この素晴らしい世界に祝福を!アナザー・ユニバース・アイアンマン   作:Tony.Stank

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50000UA&お気に入り数2000突破…?読者の皆様、3000回ありがとうございます。
そして、誤字の修正をしてくださる方々も、本当に助かっています。頭が上がりません。


第7話 紅魔式魔法授業

 逃げ惑う生徒を何とかなだめ、再び集めた時にはカンカン顔のぷっちんに生徒とまとめて説教を食らう羽目になっていた。

 ちなみにグツグツのシチューになった兎の遺体は、生徒の目に触れるとまたパニックを起こしかねないと判断してミサイルで木っ端みじんに消し飛ばした。ミサイルだって無限じゃないんだが……。

 

「スターク、どこで何をしてたんだ……?」

「あー‥‥僕の武器のせいでパニックになって散らばって逃げた生徒たちをかき集めてたんだ」

「鍛え抜かれし紅魔族を狂気に陥れる呪われし装備……だと……」

「何が君の琴線に触れたのか知らないが、僕の武器を呪われた装備扱いしないでくれるか?」

 

 なぜか電気バトンに妙な興味を示し始めたぷっちんを落ち着け、状況を説明する。

 事の成り行きをひとしきり説明すると、彼はため息をつき始めて。

 

「言っておくが、このあたりに生息しているのはすべてモンスターだ。紅魔族たるもの、生まれ持ったその魔眼が欺かれるようなことがあってはならん。その兎は一撃ウサギ(ラブリーラビット)と言ってだな、無垢で無力な生き物のようにふるまい、油断したところをその角で一突きにしてくる凶暴な()()()()()()()だ」

 

 かわいい顔してなんて悪辣なんだ……。その話を聞いて、めぐみんに叩き起こされたゆんゆんも青い顔をしている。

 この世界は案外世知辛いのかもしれない。

 分布するモンスターの図鑑を念入りに確認する必要があるな。

 

「というわけだ、だいぶ時間を食ってしまったが授業を再開する。この辺のモンスターは俺があらかた凍らせておいた。各自グループを作って」

 

 散開。と、言おうとしたのだろうか。

 その言葉は、バサリと黒い何かが羽ばたいて着地した音に遮られた。

 

「あ、悪……魔……?」

 

 それは、生徒のだれが上げた声だったか。

 降りてきたそいつの見た目は、まさに悪魔。

 鋭い爪に漆黒の毛皮、コウモリを思わせる羽に、嘴のついた爬虫類面の二足歩行生物。

 

「先生……!」

 

 生徒達の中から不安げな声が上がる。

 僕とぷっちんは安心させるために漆黒の化け物と生徒たちの間に立った。

 

「スターク、お前の知り合いか?」

「僕の知り合いにコウモリモドキはいない。君の女房って線は?」

「バカ言うな。俺の女房はこんな優しそうな顔してない」

 

 僕とぷっちんの軽口のたたき合いに、後ろで待機してたゆんゆんから。

 

「言ってる場合ですか!? そもそも先生未婚でしょう!?」

「ゆんゆん、減点五だ。敵を前に軽口は必須だと前に教えただろう?」

「えっ!?」

「そういうこと。僕からも君に減点五。合計減点十だ」

「ええっ!?」

「そうだよ、ゆんゆん。戦う前の口上を疎かにすると命につながるんだよ。しかしなるほど……ペアでやるやり取りもあるんだね。勉強になる‥‥」

「納得いかない……まるで納得がいかない‥‥」

 

 メモを必死にとるあるえと、ぶつぶつ言いながらうなだれるゆんゆん。

 自分で言っておいてなんだが僕も納得いかないと思う。だがノった方が楽しそうだと思ったし、実際気がまぎれたのでぷっちんと拳のハイタッチもする。

 

 鋼鉄の拳とハイタッチは痛かったのか、自分の拳を押さえて少し呻くも、悟られまいと真顔を保つぷっちんがみていて面白い。

 

 そんな風に遊んでいると、目の前にいる悪魔の挙動がおかしいことに気づく。

 目の前に立ちはだかっているのに、まるで僕らに興味がないみたいだ。実際僕らと目を合わせずに、僕らの奥の生徒たちをガン見している。

 いや、生徒たちというか……。

 

「あ、あの……先生方……確かに良い口上の掛け合いだったとは思うのですが……その、そこの悪魔が二人に目もくれず、めっちゃ私のことを凝視してます……て、いうか‥‥」

 

 そこまで言ったところで、目の前の悪魔みたいなモンスターが羽を広げて僕らを飛び越え、めぐみんの方へまっすぐ突っ込んでいった! 

