共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~   作:フォルカー・シュッツェン

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第二十三話 将軍と黒騎士

「取り敢えずこんなものですかね。彼等自身の力では抜け出すことは不可能です」

 

「ありがとう。わざわざ済まないな」

 

 私は今グラッドの駐在所の地下にある牢獄にいる

勿論投獄されているわけではない、牢に入っているのは先程相手した暗殺者の内の三人だ

あの後の暗殺者達との戦闘はすぐに終わった

私が速攻で5人ほど戦闘不能に追い込むと彼等はあっさりと撤退を開始した

おそらく目的を果たすことは出来ないと踏んだのだろう、思惑通りに事を運ぶことが出来た

気絶させた内の三人は回収されたが最初に手足の腱を切断した者を含めた三人はこちらで捕らえることに成功した

そして今はその捕らえた者達をどう足掻いても脱獄出来ないように拘束し終えてグラッドに報告しているところだ

因みにフェア達はミントの家に先程の少年剣士を運んで治療を行っている

 

「それで、本国からの移送部隊はいつ頃到着しそうですか?」

 

「ここは首都から結構離れてるが、捕らえた奴が紅き手袋だからな。三日もあれば来るだろう」

 

「ふむ…では暫くは私もここに滞在することにします」

 

「おいおい、なんでまた」

 

「簡単なことです。あいつらは強大な犯罪組織の下っ端、捕まったともなれば当然口封じの為に殺しにくると考えて良いでしょう。そうなれば貴方の身にも危険が及びます。流石にいつ来るかも分からない暗殺者を相手に一人で気を張り続けるのは骨が折れますしね」

 

「なるほどな…しかし、良いのか?仮にも俺は年頃の男なんだが」

 

「貴方はそんなことする人ではないでしょうし、それに…」

 

「それに?」

 

「私に手を出せるとお思いですか?」

 

「…無理そうだな。殺される未来しか見えん」

 

「そこまではしませんよ。では私は一度フェア達に説明するために戻りますね。流石にまだ来ないとは思いますが暗殺者が来るかもしれませんので呉々もご注意を」

 

「あぁ、分かった。任せてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は一度駐在所を出てミントの家に向かった

そしてそこには見知らぬ人物が二人いた

どうやら少年剣士(名をアルバというらしい)の仲間だそうで、任務の途中で逸れてしまって探していたようだ

 

「貴公がアウルか。仲間の命を救ってくれたこと、感謝する。おかげで大事な部下を失わずに済んだ」

 

二人のうちの大柄で黒い大鎧を着込んだ男、ルヴァイドが頭を下げてきた

 

「いえ、お気になさらないで下さい。あの状況で助けようとするのは当たり前のことですし」

 

「…普通はそう思っても行動に移せる者は少ない。君のその勇気に救われたのだ。どうか、受け取って欲しい」

 

 イオスと名乗る白い服の男も頭を下げてくる

ここで受け取らないのは流石に失礼に当たるのだろう

私は素直にその気持ちを受け取った後、フェアに数日間グラッドの元に滞在することを告げた

最初は驚いていたが理由を話すと納得してくれた

そして今回の件に関してルヴァイドとイオスから事情聴取を行う必要性があることからグラッドに宿屋まで来るようにとの伝言を頼まれた

 

「てことは暫くは私がまたオーダーとか取らなきゃいけないのね…仕方ないけどちょっと憂鬱かも」

 

 フェアが何気なく呟いた言葉に申し訳ない気持ちでいっぱいになった

大丈夫、きっとリシェル達が手伝ってくれるよ…助けになるかどうかは分からないが

 

 

 

 

☆・☆・☆・☆・☆フェア視点☆・☆・☆・☆・☆

 

「それで、なんで私のお店で事情聴取することになってるの?」

 

 今私達がいるのは私の店の中

アルバの仲間だっていうルヴァイドとイオスの二人から事情を聞かなきゃいけないからってのは分かる

そのためにグラッドお兄ちゃんも呼んできて貰ったし

でもどうして私のお店になるのか説明を受けてないのよね

するとイオスさんが表情を変えることなく答えてくれた

 

