共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~ 作:フォルカー・シュッツェン
開店と同時に客が入りだし、そこからはラッシュの如く客が来て恐ろしく忙しい
なんせ何時間にも渡って客が全く途絶えることなく満席を維持し続けるのだ
それをフェアは一人で料理を作らなければならないし、私は私でそれらの客の注文、片付け、清掃などをやり続ける
どれくらい忙しいかと言うとマトモに昼食を食べることが出来ないくらいだ
朝にしっかりとしたものを食べるのはその為でもある
そして15時頃になってやっと客の姿が見えなくなり、ちょっとした軽食を食べることが出来る
ここでがっつり食べたいところだがそうすると夜に響くから軽めにするとのことだ
という訳で私達は遅めの昼食を摂っているところだ
「お疲れ様、アウルさん」
「お疲れ様です。いつもながら凄くお客さんが来ますね」
「うん、大変だけど嬉しい限りだよ。お陰でなんとかやっていけてるしね」
なんとも逞しいものである
しかし昼を過ぎると客は殆ど来なくなる
夕食を外で食べることはあまりないそうだ
その為ここからはゆっくり出来る
すると食べ終わったフェアが立ち上がり、軽くストレッチを始めた
恐らくは、「アレ」だろう
「食器は私が片付けておきますね」
「え、いいの?」
「ええ、アレをやるのでしょう?早くしたくて身体が疼いてるのが分かりますよ」
「うっ…じゃあお願いしてもいいかな?」
「ええ、任せてください」
「ありがとう!じゃあ行ってくるね」
そう言ってフェアは裏庭へと走っていった
アレ、というのは稽古のことだ
フェアはケンタロウ氏から戦闘を叩き込まれたせいか今でも鍛錬を続けている
彼女曰く、習慣付いてしまってやらないと調子が悪くなるとのこと
二人分の食器を片付けた私は店番をしつつこれから先どうするかを考えていた
これから先のこと…つまりは如何にして元の世界へ還るかだ
私がここへ来たのは間違いなく深遠なる闇の時空干渉に巻き込まれたことによる
しかしこちらの世界では召喚術というもので呼ばれたという
となれば召喚術に熟知することが出来れば元の世界へ還るヒントが見つかるかもしれない
しかし今のところそれは叶わない
何故か
それを説明するにはまず召喚術について説明する必要がある
召喚術とはリィンバウムを取り巻く五つの異世界から異形の者を呼び出す術
その五つの異世界はそれぞれ「機界ロレイラル」「鬼妖界シルターン」「霊界サプレス」「幻獣界メイトルパ」と呼ばれる
召喚術を用いる者を「召喚士」、呼び出された者は無生物だろうと人間だろうと「召喚獣」と呼称する
召喚の基本原理は「サモナイト石」と呼ばれる特殊な鉱石にマナと呼ばれる力を注ぎ込むことで異世界との通路を開き、召喚対象の「真の名」を唱えて「誓約」によってリィンバウムに呼び出すという二つの段階に別れる
このサモナイト石は地下を流れるマグマに含まれるマナが長い時間をかけて結晶化したものである
一度召喚に使われたサモナイト石には召喚された存在の真の名、又は紋章が刻まれておりその存在をサモナイト石が壊れる、召喚対象の死亡又は消滅、あとは滅多にないことだが誓約の解除がなされない限りは何度でも呼び出すことが可能だ
召喚術の術式には召喚対象と意思疎通を可能にするためにリィンバウムの言語を会話可能にするものも含まれている
しかしこれはあくまで自動翻訳のようなものであるため、召喚対象はリィンバウムの文字の読み書きは出来ない
ただ異なる世界から召喚された者同士の意思疎通は可能だ
次に五つの異世界のことだ
ロレイラルは機械兵士や機械人形、又は工事用重機のようなものや大量破壊兵器のようなものまでありそれらを呼び出すことが出来る
シルターンは古の日本のような世界で、鬼や妖怪に人間が存在しておりそれらの召喚が可能
