共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~   作:フォルカー・シュッツェン

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今回初めて他キャラ視点にも挑戦してみました
おかげで戦闘描写はかなり簡素になってしまった('ω')


第五話 大波乱の幕開け

「綺麗ですね…」

 

「うん、ほんとに…」

 

街を出て「星見の丘」と呼ばれる場所に来た私達は星空を見上げていた

そこには無数の星が散りばめられていて、そのどれもが美しくも儚く光を灯していた

元の世界の都市部では最早見られることのなくなった空がそこにはあった

当然綺麗な星空を眺められる場所はいくらでもあるのだが、ここの星空は地球とはまた違った雰囲気がある

 

「どうよ、来てよかったでしょ?」

 

「うん、そうね…ありがと、リシェル」

 

「お礼なら私じゃなくてルシアンに言うことね。あの子が言い出したんだから」

 

「ちょ、ちょっと姉さん!それは秘密にしてって…」

 

「…そっか。ありがとね、ルシアン」

 

「う、うん…」

 

お礼を言うフェアの顔はとても嬉しそうだった

ルシアンも頬を染めており、秘密をバラされたのも結果的にいい方向に働いたのか笑顔だ

…性別的に表情が逆な気もするが

乙女か、己は

 

「偶にはさ、こうやって何も考えずに星を眺めて嫌なこと忘れちゃいましょ。こういう時間だって大切なはずよ」

 

「そうだね…ありがとう、みんな」

 

 そう言ってフェアは座って星を眺め始めた

私達もそれに倣って思い思いに座る

私はフェアの右隣に座ったのだが、それ故に彼女の右手首に付いている腕輪が目に入った

翠色で優しげに光っているその腕輪はとても綺麗なのだが、どう見ても外すことが出来ないサイズだ

何処か一部分を開いて着脱するタイプのものかとも思ったがそういった機構も全くない

フェアに拾われた当初気になって聞いてみたところ、あの腕輪は父親であるケンタロウ氏が旅に出る直前にフェアに付けたものらしい

つまりは5歳の頃から付けていることになる

普通はサイズが合わなくなるはずだが、何故かあの腕輪はフェアの手首のサイズに合わせて大きさが変わっているらしい

それも服を着るのに邪魔にならず、尚且つ決して抜くことが出来ないという絶妙な具合に

何度も壊そうとしたようだが鋸でも傷一つ付かないから諦めたとのこと

私の予想だとあの腕輪にはかなり強力な力が封じ込められている

何か…不思議な力を感じるのだ

私には分からない、未知の力が

悪意は感じられないのでそこまで気にしなくても良いだろうが警戒はしておこう

最悪の場合フェアに何かしらの悪影響が出るかもしれない

 

「あ、見て!流れ星よ!!」

 

「ほんとだ…ってなんか多くない?」

 

「きっと流星雨なんだよ。綺麗だなぁ…」

 

 その声に改めて空を見てみると確かにいくつもの流れ星で空が煌めいていた

…ん?

一つだけなにか形、というか明らかに大きさが違うような……

疑問を感じたその直後だった

とてつもない音が響き渡り、地面が少し揺れた

 

「な、なによ今の!?」

 

「あっちの方から音がしたよ!」

 

「…行ってみましょう!」

 

「流石に見て見ぬ振りは出来ませんしね、今のは」

 

 私達は音の発生源へと向かう

するとそこには小規模なクレーターが出来上がっていた

隕石の衝突?

いや、そうであればこんな小規模で済むわけがない

さっきまで私達がいた場所からさほど離れてもいないし、本当に隕石の衝突なら私達は死んでいるはずだ

そして落ちてきたのはどう見ても卵にしか見えない物体だった

 

「あれを見て!」

 

「何あれ…卵?」

 

「そんな、卵は光らないし今の衝撃で割れないはずが…!」

 

「そんなこと言ったってそれ以外になんて言ったら良いのよ!!」

 

「ひとまず落ち着いて下さい。慌てたって何も解決しませんよ」

 

「そ、そうよね…」

 

「取り敢えず、どうする?」

 

「あんた、確かめて来なさいよ」

 

「わ、わたし!?」

 

「なによ、嫌なの?」

 

「嫌って言うか…何か良くないものだったら危なくない?」

 

「私もフェアに賛成です。得体の知れないものに不用意に近付くのはきけ…ん?」

 

言い終える前に卵型の物体に変化が生じた

ひびが入り、より一層強く光りだす

 

「あわわわわ…」

 

ルシアンは完全にパニックになっているようだ

こんな状況なら仕方がないだろう

それから光が収まるとそこには…何かの生物がいた

まさか本当にあれは卵で、今孵化したのか?