「任務上、我らが所在を公にするのはあまり好ましくないからだ」

 

「それで盛り場から離れた宿を探してたのね」

 

「そういうことだ」

 

 実はこの二人と私は今日会うのは二回目だったりする

備品の補充の為に商店街に行ってたらキョロキョロしてるイオスと目が合って、街の外れに宿がないか聞いてきたの

それも人気の少ない所が良いって言うからどういうことなんだろうって思ってたけど…暗殺者に関わる任務に携わってたなら納得ね

 

「それ以前に怪我人が寝てる側で話すのもあれでしょ?」

 

「たしかに…」

 

 リシェルの言葉にも納得した私はグラッドお兄ちゃんに目配せして始めるように促した

因みにミントお姉ちゃんの家には万が一の為に御使いの三人とミルリーフが残ってくれてる

 

「しかし、聴取の場に本当に子供達を同席させるのですか?込み入った事情もあるようですが…」

 

 グラッドお兄ちゃんの懸念も分かる

けど関わった以上は私も話を聞かないと納得出来ない

するとルヴァイドさんが尤もなことを言った

 

「場を借りているのだ、出て行けと言える立場ではあるまい。それに関わった以上説明をせねば彼女らも納得がいかぬだろう。ならば又聞きになるより俺から直に聞いた方がいいはずだ」

 

「…分かりました。では、まずは貴方達が何者であるのか説明を聞かせて下さい」

 

「俺の名はルヴァイド、連れの名はイオスだ。共に『巡りの大樹(リィンバウム)自由騎士団』の末席にその名を連ねている」

 

「巡りの大樹自由騎士団っ!?」

 

 え、嘘でしょ?

巡りの大樹自由騎士団って聖王国に出来たっていう新しい騎士団のことよね

普通の騎士は国に使えて国を守るのが使命なのに対して自由騎士団はそこにいる民を守るのが使命っていう

何が違うのって思うかもしれないけど全然違うの

騎士は国を、ううん国の「利益」を守るための存在だから場合によっては国民を犠牲にすることもある

国に仕えている以上国からの命令には逆らえないの

でも自由騎士は仕える主君を持たないからそういうことがない

完全に弱き人達を、世の平穏を守るために剣を振るう高潔な騎士達なんだ

 

「では、あのアルバという少年剣士も自由騎士なのですか?」

 

「彼はまだ見習いだ。事情があって任務に同行させていたが…途中で予期せぬ事態が起こってしまってな」

 

「と、いうと?」

 

「軍属の貴公ならば伝え聞いているはずだ。帝国領内にて紅き手袋が不穏な動きを見せている…巡回視察の旅の予定が急遽、奴らの企みを調査することになった。そして敵と交戦する事態に陥り、アルバとはぐれてしまった」

 

「で、運良くあたしらに助けられましたっと」

 

 リシェルが茶化すように言う

そこで茶化すようにいうのはちょっと不謹慎なんじゃないかな…

 

「そういうことだ。改めて礼を言おう。おかげで部下を失うことなく済んだ…」

 

 そういってルヴァイドさんは頭を下げてきた

うわぁ、大人だなぁ…ってそんな呑気な感想言ってる場合じゃないよ!

 

「良いってば!?たまたま、成り行きで助けただけなんだしそれに…」

 

「…それに?」

 

「お礼ならやっぱりアウルさんに言ってよ。暗殺者達の心理を捉えて誰にも危害が及ばないよう速攻で勝負を決めた上に下手人を捕まえたんだから」

 

「…そうだな。その捕まえた賊は何処に?」

 

「今は私の駐在所の独房に入れております。念の為件のアウル氏が監視等の為に残ってくれています」

 

「その者の実力は確かなのか?疑うわけではないが、聞いておかねばならなくてな」

 

