共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~   作:フォルカー・シュッツェン

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前回に引き続き連続投稿の後半です


第九話 屍人VS将軍(フェア視点)

アウルさんがあのでっかいおじさんを相手してくれるみたいだから私達で他の人達と戦うことになった

剣兵が三人、槍兵一人、弓兵が二人で大剣を持ったのが一人

中でもあの大剣を持ったのは他の人とは気迫が違う、きっと一番強い

流石に私でも力の押し合いになったら勝てないかな…

 

「それでフェア、これからどうするの?」

 

緊張した面持ちでリシェルが聞いてくる

 

「そうね…基本的には私が前衛で大暴れするからリシェルは召喚術で一人一人倒していって欲しいの、出来る?」

 

「出来なくはないけど…今日持ってきてるのは溶接作業用のだけだからそんなに威力はないわ」

 

「そっか、じゃあ敵への牽制に使う方向で行こう。それで相手を怯ませてその隙に私が倒す。ルシアンはその盾を活かして基本リシェルの護衛、余裕があれば遊撃して欲しいけど…無茶はしないでね?」

 

「うん、分かった!」

 

ルシアンも気合十分みたい

だけど気合が入りすぎて無茶しないようにだけ気を回しとかないとね

 

「子供とて容赦はせんぞ!」

 

一番私達に近かった剣兵がそう言って剣で斬りかかってきた

容赦しないとは言ってるけど実際には斬るのではなく、剣の腹で叩こうとしてるのが分かる

多分気迫と言葉で相手の戦意を挫いてお互いあまり怪我のないように捕縛しようとしてるんだろう

やっぱり昨日の奴らとは圧倒的に違う、実力もそうだけど何より精神が段違いだよ

でも大人しく殴られるわけにもいかないから振り下ろして来る剣の側面、今の状況なら刃にアウルさんから借りたナイフを当てて剣筋をずらした

 

「なっ!?」

 

「やぁっ!」

 

動揺して動きが一瞬止まった隙を狙って左手の拳で横から顎を突いた

 

「うっ…」

 

呻き声を上げた敵は脳を揺らされて意識を保っていられなくなって崩れ落ちる

そんな敵から剣を奪うとナイフをシースに戻した

アウルさんのナイフはかなり頑丈で手入れも行き届いているから斬れ味も凄いし、持ち手はまるで手に吸い付くようで握り易い

更には振った時のガタツキなんかも一切ないから正直物凄く使い易いんだけど、やっぱりリーチが短いのは不利だ

敵には槍兵や弓兵がいるから本音を言えばもっと長物が欲しいけど、ないものは仕方がない

それに敵が手堅く坂や段差の上を陣取ってるから鹵獲にそんな時間もかけていられないのよね

早くしないと上から弓で射られるかもしれない、まずは速攻で弓兵を片付けるべきだね

 

「リシェル、ルシアン。私が合図したらそこの段差を駆け上がってあそこの弓兵に電撃戦を仕掛けるよ。私が奥の方をやるから二人は協力して手前のを頼むね」

 

「分かったわ、私の召喚術を見せてやるわ」

 

「う、うん!」

 

私は二人にしか聞こえないように小声で作戦を伝えると二人とも了承してくれた

一瞬でも気が逸れてくれたら行きやすいんだけど、中々の集中力でこっちを補足しててタイミングが掴みづらい

そんな時、突如として大きな音が鳴った

どうやらレンドラーって人があの大きな戦斧を地面に叩きつけた音みたい

その音で敵の注意が逸れたのに気が付いた私はそれを逃さないようにすぐに合図を出した

 

「今だ、行くよ!」

 

「まっかせなさあぁい!」

 

「やあぁぁぁ!」

 

いきなり走って近寄ってきた私達に弓兵は慌てて矢を番えようとするけれどそれよりも早く私は奥の弓兵に接近して弓を剣で斬り裂いた

相手は信じられないものを見る顔をしてる

確かに弓兵がいた場所は距離こそさっきまで私達がいた場所に近いけど、結構な段差がいくつもあって登るのに時間がかかるから位置としては悪くない

けどこっちはちっちゃい頃からこの街で遊んできたし、リシェルの悪ふざけに付き合ってきた関係でこういう地形を素早く移動するのには慣れてる

身体の動きを阻害する鎧もないし、虚を突けば遅れを取ることはない

弓を壊した後はアッパーで顎を打ち抜いて気絶させた

人を素早く気絶させるのに顎を狙うのは最適解の一つなのよね

 

 

「スタンビット!」

 

「ぐうぅ…!」

 

リシェルが召喚術をもう一人の弓兵に対して放ってる

溶接用のレーザーが鎧を焦がす

金属は熱伝導率が高いからきっと鎧の上からでも熱でダメージは与えられると思う

そして怯んだ隙をルシアンが剣と盾を使って殴ってるんだけど…イマイチ全力を出せてない

ルシアンは元々気が弱いのもあるけどそれ以上に優しすぎる性格が災いしてるみたい

 

「あぁ、もう!こうやるの、よ!!」

 

「がっ!」

 

見かねたリシェルが持ってた杖で思いっきり叩いて気絶させた

 

「情なんてかけてたらこっちがやられるわよ、しっかりしなさいルシアン!」

 

「う、うん…」

 

ルシアンのことが心配だけど、近くにいた剣兵が突撃してきたから気をそっちに向ける

真っ直ぐ突撃してくる相手には…ギリギリで避けてからその突撃の威力を利用して顔面を叩く!

