共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~   作:フォルカー・シュッツェン

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第十三話 天使娘は家出娘?

「拾った…ですって?」

 

 翌日、お昼すぎにみんなが揃ってリビエルに竜の子を拾った時のことから今までのことを説明した

先程のはそれを聞き終えたリビエルの第一声だ

因みにポムニットはテイラーの元で仕事をしているので今回は一緒にいない

 

「信じられませんわね。偶然にも程があります、何か裏があるとした方が自然な程に」

 

「そんなこと言ったって本当にそうなんだから仕方ないじゃないの。なに、あたし達のこと疑ってんの?」

 

「ええ、これ以上ないくらい疑ってますわ」

 

「…この子ねぇ」

 

「まぁまぁ、落ち着いて姉さん」

 

 どうやらリビエルは信じてくれないようだ

無理もない、逆の立場なら私だって容易には信じられないだろう

しかしこれが事実であることに変わりはないし、証拠を見せることもまた出来ない

強いて言えば竜の子がフェアに懐いているのを見せて信用を得るくらいか

 

「信じられない気持ちは分かります。しかしこれは事実ですし、竜の子を拾ったことに責任を感じています。この子のことを考えて幸せになって欲しいんです」

 

「……。」

 

「だからこの子のことを教えて欲しいのです。それと出来れば敵のことも知っていれば。護っていくためにもその情報があると助かります」

 

 必死に説得する

リビエルは暫く目を瞑っており、目を開くとまず竜の子を見た

竜の子はフェアの膝の上で気持ち良さそうに寝ている

そんな竜の子をフェアは撫でている

何処から見ても拉致監禁のようには見えない、人間とペットが心を通わせて甘えているような光景

それを少しの間見ていたリビエルはこちらに視線を戻した

 

「…どうやら御子様を御守りして下さったことは確かなようですし、私も助けていただきましたしね。お話しないのは不義理と言うものでしょう」

 

「…それじゃあ!」

 

「ええ、恩を仇で返すなんて真似も出来ませんしね。お話しますわ」

 

「ありがとう、リビエルちゃん」

 

 ルシアンが嬉しそうにお礼を言った

初対面の人に少し馴れ馴れしすぎるとは思うがリビエルは見た目がルシアンよりも更に幼く見える

街の子供と接するのと同じように見ているのだ

…だがリビエルは天使だ、見た目の通りの年齢とは限らない

それはともかく話してくれるようで助かった

これで今後のことをより深く考えることが出来る

そしてリビエルは話し始めた

 

「御子様のことを説明する前に、ラウスブルクという場所について説明しなければなりませんね」

 

「らうすぶるく?」

 

「妖精の古い言葉で『呼吸する城』っていう意味だね」

 

「その通りですわ」

 

「なんで城が呼吸なんかするんだ?」

 

「比喩表現ですわよ、そのまま受け取らないで下さいます?」

 

「うぅ…」

 

「実際に呼吸をしているのは城ではありませんの、その外周に沿うように植えられた『ラウスの命樹』と呼ばれる木ですの」

 

「別名『妖精樹』、妖精と深い関わりのある木だね」

 

「詳しいね、ミントお姉ちゃん」

 

「私の専門は幻獣界だし、先輩からちょびっと聞いたことがあってね。ラウスの命樹は妖精の力を受けて不思議な現象を起こすことが出来るんだ。そしてその中でも代表的なのが…」

 

「限定的に異空間を作り出し、そこへ出入りすることが可能なことですわ」

 

「なんですって!?」

 

 異空間を作る…とんでもない能力だ

そしてそんな木が外周にいくつも植えられているということは

 

「その木の能力を使って城全体を隠している?」

 

「ええ、そうですわ。その様からラウスブルクは『隠れ里』と呼ばれていますの」

 

「ふへぇ…すごいもんだなぁ。しかしそれと竜の子がどう関わってくるんだ?」

 

「ラウスの命樹の力を以てしても異空間への扉を開くのは簡単なことではありませんの。それを可能とするのは古き妖精や至竜のみですわ」

 

「え、じゃああの子はもしかして元々はそのラウスブルクっていう城の…」

 

「その通りです。長きに渡りラウスブルクを御守り下さっている守護竜様の嫡子にあらせられますの。そして私はそんな御子様にお仕えする御使いですわ」

 

「!?」

 

「あの子ってそんな凄かったんだ…」

 

「なるほど、それであんなに躍起になって竜の子を手に入れようと…」

 

 ラウスブルクにどれほどの価値があるか分からないが、きっと相当なものだろう

異空間へと出入りできる城、これだけでも魅力がありすぎる

その城の中心的存在である守護竜の子供を捕えられればラウスブルクを好きに出来る可能性はある

無論簡単に出来ることではない

つまり敵にはそれが出来るだけの戦力があるということ

これは思っていたよりも規模が大きいな…

 