サプレスは精神世界でありそこに住む住人は実態を持たない
リィンバウムに呼び出された際はマナによって肉体を形成する
そしてそこから呼び出されるのは幽霊、天使、悪魔といった者達である
件の傀儡戦争もここから来た悪魔王によって引き起こされたものらしい
メイトルパは様々な幻獣や妖精、亜人が暮らす緑豊かな世界
かつては亜人の祖先となった人間もいたらしいが、「マナ枯らし」と呼ばれる病によって絶滅したらしい
主に亜人が労働力として召喚されている
そして名も無き世界だが…ここははっきり言って未知の領域だ
まだ何も分かってはおらず主に道具類や石像、水晶といったものが召喚されるだけ
リィンバウムに住む者と変わりない人間が召喚されることもあるらしいがそれらは基本的に秘匿されている
私がそれを知っているのは私自身がそうであるからだけではなく、ミントが派閥の先輩繋がりで名も無き世界から来た人間のことを知っていたからである
しかしその全てが事故によるものであるため結局は何も分かっていないのである
そして私が興味を持っているのは召喚術の「異世界の者を元の世界へ還す」術式だ
召喚獣を元の世界へ還せるのは召喚した召喚士本人だけであり、私には恐らく召喚士が存在しないため私を還せる者はいない
しかしもしかしたら…ルールの穴を付くようなやり方で自分の力で還ることが出来るかもしれない、と思っているのだ
だがそう上手くいくことはなかった
まず召喚術には相性があり、扱える属性には個人差がある
それを調べる実験をした結果私に扱えるのは霊属性、つまり霊界サプレスのみ
しかし私の周囲には機属性のテイラーとリシェル、獣属性のミントしかいない
ルシアンも霊属性らしいが召喚士としての才能がなかったため剣士として修練を詰んでいる
いずれは帝国軍人になるのが夢らしいが、召喚術に関しては頼りに出来ない
そして召喚士は自分の得意な属性を専門に研究するため別属性の知識は皆無と言ってもいい
つまり私は召喚術の基礎知識だけは得られてもいざそれを行使するとなると頼れる人がいないのだ
その為目下の目標は霊属性の召喚士を探すこと、なのだがそれもそう易々とは行かない
理由の一つは何故召喚術を学ぶのかという目的が言えないこと
馬鹿正直に名も無き世界から来て還る方法を模索したいので教えてください、なんて言えばまず召喚獣ということで差別を受けるだろう
召喚術には強制術という無理矢理言うことを聞かせる術式があるため、召喚獣は軒並み差別されているのだ
そして帝国では召喚術はオープンではあるが、誰でも彼でも学べる訳では無い
それに無闇に召喚術を行使しようとすれば忽ちテイラーの聞く所となる
そうなれば召喚獣として売られたり、良くても軟禁、あるいは監視がつくだろう
無論黙って身柄をどうこうされるつもりはない
全力で抵抗はするが、場合によっては帝国軍そのものを相手にしないといけなくなるかもしれない
そうなればより一層召喚術を学ぶ機会は減り、還れる可能性は減る
それどころか犯罪者として隠れながら生きなければならなくなる可能性すらある
そんなのは御免だ
暗い考えに陥っていると複数人の気配と足音が聞こえてきた
これは…まぁ、あの三人だろう
私は立ち上がって玄関を開けた
「いらっしゃいませ」
「…っ!もう、びっくりさせないでよね。心臓止まるかと思ったじゃない」
「ごめんなさい、貴女達の気配がしたので」
「…地味に凄いわね、あんた」
そんなやり取りをしながらリシェル、ルシアン、ポムニットの三人を中に迎え入れた
それから軽く談笑をする
「そう言えばフェアは?何やってるのよ」
「いつもの通りですよ」
「はぁ…お店のこと放ったらかして何やってんだか」
「まぁまぁ、店番は私がしてますし大丈夫ですよ」