 

「ゲバァッ!」

 

鼻が折れたのか鼻血を出しながら仰向けに倒れる剣兵を後目にリシェル達の様子を確認する

どうやら怪我もなく無事みたい

このまま残りも倒していきたいんだけど…敵の雰囲気が変わった

これまでは子供を相手にしてることからある程度の油断とかなりの手加減があった

だからこそ速攻で弓兵を片付けることが出来たし、剣兵の二人も倒せた

だけど後の三人からはもうそんな油断は感じられない…

多分私達が油断出来る相手じゃないことに気付いたんだと思う

手加減はしてくれるだろうけどそれは死なない程度のものに変わるって思った方が良いね

 

「どうしたのよ、このままやっちゃうわよ」

 

「ダメよ、リシェル。あいつらの空気が変わってる…きっとそこそこ本気で相手してくるから、迂闊に攻められない」

 

「そんな…どうすればいいの?」

 

敵の方へ突撃しそうなリシェルを留めるとルシアンから不安そうな声があがった

敵を一人ずつ誘き出して三人で囲んで各個撃破…は無理ね

確かに誘い出せれば出来るけど、多分そんな手にかかるほどもう甘くはないはず

あいつらも三人で固まってこっちをしっかりと見据えて隙がない

ホントにどうしよ…そう思ってた時だった

 

「テメェら!子供相手に何のつもりだ!!」

 

「大丈夫、みんな!?」

 

「グラッド兄ちゃん、ミントお姉ちゃん!」

 

騒ぎを聞きつけてか、グラッド兄ちゃんとミントお姉ちゃんが加勢に来てくれた

グラッド兄ちゃんは普段こそ見回りなどの簡単な仕事や事務作業しかしてないけど、軍で鍛えて一街任せるに相応しいと判断されてこの街に来ている

一見すると爽やかな好青年にしか見えないけど、その強さは頼りになる

ミントお姉ちゃんもほんわかおっとりしていて戦いとは無縁そうに見えるけど、蒼の派閥に属する一流召喚士

召喚術に関する技能はかなり高くてそれは戦闘でも発揮されるの(フェア達は知らないがミントには帝国の召喚術事情を監視し、不穏な動きが見られた場合は直ちに報告する任務もある。それだけ派閥から信頼されているのだ)

そんな二人が加勢してくれたからには百人力、こっちが圧倒的に優勢になった

 

「取り敢えず話は後で聞く。今はこいつらに集中するぞ!」

 

「うん、分かった!」

 

「リシェルちゃん、私に合わせてくれる?」

 

「合点よ!」

 

「僕は二人を守ります!」

 

「お願いね、ルシアン君」

 

私とグラッド兄ちゃんが前衛、リシェルとミントお姉ちゃんが後衛、そしてルシアンが後衛の護衛及び遊撃となり陣形を組む

対して相手は大剣使いが前に出てきて剣兵と槍兵はその後ろで構えている

ジリジリと間を詰めていきお互いの間合いが重なった瞬間、前衛同士が動いた

 

「はあっ!」

 

気合と共にグラッド兄ちゃんが槍を突き出す

それを大剣使いは剣で防ぐと同時に踏み込み、横凪に剣を振るおうとする

 

「やぁぁ!」

 

 

そのままグラッド兄ちゃんが槍を突き込み倒そうとするが、流石にそれを許すほど敵は甘くはない

剣兵が大剣使いの後ろから飛び出して剣を振るってきたことでグラッド兄ちゃんは防御せざるを得なくなる

そこに敵の槍兵が攻撃しようとしてきた

 

「行くよ、リシェルちゃん!」

 

「まっかせなさい!」

 

しかしその槍兵に向けてリシェルとミントお姉ちゃんが召喚術を発動する

 

「スタンビット!」

 

「ブレイドボア!」

 

リシェルのスタンビットが槍兵の鎧を焦がし、怯ませた直後にミントお姉ちゃんの召喚術が炸裂する

ブレイドボアは獣属性の召喚獣で巨大な牙が横方向に向かって生えているイノシシのような動物だ

身体もかなり大きく、そんなイノシシの全速力の突進を喰らった槍兵は吹っ飛ばされる

強力な召喚獣だけど私とグラッド兄ちゃんがすぐ近くにいる残りの敵には纏めて吹っ飛ばす危険があるので使えない

これはブレイドボアに限らず殆どの召喚術は味方を巻き込まぬよう細心の注意を払わないといけないの

 