「心配ないわよ、あいつなら。正直あたしらが束になってかかっても片手でやられちゃうだろうし」

 

「うん、あの人は不気味な位に強いよ。鎧を素手で破壊するくらいだし…」

 

「おいおい、そんなことまでしてたのかよ…今になって怖くなってきたぞ」

 

「大丈夫だよ、あの人自身はとっても優しいから。相手に必要以上のダメージを与えずに戦意を喪失させたり、それが無理でも動けなくなるまで攻撃した相手を治療したりしてたし…本当は戦いたくないんじゃないかなって思う時もあるよ」

 

「なるほどな…」

 

「ふむ…それならば安心して良いだろう」

 

「話が逸れてしまいましたね。ここまでの経緯は分かりました。では、これから先はどうされるおつもりなんですか?」

 

「今すぐにでも任務に戻りたいところではあるのだが…」

 

「彼の怪我を見るに、それも難しいですね」

 

「うむ…」

 

 ルヴァイドさんとイオスさんが難しい顔で悩み始めた

私は少し考えてから、意を決して口を開いた

 

「取り敢えず今日はここに泊まっていきなよ。もともとそうするつもりだったんでしょ?」

 

「いや、しかし…」

 

「遠慮しないで!暗殺者が来たって私ならちゃんと身を守れるしさ。それに…明日、もう一回アルバに話をしてやって欲しいの」

 

「それは…っ」

 

「話してくれなきゃさ、やっぱ納得出来ないことってあるし…突き放されることで成長することだってあるかもしれないけれど、それって大人のずるい逃げ道のような気がしてね…」

 

「フェア、あんた…」

 

「そうだな…では、今日のところは世話になるとしよう」

 

「よろしいのですか?」

 

「ああ。逃げはしない…俺はあの墓の前で、そう誓ったからな…」

 

「ルヴァイド様…」

 

 なんだろう、ちょっとだけ場が暗くなっちゃったな…折角泊まってくれるのに暗いのもなんだし、盛り上げないと

そう思ってた矢先だった

バタバタと忙しない足音と共に扉が勢いよく開いてある人が入ってきた

 

「た、大変ですフェアさんっ!!」

 

 ポムニットさんだった

 

「まさか、もう紅き手袋が襲ってきたの!?」

 

「いえ、襲ってきたのは襲ってきたんですけど…えっと、その…」

 

 そう言ってポムニットさんはルヴァイドさんとイオスの方を見た

なるほど、部外者のいる前で言っていいのかどうか悩んでたのね

確かに不味いのかもしれないけど事態によってはそんなこと言ってられないし…

 

「ポムニット!構わないからはっきり言っちゃいなさい!!」

 

 リシェルがそう言ってくれたおかげでポムニットさんも決心が付いたのか、襲来者の名前を教えてくれた

それはこの状況では出来れば聞きたくない名前だった

 

「は、はい!襲ってきたのは剣の軍団の方々なんですよ!」

 

「なんですってぇ!?」

 

「何もこんな時に来なくてもいいのに…」

 

 ルシアンの言う通りだよ、空気読んでよねレンドラーのおじさん!

 

「おい、なんだ?何が起きてるんだ?」

 

 イオスさんが尋ねてくるけどこれは言えない

剣の軍団のことはともかく、あいつらがなんで襲ってくるのか…つまりはミルリーフのことを教える訳にはいかないもの

 

「ごめん、こっちにも事情があるの…追求しないで」

 

「本当にごめん、でもこらだけは教えることが出来ないの!お詫びに戻ったら美味しいご飯作ったげるから待っててね」

 

 そう言って私は剣を取って店を飛び出した

 

「急用にて、失礼させていただきます!」

 

「すぐに戻ってきます!」

 

「お、おい…っ!?」

 

 後ろではグラッドお兄ちゃんとルシアンも慌てて飛び出してた

リシェルはもうなんにも言わずに私の後ろを走ってる

 

「なんなんだ…いったい???」

 

 

 

 店には困惑顔のイオスと何かを察したのか厳しい表情をしたルヴァイドが残されていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見えた、ミントお姉ちゃんの家!

