共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~   作:フォルカー・シュッツェン

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第十四話 教授との邂逅

 ローレットと呼ばれた機械人形がその腕をこちらに向けてひたすらに発砲してくる

どうやらこの個体はドリルではなく銃になっているようだ

一発一発はそれなりに威力が高いようだがフルオートで弾幕を作ることは出来ないらしい

ライフル弾でラピッドファイアをしている感じだ

 

「なんてすばしっこいんですの…当たりなさい、よ!」

 

 独り言を言っているが声が大きくてこちらにまで聞こえてきている

リビエルは霊界の召喚術を行使して他の機械達を相手取っている

しかし多勢に無勢、次第に押され始めていた

 

「うぅ、数が多すぎる…!」

 

 このままでは危ないかもしれない

一か八かではあるがローレットを無力化して助けに向かうとしよう

昨日と同じように石を蹴り上げて手に収める

そしてタイミングを測って指で弾いた

弾かれた石はまっすぐローレットの銃口へ向かって飛び、そのまま詰まった

 

「な…!?」

 

 銃弾の発射を慌てて止めるローレット

もしも撃っていたら銃が暴発していたかもしれない、早く詰まった石を除去する必要がある

 

「なんて、小癪な…!」

 

 ローレットは一旦下がり、石の摘出に取り掛かった

その隙に私はリビエルの元へと戻り、彼女を取り囲んでいた機械達を協力して破壊していく

 

「助かりましたわ!では私もローレットと…」

 

「いえ、貴女はフェア達と合流して下さい。貴女ならこの水路を飛び越えられるでしょう?」

 

「それじゃ貴女が一人になってしまうじゃないの!」

 

「あのローレットという機械人形はどうやら私に恨みがあるようです。見境がなくなってますし、近くにいると巻き込まれて危険ですよ」

 

「でも…!」

 

「大丈夫、あの射撃間隔なら十分避けられます。さ、早くフェア達の援護を。貴女の治癒の力で彼女達をサポートしてあげて下さい」

 

「…分かりましたわ。だけど貴女が危ないと感じたらこちらに戻りますからね!」

 

 リビエルもフェア達の所へと合流した

ローレットはとにかく私を自分の手で始末したいのかこちら側にはさっきリビエルを囲んでいたのを除くと機械達はいなかった

その分フェア達の方へと数が行っているため、一人でも多くあちら側に行かせたいのだ

 

「やっと取れましたわ…さぁ、お覚悟なさい!」

 

「その前に一つ聞かせてはくれませんか?」

 

「…良いでしょう、遺言として聞いてあげますわ」

 

「何故貴女はそんなにも私を目の敵にしているんです?」

 

「なぜ、ですって…?」

 

 一瞬ローレットは完全に固まった

正直隙だらけではあるのだがさっきの問は隙を作る為ではなく純粋に聞きたかったものなので待つことにする

するとローレットはわなわなと震えだした

それは怒りに震えているように見える

 

「とぼけるなぁ!アプセットを!私の妹をあんな姿にしておいて!!!」

 

 アプセット、私の妹、あんな姿

…なるほど、昨日襲ってきた緑髪の機械人形のことか

確かに大量の石で穿たれたアプセットは故障寸前といった状態に見えた

そんな妹の姿を見て怒り狂っているということらしい

しかし、まぁ…いきなり乱射して襲ってきたのはそっちだし明らかにこちらを殺す意図のある攻撃をして来ておいてやられたら復讐しようだなんて

逆恨みにも程があるし、何よりも…

 

「先に攻撃を加えてきたのはそのアプセットという者の方です。それに殺そうとするのなら殺される覚悟もしていて然るべき。殺し殺され、大切な者が死ぬなど戦いでは当たり前のことでしょうに…そんな覚悟も無しに戦場に立つな」

 