 

「ああああああ! 来てます! 私の方に来てます!!! たすけああああああああ!!!」

「おっと」

 

 めぐみんの元へ到達する前に推進リパルサーを足と背中から照射して空へと上がり、モンスターの足を背後からつかむ。

 そのまま僕とぷっちんが立っていた場所の前に叩きつけ、掌から攻撃リパルサーを照射して胸に風穴を開けた。

 

「「「おおおー!」」」

 

 モンスターが声一つ上げることもなく動かなくなったところを見て、生徒たちから歓声が上がる。

 これでさっきのが帳消しになってくれたらいいが。

 

「悪いなぷっちん。初日ぐらいは僕にカッコ付けさせてくれ」

「ま、まぁ……良いだろう……それにしても……掌から無詠唱で熱線を出すとはどういう魔法なんだ……? ブレス系‥‥? いや、というか‥‥魔力を微塵も感じないのは一体……?」

 

 興味深そうに、なおかつ難しい顔をして唸るぷっちん。

 紅魔族は知能が高いと聞いたし、説明したらある程度は理解してくれるかもしれないな。

 実際昨日図書室で見ためぐみんの数値はすさまじいものだった。

 ここにスタークインダストリーズがあったら即スカウトしてるレベルだ。

 

「さて、邪魔者も倒したことだし今度こそ授業再開か?」

 

 僕のその言葉に、ぷっちんは真面目な顔をして頭を横に振った。

 

「いいや、さすがにこれは異常事態だ。こんなモンスター、この辺りじゃ見たこともない。そもそも、里の周辺に空を飛べるモンスター自体いないんだよ。授業は中止だ。生徒を教室に返す」

 

 

 ▽

 

 

 ──窓越しに降り注ぐ昼の日差しが図書室を明るく照らし、パラパラと紙をめくる音が室内に響く。

 

「なぁ、君達帰らなくてよかったのか? 担任教師の言うことくらいちゃんと聞いてやれよ」

「別にいいでしょう。今から家に帰ってもすることが無いのです。それに、もう片方の先生が今ここにいるのなら安心です。さぁ、上級魔法について教えるので鎧の変形を見せてください」

「それもいいが、その前に‥‥そっちで本読んでるのは?」

 

 僕の言葉にびくりと体を震わせた族長の娘、ゆんゆんに視線をむける。

 

「私は……えっと……その……」

「ゆんゆんは私を帰りに誘おうとしたのはいいものの、私が図書室に行くとは知らず、帰ろうとも言い出せずになんとなくここにいます」

「そ、そんなわけじゃないから!! ただ暴れん坊ロードの続きがみたくて……」

「ふにふらとどどんこがあなたを帰りに誘おうとしてましたよ? ゆんゆんがすぐに私の後ろについてきたため、言い出せなかったようですが」

「えぇっ!? わかってたのに何で言ってくれなかったの!?」

「別にいいではないですか。あの二人を悪く言うつもりはないですが、あまりいい噂を聞きませんし」

 

 娘っ子二人組が仲良くコントをしている。

 かしましい図書室だ。

 

 だが今朝授業前に確認した成績表によると、この二人はクラスの首席と次席。

 上級魔法を教わるのにこれほど適した人材と機会もないだろう。

 

 僕が席を立って窓を開けると、そこからスーツが軽やかに侵入し、図書室に不似合いな金属音を響かせて床に着地した。

 その様子を見ためぐみんとゆんゆんが紅く目を輝かせ、ほうと唸る。

 