そこにはポムニットさんの言う通りレンドラーが軍団を率いて攻めてきていた

見たところかなり本格的にここを落とすつもりでいるみたい、陣形も人数も前とは比べ物にならないもの

セイロンとアロエリが抑えててくれてるけど突破されるのは時間の問題だ、急がなきゃ!

 

「このまま攻め込んで竜を捕らえるのだ!」

 

「そうはさせないわよ!」

 

「出おったな、小娘め」

 

「それはこっちが言いたい台詞だわ。呼びもしないのにわらわらと湧いてきて…面倒くさいからとっととやられて帰ってちょうだい!」

 

「そうはいかんぞ?なぜなら吾輩が直々に貴様らの相手をしてやるからだ!!」

 

「なっ!?」

 

 レンドラーから以前にも感じた、いやそれ以上の闘気を感じる

この人、本気だ…前にも増して

しかもこっちにはレンドラーとタイマンを張れるアウルさんがいない…分かりやすいピンチだね

 

「見たところアウルがいないではないか。あの者との死合が出来ぬのは物足りぬが、都合は良い」

 

 グラッドお兄ちゃんですら一歩も動けないでいる

そりゃそうよね…下手に動いたらあの大斧で真っ二つにされちゃうもの…

 

「攻めて来ないのなら、我輩からいくぞ!」

 

 レンドラーが斧を構えて突進してきた

だめ、やられちゃう……覚悟して目を閉じかけたその時だった

 

「ぬうっ!?」

 

 誰かが私とレンドラーの間に入って斧を受け止めてくれた

一瞬アウルさんかとも思ったけど違った

紺色の大鎧、ルヴァイドさんだ

 

「なるほど…これがお前達の言う事情とやらか」

 

「ルヴァイドさん…」

 

「部下の命を救ってもらった礼をしよう…この戦い、我らも加勢させてもらう!」

 

「さぁ、ここは任せてお前たちは仲間のところに急げ!」

 

「だけどっ!」

 

 イオスさんの言葉にルシアンは従おうとしなかった

気持ちは分かるよ、こいつら普通に強いもの

それにこれはかなり個人的な事情による戦い…そんなものに他人を巻き込みたくないもんね

そんなことを思ってるとレンドラーが何やらルヴァイドさんに向けて話しかけていた

 

「ほほう、そうか…貴様が、ルヴァイドか。その名前、はっきりと覚えておるぞ。『傀儡戦争』で滅びた旧王国の崖城都市、デグレア。その特務部隊である『黒の旅団』を率いた苛烈なる猛将…『黒騎士ルヴァイド』、それが貴様だな!」

 

「なんですって!?」

 

「そういう貴様達の鎧から削り取ってある紋章も旧王国の一つ、鋼壁都市バラム騎士団のものと見た」

 

「その名で呼ぶな!?」

 

「っ!?」

 

 バラムの名前を聞いた瞬間レンドラーの表情が怒りに…ううん、憎悪に染まった

なんでそこまで…

 

「今の我らは元老院の道具などではない…我らが姫のためだけに忠誠を捧げた『剣の軍団』だっ!!」

 

「そんな、あの二人が旧王国の騎士だったなんて…」

 

「自由騎士ってのは嘘だったのか!?」

 

「嘘ではない!!」

 

 グラッドお兄ちゃんの言葉をイオスさんが鋭く否定した

 

「だが、我らがかつてそう呼ばれていたのも事実だ…だからこそ今こうして…」

 

 結構深い事情がありそうだね…でもさ、それって

 

「関係ないよ、そんなの」

 

「え?」

 

「フェア…」

 

「過去の経緯なんて知らない、今はただ味方ってことだけはっきりしてれば十分よ。そうでしょ?」

 

「あ、あぁ…」

 

「よし!それなら悪いけどレンドラーの相手は任せたわよ!」

 

「あぁ!」

 

