この素晴らしい世界に祝福を!アナザー・ユニバース・アイアンマン   作:Tony.Stank

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大変お待たせしました(n回目)
このすば3期のクオリティがいつも通りかつ進化してて涙止まりませんわ
次回は既に2000字ほど書き溜めてあるので、今回ほどお待たせすることは無いと思います




第44話 捻じ曲げる悪魔

 

「──アレクセイ卿の逮捕……?」 

 

 王城の応接間にて、クレアが僕にそうオウム返しをする。

 

 僕はテーブルに置かれたブランデーの瓶を持ち、グラスに傾けた。

 透き通った琥珀色の液体が、芳醇なブドウと甘く香ばしい樽の香りを乗せて注がれてゆく。

 

テラスの窓から射す夕日が、グラスを通してテーブルに琥珀色の影を作った。

 

「ああ。許可さえもらえたら、明日明後日にでも家まで逮捕しに行きたいね。一番デカい手錠を貰えるかな? 税金を贅肉に代えてる肥満貴族にも合うようなヤツ」

「ス、スターク殿……あなたとアレクセイ卿の確執は知っているが……冒険者に貴族を逮捕する権限は無いし、証拠も必要だ。それに、他に優先して逮捕すべき悪徳貴族もたくさんいる」

「これでもか?」

 

 間髪入れず、腕時計からホログラムを出す。

 映っている資料は、アルダープが捻じ曲げる力を使った際に検出したエネルギーの比較グラフを初めとした、ヤツが悪魔を使役している証拠の数々。

 

「見ろ。やつはとびっきり強力な悪魔の力を使い、好き放題やってる。やろうと思えばこの国だって盗ることもできる力だ」

 

 チラリとテーブルを見やる。

 そこに置いてある嘘発見の魔道具がならないことを確認し、再びクレアに視線を戻した。

 

「嘘も言ってない」

 

 僕はいつものように軽薄そうな笑みを浮かべ、散歩にでも行くかのようなノリで聞く。

 

「というわけで、手錠とバッジをくれないか? ドーナツもあると良い」

「……」

 

 クレアは、僕の軽口に足してただ押し黙り……、

 

「うぅむ……やはりそんな……重要なことには……思えない……」

 

 うつろな目で、そう答えた。

 

「ハァ……またこれか…………。フライデー、チャフのチャージは?」

『あと10秒です』

「よし……。ほーらクレア、このマシンにご注目。今から君のモヤッとした頭をこれが晴らす。リラックスして座っててくれ」

 

 テーブル脇に置いてある、正方形のキューブ型デバイスへと手を伸ばしてかざす。

 センサーがそれを検知すると、側面に横一文字に線が入り、デバイスが縦に伸びながら展開した。

 

 その中央に独立して浮かぶリングが青く光って回転する。

 

 目に見えない粒子が周囲に広がり……そして。

 

「わ、私は……? その、すまないスターク殿……話をよく聞いていなかった……もう一度話してもらえるだろうか?」

「いいとも。あー……、どこまで話したっけ? あぁ、いよいよ本番ってところだったな」

 

 アルダープが従えている悪魔……マクスウェルの力は相当なものだった。

 今のように証拠を突きつけても御覧の有様だ。

 

 だが……そのメカニズムが分かれば、対処法はすぐに頭に浮かんだ。

 

 現実の力場を、重力比率を、量子放射線によって乱すというのであれば、それを逸らす。

 僕がアクアの結界を元に作ったこの粒子をぶつけることによって。

 

 こうして、何度も解呪と説明を繰り返すこと数十分。

 

「そ、そんな……国家転覆の危機ではないか……!」

「ああ。……10回もそんなデカいリアクションして疲れないか?」

「……それほどまでに、強大な力なのか……」

 

 クレアは、青ざめた顔で冷や汗を拭い、僕に向き直る。

 

「わかった、アレクセイ卿の逮捕の許可を出そう。必要なら応援も出す」

「足手まといになるだけだ、必要ないね」

 

 僕がそういうと、クレアは少し唸ってから令状とペンを持ち出してきた。

 緊張の空気が走る部屋の中で、ペンの走る音だけが異質な程響く。

 まるで国家の命運を分けるかのような書類にサインしているかのようだ。

 