「それじゃ、コントはおしまいにして授業といこうじゃないか。昨日見た本じゃ得られなかった知識として……まずは各上級魔法の射程や弱点、詠唱の内容と言ったものを教えてくれないか?」

「そのくらい、お安い御用ですよ。では、なにから知りたいですか?」

 

 僕は昨日ある程度調べ、危険だと判断した魔法を次々と挙げていった。

 

 

 

 ──風の上級魔法。

 

「《トルネード》ですか。竜巻を発生させる魔法で、対象を空へと巻き上げてから地面に叩きつけます。無事に着地できる手段があればそこまで脅威ではないですが、追撃を非常に受けやすかったり、この魔法で前衛が飛ばされてる間に後衛に素早い敵がなだれ込むなど、けん制に使われることが多いです。弱点は重い鎧を装備している相手を巻き上げるのが難しい事と、長続きさせるには大量の魔力が必要なことですね。鎧を着たスターク先生が危険視している理由は、飛んでいる間に食らったら空中での制御が乱されるからですか?」

「そういうことだ。スーツ、アームミサイルのポーズ」

 

 僕の言葉を聞いてスーツが拳を前方に向ける。そしてシャキンッと金属音を立てて前腕部のミサイル発射機構が展開した。

 

「ふおおおおお!!」

 

 

 ──炎の上級魔法

 

「それは《インフェルノ》っていいます。広範囲を焼き尽くす業火の魔法です。単純かつ強力で、対抗手段を持ってないとまず大ダメージです。相手からすれば意思を持った火の海が襲ってくるような光景なので、敵をパニックに陥れることもできます。弱点は、放った術者の視界が炎でふさがってしまうので、敵がもし回避していたらそれを見破るのが難しい事ですね」

「実際、土の中にもぐって逃げたモンスターに気が付かず、地中からの不意打ちでやられた魔法使いの例があります。他にも、正面の前衛にわざとインフェルノを撃たせ、術者の視界がふさがっているうちに側面から回ってきた敵が術者を袋叩きにした例なんかもありますよ。使う際は敵の位置の把握と仲間に側面を守らせることが大事ですね」

「なるほど。フライデー、スーツの各パーツの稼働チェックだ。補助翼も忘れずチェックしろ」

『了解しました』

 

 ゆんゆんとめぐみんに魔法について教えてもらい、対価のスーツショーが始まる。

 フライデーによるスーツのメンテナンスだ。

 ボディの各パーツを全て動かし、どこかに負荷がかかってないかなどをチェックしていく。

 これだけ聞くと地味に聞こえるが、全身の細かいパーツがカチャカチャと動く様はなかなか壮観だ。

 

「「おおお……」」

 

 二人とも満足そうで何より。

 

 

 ──光の上級魔法

 

「《ライト・オブ・セイバー》ですね。術者の力量によってはなんでも切り裂くことができると言われている上級魔法で、我々紅魔族が好んで良く使います。かつて魔王城の結界をこの魔法で強引に引き裂いて侵入した魔法使いがいたとかいないとか。弱点は射程が非常に短く、後衛職であるはずのウィザード系が近接戦闘を強いられることでしょうか」

「だが、裏を返せば敵に接近されたときの対抗手段にもなる……か?」

「そういうことです。紅魔の里には魔法職しかいないため、肉体強化魔法でドーピングして切り込んでいく輩もいますが……ところで、次はどんなギミックを見せてくれるのですか?」

「スーツ、ホバリング」

 

 僕がそう言うと、スーツが飛行態勢に入り、両掌と両足から推進リパルサーを照射してゆっくりとそのボディを浮かせる。

 いつものホバリングの姿勢だ。

 めぐみんは、リパルサージェットの風圧でローブをたなびかせながら。

 

「‥‥なんというか、珍妙なポーズですね。正直ダサいです」

「!?」

 

 

 

 ──それから一通り魔法について教えてもらい、スーツの変形、ポージングショーも終えた頃。

 外はすっかり夕方になり、図書室を紅く染めていた。

 

 

