共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~ 作:フォルカー・シュッツェン
まだストックはあるぞフハハハハハハハハ!
前日の戦いから一夜明けた午後
店にはフェア、リシェル、ルシアン、グラッド、ミント、ポムニット、そしてアウルの七人が集まっていた
「それじゃあ、あの竜の子はお前らが最初に見つけた時から得体の知れん連中に狙われていたってことか」
「はい…」
集まった理由は勿論昨日のことについて、竜の子のことについて説明するため
「そんな危険な目にあっていらしたなんて…どうして隠すようなことをしたんですか!?」
いつも明るいポムニットも心配心と怒りを顕にしている
そんな彼女の様子に子供達は目を伏せていた
「アウルさんも、どうして止めてくれなかったんです!」
「そうですね…一番の理由としてはこの子達が竜の子を拾うことに対してしっかりと責任を持ってやっていこうとしていたからです。子供の真摯さを大人の理屈でねじ曲げるなんて大嫌いですしね」
「だからって…危険な目に合わせていいわけないないじゃないですか!?」
「竜の子を拾った時点ではそこまでの危険はないと判断していました。襲ってきた連中の練度は低い、私達には竜の子にどれほどの価値があるのかも分からない。当然このようなことが起こると予測出来るはずもありません」
実際にはこうなる可能性は十分に予期していた
だが少し嘘を吐いてでも落ち着かせないと話も出来ないだろう
「ただ竜という存在が凄いものだという漠然とした理解だけは分かっていました。だから竜の子のことに関して詳しく知るため後日ミントさんを訪ねて話を聞き、これからのことを検討していく予定だったのです。それまでは騒ぎを広めて混乱を招かぬようにしようとしました。昨日のような人達を寄せ付けないためにも」
「ですが実際に現れたじゃありませんか!!」
「極小規模の、かなり抑えられた人員が来ましたね。もしも隠していなければその騒ぎを聞きつけて確実に手に入れるため、もっと多くの戦闘員を導入していたでしょう。隠していたからこそあの程度で済んだのです」
「ですが…!」
「まあまあ、落ち着いて下さいポムニットさん。筋は通ってますし、彼女が皆を守ってくれたことも事実なんですから」
「むぅ…」
ミントに宥められて一応は納得してくれたらしい
納得しきれていないのか未だ不満気な表情ではあったが、これでやっと落ち着いて話が出来る
責任の押し付け合いをするために集まったんじゃないのだから
「じゃあこれまでのことはこれで良いとしてだ、問題はこれから先どうするかだな」
「ですねぇ…」
「そもそも昨日の奴らはいったい何なのよ」
「少なくともその辺の野党とかじゃないのは確かだ。装備もそうだが特に戦い方が違う。有利な位置取りや状況に合わせて即座に陣形を組むなんて正規の軍でもなけりゃ無理だからな」
「それに最初に私達を襲った奴らとも繋がりがあるみたいだけど…全然似てなかったよ」
「部下と言っていましたが、それだと武具が違うのが不可解ですね。恐らく最初は別の軍団だったけど組織に属してからあのレンドラーが率いている剣の軍団の配下となった、というところでしょうか」
「そうなると他にも様々な軍団があると考えた方が良いですね…そしてそれらを束ねる頭がいるはずです」
「僕達が会ったのは敵の一部でしかないってこと?」
「そういうことだ。それが殺しも厭わない犯罪組織だとしたら事態は最悪だ」
「犯罪組織!?滅茶苦茶物騒な相手じゃないですか!!」
「あぁ…だからこそ俺は軍で保護してもらうべきだと思う」
「そうしたら…あの子は大丈夫なの?」
「勿論、軍が保護しさえすれば竜の子だって安心して…」
「嘘だ!!」
突然大声が響いた
何事かと思って声の方を見るとルシアンが怒りを湛えた表情をしていた
困り顔は何度も見るが、怒っているのは初めてだ
「と、突然どうしたのよルシアン」
「僕は知ってる…本で読んだから知ってるんだ。帝国軍には珍しい生き物を研究する機関があって、あの子はそこに連れてかれちゃうんだ!」
研究機関…そこに連れていかれるとなるとどう考えても碌なことにならないだろう
「そんなっ!」
「…本当なの?お兄ちゃん」
「そりゃ、まぁ…放し飼いにするわけにもいかないし……」
「そんなのあんまりじゃないの!結局は酷いことされるんじゃない!?」
「落ち着いて、リシェルちゃん。竜はとっても貴重な研究資料なの…それは軍でも派閥でも変わらないわ……」
「そうはさせない、そうならないように俺が掛け合う!」
「でも絶対じゃないんでしょ!?」
「可能性はないでしょうね。一街の駐在兵士が掛け合ったところで国が動くわけがない、ましてや今回は価値のありすぎる竜の子です。黙殺されるのがオチでしょう」
「酷すぎるわよ…!そんなの悪者に捕まるのと変わらないじゃない!!」