「ちょっと待って!それじゃあやっぱりこの子にはちゃんと親がいるってことだよね?」

 

「っ!そうよ、そうだわ!それに貴女が御使いってことは迎えに来てくれたんでしょ?」

 

「え?ええ、そうですわね…」

 

「じゃあこれでこの子は無事なんだね!」

 

「良かったね、みんな♪」

 

 子供達は寂しさがありながらも大喜びし、大人も安堵したような表情をしている

しかしリビエルは浮かない顔だ

…いくらなんでも楽観が過ぎるだろう

そんな単純な話ならそもそも子供をこんな所に落とす必要なんてない

おそらく守護竜は敗北したのだ

理由までは分からないが、敵がそれだけ強かったと見るべきだろう

状況次第ではこの街そのものを攻め滅ぼしにくるかもしれない

そうなると私でも対応しきれるか…いや、そんなことは流石に無理だ

大量の雑兵なら蹴散らせても一騎当千の兵が何人も何人も来たら押し切られる

だから警戒すべきはあのレンドラークラスの実力者があと何人いるかだ

その数によっては殲滅戦を仕掛けても…いや、彼女達にそんな凄惨な戦いは出来ないだろうしさせるべきではない

どうしたものか…私は喜ぶ皆を余所に一人考えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆・☆・☆・☆・☆フェア視点☆・☆・☆・☆・☆

 

 リビエルの話を聞いて安心した私達はそれぞれ仕事や日常に戻っていった

私も夜ご飯を作ろうと厨房に入る

そしてこれから作るぞ、ってところで思い出した

そう言えば天使って人間と同じもの食べるのかな?

昨日はそんなことに気が回らなくて普通に作っちゃったし食べてくれたけど、出来れば美味しいって言って貰えるのも作りたい

好みとか、あとどうしても種族的に食べれないものがないかどうかを聞きに行った方が良いかな…うん、行こう!

思い立ったが吉日っていうしね

私はエプロンを外してリビエルに宛がった部屋へと向かった

階段を登って突き当たりの黄葉の間と言う部屋がリビエルに…ん?

よく見ると僅かに扉が開いていて中から声が漏れてる

なんだろうと思って近付くとそれが泣き声だっていうのが分かった

何を泣いてるの?悲しいことがあった?私が聞いてもいい話?

扉を開けるかどうか迷っていたら泣き声はだんだんとハッキリした言葉になっていった

 

「私が…私がしっかりしなくちゃ……例えもう守護竜様がいなくても、帰る場所がなくても…私は御使いなんだから。御使いとは御子様と里を守り、導く者。でも私は末端でちょっとした治癒しか出来ない未熟者…他の御使い達ともはぐれて、私だけでこれからどうすれば……」

 

 …え?

何を、言ってるの?

守護竜がいない?帰る場所もない?

そんな…

 

 気付けば私は扉を開けてリビエルに詰め寄っていた

 

「…っ!」

 

「ねえ、どういうことなの?帰る場所がないとか…」

 

「あなた、聞いて……っ!」

 

「あ、ちょっと!」

 

 リビエルは驚愕に顔を染めてから窓を開けてそこから飛んで行っちゃった

あの様子…嘘とか冗談じゃあない

そんな、まさか…ううん、そんなこと考えるよりあの子を探すのが先決!

まずはみんなに知らせないと

私は走ってみんなを呼びに行った

まずはアウルさんから!

 

 

 

 

 

 

 アウルさんと協力してみんなを集めた

因みにアウルさんに事情を説明すると「やはりそうでしたか…」と言っていた

どうやら状況やリビエルの表情などから察していたらしい

それならそうと言ってくれれば良いのに…

集まった時はみんな困惑していたけどリビエルを探しに街の外に出る頃にはしっかりとした表情になってた

まずは星見の丘に行ってみたんだけど見つからなかった

時間も時間だしこのまま見つからないと暗くなって余計探すのが困難になっちゃう…なんとしてもすぐに見つけないと

 

「ピピィ!」

 

 私が焦っていると竜の子が何かに反応した

 

「どうしたの?」

 

「ピィッピィッ!」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 そのまま何処かに走っていくからみんなで追いかける

すると街道沿いを少し外れた所にある水車小屋に辿り着いた

そこには

 

「おい、あそこ!」

 

「いましたわ!」

 

 リビエルがいた

私達は急いで駆け寄るけど、大きめの水路に阻まれてすぐ近くまではいけなかった

大回りすれば橋もあるから行けるけど、今話をするにはこれくらいの距離がいいかもしれない

 

「どうして…」

 

「え?」

 

「どうして、追いかけてきたんですの?まだ隠してることだってありますのに」

 

「なんだ、そんなことね」

 

「そんなことって…」

 

 そんなの決まってるじゃない

それは…

 

「心配だったからだよ」

 

「…!?」

 

「貴女のことが心配だったの、純粋にね」

 