 まぁ、実際そうだ。

 

 クレアは令状にサインすると、手を重々しく動かしながら印章を押した。

 

「どうも」

 

 重苦しい雰囲気を纏い、顔に影を落とすクレアに対して、僕は飄々と書類を取り、踵を返して応接間を出ようとする。

 そんな僕の背に、クレアが声をかけてきた。

 

 僕が振り返ると、彼女は神妙な顔つきで。

 

「スターク殿。もちろん、あなたの腕は信用している。だが……どうかご無事で」

 

 そう言って、僕に美しい敬礼をした。

 

 確かに、ここにきて一番の強敵かもしれない。

 だからこそ、僕は冗談めかすように笑って答えた。

 

「ああ。……それじゃ、牢屋の看守にストレッチでもさせておいてくれ。あいつ重いから」

 

 

 ▽

 

 

「ついにこの時が来たか……」

 

 先程からソファに座り、瞑想でもしていたかのように目を瞑っていたダクネスが、そう言って立ち上がる。

 

「ぶちのめしに行こうじゃないの! 大悪魔が相手だなんて、腕が鳴るわ!」

「今宵の爆裂魔法の獲物は地獄の侯爵ですか……ふっふっふっ……我が血が、震えております!」

 

 アルダープの屋敷に乗り込みに行くぞと伝えるやいなや、血の気の多いパーティーメンバー達が猛スピードで身支度を終えてリビングに集まっていた。

 

 相変わらず頼もしい奴らだ。

 

 あのアクアも悪魔相手ならこのやる気っぷり。

 いつもこうだったらいいんだが。

 

 と、そんなことを思っていると。

 

「お、ようやく来たわね。遅いじゃない」

 

 気だるげな足音と共に、カズマがリビングに現れた。

 イマイチ及び腰な態度に、アクアがジト目を向ける。

 

「そうカズマを責めるな。レディーは着替えに時間がかかるもんなんだよ」

「プッ!」

 

 僕の冗談に、アクアが思わず吹き出した。

 

「うるせぇなぁ! ここに来るまで迷ってたんだよ!」

「我が家の中でか?」

「来るか来ないかだよ!」

 

 猛るカズマを、杖で頬をツンツン小突く感じでめぐみんが窘める。

 

「なんて言いつつも、そうやって最終的に来るところは素敵だと思いますよ?」

「な、なんだよ急に……やると言っちまったんだから……最後までやるよ」

 

 ……WOW.

 めぐみんがカズマにアメでやる気を引き出している。

 

 悪女の才能があるかもしれない。

 

「ねぇねぇ、見てみて! 私のこの動きどうかしら! 大悪魔だろうが魔王だろうがボコボコにできそうじゃない?」

 

 いつの間に持ってきたのか。

 僕の木人椿を奇妙な動きで殴るアクア。

 

 その動きは拳法というよりは……。

 

「良いタコ踊りだな。面白い宴会芸のネタができたじゃないか。それじゃ、ブリーフィングだ」

「!?」

 

 ショックを受けた顔で固まるアクアをよそに、腕時計型のデバイスを操作し、リビングの中央に巨大なホログラムを浮かび上がらせる。

 

「おまっ……また家を勝手に改造したのか……」

「そんな大層なものじゃない。ホログラム投影機を取り付けて家のどこでもラボの作業をネットワーク経由でこの屋敷からも遠隔操作できるようにしただけだ」

「魔改造じゃねーか」

 

 ファンタジーが壊れるだのなんだのぶつくさ言うカズマ。

 

 そのうち君は自分の部屋でゲーム出来ることに気が付いて僕に感謝するだろうよ。

 

「さて、Mk.47の調整が完了次第、アルダープの屋敷に突撃する」

「ふおおおお! 早くみたいので、今すぐ行きましょう!」

「僕のスーツ見たさに暴走するな。……悪い気はしないが。それじゃカズマ、なにか作戦はあるか?」

「そうだな……」

 

 ホログラムで出来たアルダープ邸の3Dモデルをクルクル回しながら、カズマが唸る。

 

「よし、まずは家に火を放とう」

 

 いきなり出てきた物騒な発言に、全員が目を……。

 