その言葉にミントとグラッドが息を飲んだ
自分達の属している組織が悪者と同じ扱いをされ、それを否定出来ない
「落ち着いて下さいまし、お嬢様」
「でも!」
「お嬢様が竜の子のことを気にかけていらっしゃるのは分かります。ですが、私は大人に任せるべきだと思います」
「どうしてよ、ポムニット!!」
「お嬢様達があの子を心配するのと同じように、私も皆さんのことが心配だからです」
「…っ」
長らく面倒を見続けてくれたポムニットの真剣すぎる言葉にリシェルは何も言えなくなってしまった
リシェルとしては竜の子のことを気に入って可愛がっているし、敵に奪われるのも軍や派閥に預けるのも同じく受け入れ難いこと
出来ることなら自分達で面倒を見たい、しかしそれが出来るのかと言われれば…普通に考えて厳しいだろう
「…アウルさんは、どうするおつもりで?」
グラッドが聞いてくる
「そうですね…私達で世話をしたいと思います」
「え…?」
「何故、そう思うんです?」
「私は外道の行いが大の嫌いです。故に敵に奪われても軍や派閥に預けても研究の名の元に弄られ生物の尊厳など無視される、そんなこと許せるはずもないでしょう」
「それは、そうかもしれませんが…しかし!」
「もしも竜の子を研究機関に渡そうものなら私は全力で抵抗しますよ。国を敵に周そうと知ったことではありません。しかし、そうしないでくれるのならこの子達のことは何があっても護ると誓います」
私の覚悟を感じたのか何も言えなくなってしまったようだ
暫く沈黙が続く中、ミントが口を開く
「フェアちゃん、貴女はどうしたい?」
「え、わたし?」
「うん、大人達に任せた方が良いと思う?それとも自分達で面倒を見たい?」
「私は…どっちも選べないよ」
「なによ、それ!?」
フェアの答えにリシェルが食ってかかる
投げやりになっているように思ったのかもしれない
しかしフェアはそんな子ではないし、真剣な顔から察するに何か考えがあるのだろう
「ねえ、みんな。私達一番大事なことを見失ってないかな?大人に任せるにせよ、自分達で見るにせよ…大切なのはこの子がそれで幸せなのかってことだよ」
「…っ!」
「まずはどうすればこの子が幸せなのか…それを考えるのが拾ってきた私達の責任だと思う。だから私には選べない、選ぶのは…」
言い終わる前に竜の子がフェアの元へ行き、しがみついた
決して離れないようにしっかりとくっつく竜の子を見て、もう結論は出ていたことを悟った
「…答えは最初から決まってたみたいだね?」
「もう、こんなのまるで私達が悪者みたいじゃないですか」
「ははは、まぁまぁ」
ミント、ポムニット、グラッドが表情を崩して言い合う
どうやら認めてくれたらしい
「…それじゃあ!」
「うん、君達と一緒にいるのが良いみたいだしそれで良いんじゃないかな。私も出来る限り協力するよ」
「俺も協力するから遠慮なく頼れよ!」
「…仕方ないですわね。私も旦那様に知られないように致しますわ」
「やった、ポムニット大好き!」
「もう…」
一番渋っていたポムニットも納得したようだし、これで一件落着のようだ
その後ミント達はそれぞれの仕事に戻り、私達はこれからどうして行くかを相談した
これから先ずっとこの子の面倒を見ることは出来ない
小さいうちはともかく大きくなったら流石に隠せないし、そもそも人間とは寿命が違いすぎる
色々話した結果、親竜を探しに行くことに決定した
どうして卵が降って来たのかは分からないが、卵がある以上親はいるはず
その親を見つけて引き渡すことさえ出来ればこの子の安全は保証されたようなもの
この子は私達と一緒にいたがるかもしれないが、その時はその時で考えればいい
少なくとも親を見つけることが悪手になることはないだろう
それにしても…
先程のフェアの言葉を思い返す
自分達の都合ではなくこの子にとって何が幸せなのかを考えるのが一番大事
自分の未熟を突き付けられたかのような衝撃を感じた
こんな簡単なことを失念したいた私は人としてまだまだなんだろう
いい意味での人らしさ、これを私は学んでいかなければ
これからの予定を決めて決意を決めるフェア達を見ながら私は心の中で別の決意も固めていた
因みに夕食はフェアが妙に張り切って柔らかくて存在感がありながらもしつこくなく喉を通り過ぎるステーキに濃厚でどこかホッとするような味わいのシチューなど、今まで以上に美味しいものであった
勿論リシェル達はブロンクス宅で夕食を摂るためこれを食べることは叶わない
私は少しばかりの優越感に浸るのだった
リィンバウムや各キャラの紹介をするコーナーというか話を設けた方が良いですか?
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欲しい
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要らない