「しんぱい…?私のことを?」

 

「あったりまえでしょ!フェアから話聞いたけど、あんな風に飛び出していったら心配になるに決まってるじゃない」

 

「事情は詳しく分からない、私達で力になれるかも分からない。でもさ、もしかしたら力になれるかもしれない。だから頼ってよ。それに…この子も貴女が傍にいた方が安心するだろうし」

 

「ピイィ…」

 

「御子、様…」

 

 リビエルは俯いて何かを呟いてた

そして暫くすると顔を上げた

その顔はどこか晴れやかに見える

 

「貴女も物好きな人間ですのね。隠し事をしてた召喚獣のことを心配するなんて」

 

「なっ!あのねぇ…」

 

「…でも、嬉しかったですわ。ありがとう、それとごめんなさい」

 

「…ううん、いいのよ。さ、もう帰ろう?貴女飛べるんでしょ、こっちにおいでよ」

 

「そうはさせません!」

 

「え?」

 

「きゃあっ!」

 

 突然知らない人の声がしたかと思うと何かが飛来してきてリビエルの横にある樽を破壊した

何!?

驚いた私はその飛んできた方向を見ると、昨日戦ったのと同じ機械達に青髪の機械人形、そして長杖を持った老人がいた

こんな時に…!

 

「ローレットよ、警告もなしに撃つものではない。我々は一応戦いに来たわけではないのじゃからな」

「ですが、教授…!」

 

「とにかく下がれ、話は儂がするわい」

 

「…分かりました」

 

 あの青髪の機械人形…昨日の緑髪のとかなり似てる

というか髪とメガネをかけていること、そして装備してるのが銃なこと以外は全部一緒だった

もしかして…敵の一味?

私が剣を抜くとみんなそれに倣って各々武器を構えた

アウルさんも今回はあのナイフを持ってきてる

 

「いきなりすまなんだな、小娘がその者達の代表か?」

 

「そういうわけじゃないけど…それでいいわ」

 

「そうか、では単刀直入に聞こう。ここに居る娘と同じ個体を破壊したのはお主達か?」

 

「それは私がやりました」

 

 アウルさんが私の横に立って答える

なんだろう、それだけなのにすごく頼もしい

 

「そうであったか。では次の質問じゃが…その竜の子をこちらに渡してはくれぬか?」

 

 やっぱり…

 

「それは出来かねますね」

 

「うん、この子は渡せないよ」

 

「どうあっても、か?」

 

「うん、変わらないよ」

 

「そうか、ならば仕方があるまい。ローレットよ、好きにせい」

 

「分かりました、ありがとうございます教授」

 

 そう言ってあの青髪の機械人形が前に出てくる

そして右腕をアウルさんに向けた

 

「貴方達は適当にやっておしまいなさい。私はあの方を始末します」

 

 周囲の機械達に司令を出した後アウルさんに向けて発砲してきた

アウルさんはそれを僅かに横に逸れることで避けてる

髪の毛が数本舞ったけどそんなの気にしてる場合じゃない!

 

「ちょ、いきなり撃ってくるなんて卑怯じゃないの!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないよ、リシェル!」

 

「そうだ、あいつらも来るぞ!」

 

「やらなきゃ…僕だってやらなくっちゃ…!」

 

「ルシアン君、思いつめないで。落ち着いて少しずつやっていこう」

 

 ポムニットさんには早々に避難してもらってみんな戦う覚悟を決める

そんな時だった

 

「ᴬᴮᶜᴰᴱᶠᴳᴴᴵᒢᴷᴸᴹᴺᴼᴾǫᴿˢᵀᵁᵛᵂ˟ᵞᙆ!」

 

「ひ、いや…」

 

 リビエルを何体かの機械が囲んでいた

しまった!

リビエルは戦う覚悟を決めれていないみたいで尻餅を付いちゃってる

あのままじゃやられちゃう…!

するとアウルさんが跳躍した

え?って思ってるとそのまま水路を越えてリビエルにドリルを突き刺そうとしていた機械を真上から蹴り穿つ

あまりの威力に黒煙を上げながら地面に埋もれた

この水路を跳び越えるなんて…ううん、そんなことよりも今は目の前のこと

リビエルはアウルさんに任せておけばきっと大丈夫

だって…

 

「何を呆けているんですか、リビエル。しっかりしなさい!」

 

「えっ…」

 

「貴女はいったい何者なのか、思い出しなさい」

 

「私は…御使い。御使いは御子様と里を守る者…」

 

「なら、貴女が今すべきことは何ですか?」

 

「御子様を御守りするため、まずは目の前の敵を打破すること…!」

 

「分かったなら立ちなさい。立って、その矜恃に従いなさい!」

 

「言われるまでもありませんわ!」

 

 ああして立ち上がらせてるんだから!

 

リィンバウムや各キャラの紹介をするコーナーというか話を設けた方が良いですか?

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