「ああ。マクスウェルとの戦いが始まったら使用人やら傭兵やら巻き込みかねないからな。ギャラリー席に移ってもらおう」

「あの屋敷が燃える様は、さぞ壮観でしょうね」

「今回は国の許可も得てるのだものね! いざ、国家権力と女神に名のもとに、悪魔のいる醜悪な館を焼き尽くしてやりましょう!」

「焼き付くさねーよ!逃げ遅れがいたらどうすんだ!人がいない部分でボヤ騒ぎを起こせればいいんだよ」

 

 剥くこともなく、めぐみんもアクアも実にいい返事だ。

 特に、国の後ろ盾を得たのと悪魔相手なのもあって目が輝いてる。

 敵に回したくないね。

 

 だが、そんな中でも、最もいい反応するのが一人。

 

「私も賛成だ! ついに追い詰めたぞアルダープ! ぶっころしてやる!!!」

「お、おう……」

 

 ダクネスが満面の笑みで、一番大きな声で賛同した。

 カズマの顔が引きつるレベルで。

 

「おや、いい返事ですねダクネス。顔色も良くなりました」

「退くのはやめだ。私はクルセイダーなのだからな」

 

 今のセリフは紅魔族手によかったのだろう。めぐみんが目を輝かせてダクネスを見ている。

 

 そんな中で、僕はいそいそと上の階から持ってきたスーツを三着ほど広げる。

 鋼鉄のではなく、ウールやシルクで出来たスーツを。

 

「なぁ、どれがいいかな? アルマーニか? それともトムフォードの三つ揃え?」

「……何でスーツ?」

「まずは対話だ。降伏しておとなしくお縄に着くつもりはないか聞く」

「本音は?」

「自分が無敵だと思ってる奴の鼻を明かして笑いに行くんだぞ。衣装でも勝ちたい。だろ?」

 

 カズマは呆れた顔で。

 

「そのためにわざわざ高級なスーツ着ていくのか……お前もいい性格だよな、本当に」

「君にそう言ってもえらえると光栄だね。よし、ブリオーニにするか」

 

 僕はホログラムを操作して円柱状の光の更衣室を作ると、その中で光沢を放つグレーのスーツに袖を通した。

 そして、指を弾いてホログラムを消し、わざとらしくスーツの襟を正す。

 

 キマったね。

 

「……あなたらしいですね」

「ああ……トニーはトニーだな」

「無駄にサマになってるのよね……煽りに行くだけなのに」

 

 とても大悪魔を倒しに行くとは思えない、いつもの空気が流れだした時だった。

 

『ボス、Mk.47の調整が完了しました』

 

 リビングに響くフライデーのアナウンス。

 全員が立ち上がり、扉の方へと足先を向けた。

 

「それじゃ行こうか。黙秘権の文言はちゃんと覚えたか?」

 

 

 扉を開け。月夜に照らされ。

そして僕らは向かう。アルダープの屋敷へ。

 

 

 ──アベンジへと。

 

 

 ▽

 

「ええい! 賊はまだ見つからんのか!!」

「も、申し訳ございません!」

 

寝室前の廊下に、怒号が響き渡った。

目の前の無能な衛兵は、ひたすら私に頭を下げる。

 

そんなものでは収まらない怒りに身を任せ、マグカップを壁にたたきつけた。

 

マグカップが砕けて飛散したコーヒーが、壁に飾っていた絵画に跳ね、黒いシミが広がる。

 

 高い絵画が……更に苛立ちが混み上がってきた。

 この無能のせいで! 

 

「謝罪で済むとでも思っているのか!? さっさと探せ!この絵画の弁償代は、貴様の安い給料から天引きしてくれる!自分の無能っぷりを恨むが良い!」

 

 頭を下げてきた衛兵に、そう怒鳴りつけて下がらせる。

足早に去るその背をひと睨みし、辺りに誰もいないのを確認すると寝室へと戻った。

 

秘密扉をそっと開け、地下へと続く階段へと足を伸ばした。

 

 

ーー何故、私の元には無能しかいないのか。

誰一人として、私の望みに助力できるものが居ない。

 

ここ最近に至っては、ひたすらに損をするだけだ。

ララティーナも、溜め込んだ財産も、私の手からすり抜けるように離れてゆく。

とにもかくにもまた財産を貯めねばならん。

 

アクセル領の税金を上げられるだけ上げねば。

領民共が反対しようが、マクスの辻褄合わせでなんとでもしてやろう。

 

そうだ……。マクス……!あの壊れた悪魔が無能でなければ……!