 ルヴァイドさんの頼もしい声と共に戦いは始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

✼•┈┈•✼•┈┈•✼アウル視点✼•┈┈•✼•┈┈•✼

 

 遠くから剣戟の音が聞こえる

おそらくは剣の軍団が攻めてきたのだろう

加勢に行きたいが、今はただフェア達が無事でいることを祈るしかない

なぜなら…

 

「……」

 

「言葉を発することすら不可能にされましたか…外道な」

 

 私は私で牢の中にいる暗殺者達を殺しに来た者と対峙していたからだ

それも人体実験の結果なのか明らかに発声器官を失っている

そいつは両腕に装着された鉄爪を巧みに操って私の目や喉を斬り裂こうとしてくる

私はそれを躱してカウンターを叩き込んでいる

だが、全然倒れる気配がない

壁にめり込むくらいに打ち込んでも普通に出てきて一切鈍ることの無い動きでまた致命傷を狙ってくる

おそらくは普通の暗殺者とは違い、厄介な相手を真正面から叩き潰すために「造られた」のだろう

私が正面からの戦いを最も得意としていなければやられていたかもしれない

しかしこういう存在と戦うのは初めてではないから対策など分かる

なまじ人体実験なんてしてるため、脳の力が弱くなっていて思考しながらの戦闘は出来ない

全ての攻撃が単調だ

その分膂力やスタミナが化け物になっているが、獣皇には大きく劣っているため脅威にはならない

動きの癖さえ分かれば当たることはまずない

後は戦闘不能に追い込む手段を模索すれば良い

しかし…

 

「……」

 

 一言も発することなく繰り出される鉄爪を防ぎながら奴の顔を見る

その顔は仮面に隠れていて見ることは出来ないが、きっとまともな人間の顔などしていないだろう

こいつを真人間に戻すことなど出来はしない

一度破壊された脳は二度と直せはしないのだ

となると私がするべきは、こいつの救済…つまりは殺害だ

 

「あまりしたくはないんですけどね…」

 

 独り言ちながら前蹴りで仮面を弾き飛ばす

下から現れたのは案の定ぐちゃぐちゃになった人間とはとても思えないような酷い顔だった

鼻はもげていて唇がなく歯茎が剥き出し、目は窪み、その瞳は白濁していて視力など失われているだろう

人のことは言えないが、吐き気のするような外道だ

その顔を見た私はこいつを殺すことに決めた

もうこいつを救うにはそれしかない

胴体に蹴りを放ち、一度吹き飛ばす

 

「道具として使われ続けるのももう疲れたでしょう…終わりにしてあげます」

 

 私はそう言って拳形を拳から貫手へと変えた

 

「……」

 

 奴は何を思ってるのか、一時的に動きを止めた

そのまま少しの間膠着する

やがて奴が両腕を振り上げながら突撃して来た

私はそれを躱すことなく受け止めながら貫手を繰り出す

鉄爪が両肩を斬り裂いて食い込むが、途中で力が失われて止まった

奴の顔を見る

私の右手が下顎に突き刺さり、脳天を破って貫通している

脳幹を破壊したので即死したはずだ

その顔は苦痛に歪んでいるようにも歓喜に震えているようにも見える

崩壊しているが故に思っていることが全く分からない

だが壊れたまま使い捨ての駒として利用され続けるよりはマシだろう

私は崩れ落ちる奴の身体を支えながら右手を引き抜き、床に横たえた

 

「お疲れ様です、安らかに眠りなさい」

 

 そう言った私はせめて目を閉じさせてやろうとするも、瞼がなかったので仕方なく仮面を被せることで妥協した

こんなものを送り込んできたのだ、少なくとも今日はもう来ないだろう

さて、急いで掃除をしなければ

私の怪我はすぐに治るしなんならもう治っている

しかし床には大量の血が飛び散っているし、破壊した脳の一部も散らかっている

私はコートを脱ぎ捨てていそいそと片付けを始めるのだった

 

 


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