共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~   作:フォルカー・シュッツェン

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第十九話 VS獣の軍団

 見たところ相手は亜人と魔獣と召喚士で構成されているようだ

私達は池の周りにいて獣の軍団も含めてその池をグルっと囲むような位置取りになっている

このままだと両側から挟み撃ちにされてしまって不利だ

こちらを二部隊に分けて同時に迎撃するか片方に戦力を固めて突撃するか…左側は魔獣三体に亜人二人がすぐそこにいる

その先にある高所には魔獣二体に亜人三体、召喚士が一人

右側は魔獣二体に亜人一体

その先に魔獣三体に亜人二体、召喚士が一人…数的にも亜人の割合的にも左側の方がキツイだろう

亜人は力が強いだけではなく武装もしているので魔獣より厄介な存在なのだ

となると…よし、決めた

 

「フェア、リビエル。私と一緒に右側を速攻で破りましょう。その後左側を挟撃します!」

 

「なるほどね、分かった!」

 

「かしこまりましたわ!」

 

「そうなると我らで左側を抑えておけば良いのだな?」

 

「ええ、頼めますか?」

 

「なに、お安い御用さ。アロエリも、それで良いな?」

 

「俺は人間の言うことなど…」

 

「現状を考えるにこれが最も無難と言える。それが分からぬお主ではなかろう。そなた個人の感情は捨て置けと言ったはずだぞ?」

 

「くっ…!」

 

「分かりはしましたが、そっちが三人だけなのは良いので?貴女の強さは知ってますが数で不利なのは違いないでしょう」

 

グラッドが心配してくれている

尤もな話だがそうも言っていられない

 

「私を見くびってもらっては困ります。それにもう悠長に話してはいられません。敵が来ます!」

 

「そうね…行くわよ!」

 

そうして私達は右側へと突撃を開始した

 

「フェアは魔獣二体を頼みます」

 

「オッケー!リビエル、援護よろしくね」

 

「任せなさい!」

 

 私はまず斧を持った亜人を倒すことにする

 

「グオオオォォォ!」

 

 雄叫びを上げながら振り下ろされる斧を私は両手で挟んで止める

 

「!?」

 

「ふっ!」

 

 驚愕に染まった亜人の顎を下から蹴り上げた

怯みはしたが意識を奪えはしなかった

未だ斧から手を離さずに力を込めてくる

なるほど、人間とはやはり頑丈さが違うらしい

斧を持つ手へ膝蹴りを叩き込んで斧を離させる

次に相手の腕を真上へと跳ね上げてから超接近し、胸に右手を当てる

そのまま右足を踏み込みながら右手へと力を流し込んでいく

次の瞬間亜人は血を吐きながら倒れた

浸透勁…寸勁の中でも強力な技の一つだ

後ろを振り返るとフェアが魔獣を蹴りで倒していた

 

「アウルさん…は無事だよね。流石だね」

 

「言ってる場合ではありませんよ。次が来ます、傷付いたら頼みますよリビエル」

 

「ええ!」

 

 見ると前方から魔獣が三体一塊になって突撃してきている

素人相手には効果的だろうがプロ相手には悪手だ

先程倒した亜人の持っていた斧を拾う

 

「アウルさん、その斧で何を…」

 

「はあぁぁぁ!」

 

「…相変わらずだね」

 

 拾った斧を本気で横に薙ぎ払うと突撃してきていた魔獣達が衝撃波で飛ばされる

控えめに発生させた真空派もあって多少の切り傷を与えられた

致命傷には…良かった、なってない

 

「…貴女、どういう強さしてますの?」

 

「今はそれよりも、ほら」

 

「そうですわね…私も攻撃に周りますわ!」

 

 見ると槍を持った亜人がこちらに来ている

更に弓を持った亜人が正確な射撃をしてきてこちらの動きを妨害してくる

一応手斧で弾いていくが、わざと当てずに足元へ撃ち込んでくるのもあってやりづらい

そこへ更に召喚士が召喚術で攻撃してくる

 

「リビエル、私が貴女を守るので召喚術で槍の亜人を。フェアは周りこんで後ろの弓兵を!」

 

「分かりましたわ!」

 

「分かった!」

 