「うぅっ…!」

 

大剣を抑えてた私が流石に力負けしてるのか徐々に押されてきちゃった

 

「フェア、俺と代われ!こっちを頼む」

 

「分かったよ!…つぇりゃぁぁぁ!」

 

「グッ…!」

 

私は力を振り絞って剣を振ることで大剣使いの姿勢を少しだけ崩せた

そのまま逃れてグラッド兄ちゃんが相手してた剣兵に突撃する

私に意識を向けた剣兵から離れてグラッド兄ちゃんは大剣使いと戦いを始めた

私は剣兵と戦ってるんだけど完全に油断がなくなってて中々決定打が打てない

その時後ろからリシェル達の魔力の高まりと走る足音が聞こえてきた

 

「フェアさん!」

 

ルシアンの名前を呼ぶ声を聞いて何をするのか分かった私は一度鍔迫り合いをするフリをして、それに乗ってきた剣兵が剣を合わせようとした瞬間に後ろに跳ぶ

相手の剣が空を斬って少しだけ体勢を崩したところに盾を前に構えたルシアンが突撃した

それによって完全に体勢を崩して転倒した剣兵に向かって召喚術が放たれた

これでこの剣兵も戦闘不能、残りはあの大剣使いだけ!

 

「どりゃあぁぁ!」

 

「ガハッ!あ、ぐ…」

 

グラッド兄ちゃんの方を見ると槍の石突で大剣使いの頭を打つところだった

どうやら槍のリーチを活かして相手を近づけさせず、集中力を欠いて隙を見せた瞬間に叩き込んだみたい

あの大剣使いをたった一人で倒すなんて、やっぱりグラッド兄ちゃんは強いや

その大剣使いは意識こそ保ってるもののもう戦闘行為は無理そうだった

 

「我輩の軍団が破られるとはな。思ったよりやるではないか。時にそこの小娘よ」

 

「え、わたし?」

 

急に声をかけられて少しキョトンとしてしまった

それがいけなかった

 

「ぜりゃぁぁぁ!!」

 

「なっ…!うぐぅ…!」

 

レンドラーがいきなり大斧を振るってきて、私はなんとか剣で受け止めた

…いや、受け止めさせられた

私が受けれるようにわざと速度とか威力を調整してる

何の為にそんなことしてるのか分からないけど、すごい技量…アウルさんにやられてるのにここまで出来るなんて

そのまま私は動けなかったんだけどアウルさんがすぐにレンドラーを蹴り飛ばして助けてくれた…え、蹴り飛ばした?

あれ鎧も含めたら多分200kgはあると思うんだけど

 

「…何のつもりです?レンドラー」

 

「なに、確かめたいことがあったのでな。しかしこれで確信出来たぞ」

 

尻餅を付いていた私をアウルさんが助け起こしながら問い質してる

レンドラーは何か確かめたかったみたいだけど、あれでいったい何を確かめるっていうの…?

そう思っていたらとんでもないことを言われた

 

「貴様…あの冒険者の娘だな!!」

 

「なぁ…!」

 

この人、お父さんを知ってる!?

 

「あの人のこと…知ってるの?」

 

「知らいでか!我等の目的を根本からぶち壊した、張本人なのだからな!!」

 

「……。」

 

「何とも奇妙な縁だな。父と娘の双方と違う時、違う場所で相対することになるとは思わなかったぞ。安心しろ、貴様に復讐などはせん。だが我等には竜の子が必要なのだ、容赦なく行かせてもらうぞ」

 

「…そう」

 

「小娘よ、名は?」

 

「…フェアよ」

 

「フェアか、覚えておこう。今回は引き下がってやる。しかし次は必ず竜の子をもらい受ける!」

 

そう言ってレンドラーは去っていった

私達が倒した騎士達もいつの間にか姿が見えなくなっていた

多分レンドラーの威風に皆の目が奪われてる時に退却したんだと思う

それも狙ってたのかな…

それにしても

 

「フェアちゃん?」

 

ミントお姉ちゃんが私を心配して声を掛けてくれてるけど、私には聞こえてなかった

今まで全く親らしいこともせずに無茶苦茶な修行を強要して一人だけ残して何処かに行ってそれからも迷惑をかけられた人達から色々言われたり嫌がらせを受けたり…私の人生を壊して壊して壊して、それでもなんとか自分の力である程度安定した生活を手に入れたっていうのにそれすらも壊していくんだ……

どれだけ私に迷惑をかければ…怒らせれば…寂しい思いをさせれば気が済むってのよ……!

 

「お父さんさんの…お父さんの……」

 

「フェアちゃん!?」

 

 

 

 

「ぶわっかあぁぁぁぁ!!!」

 

 

私の魂からの叫びが街に木霊した

 

リィンバウムや各キャラの紹介をするコーナーというか話を設けた方が良いですか?

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