 

 煮えたぎる怒りが足音となって、湿った地下階段にこだました。

いつも通りのカビ臭い地下室の中央で、いつも通り無表情の悪魔がそこに横たわっていた。

 

私は、その悪魔を蹴りつけて起こす。

 

「マクス! 貴様、賊一匹まともに見つけることも出来んのか!?」

 

 そして、鬱憤を叩きつけるかのように、怒号を浴びせた。

 

 またしてもコイツの無能っぷりのせいで……! 

 

「もう我慢の限界だ! 賊を始末し、ララティーナを手に入れたら、契約を破棄してキサマを殺処分してくれる!」

「ヒュー……ヒュー……でもね、でもねアルダープ……」

「キサマッ……! まだ言い訳を……」

「無理、無理なんだよアルダープ」

 

その言葉に、はたと止まる。

 

……まただ。また『無理』と答えた。

 たしかに、コイツは無能だ。

 だが、私の願いを『無理』と断ったことはスタークに関する事のみ。

 

 ……背中を冷たい汗が伝い、ある不安がよぎる。

 

ーー追い詰められているのは、私の方なのでは?

 

思えば裁判からおかしかった。

マクスを使って裁判で負けたことは無い。

 

「マクス……!」

 

口の中が乾く感覚を覚えながら、目の前の悪魔の名をつぶやく。

 

そうだ。

忘れていた。

スタークの持つ技術レベルは、この国の常識なんて容易く超える。

 

「ワシがお前の名を叫んだら……」

 

もし、マクスの存在がバレていたら?

それで、対策を打たれていたら?

 

「周りに誰がいようと構わん!地下を飛び出してワシを守れ!いいな……!?」

「ヒュー!ヒュー、ヒューッ!焦ってるね?絶望してるね?美味しい!とても美味しいよアルダープ!!わかった!わかったよ!アルダープがどこにいても駆けつけるよ!」

 

マクスが狂ったように笑い、グネグネと床でのたうち回る。

普段なら気持ちが悪いと蹴りつけるところだが、行き場のない不安にそんな元気も刈られ、踵を返して寝室に戻る。

 

……その予感は、直ぐに的中した。

 

『大変です!アレクセイ卿!今すぐに……』

 

寝室のドアを強く叩く音が聞こえる。

急いで地下室への秘密扉を閉ざし、けたたましく響くノック音の音源へと向かった。

 

もう既に空は暗く、この時間帯は余程のことでもない限り自分の元へは尋ねないように命じてある。

それでもドアを叩くということは……!

 

「こんな時間に……なんだ……!」

「火事です!既に消火も間に合わないほどの火の手が……!」

「異様な程火が回るのが早いのです!襲撃の可能性があります!避難を!」

 

衛兵たちが血相を変えた顔で避難を促す。

 

何故こうも不幸は重なるのか。

財産に続いて屋敷まで……!

 

「馬車を用意しろ!王都の別邸へ向かうのだ!」

「は、はっ!今すぐにご用意いたします!」

 

衛兵に続き、屋敷の正門から出て馬車へと乗り込む。

 

王都直通のテレポート屋は東の方だったか。

もう営業時間外だろうが、叩き起こしてでも王都へ向かおう。

 

そんなことを考えながら、御者に向かって声を飛ばす。

 

「急げっ!今すぐテレポート屋へと向かうのだっ!!」

「かしこまりました」

 

御者は鞭を打ち、馬車を走らせる。

しかし、馬車は東ではなく反対方向へと向かっており……

 

「おい!どこへ向かっておる!!」

 

座席から乗り出し、御者の肩を掴んで揺さぶる。

 

御者は、無言でだるそうに首を回し、自分の肩を掴む私の手を見て口角をあげた。

 

 

 

 

「やぁ、良い腕輪をしてるじゃないか、アルダープ君」

 

――――!?