「ざっとこんな感じですかね。いやぁ、良いもの見ました」

「本当に、すごい鎧でした。いったいどこの技術なんだろう‥‥」

「おや、ゆんゆんにもあれをかっこいいと思う感性があったのですね。少し安心しましたよ」

「わ、私だって別に紅魔族のセンスの何もかもが理解できないわけじゃないわよ!?」

「その辺は腰に短剣差して登校してる君を見れば分かる」

「うぅっ……これは……と、友達と買ったものだし……それに、見た目もオシャレで気に入ってるし……」

 

 そう言いながらめぐみんの方をちらちらとみるゆんゆん。

 友達という言葉を肯定してもらいたいらしい。族長が言っていた、友達が少なすぎて色々拗らせかけているという話は本当みたいだ。

 だがめぐみんはどこ吹く風で。

 

「完全に危険人物のそれですよね」

「め、めぐみんに危険人物って言われた……!?」

「そうだ、君のその短剣、刃を高速振動させて岩でもバターみたく切れるようにしてやろうか?」

「物騒すぎませんか!? いらないですよ!」

「じゃあ……エアコンはどうだ?」

「えあこ……? それもいりませんよ!」

 

 僕のスーツは彼女も気に入ってくれたようだが、僕自身にはどうも苦手意識があるようだ。

 まぁ、初日でだいぶやらかしてしまったので、それも仕方ないと言えば仕方ないのだが……。

 

「冗談の通じない子だ。友達できないぞ」

「!?!?!?」

「あー……スターク先生、ゆんゆんにそれは禁句ですよ」

 

 僕の言葉に一気に涙目になるゆんゆん。

 友達という言葉にこんなに敏感だとは……。

 将来友達がどうのと言うだけでホイホイ言うことを聞いてしまわないか心配になる。

 少なくともNYでは三日と生きていけそうに思えない。住んだ初日に路上で売ってる偽のロレックスなんかを買わされて大損こいてそうだ。

 

 

「悪かったよ、ゆんゆん。実は僕も友達が全くいないんだ」

「そ、そうなんですか!? なんか、気さくに話して友達とかもすぐ作っちゃうんだろうなとか思ってたのに……」

 

 ものすごく意外そうな顔をしてるが、そのうちゆんゆんに友達の数は越されてしまうんじゃないだろうか。

 

「正直言って片手で数えるくらいしかいない。その友人も今は遠い彼方の国にいるからな。実質ゼロ人だ」

「スターク先生も、友達がいないんですね……」

 

 さっきまで警戒交じりの目で僕を見ていたゆんゆんが急に仲間を見てくるような目を向けてきた。

 何故だろう。とても複雑な気持ちだ。フォローの気持ちで言っただけだったんだが‥‥。

 

「どうして僕には友達ができないんだろうな? 別に欲しいわけでもないが……」

「気さくといえば気さくですが、それ以上に皮肉や嫌味たっぷりのそのポイズンスライムばりの毒々しい性格のせいではないでしょうか」

「Wow、実に素敵な模範解答だ。減点十」

「えぇっ!? なんで正解を言って減点されるんですか!? そういう所ですよ! そういう大人げないところも原因ですよ!」

 

 机をバシバシ叩いていきりたつめぐみん。

 自分でもわかっている事とは言え、いざ人に言われるとイラッと来るものだ。

 このまま三人で軽口の言い合いなり、おしゃべりしていたい気もするが、この後も予定がある。

 

「落ち着けよ娘っ子。もう外も暗くなり始める時間だ。また魔法について知りたくなったら君らに頼んでいいか?」

「はぁ‥‥別に構いませんよ。次の変形ショーも楽しみにしています」

「‥‥あー……今日でほとんど見せてしまったな……他にもカッコイイ動きが観たいとなったら、リパルサー光線で校舎中が穴あきチーズみたいになるが‥‥」

「あの……冗談です。十分見せてもらいましたし、別に魔法について教えるくらい構わないのであまり物騒なことは言わないでください‥‥やりませんよね?」

 