 最後に殺気を込めて睨む

覚悟を決めることも出来ずに戦いに赴くなど愚の骨頂、あの弱気なルシアンですら覚悟を秘めた瞳をしていたというのにこの人形は…

戦いを神聖視するつもりはさらさらないが、それでも覚悟のない者の存在は許されない

そういった者の辿る道はただただ悲惨で、時には味方をも巻き込んで悲惨さを増してしまう

称えられるようなことも何も無く、ひたすらに無駄死にするのみ

そんな哀れな存在を出したくなどない…故に私は覚悟の無い者が戦場に立つことを認めない

そしてローレットにはその覚悟がない

妹を無残な姿にされて怒るのは分かる、しかし死んではいないのだし機械の身体ならばいくらでも修理は可能のはずだ

戦場ではそうなるなど普通のこと、そんなことに一々取り乱し、冷静さを失っている様子から覚悟が出来ていないと判断した

 

「覚悟が、ないですって…?馬鹿にするのも大概に…ひっ!」

 

 更に怒りを湛えた目でこちらを睨んでくるが、私の目を見て言葉に詰まって身体が竦んだようだ

今の私の目はおそらく真紅に染まっているはず

そう、呪いの力だ

私が持つ元来の殺気に加えて屍の持つ死の気配そのものを真面に見てしまったローレットは動けないでいる

この娘には少しお灸を据える必要がある、殺しはしないが死ぬほど怖い目に合ってもらう

私はローレットに向かって一歩ずつ近づいていった

 

「や、いや…来ないで!」

 

 悲鳴に近い声を出しているがお構い無しに近付いていく

 

「来ないでえぇぇぇぇ!!」

 

 絶叫した後に銃を乱射してきた

目も慣れたしローレットの癖もある程度分かっていた私はその全てを避けながら近付く

あくまでもゆっくりと歩いてだ

やがて弾切れを起こしたのか銃弾は飛んで来なくなり、ローレットの顔が絶望に染まる

 

「あ、や…やめて、来ないで……」

 

 そしてローレットの目の前まで来た私は彼女の顔を片手で掴む

しかしそれだけでも恐怖に震えている

そのまま少しだけ持ち上げて殺気を送り続けた

やがて思考回路がショートしたのかローレットは気を失った

私はローレットを降ろすとなるべく優しく抱き抱えて老人の元へと向かった

 

「この娘はまだ戦場に出すべきではありません。出すなら出すでしっかりと覚悟を決めさせてください。もしもまた覚悟もなく戦場に出るようなことがあれば…その時は問答無用で破壊しますよ」

 

「うぬぬ…」

 

 優しさと怒りの両方を込めて忠告しておく

教授と呼ばれていた老人は殺気に圧倒されたのか何も言ってこなかった

本当に殺したりはしないが脅しとしては十分だろう

そのままなるべく傷が付かないように地面に横たえてから、殺気も呪いも霧散させてフェア達と合流した

 

 

 

 

 

 

 

 

☆・☆・☆・☆・☆フェア視点☆・☆・☆・☆・☆

 

 アウルさんが戻ってきた

ローレットや教授って呼ばれてた人と何かしら会話してたけど何を話してたんだろう…後で聞けばいっか

今はそれよりもこいつらを

 

「こうなっては致し方あるまい、儂が直々に手を下すしかないようだな?」

 

 ずっと後ろで見ていた教授が前に進み出てきた

見たところあまり体力は無さそうだし杖や本を持ってるから多分召喚士ね

これだけの数の機械を率いてるからにはかなり高位の召喚士のはず…そんな人が放つ召喚術はとんでもない破壊力を持ってるからヤバい

召喚術を放たれた時点で終わりになるかもしれない

でも逆に言えば召喚術さえ使わせなければ良い、相手には満足に動ける機械は殆どいないしこっちは逆にみんな動ける

そんな状況で何か出来るとも思えない

 

「アウルと言ったか、お主も強いがそこの小娘も中々のものだ」

 

「…どうも」

 

 一応褒めてくれてるけど敵に褒められたってあんまり嬉しくない

寧ろ皮肉にしか聞こえないから不機嫌気味に返事を返した

その後に教授の口から出てきた言葉は私をとっても驚かせた

 

「くふふふふ、なるほど。その生意気な態度、あの冒険者にそっくりじゃわい」

 

「お父さんを知ってるの!?」

 

 この前のレンドラーに続いてこの教授って人まで…お父さんはいったい何人の人に迷惑をかけてるの?