だとするとなんて頑丈な卵なのだろうか…

 

「え、なにあれ…」

 

「反った…のかな」

 

「何でも良いじゃない、可愛いんだから!ほら、こっちおいで〜」

 

リシェルがしゃがんで手招きするとその生物は飛んで(浮遊して?)リシェルの腕の中に納まった

 

「ピィッ!」

 

「あはは、甘えてきてるよ。かわいいー!」

 

 リシェルはその生物を撫でて可愛がることに夢中になっている

確かに可愛いけど…なんの生物なのだろうか

 

「この子って、もしかして竜なのかな」

 

「言われてみると確かに竜っぽいかも…」

 

「これが…竜?」

 

 フェアとルシアンが竜かもしれないと言うが私には竜に見えなかった

全体的に丸みを帯びていて角のようなものはあるものの、羽は手と一体化しているようだし鱗もなくてすべすべしている

こちらの世界での竜はこんな感じなのだろうか?

そんなことを考えていると複数人の気配を感じた

それも悪意を持っている人間のものだ

感じた方を向くと十人を越える集団がこちらに向かって来ている

 

「どうしたの、アウルさん?」

 

「何者かがこちらに向かってきています。しかも悪意を持っていますね」

 

「なんですって!?」

 

「ピギィッ!!」

 

 竜の子(?)も反応した

やって来た集団は揃いの鎧と剣を装備していて、明らかに堅気の者ではない

それに野盗の類でも、ない

正規軍から離反した者達か…もしくは犯罪組織の手先か

 

「その竜の子をこちらに渡してもらおうか。それは我らのものだ」

 

 リーダーと思しき人物が高圧的に要求を口にした

この男も竜の子と言っていたことからこの子は竜で間違いないらしい

 

「ちょっと、いきなりやって来て何言ってんのよ!」

 

「…まずは説明してちょうだい。この子は何なのか、何故空から卵の状態で落ちてきたのか…そして何故貴方達が自分のものだと言えるのか」

 

「そうですよ、事情を説明してくれなきゃ何も…」

 

 リシェルの突っかかり、フェアの正論とルシアンの同調に対して男の答えは

 

「……。」

 

 黙って剣を抜いた

渡さなければ殺す、と…単純明快だ

男の構えに可笑しな所は見当たらない

正統派の構えから察するに、正規の軍に所属していた経歴があると見て間違いないだろう

 

「な、なによ…剣なんか抜いて……」

 

 リシェルがまだ突っかかろうとするが、剣を見て怖気ついている

ルシアンも冷や汗を流しているし、この場で落ち着いているのは私とフェアだけか

頼もしいが不憫でならない

 

「…何するつもり?」

 

 腰の剣に手をやりつつ威圧するフェア

しかし男は怯むことはなかった

 

「死ねえぇぇ!」

 

 リシェルに向かって剣を振り下ろして来た

 

「いやあぁぁぁぁ!!」

 

 構えよし、剣筋よし、迷いのなさも問題はない

そのまま放っておけば剣はリシェルを左肩から右腰にかけて斬り裂き、鮮血を吹き出しつつリシェルは倒れるだろう

もしくはフェアがリシェルを守り、男を倒すかのどちらかだ

そのまま放っておけば、だが

 

「は…?」

 

 理解不能な現象が起きたことで男の思考は半ば停止した

男だけではない、男の剣を受け止めようとしたフェアですらあまりの出来事に開いた口が塞がらないようだ

男の剣を親指と人差し指、中指で摘んで止めた私はそのまま指に力を篭める

剣に罅が入り、その直後折れた

 

「こ、ここ、こ、殺せぇぇぇ!!み、皆殺しにしろぉ!!」

 

 未だ放心している男を蹴飛ばすと、やっと正気が戻ったのか悲鳴のような命令を出した

その命令に他の男共とフェア達も動き出し、各々武器を構えた

ざっと数えて15人

先程の男は腰が抜けたのか、立ち上がれていない

他の者も腰が引けている

さて、どうするか…

 

「フェア、リシェル、ルシアン。貴方達はその子を守ってあげていて下さい。もしも敵が来たらルシアンが盾で抑えてる間にフェアの剣、もしくはリシェルの召喚術で倒して下さい」

 

「色々と聞きたいことはあるけど…分かった、任せて!」

 

「なんとかやってみせるわ!」

 

「が、頑張ります…!」

 

 三者三様の返事を聞いた私は竜の子を任せ、敵に突っ込んで行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

✩・✩・✩・✩・✩フェア視点✩・✩・✩・✩・✩

 

 アウルさんが敵に突っ込んで行ってから少し経った

敵が来る様子はないからさっきの事を考えてみる

アウルさんは元の世界で戦いを生業としてるって言ってた

だから戦える力があることは分かってた、それに一緒にお風呂入った時に身体を見たけどもの凄く鍛えられていた

腹筋も割れてたし腕も脚も引き締まっていて細身ながら筋肉質で、その…正直見蕩れちゃった

なんて言うか、野性的でしなやかな猫科動物を彷彿とさせる身体だった

そんな身体からもアウルさんが強いんだろうなってことも分かってた、けど……

戦っているアウルさんを見る

鎧を着て剣を持った男14人を一方的にボコボコにしている

しかも素手で

ナイフ持ってるのに使わないのかな…いや、きっと必要ないんだ

ある者は拳打で吹っ飛ばされ、またある者は回し蹴りでなぎ倒されている

って、鎧凹んでない?