 撃ち込まれてくる矢を弾きながら地面に斧を振り下ろして土煙を上げる

これで敵の視界を遮って弓で狙いづらくすると同時に意識をこちらに向けてフェアから視線を外す

更に斧を振って土の塊を召喚士に飛ばして妨害した

 

「行きますわよ、雷精霊タケシー!」

 

 リビエルが宣言するとポワンという音と共に黄色くて丸っこい何かが現れた

それはケヒヒと笑うと電気を纏い始めた

 

「ゲレレサンダー!」

 

リビエルの言葉と共に強烈な電気の奔流が上空より亜人に降ってくる

 

「ギャオオオオオン!」

 

 雷に打たれた亜人は身体を痙攣させて怯んだ

その隙に私は召喚士に突進してそのまま飛び膝蹴りを叩き込む

土煙の向こうから急に現れた私に対応出来なかった召喚士は真面に喰らって吹っ飛んだ

弓を持った亜人は私に矢を放とうとするが死角から現れたフェアに斬りつけられて弓を落とした

更に私が掌底で気絶させる

 

「終わったわね、向こうは…」

 

「まだ余裕がありますわ。今のうちに!」

 

「ええ、急ぎましょう」

 

 片側を全滅させた私達は急いでもう片方へと向かい、敵を挟撃する

敵を倒すことより時間稼ぎに注視していた為か三体ほどしか倒せてはいなかったが、それでいい

体力を温存していたセイロンやグラッドが一気に盛り返して一瞬で敵は瓦解した

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから少しした後、獣の軍団は撤退したのでアロエリの保護を優先することにした

 

「なんとか追っ払えたわね…」

 

「ええ、三人目の御使いも無事に合流出来ましたし上出来でしょう」

 

「そうだね。っと…アロエリ、だったわね。無事で何よりだよ」

 

「別に、人間に身を案じてもらっても俺は嬉しくない」

 

「なっ…」

 

「ちょっとあんた!?助けてもらっといて随分な態度ね!」

 

 あまりの物言いに我慢出来なかったリシェルが突っかかった

 

「喧しいぞ、小娘」

 

「こむ…っ!?」

 

「小さな嘴でぴいぴい囀るのは貴様の勝手だがな。独り善がりな善意を押し付けてくるな。俺には迷惑だ」

 

「ぐぎぎぎ…」

 

「ね、ねえさん!落ち着いて!」

 

 ふむ…これは流石に見過ごせないな

 

「リビエル、御子さまはいずこにおられる?」

 

「え、あ…ほら、こちらですわ」

 

「お待ちなさい」

 

「なんだ、人間に用はない」

 

「流石にあれは言い過ぎでしょう。貴女がどう思っていたとしても助けられたことは事実です。感謝することも真面に出来ないのでは貴女の嫌う人間と同等かそれ以下なのでは?」

 

「なんだと!?貴様…!」

 

「いい加減にしろ、アロエリ!!」

 

「っ…!」

 

 未だ喰ってかかろうとしてくるアロエリをセイロンが怒声で止めた

 

「この者の言うことは尤もなことだ。どういう経緯であれ我等は助けられている。その事実に感謝も出来ないような阿呆ではなかろう。それとも、お主の御使いとしての誇りはその程度のものなのかね?」

 

「くっ…!だが俺は、人間の助けなど…」

 

「ならあのまま死んでいた方が良かったと?そんな馬鹿げたことを思ってはいないでしょうね?」

 

「……ちっ」

 

 アロエリは悔しそうにしているが反論のしようがないことを認めたのだろうリシェルの元へ行くと

 

「…さっきは言いすぎた。助けてくれたこと、感謝する」

 

「え、ええ…」

 

 リシェルは先程とは180度違う言葉に戸惑いを隠せていないが、怒気は消えていったしこれで良いだろう

そしてアロエリは改めてミルリーフの元へ行き

 

「遅くなってしまって申し訳ありません、御子さま」

 

「ピィッ♪」

 

「御使いが一人アロエリ、ここに参上致しました。此度の災難、未然に防ぐこと叶わず真に申し訳……」

 

「これこれアロエリ。そういった話は後でゆっくりとしよう。取り敢えずは、腰を落ち着けられる場に向かおうではないか」

 

「いや、しかし…」

 

「善哉善哉。ほれ、我が案内してやろう」

 

