共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~   作:フォルカー・シュッツェン

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第十五話 秘密の暴露

 翌日もまた忙しい朝と正午を過ごし、客もいなくなる昼過ぎ

関係者全員が集まり、話をすることとなった

主な内容は二つ

一つはリビエルが隠していたラウスブルクの現状について、もう一つは私の隠していた力について

まずは私から話すこととなったので、隠すのをやめて全て話した

地球のこと、オラクルのこと、そして屍のこと

それらを聞いたみんなはかなりショックを受けているように感じた

暫く沈黙が続いたが、グラッドがそれを破る

 

「それじゃあ、その…貴女は実質不死身と言うことですか?」

 

「ええ、少なくともこちらの世界の者では私を殺すことは不可能でしょう。私を殺すには私の未練を消失させ、屍としての死を迎えてから身体を殺して人としての死を与える必要がありますから。しかし私には少なくとも元の世界へ戻りたいという未練があります、これがある限り不死身と言っても差支えはありません。私のいた世界には屍の未練を消失させる退魔の剣もありますが…これは考えなくても良いでしょう」

 

「なんて言うか…凄く頼もしいんだけど、よくよく考えると怖いよね。800年以上行き続けた屍もいるって言ってたし、それって死なないと言うより死ねないんでしょ?」

 

「まぁ、そうですね…とは言え私は屍の特性を得ただけで、あくまでも人間であることに変わりはありません。寿命も人より少し長いくらいで終わる可能性もあるにはありますよ」

 

「詳しくは分からないの?」

 

「ええ。私のような存在はあちらの世界でも前例がないのでどうなるかは実際に時が経たないと何も…」

 

「それよりも私が気になったのは見た目の変化です。髪と目が変わっていましたがあれは屍というものの特徴なのですか?」

 

 ミントが神妙な面持ちで質問してくる

普段のほんわかしている雰囲気とは打って変わって真剣な様子だ

 

「いえ、あれは屍とはあまり関係ありませんね。先程言った通り私は呪いという力を使えるのですが、その力が強大すぎるために一時的に髪の色素が抜けているんです。目は…正直なところ私にも分かりません。あと全力を出すと黒い靄が発生し、身体に文様も浮かび上がりますが、こちらも同様何なのか分かりません」

 

「なるほど…」

 

「てことはあれって本気じゃなかったってこと!?」

 

「そうなりますね。そもそも私の力の本質は人を殺すことにありますし、あのような使い方では元来の力を出すことは出来ません」

 

「そんな…」

 

 話を聞いたリシェルとルシアンの顔が曇る

するとリビエルが顔を一層険しくさせてこちらを見る…いや最早睨んでくる

 

「一つだけ聞かせてちょうだい。貴女は…悪魔なの?もしくはそれに連なる者?」

 

 悪魔

霊界サプレスの住人で天使の宿敵

もしも私が悪魔なら敵対すると言うのだろう

しかし

 

「悪魔ではありませんし、それに類するとも言い難いですね。先程も言った通り屍とはそもそも死んだ人間…死体が強い未練によって再び動き出したもの、そこに深く関与するのは縁と業です。人間が生まれながらにして持ち、生きていく中で育み増やしていくもの。そこに悪魔の介入はありません。強いて言えば仏という…リィンバウムで例えるならエルゴのような存在が関与しているくらいです」

 

 エルゴと言うのはリィンバウムとそれを取り巻く四つの世界にそれぞれ存在する神のようなものだ

一説によればこれら五つの世界に在るもの…生物非生物に限らず全てのものはこのエルゴと境界線と呼ばれるもので繋がっているのだという

召喚術はエルゴに働きかけ、この境界線を利用することでその効果を発揮している

 

 私の話を聞いたリビエルはまだ少し訝しんでいた

 

「それに私は名も無き世界と呼ばれる場所から来た者らしいですし、貴女の世界の常識や感覚で捉えられても困るのですが…」

 

