共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~   作:フォルカー・シュッツェン

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第十一話 天使娘との出会い

 竜の子の親を探すと決めた翌日、私達は街の出口に近い広場に集まっていた

取り敢えず手掛かりを探すために竜の子を拾った場所に再び行くことにしたのだ

当然ながら敵…竜の子を狙う一団のみならず野盗やはぐれ召喚獣(召喚した者の元から逃げ出したりなどして野生化した召喚獣。基本的に人間を見ると襲いかかってくるため危険)も出現するため武装している

そんな中武器を持たない者が約二名、一人は私だ

私はそもそも武器を持たない方が得意だからいい、問題なのはもう一人だ

 

「で、どうしても着いてくるつもり?」

 

「当然ですわ!ブロンクス家のメイドたるもの、たとえ火の中槍の中でも着いていきますとも」

 

「でも、危険かもしれないんだよ?」

 

「なら尚更着いて行かないわけにはいきません!お二人に怪我をさせるなど以ての外です!!」

 

 そう、ポムニットだ

彼女はメイドとしての能力は凄まじいのだが、如何せん戦いとは無縁だ

戦闘が予想される場所にはあまり連れていきたくないのだが…

 

「…はっきり言って足手まといなのよ」

 

「えうぅ…」

 

 いや、気持ちは分かるがそこまで言うことないだろうに…泣き顔になってしまったじゃないか

 

「まぁまぁ、そう無碍にしてやるなって。お前達のことが心配で着いてきてくれてるんだぞ?」

 

「それは、分かってるけど…」

 

「それに戦いに参加しなくても出来ることはあるんじゃないかな。怪我の手当とか応援とか」

 

「それもそうだね。よろしくね、ポムニットさん」

 

「はい、全力でサポートいたしますわ!」

 

 満面の笑みが咲いた

元気を取り戻してくれたようでなによりだ

 

「もう、仕方ないわね…」

 

「ありがとう、ポムニットさん!」

 

 リシェルは呆れた調子で言ってるが、満更でもなさそうだ

素直じゃない娘だ

ルシアンみたいに素直になれば良いのに

 

「それじゃ、行くとするか!」

 

「「「おー!」」」

 

 こうして私達は出発した

 

 

 

 

 

 

 はぐれ召喚獣となったスライムなどに襲われたりはしたものの誰も怪我することなく目的地に着いた

というかあのスライムたちは脆すぎる

拳圧だけで吹き飛んで崩れるくらいなのにどうやって生きているのやら…

お陰で殺さないように手加減するのにかなり苦労させられた

それは兎も角、星見の丘に着いた私達は早速残留物を探し始めた

しかし何一つ残されてはいなかった

あるとすれば卵が落ちた跡のクレーターとその中心に疎らに残っていた卵の殻の欠片のみ

剣などを持ち帰るのは分かるがなぜ卵まで…あの卵にも何か魔力が宿っているのだろうか?

 

「な〜んにもないわね。拍子抜けだわ」

 

「何もないことも想定して来たんだから文句言わないの。それに分かったことだってあるよ」

 

「何が分かったってのよ」

 

「ここで戦闘をしたにしては痕跡がなさすぎる。鎧を着てたんならその重量から足跡が出来ても良さそうなもんだ。なのにそれすらもないってのは逆に不自然だな。自然に消えるほど日は経ってない」

 

「つまりは痕跡を消していった。それをすることの意味を分かっているし、実行出来るだけの余裕が敵にはあるの」

 

「なるほど…」

 

 早々に飽きたリシェルにフェアとグラッドとミントが現状から把握出来ることを教えていた

ルシアンもそれを聞いている

ポムニットは何故かレジャーシートを広げている

よく見ると大きめのバスケットもあり、中からは生野菜に加工肉、卵やパンの香りが漂っている

おそらくはサンドイッチだろう

更にエプロンの中から持ち運び用の大容量ポットまで取り出している

…ピクニックでもするつもりなのだろうか?

遊びに来たわけではないが、これ以上調べても何も無さそうだしここらで休憩を入れるのもありかもしれない

休むことで見えてくるものだってあるはずだ

そこまで考えて用意してきたのだろうか…ポムニットならそれも出来そうな気がする

 

「皆さん、調べるのはそれくらいにして一旦休憩しませんか?」

 

 準備を終えたポムニットがみんなに声をかける

その言葉にみんな集まって休憩しだした

私もその中に入り、わいわいと楽しんだ

 

 因みにポムニットさんの作ったサンドイッチはとても美味しかった

彼女の淹れた紅茶との相性が抜群で思わず舌鼓を打ってしまうほどだ

奥深さは流石にフェアの料理に及ばないが、それでも十分過ぎる

 

 

 

 

 休憩も終わり、片付けも終わったところで私達は少し範囲を広げて捜索することにした

…いや、しようとした

私の耳に複数の機械の駆動音が聞こえたのだ

 