 そう言うとセイロンはアロエリの腕を掴んでそのまま街の方へと歩いていく

 

「な…っ!?セ、セイロン!?」

 

「もはや断りもなく、あんたの家が溜まり場になってるわね」

 

「流石に慣れたわよ、もう…」

 

 呆れ気味に言ったリシェルの言葉にフェアは笑いながら応えた

そのまま私達も宿へと戻るために歩き始める

しかし御使いと合流出来たのは良いもののこれは前途多難だなぁ…

 

 

 

 

「けど、どうしてアロエリはあからさまに喧嘩を売ってきたのかな?」

 

 道中、フェアが何気なく呟く

 

「人間のことが大嫌いだからですわ」

 

「え?」

 

「彼女たちの祖先は、人間の都合で労働力として召喚されてきた。あまりに酷い扱いに耐えかね、逃げ出して今に至っているの」

 

 その問いにリビエルは顔を伏せ気味にして答える

 

「つまり、はぐれ召喚獣の子孫だってこと?」

 

 ルシアンがそう尋ねるとリビエルは顔を上げて

 

「貴方たちの考え方で言えば、そうですわね。けど私たちからすれば、気の毒な被害者たちですわ。『ラウスブルク』とはそういったもの達が守護竜の庇護の下に人間と関わらないで隠れ住んでいた場所…彼女にしてみれば、この状況は不本意でしかないでしょうね。関わりたくない人間と関わらざるを得ないのですから」

 

「理解は出来たわ。けど、だからってはいそうですかって納得は出来ないわね」

 

「フェア…」

 

「ミルリーフのことを守るためには、力を合わせなきゃダメだもの。私たちだけでも、貴方たちだけでも、きっと守りきれない」

 

「ええ、そうですとも。フェアさんの言う通りですよ。召喚獣とか人間とかそんなことを気にして仲間割れしていたら、ミルリーフちゃんが可哀想ですよ」

 

「…ですわね」

 

 ポムニットの言葉に表情を緩めたリビエルは、しかしすぐに真剣な顔になり

 

「でも、アロエリ達が人間に抱いてる敵意はとても根深いものよ。ことに、彼女は一途に思い詰める性分ですし…簡単に割り切ることは出来ないでしょうね」

 

「……」

 

 グラッドやミントの顔が暗くなる

人間で、召喚術と深く関わっているからこそやるせない想いもあるのだろう

しかし、だ

 

「…だからといって人間そのものに敵意を抱くのは間違ってますけどね」

 

「え?」

 

「酷い扱いをしてきた人間に対して恨みを抱くのは当然でしょう。しかしそうでない、そんなことをしていない人間に対してまで憎しみを向けるのはお門違いというものです。それこそ独り善がりで勝手な敵意でしかない」

 

「そうかもしれません、ですけど…」

 

「そして見た感じ、彼女はそのことに気付けないような馬鹿ではありません。きっと先祖からの話や人間に扱われている他の召喚獣を見聞きして来てどうにもならないところまで来てしまったのでしょう。なればこそ、その固まった心を溶かしていきさえすればとても心強い仲間になりますよ。大丈夫、きっと分かり合えます。分かり合えなかったその時は…まぁ、ミルリーフを守れないで終わるだけですね」

 

「…最後の一言は余計よ、あんた」

 

「そこも大事ですからね。あれだけ御使いとしての責務を重く受け止めているならその役目を果たすために分かり合わなければならないということにも気付くでしょう。後は彼女のそんな気持ちを利用するような形にならないよう気を付けて友情を育めば良いだけです。口で言うほど簡単ではありませんけど…希望にはなるでしょう」

 

「なるほどねぇ。あんたってやっぱ凄いわ」

 

「褒めてもコーヒー位しか出ませんよ」

 

「十分よ、それで」

 

 その後は他愛ない雑談をしながら帰路についた

しかし、ああは言ったものの内心私は不安である

ああいう盲目的な敵意というのは中々修正出来ないし、大抵の場合何かしらの問題を呼び込むことになる

先程結果的に自分から謝罪と感謝を述べることが出来たことを鑑みるにそこまで心配する必要はないかもしれないが…警戒はしておくことにしよう

 

 そして宿に着いた私はその警戒心は正しかったことを不本意ながら実感することになるのだった

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