 もちろん冗談だが、彼女達を喜ばせるためにまたMk.5や自動キャッチ型スーツを作ってもいいかもしれない。

 Mk.3、Mk.4の装着に使っていたアームをそのまんま教室の床に移植してみるか。

 あるいは昔スターク・タワーの最上階に設置していたMk.6の着脱装置を、僕専用の廊下を作って仕込むのも悪くない。

 むしろ全部やってもいい。多分何しても怒られなさそうだ。

 

 教壇に上って出席を取っている間にアームが床から出てきてMk.4装着。

 授業の始まりと共にスーツケースを展開してMk.5装着。

 チョークを持つ瞬間に窓から自動キャッチ型スーツが飛んで来て腕を包む。

 夕日が差し、アームが伸びる廊下ですれ違いざまに帰りの挨拶をしながらMk.6の装備取り外し。

 

 うーん。大喝采間違いなしだ。

 

「あの‥‥なにうつむいて一人でニヤニヤしてるんですか? すっごく不気味なんですが‥‥」

「いや、なんでもないさ。ちょっと面白い事を考えていただけだよ。そろそろお開きにしよう」

 

 校舎改造計画は楽しそうだが、そんなのやったらやったで授業が進まなくなりそうだな。保留にしておこう。

 

 でもいつかはやってみたい。

 改造に適した時期などを考えながら、図書室での勉強会を解散させ、帰路に着いた。

 帰りに族長の家に寄って、()()()()()()()()、とある頼みごとをしてから。

 

 

 

 

 

 ──その日の夜。僕はサキュバス・ランジェリーで慌ただしく外へ出る準備をしていた。

 出された晩飯を急いでかきこむ僕の姿を見て、不思議そうな顔をするねりまきとその父親。いつもはもっとゆったりと味わって食べてるもんな。

 

「スタークせんせー‥‥。もっとゆっくり食べたら?」

「そうしたいところだが、これから王都に向かうんだ。ゆっくりしてる時間はない」

「えっ、王都? 一体何しに……?」

「半分ビジネス、もう半分は学校関連だ。どっちも兼ねてるともいえるが……」

 

 そう聞いてねりまきは興味深そうに目を細める。

 

「おっと、内容は教えてやれないぞ? ネタバレはしないからな?」

「スターク先生、お酒飲む? いいお酒あるよ?」

「これからビジネスで王都に行くって言っただろ。口を滑らせようとしても駄目だ」

「ダメかぁ……」

 

 作戦が失敗して子供っぽくぶー垂れるねりまき。

 楽しみは取っておくべきだ。

 

「よし、腹も満たしたことだしそろそろ行くよ」

「先生、そのスーツとても似合ってるよ。仕事できそうな感じがする」

「おだてても駄目だ。お代置いてくぞ」

「これもダメかぁ……」

 

 褒め殺し作戦も失敗して悔しそうな顔をするねりまきを尻目にスーツのネクタイを締めなおす。

 今僕が着ているのはアイアンマンスーツではなく、普通のスーツだ。高級感あふれるオーダーメイドのトムフォード三つ揃え。

 ビジネスとなれば正装をしないとな。

 

 僕が身支度を整え出口の扉に手をかけるのと同時に、扉についているポストから紙が投函された。

 おっと、思ったより早かったな。

 紙に掛けられた魔法によって、ポストからねりまきの手元へと紙がひらひら舞いながら向かっていく。便利だな。

 ねりまきは紙を取り。

 

「あれ? 学校の連絡事項用の紙だ。こんな時間に? どれどれ……えっ」

 

 その紙は僕がいないときに見てほしかったものなので、そのままそそくさと外へ出る。

 後ろからねりまきが紙に書いてあることを朗読する声が聞こえてきた。

 

「【明日の午後の授業は課外授業なので、校庭に集合しておくこと】‥‥スターク先生?」

「おやすみ」

 

 ねりまきにあれこれ聞かれる前に入り口に置いてあるアイアンマンスーツに身を包み王都へと飛び立った。

 

 地図を見た限り、紅魔の里から王都はそれなりに近い。里の上空まで上がった時点ですでに街の明かりの煌めきが視界に映っていた。

 いざ、田舎の村から国最大の繁華街へ。

 

 