「…それもそうでしたわね。いいわ、信用してあげる。でも少しでも悪魔の片鱗を見せたり御子様に危害を加える素振りでも見せたら…」

 

「その時は全力で私を攻撃して構いませんよ。勿論抵抗はしますが」

 

 取り敢えずは納得してくれたようで何よりだ

時間は有限なのだしいつまでも私の話をし続ける訳にもいかない

早くラウスブルクがどうなっているのか、これからどうしていけば良いかの話をしなければ

 

「では次に私の話ですわね…」

 

 それからリビエルは知っている全てを話してくれた

まずラウスブルクは敵の襲撃を受け、守護竜が死亡した

それにより今は完全に敵の手に堕ちており、ラウスブルクは敵の住処と化している

本来ラウスブルクに住んでいたはぐれ召喚獣達は捕虜同然のようだ

そして守護竜は命を落とす前になんとか卵と御使いを地上へと逃し、後事を託したのだという

そして御使いはそれぞれ一つずつ守護竜の遺産を持っている

この遺産は死に瀕した至竜が最後の力を振り絞ることで生成可能なもので、その遺産に込められた魔力を継ぐことで子は短期間で大人の至竜へと至るという

当然リビエルもその内の一つを持っており、それが理由であの機械達…「鋼の軍団」に追われていたらしい

 

 事のあらましを聞いた皆の顔は暗い

竜の子は親を殺されていて更に帰るべき家まで敵に奪われた

極めつけは敵の目的の為にその身を狙われている

その目的が何かまでは分からないが、碌でもないことだけは確かだ

産まれて間もない子が背負うには荷が重すぎる

私も不憫に感じた

 

「本当は遺産のことは隠しておくつもりだったのだけど…状況が状況だしね。早いところ継承の儀をやってしまいましょう」

 

「そうだね…お願いね、リビエル」

 

 リビエルと竜の子を抱えたフェアが庭へと出ていくのに合わせ、皆も出てきた

フェアは竜の子を地面に優しく置いて離れる

リビエルはその前に立ち魔力を高めだした

暫くするとリビエルの口から詠唱のようなものが聞こえてくる

 

「守護竜の鱗よ…汝が子へと力の継承を行い給え。守護竜の名に於いて、疾く為し給え!」

 

 瞬間、辺りが光に包まれて何も見えなくなる

その光が晴れるとそこには、いつか見た女の子が立っていた

 

「……。」

 

 状況が良く掴めていないのか、少し呆けている

 

「これで、儀式は完了ですか?」

 

「ええ、問題なく終わりました。突然の事で御子様は動揺なさっておられますが、直に落ち着きを取り戻されるでしょう」

 

 それは良かった

フェアが竜の子に近付いていくと、腰を屈めて目線を合わせながら話しかけた

 

「えと…貴女があの竜の子なんだよね?よろしくね」

 

「…ママ」

 

「へ?」

 

「ママぁー!」

 

「え、ちょ…きゃあ!」

 

 なんと竜の子がいきなりフェアに飛び付きながら抱きついた

その衝撃でフェアは尻餅をつき、困惑した表情をしている

それはそうだろう、私だってこれは予想外だ

 

「物凄く懐かれちゃって…でもまぁ良かったんじゃない?嫌われるよりかは余っ程マシよ」

 

「それはそうだけど、だからっていきなり…恋人もいないのにママって色々すっ飛ばしすぎでしょ!?」

 

「…ママは私のこと、嫌いなの?」

 

「…え?」

 

「そうなんだ、やっぱり嫌いなんだ…」

 

 フェアの動揺振りを嫌われてると勘違いしたのかその瞳に涙を溢れんばかりに貯めた竜の子がじっと上目遣いでフェアを見つめる

あれはきつい…あんなことをされてはフェアが突き放すなど出来るはずもない

 

「そ、そんなわけないでしょ?もしそうだったら貴女を今まで守ったりなんてしてないよ」

 

「…じゃあ、好き?」

 

