共生の物語 ~屍人と響界種と守護竜と~ 作:フォルカー・シュッツェン
昼の仕事が一段落し、片付けも済んだ所で思わぬ来客があった
なんとポムニットがまた訪れたのだ
彼女はメイドとしての仕事がかなりの量あるため、用もなくここに来ることは殆どない
ということは何かある、それもテイラー絡みの厄介なものが
「どうしたの、ポムニットさん。迎えに来てくれたの?」
「いえ、そうではなくてですね…アウルさん、旦那様が貴女も来るようにと」
どうやら私の勘は当たったようである
「私も?どうしてまた…」
「さぁ…聞きたいことがあるとしか」
「そうですか…分かりました」
「ついでですし、私がご案内しますね」
「お心遣い、感謝致します」
「もう、そんな畏まらないで下さいまし」
敢えて大仰に感謝の意を述べるとポムニットは困ったような笑みを浮かべた
竜の子を一人(一頭?)で残していくことになるが仕方がない
ここで残ると言っても理由を言えないからだ
彼女は立場的にテイラーに隠し事をするわけにはいかないので竜の子のことを話せばほぼ確実にテイラーの耳に入るだろう
そうなればテイラーが多少強引にでも竜の子を手に入れ、利益の為に利用するのは目に見えている
だからリスクが高くても今は竜の子を残して行くしかない
そうして私とフェアはポムニットの後に続いてブロンクス家に向かうのだった
✩・✩・✩・✩・✩フェア視点✩・✩・✩・✩・✩
テイラーさんにたっぷりと利益のことでネチネチと言われた私は急いで家に向かっていた
アウルさんは今テイラーさんと話をしている
てっきり一緒に話を聞くものと思ってたけれど、別々に話をするみたいだった
そして私の隣にはリシェルとルシアンがいる
二人は私が竜の子を連れて来ると思っていたみたいだけど、そんなこと出来るわけないじゃない
ともかく竜の子のことが心配だから割と本気で走る
そして家に着いた私達は中を見て回ったけど何処にも竜の子はいなかった
「ちょっと!いないじゃないのよ、どうするの!?」
「分からないわよ!それに仕方ないじゃない、連れて行くわけにはいかなかったんだからぁ!!」
「二人とも落ち着いてよ!そんなこと言い合ってても何にもならないでしょ?」
「そうだけど…!」
「…そうだよね、ごめんルシアン。リシェルも今はこれからどうするかに集中しよう?」
「…仕方ないわね、分かったわ」
それから私達は手分けして竜の子を探すことにした
ルシアンはもしも竜の子が戻ってきた際に備えて残ることになった
私は溜池、水道橋、商店街と探していったけど見つからなかった
途中でグラッド兄ちゃんに会って、事情を説明したら「俺が見つけてやる」と言って協力してくれた
今朝は竜の子のことを全く信用してくれなかったけど、今回は私がかなり真剣だったのもあってか信用してくれたみたい
それからも暫く探し続けたんだけど見つからなかった
焦りと心配する気持ちでいっぱいになった私は気が付くと私塾の近くに来ていた
ここは私やリシェル、ルシアンが小さい頃に色々と学んだ場所だ
この私塾の先生はセクターという名前で、元帝国軍人だったの
怪我で引退したらしくて杖をついている
セクター先生は温厚な人で教え方がとっても上手だ
子供の話を真剣に聞いてくれて親身になってアドバイスをくれる、そんなとても良い人だ
もしかしたら竜の子のことも信じてくれるかもしれない
そんな事を考えてたら後ろから声を掛けられた
「おや、懐かしいね。フェアくんじゃないか」
「わっ…!セクター先生」
「驚かせてしまったみたいだね。すまない」
「ううん、いいのいいの」
記憶にある通りの穏やかな笑みに落ち着いた声
先生と少し話しただけで私は焦りが鎮まる
昔からそうだった
どれだけ慌てていても、先生と話すだけで落ち着きを取り戻せるの
「それで、どうしたんだい?わざわざこんな所まで」
「えっと、それは…」
先生に話したいと思っていたけれど、いざその時になると躊躇った
これはいわば人(竜)探し、怪我で足が不自由な先生に協力してもらうわけにはいかないからね