 ▽

 

 

 ──王都上空に到着した僕は、大きく開けた石畳の道路の上に着地する。

 

「Wow……」

 

 視線をあげると目の前に映ったのは視界の端から端まで覆い尽くす巨大な城壁。

 今までアクセルに紅魔の里という田舎町ばかり見てきたので、目の前にたたずむ馬鹿でかい城壁に思わず感嘆の声が出る。

 と、入口の門へと向かおうとした時だった。

 

「『ファイアーボール』ッッッ!!」

『ボス、後方から高熱の飛翔体が接近してきます!』

「!!」

 

 スーツが戦闘モードにはいり、HUDのレーダーに背後から迫り来る火球が表示される。

 そのレーダーを頼りに、振り向きざまにリパルサーを火球めがけて放った。

 暗い夜の道路の上で一条の閃光と赤い光球がぶつかり弾け、辺りを一瞬明るく照らす。

 

 

「貴様っ! そこで止まれっ!」

 

 誰がこんな真似をと思い火球が放たれた方向を見ると、杖を構えた男が1人と槍を構えた全身甲冑の二人組がこちらに敵意をあらわにして叫んでいた。

 

「ゴーレム風情が‥‥王都に何の用だ!」

 

 ‥‥‥。

 ああ、そうだった。さっきまで紅魔の里にいたから忘れてた。

 

 僕は、初めてアクセルの冒険者と会った時のことを思い出す。

 ……このスーツでうろつくとゴーレムと勘違いされるんだったな。

 里と外の違いを再認識しながら、ひとまずマスクを開けて顔を見せる。

 

「落ち着け、僕は人間だ。いきなり魔法をぶち込んでくるなんて過激すぎやしないか?」

「ハッ……に、人間!? そ、そんなばかな‥‥!?」

 

 杖を構えていた男はありえないといった感じで、左右にいる甲冑に身を包んだ騎士たちと何やらしゃべっている。

 めんどくさい……。いや、そうだ。人間であることを証明するのに一番手っ取り早い方法があるじゃないか。

 アクセルに降り立った時とはわけが違う。

 

 そのままスーツの前面を開き、今だ攻撃的な雰囲気を出し続ける三人組に対し。

 

「ほら、冒険者カードだ。ちゃんと人間だろ?」

 

 自分の懐から冒険者カードを出して掲げてみせた。

 

 アイアンマンスーツの前面が展開したことにもギョッとした様子だったが、騎士が持っていたランプの光を近づけ、僕のカードの情報を見るやいなや、顔を青ざめさせ‥‥。

 

「もも、もうしわけない!! 目や胸が光っていて、てっきりゴーレムかと‥‥!」

 

 成長を感じる。カード一つでここまで楽になるとは。

 

「気にするな、きれいな花火で歓迎されてうれしかったよ」

「すいません‥‥」

 

 僕の皮肉に縮こまる騎士たち。

 からかうのはこれくらいにして本題に入ることにする。

 

「これも二度目だ。別にいいさ。ところでギルドの位置を知ってるか?」

「ギルドなら、この門から入ってまっすぐ行けばすぐだが……なぁ、さっき空から降りてなかったか‥‥?」

「まあな。またここに来るから、次ここの見張りをする奴には空飛ぶ鎧を着た男がここに着地しても攻撃するなと伝えておいてくれ」

「あ、頭がおかしい奴扱いされそうだ‥‥」

 

 頭を抱える騎士たちを尻目にスーツを再び装着して門をくぐり、ギルドの方へと向かっていく。

 街灯が夜道を明るく照らし、人々の活気ある声が飛び交い、そこらかしこにある出店がおいしそうなにおいを漂わせている。

 ねりまきのところの宿で食事してなかったら、フラフラと寄ってしまっていたかもしれない。

 

 にぎやかな王都の街中をしばらく歩くと、ギルドの紋章が描かれた旗を掲げている建物を発見した。

 あれがギルドだろう。アクセルとはケタ違いの大きさだ。

 すれ違う人々や騎士にチラチラと見られたが、マスクを開けていたためかゴーレム扱いされることはなかった。

 