「ええ、好きよ?大好きだよ!」

 

「わぁ〜い"(ノ*>∀<)ノ」

 

 あの喜びよう…なんて可愛らしいのだろうか

それはそうと騒動続きで忘れていたが、一つ早急に決めなければならないことがある

それは…

 

「そうだ、あんたその子に名前付けなさいよ!」

 

「え、わたしが?」

 

「あんた以外に誰がいるってのよ。こんなにも懐かれてるのよ?そんなあんたが付けた名前が良いに決まってるじゃない」

 

 そう、名前だ

いつまでも「竜の子」では不便だし不憫だ

これから長い付き合いになるだろうし意思疎通の為にも、そして何よりも竜の子を一人の仲間として同等に扱う為にも名前は必要不可欠だ

 

「そ、そうね…ねぇ、貴女は私が名前を付けるのでもいい?」

 

「うん、良いよ!ママに名前付けてもらいたい!」

 

「そっか、じゃあね……」

 

 フェアは考え込んだ

そんなフェアを竜の子は「早く、早く!」と期待に輝いた顔で急かしている

うーむ、私があの子の親代わりになれなかったのが惜しい程に可愛い

とは言え私はいずれこの世界からいなくなるのだし、あの子の為にもフェアがそうなったのは良きことだろう

…惜しいけど

 

「貴女の名前はミルリーフ…ミルリーフよ!」

 

「わぁ〜い、私はミルリーフだ〜!」

 

 フェアが意を決して名前を告げると竜の…ミルリーフは喜びぴょんぴょんと跳ねている

下にいるフェアは少し苦しそうだが満更でもない顔をしてるし問題はないだろう

 

「私はお仕えする身だと言うのに、御子様を可愛らしいと思ってしまうだなんて…これも私が未熟故に…」

 

 私の隣でリビエルが悶えながらもそんな自らを責めている

 

「いえ、あれは誰が見ても可愛いと思ってしまいますよ。公私の区別さえ付ければ可愛がっても良いのでは?」

 

「そういう訳にもいきませんわ。あの方はいずれラウスブルクを継ぎ、守護竜となられるお方…誰かがこうして厳格にお相手をしなければならないの」

 

「そこまで言うなら止めませんが…貴女も難儀な役目を負っていますね」

 

「…貴女には言われたくありませんわ」

 

「…それもそうですね」

 

「それはそうと貴女にお渡ししておくものがありますの。本来はフェアに渡すべきなのでしょうけれど…御子様の邪魔はしたくありませんし」

 

「ん、これは…先程の儀式で用いていた鱗?」

 

 リビエルが私に渡して来たのは綺麗な蒼色をした鱗だった

継承の儀でも用いられており、これに先代守護竜の知識が全て込められていたらしい

とんでもない遺物である

 

「ええ、儀式が完了したことで力の大半を失ってはしまいましたが…それでも守護竜様のお身体の一部ですもの、その加護は消えてはいませんわ」

 

「要するに強力な御守りのようなものであると…なるほど、ではありがたく貰っておきますね」

 

 守護竜の鱗を受け取り懐に仕舞うとその加護とやらの効果なのか活力が湧いてくる

ふむ…これは思っていたよりも重宝しそうだ

 

「それと私もこれからは御子様の教育係としてここに居させてもらうわ、構わないかしら?」

 

「私は別に良いですが…私ではなくフェアに聞くべきでは?」

 

「…それもそうでしたわね」

 

 そう言ってリビエルはフェアの所に行こうとして…止めた

フェアは未だにジャレてくるミルリーフの相手をしているし、ミルリーフは言うなればまだ産まれたばかりの子供

少しくらいはしゃがせてあげたいと思ったのだろう

ミルリーフがフェアを解放するまで待つことにしたようだが、それが夜になるまで続くとは誰も思ってはいなかったのである

 

 

リィンバウムや各キャラの紹介をするコーナーというか話を設けた方が良いですか?

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