「そうだけど…このままじゃあいつどんどん強くなっちゃって男寄り付かなくなっちゃうわよ」
「そんな程度のことで離れる男なんて最初から関わらない方が良いでしょう」
「…案外手厳しいわね、アウル」
「う〜ん、アウルさんもフェアさんも逞しいですわよねぇ。どうしたら私もそう強く在れるのでしょうか?」
「ポムニットさんは今のままで良いよ。僕達は今のポムニットさんが好きだから」
「あら、ありがとうございますお坊ちゃま」
「取り敢えずルシアン、あんたフェアのとこ行きなさい」
「えぇ!?き、急になんなのさ姉さん」
リシェルの発言も唐突だが、何故そこで顔を赤くして急に慌て出すのだルシアンは
…あぁ、なるほど
「急も何も…最初から二人を誘いに来たんだし、フェアが別の場所に居るんなら誰か行かなきゃじゃないの」
「それは、そうだけど…」
「何よあんた…嫌なの?」
「そ、そんなこと…!うん、分かった。行ってくるよ」
少し乱暴な物言いに聞こえるがこれでこの姉弟は上手くやっている
それに誘いに来た、という事はやはり…
「それで、何処に行くんです?」
「あら、察しが良いわね。今夜星を見に行きましょう!」
「ふむ…素敵ですね。ポムニットさんは?」
「私はここで店番をしておきますわ」
「よろしいので?そんな仲間外れみたいな…」
「良いんですよ、貴女には感謝していますし」
「私に?」
「ええ、ですともですとも!貴女が来てからフェアさんの顔から疲れが取れて明るくなりましたから。私にとってはフェアさんもお嬢様とお坊ちゃまと同じくらい大切な方です、そんなフェアさんの負担をとても減らしてくれた貴女には感謝してますの」
「そうでしたか…私はちゃんと彼女の助けになれているんですね」
「そりゃそうよ、あんたフェアがやってた仕事の半分くらい代わりにやってる上に道の整備までしてるんでしょ?良くもまぁそこまでやれるわよ」
そうして話していたら件のフェアとルシアンが戻ってきた
フェアは普通だがルシアンの方は顔が少し赤く、どこかそわそわしていて落ち着きがない
二人が戻ってきたことで話を中断して出かける準備を始めた
フェアは剣を腰に刺し、ルシアンは剣と左手に装着した盾の具合を確かめる
リシェルは長杖とサモナイト石…機属性のもので、大型ドリルであるドリトルと腕にワイヤーで繋がれた鉄球を装着したチェンボルという召喚獣を呼び出すものを持っている
そして私はフルタングのコンバットナイフをシースに入れ、そのシースを脚に固定した
そしてそれが見えないように黒のロングコートを羽織る
ボトムスも黒いしトップスも黒字に暗い紫色のデザインが入ったもので、全体的に黒い
手には指ぬきの施されたレザーグローブをしているから余計である
出掛ける準備、と言うよりも戦いの準備のように見えるがこの世界ではこれが普通である
駐在兵士等が取り締まってはいるものの、街から離れた洞窟や山岳には野盗が屯していたりする
星を見るのだから当然夜、そうなると襲われる危険も上がる
だからこれはそういった事態に対処するための装備だ
正直言うと私はただの野盗如きに武装する必要もないのだが…これにはフェア達を安心させる意義もあるのでしない訳にもいかない
そうして準備を終えた私達は星見の丘と呼ばれる場所へ向けて出発した
アウルの服装はトレンチコートF[Ou]、フロワガロウズ雅[Ba]、指貫きグローブ 黒
基本的にはコオリロングヘア、たまに編み上げハーフアップにしています
そのイメージでお願いします
リィンバウムや各キャラの紹介をするコーナーというか話を設けた方が良いですか?
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欲しい
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要らない