 ギルドの門を開けると、酒や料理の匂いが混じった熱気が頬を撫でた。大柄の男たちが酒を酌み交わして笑いあっていたり、ウェイトレスを口説いていたり。少なくとも外より五度は温度が高い。

 規模は違えど、アクセルの酒場とそんなに変わらない光景に少し安心感を覚える。

 よく見ると日本人のような顔付きをした人もチラホラ見えた。アクアが言ってた転生連中だろうか。

 

「いらっしゃいませ! お食事ですか? クエストの受注ですか?」

 

 美人のウェイトレスが営業スマイルで話しかけてきた。

 

「クエストの確認をしたい。どこでできる?」

「こちらにどうぞ!」

 

 案内されるままに奥にあったデカい掲示板に向かう。

 僕が初めて見る顔であるためか、座って食事をしていた連中がこっちを見ては、興味をなくしたようにまた食事に戻っていく。

 案外ギルドの酒場だとアイアンマンスーツを着ていても妙な目で見られないな。面倒が無くていいような、すこし寂しいような。

 

「ごゆっくりどうぞ。メンバー募集の張り紙を張られる際は向こうの掲示板をお使いください」

「助かる」

 

 僕が礼を言うと、ウェイトレスは笑顔で会釈し再び酒場の方へと歩いて行った。

 さて、アクセルと比べてどんなクエストがあるだろうか。

 掲示板にはあらゆる依頼書が張られまくれ、床に紙束をぶちまけたかのような様になっていた。

 この時点からしてアクセルとは大違いだ。僕はその一枚一枚を確認していく。

 

 

 ──南東の村を滅ぼした魔龍の討伐。 注! レベル五十以上の上級職のみで固められたパーティーが三度全滅しています! ※レベル制限 レベル六十以上。

 

 ──【血濡れの亜神】の討伐。 注! 生命力が高く、頭を切り飛ばしても死ななかったとの報告あり。 ※レベル制限 レベル六十以上。

 

 ──起動要塞デストロイヤーの調査 レベル制限 レベル二十以上。 現在北西方面を移動中とのこと。

 

 ──特別指定モンスターのフェンリル、別名【剣牙狼(セイバー・トゥース)】の討伐。 注! 派遣された冒険者及び騎士団が一人も生還していない為、情報がほとんどありません。 ※レベル制限 レベル七十以上。 ※人数制限 十名以上。 

 

 

 ‥‥‥物騒なのばかりだな。

 僕がここに来た理由は、明日課外授業という名目で生徒達を王都に連れてきて、クエストを受ける様子などを見せようと思ったからだ。

 アクセルでもよかったのだが、紅魔族のようないきなり上級魔法を覚えてしまうイレギュラーは、アクセルにはいかずに最初から高レベルのモンスターがはびこる地域を拠点にしてしまうらしい。

 拠点にしたギルドのレベル制限に引っかかるなら周囲の森でモンスターを適当に倒して経験値を稼ぐまで。

 

 なら、最初から最前線で活気ある王都の方が良いだろう。それに、簡単すぎるのだとつまらない。

 とはいえ、今朝の経験からあまり恐ろしいものは見せたくない。第一レベル制限のせいで受けられないものがほとんどだ。

 

 低レベルでも受けることができて、残酷な絵面を見せなくても済みそうで、なおかつ見てて面白くなりそうなクエストはないものか。

 あれこれ考えながら、掲示板に広がる依頼書の海を一枚ずつ確認していくが、その量の多さにうんざりし、目当てのものが見当たらないことにイライラし始めていた。

 

 書類とにらめっこするのは大体ペッパーに任せていた弊害がこんなところで……。

 特に激しく動いてるわけでもないのに疲労感を感じていると、一つの依頼書が目に留まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──【銀髪の義賊】の捕縛。 注! この依頼を受ける場合は、この依頼書を持って王城まで足を運ぶように。

 




クロスオーバーの醍醐味の一つは、クロスしたキャラ同士が「こいつは敵か!?味方か!?」ってお互い勘繰りながらの戦闘だと思うんですよ。
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