「…リシェル、ちょっと良いですか?」

 

「ん?どうしたのよ、急に」

 

「ロレイラルから召喚される機械類ですが、こんなところで使用されたりしますか?」

 

「いや、しないわね。まぁ土地を開発するとかなら可能性はなくもないけど…そんな話も聞いてないし予定はないはずよ」

 

「なるほど、つまりこれは…」

 

「なによ、どうしたってのよ」

 

「先程から機械の駆動音が聞こえます。それもそれなりに数がいますね」

 

「なんですって!?」

 

 リシェルの大声に皆が反応してこっちに来た

事情を説明すると皆一様に驚いていたが信じてくれたらしく、私の先導で音の発生源に向かうことになった

暫く歩くと大量の小さな機械が蠢いていた

何かを取り囲んでいるように見える

そしてその中でも人型で緑髪をした…機械人形かな?が目立つ

おそらく司令を出しているのはあの個体だろう

 

「ねえ、ちょっとただ事じゃなさそうよ」

 

「うん、そうだよね…」

 

「おい、あれを見ろ!あいつら女の子を囲んでるぞ」

 

「ど、どうしてそんなことに」

 

「詮索するのは後だよ!今は助けないと」

 

「そうですわ!手当はおまかせ下さいまし!」

 

 どうやら囲まれているのは女の子のようだ

しかしその娘も普通の人間には見えない

と、そんなのは後で良いだろう

あの子を助けることにした私達は近付く

接近に気付いた相手の司令塔らしき個体が声を発する

 

「リビエル確保。But,不確定要素アリ…ppprrrrr」

 

 電子音を鳴り響かせている

何をしてくるか分からない以上迂闊には近付けないな…

そんなことを思っているとまるで電子レンジで温めが完了した時のような音が聞こえてきた

 

「演算終了…結論、排除」

 

「ᴬᴮᶜᴰᴱᶠᴳᴴᴵᒢᴷᴸᴹᴺᴼᴾǫᴿˢᵀᵁᵛᵂ˟ᵞᙆ」

 

 周囲のロボット達が不快な電子音を鳴り響かせたかと思うと、いきなり銃弾を撃ち込んできた

 

「のわわわわわ、撃ってきたぞ!」

 

「失礼、借りますよ!」

 

 私は即座に近くにいたルシアンの剣を鞘から引き抜くと、仲間に被弾する軌道の弾丸を弾き飛ばしていった

流石に素の状態で出来ることではないので少しだけ屍の力を使わざるを得ない

見たところ銃弾を飛ばして来てるのは三体

弾を弾きつつ足で石を蹴り上げて左手で掴む

それから狙いを付けて指で弾く、命中したようで銃身の破壊に成功した

それを続けて全ての銃身を壊し終えてからルシアンに剣を返した

 

「相変わらず規格外だね…でもお陰で助かったよ、アウルさん!」

 

「たまげたな…何をどうしたらそんなことが」

 

「言ってる場合じゃないでしょ!とにかく今はあの娘を助けるわよ!!」

 

「そうね、やらなくっちゃ!」

 

「私は一先ず後ろに下がってますわ!」

 

「僕も…やってやる!」

 

 気合いを入れた私達は機械の軍団に向かっていった

 

 

 

 

 

 片腕に小型のドリルを装備したものやプロペラのようなもので浮遊しているもの、四本脚で動いて上部から金属棍のようなものを出して突き出して攻撃してくるものが何体もいる

四本脚のやつは銃を装備しているものもいたがそれはさっき私が壊した

まずは突き出されたドリルを躱して上から拳を落とす

思っていたよりも頑丈ではないのか装甲が壊れ、配線が飛び出す

動かなくなったことを確認し、プロペラのついた機体を蹴り潰す

フェアとグラッドも問題なくロボット達を相手どっている

そんな中リシェルが苦々しい顔をしていた

 

「しまったわね…」

 

「どうしたの、姉さん」

 

「あいつらロレイラルの召喚獣だから私の召喚術が効きにくいのよ。ほら、習ったでしょ?同じ世界の攻撃は威力が半減するって」

 

「そ、そっか…それじゃあ姉さんは戦い辛いの?」

 

「ええ、そうよ。でもやるっきゃないわね!」

 

 そう、召喚術は同じ界…例えばロレイラルの召喚術をロレイラルから来た召喚獣に撃つと威力はかなり減る

シルターンの召喚術はシルターンの召喚獣には効きにくい

また、召喚術以外にも呪術や妖術といった特定の界の属性を持つ攻撃も同じ界の召喚獣には効きにくい

つまり今回機属性の召喚術を使うリシェルは相手にダメージを与え辛いのだ

 

「その分私がフォローするから大丈夫だよ。ブレイドボア!」

 