 

私に肩を掴まれた御者が目深にかぶった帽子をあげ、顔をのぞかせる。

 

「だが、もっと似合う腕輪があるぞ。それはな――」

 

馬車のランタンに照らされたその軽薄そうな笑みには、あまりにも見覚えがあった。

 

 

 

 

「――手錠って言うんだ」

 

 

「キ、キサマッ……!」

 

御者……いや、スタークは手綱を引き、馬を止めた。

馬車が急に止まったことにより、私は勢いよく前のめりになり御者席の背に頭を打つ。

 

「ゴハッ……!」

 

一瞬めまいがしてよろけるが、すぐに意識を覚醒させ、再び御者席を見る。

そこにヤツの姿はなく……。

 

「停車駅はこちらになりまーす」

 

私の背後で馬車の扉が開く音がし、振り返った先には、扉のすぐ外でニヤニヤと笑みを浮かべるスタークが。

 

「こんなことをしてタダで済むと思っているのか……!?裁判などにかけてやるものか!今すぐここで殺してくれる!!衛兵!今すぐこの男を殺せ!!」

 

腹の底から煮えたぎる怒りを、口から放つ。

しかし……。

 

「すみません。アレクセイ卿……」

 

そう言い残し、衛兵たちは続々と馬車のドアから出ていき、スタークを捕まえるどころかどこかへと逃げ去ろうとする。

 

……は?

 

「なっ……!?貴様ら!裏切るというのか!?」

「経営者の端くれとしてアドバイスしてやるよ。労働と職場環境に見合う給料を払えない奴は経営者失格だ。あぁ、報酬は後で払うよ」

「ヒャホホーイ!」

 

裏切った衛兵達が、高笑いしながら走り去っていった。

 

状況に頭の整理が追いつかない。

開いた口が塞がらないとはこの事か。

 

「と、いうわけで」

 

スタークは馬車に乗り込むや否や、ドカッと私の正面に座り、図々しく足を組んだ。

庶民のくせに、貴族の私から見てもひと目でわかる程の上等なスーツを着ており、極めて強い煽りの意を感じる。

 

「このワシに向かってその態度……もう謝っても遅いぞ。貴様は必ず捉えて死罪にする。逃げられると思うな」

「僕は逃げないさ。だから、君も僕から逃げるなよ」

 

そう言って、ぴらりと紙切れを1枚、ワシに見せつける。

それは……。

 

「逮捕状だと……?フンッ……何かと思えば、この清廉潔白のワシになんの罪があるというのだ」

「恐喝、殺人、死体遺棄、脱税……」

「ハァ、もう良い。ワシは清廉潔白。そうだろう?スターク」

 

脅して自白でもさせる腹積もりだったのだろう。

だが、無駄なことだ。マクスの力で思考を捻じ曲げれば造作もない。

 

私はスタークの顔をジッと見据え、マクスの力を行使……

 

「HAHAHAッ!睨めっこが随分強いなアルダープ!良い変顔だ」

「無礼にも程があるぞキサマッ!!い、いや……どういう事だ……!?」

 

何故マクスの力が効かない!?

以前に我が屋敷に来た時は効いてたハズなのに……!

 

「地獄のお友達の力が使えなくて驚いてるのか?」

「ど……どういう……ことだ……」

 

確実に知っている……!

スターク……やはり……未知の技術で悪魔の力を……!

 

「性能不足って奴だな。まぁ、そういうこともある。気にするな」

 

この男は……ここで消す!!

 

「マァァクスッッ!!!この男を今すぐ殺せぇえええェッ!!」

「ヒューッ……!」

 

私が叫ぶとほぼ同時。

地面から、馬車の底を引き裂きながらマクスが飛び出した。

 

その勢いのまま、手を振り降ろし……。

 

「ハ……ハハハ……!!」

 

マクスの腕が、スタークの胸へと突き刺さった。

無意識のうちに、口からくぐもった笑いがこぼれだす。

 

「ハハハハハ!!ワシに逆らうからそうなるのだ!!!そのまま後悔しながら死んでゆけ!!」

 

深々と腕が突き刺さったスタークを見下ろし、高らかに笑う。

 

いい気味だ。これで少しはその人を馬鹿にしたような笑みが……。

 

