそうなのだ」
その言葉に、僕は目を細くして、訝しんだ視線をバニルに向ける。
「ハッキリと言おう。あの悪徳領主は……自分が追い詰められたら、ヤケを起こしてこの街を破壊し尽くすぞ」
「なんだと……!?」
ダクネスがバニルに詰め寄る。
「言葉の通りだ。あのような短気で、不相応な力を持ったものを下手に刺激するとどうなるかなど、我輩でなくとも見通せるであろう?」
「まるで実際に見たかのような口ぶりだな」
「見たとも。見通したとも」
「それじゃ、僕らが勝ってギルドで豪遊する所も見通せたんじゃないか? 酔ったアクアがそこらの床にゲロ溜まりを作ってるエンディングまで含めて」
軽口を叩く僕に、バニルは少し押し黙った。
やがて、重そうに口を開く。
「……見通せんのだ。汝らが低俗領主を追い詰め、そこでヤケを起こした癇癪領主が街を破壊しようとする所までは見えるのだが……」
「随分都合が悪いわね……なーんか企んでるでしょ。悪魔の言うことなんて信用ならないわ」
「おっと! やることなすこと空回りばかりで周囲の信用ゼロのポンコツプリーストが信用を説くとは! 実に面白い冗談であるな! フハハハハハハ!!」
アクアとバニルが壮絶な睨み合いを始める。
今にもデフコン1が発令されそうだ。
「女神と悪魔の世界大戦なら庭ででもやっててくれないか? だがまぁ……あんたの言うことにも一理ある。奴が街を攻撃すること前提で話を進めよう」
「……え、信じるの?」
「敵の能力をわざわざ教えてくれた以上はこっちに協力する意思があると見ていいだろう。反対意見ある人いるか?」
「絶対イ」
「ゼロだな。よし、取り掛かろう」
僕は叫び散らかすアクアを無視して指を弾く。
小さく響くその音の波紋に乗るかのように、様々な機器達が目覚め、幾何学模様の光がラボに広がり始めた。
「ふおおぉぉ……!」
そんな中で、一際明るい光源が一つ。
言わずもがな、真紅に輝くめぐみんの瞳だ。
スポットライトめいて出るこの光のおかげで、めぐみんが何を見て文字通り目を輝かせているのかわかる訳だが……。
今回その光に照らされているのは、僕らの正面に出現したホログラムの設計モデル。
そこには、大きく映る5つの文字が並んでいた。
それは…………、
Mk.47。
その青写真だった。
余談ですが
今回のタイトルになっているREGICIDEというのは、私の好きなDestinyというゲームのサウンドトラックからとっています。
まさに邪悪な王に挑むといった雰囲気が目の前に浮かぶような、最高の曲なので是非一度聞いてみてください。