嘘でしょ、どんな膂力してんのよ…

 

「ねぇ…フェア……」

 

 リシェルが引きつった笑顔をしながら声をかけてきた

 

「…なに?」

 

「あの人…何者なの?」

 

「…分かんない、元々戦いの中で生きてきたって言ってたけど」

 

「僕も、あんな風に…」

 

 ルシアンは真剣な顔をしてじっとアウルさんを、その動きを見てる

強くなりたいって日頃から言ってるし憧れに似たものを感じているのかな?

チクリ、と胸に痛みが走った

なに、この感じ…

初めての感情に戸惑う

それがいけなかった

 

「クソがあぁぁぁ!?」

 

 アウルさんに剣を折られた男がショックから復帰したのか素手でこちらに向かってきた

しまった!

慌てて剣を抜こうとしたけど動揺してたせいか、手が滑って剣を落としちゃった

仕方がないからそのまま徒手で対応する

突き出された腕を横に避けて男の顔に掌底を当てる

 

「がっ…!」

 

 一撃目は何とか凌げたけど、次も上手くいくかな…

 

「フェア!大丈夫!?」

 

「フェアさん!」

 

「来ちゃダメ!!」

 

 よく見ると男の目は血走っていてどう見てもマトモな精神状態じゃない、発狂してる

こういう奴は何をしてくるか本当に分からなくて厄介なんだ

だからせめて攻撃対象を私一人に絞りたい

何とか落ち着きを取り戻して剣を拾って構える

斬るわけにも行かないから剣の腹を頭に当てて気絶させよう

間合いを測って…もう少し……って、え?

急に男の身体が少しだけ宙に浮いた

後ろに背の高い人が立ってる

アウルさんだ

どうやら後ろから首を掴んで持ち上げているみたい

鎧着てるから相当重いはずなんだけど…

そのまま絞めて一瞬で気を失わせた

そして手を離して開放する

 

「ごめんなさい、まさかこの人が動けるとは思ってなくて…」

 

「ううん、大丈夫だよ。幸い怪我もないし」

 

「それなら良かったです」

 

 ホッと胸を撫で下ろすアウルさん

とても穏やかな表情でさっきまで無双してた人とは…って他の男達はどうなったんだろう

そう思ってアウルさんの後ろを見てみると

 

「うっひゃあ〜…圧巻ねぇ」

 

「すごい…」

 

 大勢いた男達が全員気絶していた

しかも殆どの鎧は少し損壊してるし、剣も粗方折られてた

その様子を見たリシェルがアウルさんと私の間に立った

まるで私を庇うみたいに…どうして?

 

「ねぇアウル、あんた強すぎない?何者なの?」

 

「ただの人間ですよ。産まれた時から戦いを叩き込まれてはいますけどね」

 

「それって…フェアさんと似てる」

 

「そうね、似てるわ。でもそれにしたって規格外過ぎるわよ。フェアだってかなり強いけど、この人のそれはちょっとレベルが違うわ。だって普通ならこんなこと出来っこないもの」

 

 リシェルが厳しい顔をしてアウルさんを見てる

なるほど、そういうことね…

付き合いが長いから分かる、これはアウルさんを疑っているんだ

リシェルは何だかんだ言って私をかなり気にかけてくれている

もしかしたらヤバい存在かもしれないアウルさんが私の傍にいることに危機感を感じてるんだと思う

だけど

 

「リシェル、アウルさんが別世界の人だってこと忘れてない?」

 

「あ…そっか、そうだったわね。宇宙?とかなんとかが違うって言ってたし、あたし達の常識とか感覚が通じるとも限らないわよね」

 

「それもそうでしたね」

 

「…なんであんたが納得してるのよ」

 

 少し呆れたように言うと、リシェルは笑顔に戻った

どうやら納得してくれたみたいだ

私としては色々と助けてくれるアウルさんを疑いたくないし、リシェルやルシアンと険悪になって欲しくもない

これは私の甘さなのかもしれないけれど…私はアウルさんを信じたい

この人はきっと良い人だ

何かヤバげな力を持っていたとしても、私達の敵になったりはしない

この人となら、どんなことだって乗り越えられる

そう信じたいんだ

そんなことを思いながら私は皆と一緒に帰るのだった

 

 

 




アウルはリィンバウムではフォトンを使えません
そりゃそうだ、そもそもフォトンないんだから
だけど本人の力である呪いは使えます
元々身体能力かなり高いけど呪いの力で常日頃から更に強化されちゃってます

さて、今後どうやって戦力のバランスを取っていこうか…

リィンバウムや各キャラの紹介をするコーナーというか話を設けた方が良いですか?

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