 

「あぁ、知っておるとも。光学兵器の集中砲火を剣一本でぶった斬って高笑いしてのける…あんな理不尽な男、忘れたくても忘れられんわい」

 

「デタラメだ…相変わらず」

 

 私はついこの状況を忘れてお父さんのバカバカしいまでの強さに呆れた

その隙を見逃すほど教授は甘くなかった…

 

「じゃが、娘であるお前はどうかな?」

 

「え?…なぁっ!?」

 

 一瞬のうちに召喚術が発動したのか、いつの間にか教授の背後の上空にいくつもの兵器があった

みんな紅い光を放つ銃口をこっちに向けてていますぐにでも発射しそうな勢いだ

 

「フェアちゃん、逃げてえぇぇぇぇ!!」

 

「虚空からの一撃じゃ、避けれるわけがあるまい!」

 

 これは、無理…

滝割りの修行、もっとちゃんとやっとけば良かったかな

もう…手遅れだけど

覚悟を決めた私は目を閉じてその時が来るのを待った

みんな、ごめん…

やがてレーザーが発射されるような音が大音量で響き渡る

………あれ?

おかしいな、何処も痛くない

もしかしたら痛みを感じる暇もなく死んじゃったのかな

 

「馬鹿な…なぜ……」

 

 教授の驚きに染まった声が聞こえた

教授の声が聞こえるって…うそ、私死んでないの!?

恐る恐る目を開けると最初に見えたのは真っ白で綺麗な髪だった

だれ…?

その白い髪は漆黒のロングコートとの対比で良く映えていて、より綺麗に…ってアウルさん!?

なんで髪が白色に…っていうかもしかして

 

「…あの馬鹿げた真似をあやつ以外にも出来る者がおるとは」

 

「追い込まれれば人間、意外となんでも出来るようになるんですよ」

 

 お父さんみたいに、大量のレーザーを剣で斬り伏せたんだ…

空いた口が塞がらないでいるとアウルさんが振り返った

 

「はい、これ。勝手に借りちゃってごめんなさい」

 

「あ、うん…いいよ」

 

 どうやら私の剣を使ってたみたい

驚きすぎて自分の剣がないことにすら気付かなかった

 

「これ以上の戦闘続行は無理じゃな…致し方あるまい。ローレット、帰るぞ」

 

「は、はい…転移装置、発動!」

 

 いつの間にか目を覚ましていたローレットが何か言ったかと思うと一瞬にして敵が全員消えてた

 

「なんだったのよ、もう…」

 

 疲れきったリシェルの呟きが聞こえる

気持ちは分かるけど、取り敢えず今はみんな無事でリビエルともちゃんと合流出来たことを喜ぶべきだと思う

そんなことを考えていると少しの間無言が続いた

みんなアウルさんを見てる

正確にはその髪と目を

髪が真っ白になってるのはさっき見たけどよく見たら目が真っ赤になってる

人間味がなくなっててちょっと怖い…

でもさっきは助けてくれたし、今までだって守ってくれてた

何か危険な力を持ってたとしてもきっと大丈夫

 

「言いたいこと、聞きたいことは山ほどあるが…まずは帰ろう。話をするにも疲れちまってて正常な思考が出来そうにない」

 

「そうですね…私も一度家に戻って資料を見たいですし」

 

「…そうですわね」

 

「よし、みんな帰ろう!美味しい物食べてしっかり寝て、話はそれからだよ」

 

 そうして私達は帰路に着いた

その途中、アウルさんの髪と目は元に戻っていった

どういう仕組みなんだろう…気になるけど今はいいや

疲れてるからあんまり手の込んだものは作れないし、晩ご飯はパスタにしようかな

 

 その後簡単なものでごめんね、といって出したパスタを食べたアウルさんはいつも通り夢中で食べてくれて「これで手が込んていないなんて嘘でしょう?」と驚いてた

相変わらず良く食べてくれて嬉しいな

 

 

リィンバウムや各キャラの紹介をするコーナーというか話を設けた方が良いですか?

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