「アルダープ!アルダープが言ってたのってこれ?この変なからくりの事!?ヒューッ、ヒュー!!」

「なっ……」

 

ジジッと、電気の乱れるような音と共にスタークの姿がぐにゃぐにゃと歪み、明滅する。

 

「なんだ……その姿……」

『次はもっと素敵なスーツを君にお見せするよ。じゃあな』

 

最後にスタークは私に向かって気さくに手を振ると、その姿を完全に消した。

スタークが座っていた場所に、小さな落下音を立てて精密そうな未知の魔道具?が転がり、燃えて弾けた。

 

どうやら、これがスタークの幻影を出していたらしい。

 

未知が。

未知が私の心を襲う。

 

「マクス……!」

 

ここで終わりたくなんてない。

 

私は声を絞り出す。

 

「殺せ……何がなんでも、スタークを見つけ出して殺すのだ……」

「ヒュー、ヒュー!美味しいよ!とても美味しい絶望だよアルダープ!!」

 

マクスが狂ったように笑い、スタークが座っていた馬車のソファをバラバラに引き裂く。

 

「任せて!任せて!僕の愛するアルダープには、指一本触れさせないから!!ヒュー、ヒュー、ヒューッ!!」

 

 

 

「あいつの罪状に殺人未遂と脅迫も追加だな」

 

ドローンでアルダープを煽りに煽った僕は、彼の屋敷の裏庭でほくそ笑んでいた。

 

「あんま煽るなよ……バニルの予言がこえーじゃん」

 

横にいたカズマが、いやそうに言う。

 

「そう言うな。アイツの顔は見ものだったろ?」

「まっ、否定はしない」

 

ニヤッとカズマが悪ガキっぽく笑う。

 

「しかしトニー、どうやってあの悪魔の力をかいくぐったのだ?」

「チャフだよ。ラボで説明したろ?」

「あの箱型の奴か?しかし、どこにも見当たらないぞ……」

 

あたりを見渡すダクネスだったが、見つからないのも当然だ。

 

「上空にクインジェットを旋回させて、そこからチャフをこのエリアに散布してる」

「さっすがトニーね!大悪魔だろうがなんだろうが、科学チートで」

「わー!バカバカ!フラグ立てるなって何べん言ったらわかるんだ!!」

「な、なによ!!これくらい良いじゃない!ねぇ!トニーもそう思うでしょ!?」

 

アクアが調子に乗ると、悪いことが起こるジンクスは確かにある。

だが、あえて言おう。

 

「もちろん、余裕さ」

 

ホログラム発生装置を乗せたドローン越しに見るアイツの顔は最高だった。

 

「ほらね!ほらね!もー、カズマさんったらすぐビビるの良くな――」

『ボス、クインジェットが撃墜されました』

「……What?」

 

 

 

フライデーのアナウンスが聞こえるとほぼ同時、僕らの頭上で赤い閃光が弾けた。

僕らの周囲が、眩しいほどに赤々と照らされる。

 

その、次の瞬間。

 

「ヒューヒューヒュー!!」

 

アルダープの屋敷に、燃え盛る巨大な火の玉が飛び込んだ!

 

「ッ!? 私の背後に!」

 

ダクネスが僕らの目の前に飛び出し、爆発の熱風と衝撃から守る。

僕の方がダクネスより大柄なお陰で、自慢のブリオーニのジャケットが少し焦げた。

 

アルダープに弁償してもらおう。

 

「な、なんですか!?何が起こったんですか!?私はまだ爆裂魔法を撃ってませんよ!?」

 

突然目の前で起きた大爆発に、めぐみんか慌てふためく。

カズマもアクアは目と口に砂でも入ったのか、恨み言を吐きながら地面を転がっていた。

無事なようでなにより。

 

さて……。

 

「僕より派手な登場をしてくれたもんだな」

 

燃え崩れる屋敷とクインジェットの残骸を足蹴にし、月を背後にヤツは佇んでいた。

 

バニルから聞いた通り。

 

タキシードに身を包み、整った顔立ち。

そして……欠落した後頭部。

 

地獄を支配する七大悪魔が一人。

 

 

ーー捻じ曲げる悪魔、マクスウェル。

 

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