 獣属性の召喚士であるミントが召喚術を放つと、あの時と同じ猪が二頭現れてロボット達三体を同時に潰した

流石は蒼の派閥の召喚士といったところか

 

「ううぅ…!」

 

 苦しそうな声に顔を向けると、ルシアンがドリルによる攻撃を必死に盾で防いでいた

一応身を守ることは出来ているがあれでは反撃は疎かいずれ防御を剥がされかねない

見かねた私は接近し、ドリルを突き付けているロボットに踵落としを喰らわせる

マトモに受けたロボットは黒煙を上げながら地面に埋まった

 

「大丈夫ですか、ルシアン?」

 

「は、はい…助かりました!」

 

「焦ることはありません。落ち着いてゆっくりと対処していきましょう」

 

「…はい」

 

 少し元気がないがそれは後回しにせざるを得ない

本当は戦闘中に意気が沈まるのは大変よろしくないのだが、フェアやグラッドも一旦こちらに戻って来たしリシェルやミントもルシアンを気にかけている

ルシアンに何かあってもこれで守れるだろう

 

「味方ノ負傷過多、ヨッテ戦線二参加シマス」

 

 それまで傍観していた人型の機械人形が戦況を見て自分も戦闘に参加することを決めたようだ

ごつごつした右手の装甲が開いて変形し、あっという間に高速回転するドリルが現れた

さっきまで相手していたロボットは少し小さかった上に動きも鈍いのでドリルと言えど大した驚異ではなかったが、この機械人形の動きは俊敏で下手をすればあのドリルで真芯を貫かれるだろう

 

「あいつの相手は私がします、皆さんは残りの機械達をお願いします!」

 

「了解、まっかせなさい!」

 

 指示に近いお願いをして私は緑髪の機械人形と相対した

どうでもいいことだが、フェア達にロボットと言っても通じなかった

どうやら私のいた世界で使われていた言葉の一部は意味不明なものに聞こえるらしい

そんなことを考えていると機械人形がドリルを突き出してきたので横に回避する

今までのものと変わらない単調な突きだが、この個体は思考能力が他のものより優れているので警戒を怠らないでおく

すると思った通り腕を振り回してドリルを当てようとして来た

しっかりと予期出来ていた私は後ろに跳んでそれを避ける

腕を振り回した遠心力で少し回転して見えた背中に蹴りを放とうとした…のだが

腰の辺りから尻尾のように伸びたコードをこちらに向けて伸ばしてきた

よく見ると先端はプラグになっておりそこからバチバチと電流が目に見えるほど流れていた

あれを流されては流石に無傷では済まない

身体を後ろに倒して回避、そのまま地面すれすれの状態で後退する

体勢を元に戻すと、相手もしっかりとこちらを見据えていた

まさか自身についている電気コードを操って攻撃するとは…

その後も攻撃を試みるが、ドリルと電撃のコンビネーションが邪魔で近付けない

このまま膠着状態になるのも頂けないので勝負をかけにいくことにした

まずは先程と同じように接近し、白兵戦を挑もうとする

しかし今度はかなり長い時間貼りついて回避もかなりギリギリにした

そうして準備を終えた私は距離を取る

 

「同ジ事ノRepeatedly,ソレハ通用シナイ」

 

「繰り返し?それはどうでしょうか」

 

「…?───ッ!?」

 

 突然上から大量の石が断続的に降ってくる

私はただ接近戦をしようとしたわけではなく、この攻撃のために石を上空に蹴り上げていたのだ

降り続ける石に何度も何度も打たれ続け、遂には両膝を付いた

流石に機械の装甲でも耐え切れなかったようだ

傷付き、黒煙も少し出ている

 

「想定外ノ、事態発生…撤退シマス」

 

 そう発声した直後に強烈な光が放たれ、何も見えなくなってしまった

咄嗟に目を瞑りはしたが、目の前でやられたせいで閉じた瞼の上からでも痛みが走った

そのせいで数秒ほど視界を奪われてしまったので音で状況の把握に努める

どうやら本当に逃げていっているようだ

殲滅が目的ではないし、敵の一味かも分からないので放置で良いだろう

あの様子では暫く再起不能だろうし

それよりも襲われていた娘だ

ポムニットによって既に手当も済んでいるが、気を失っており目が覚める気配はない

そもそも人間用の手当で大丈夫なのかどうかすら分からない

この娘には腰の辺りから生えている一対の羽に加えて頭上に光る輪があるのだ

これは…

 

「ねぇこの子って…」

 

「うん、間違いないと思う。見たのはこれが初めてだけど」

 

「じゃあやっぱり、゛アレ゛なのよね?」

 

「だろうな。放っておくわけにもいかないし、一旦連れて帰ろう」

 

 何処からどう見ても、天使だった

 

リィンバウムや各キャラの紹介をするコーナーというか話を設けた方が良いですか?

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