「…?」
「ううん、なんでもないの!久しぶりに先生と話したくなっちゃってさ。元気出たよ」
「そうかい?それなら良かった。宿屋の仕事は大変だろうし、また話したくなったらいつでもおいで。私には話を聞くくらいしか出来ないけど、それで良ければ喜んで君の力になるよ」
「うん、ありがとうセクター先生!それじゃあ、またね!」
「あぁ、また会えるのを楽しみにしているよ」
セクター先生と別れた私は溜池に向かった
するとそこにリシェルがいた
「リシェル!どう、見つかった?」
「ううん、見つからないわ。でも大丈夫よ!」
「え、どうして?」
「ミントさんに相談したらオヤカタを貸してくれたわ。匂いを辿れるかもって!」
そう言われて足元を見てみるとミントさんの護衛獣のオヤカタがちょこんといた
「あ、なるほど!さっすがミントさん」
「ちょっとあたしは?」
「はいはい、リシェルもすごいわよ」
「いまいち誠意が感じられないわね…ま、いいわ。そんなこと言ってる場合でもないしね」
「そうだね。オヤカタ、分かる?」
「ムイィ…ムィッムィ!」
オヤカタが強く反応してある方向を指し示した
「見つけたのね!!」
「さっそく行こう!」
私とリシェルはテコテコと走っていくオヤカタに付いて行った
「もう、オヤカタぁ…」
「ムイィ…」
リシェルは明らかに落胆してる
それもそのはず、オヤカタに付いて行った先は私の家だったんだもの
一応中も見てきたけど戻ってきてないみたいだし、事情を知ったポムニットさんにちょっとだけ怒られちゃった
てことでもう一度探しに行こうってなった時、来客があった
「フェア!」
「アウルさん、グラッド兄ちゃん!見つかったの!?」
アウルさんとグラッド兄ちゃんだった
「いや、そっちはまだなんだが…その途中で具合が悪そうにしている子がいてな。すまないが、ベッドを貸してやってくれないか?」
「そっか、残念だけどそうも言ってらんないね。良いよ…って」
なんとなくアウルさんの背に負われてる子を見た時、私に電流が走った
この子は…!
「どうしたのですか、フェア?」
「そ、その子だよ!私が今朝言ってた思いっ切り噛んで来た子だよ!!」
「な、なんだって!?」
皆が驚く中(アウルさんは割と冷静に見えた)その子供の身体が光りだして、目を開けていられなくなった
光が収まって目を開けるとそこには…
「おや、竜の子ですね」
「「「えぇ〜〜!?」」」
驚きの声が木霊した
✼•┈┈•✼•┈┈•✼アウル視点✼•┈┈•✼•┈┈•✼
ぐったりとしていた竜の子をひとまずミントの家へと運び、診てもらうことにした私達は今ジュレップ宅の別室にてミントが診察を終えるのを待っている
暫くするとミントが額を拭いながらやって来た
「ふぅ…」
「ミントお姉ちゃん、あの子の様子は!?」
「今は寝かせて安静にしてあるわ」
「それで、あの子はどんな病気なの!?」
「病気じゃないよ。ただ頑張り過ぎて体力を過剰に消耗しちゃっただけ。だからゆっくりと寝かせてあげれば大丈夫だよ」
「良かったぁ…」
フェアにリシェル、ルシアンの三人はそれを聞いてとても安堵したようだ
そこへ明らかに頬を紅くしたグラッドが質問をする
「それで、ミントさん。あの子はいったい何なのでしょうか?人間に変身する召喚獣なんて聞いたことがありませんし…」
「あの子は間違いなく竜の子ですね。それもかなり珍しい…少なくとも普通は街に出てくるような子ではありません」
「な、なるほど…」
頬が紅いどころか少し挙動不審にすらなっている
…ミントに好意を持っているのがバレバレである
ミントは色白で金髪碧眼、可愛らしい顔立ちに巨乳で更に性格も穏やかで茶目っ気もあり可愛らしいというモテ要素を詰め込めるだけ詰め込んだ正しく「男の理想の女性」であるから仕方の無いことだとは思うが
実際ミントに好意を寄せているのはグラッドだけではないし、この街の男の大半がそうであると言っても過言ではない
「それにしてもびっくりよね〜。まさか人の姿になっちゃうなんて、全然知らなかったわ」
「仕方がないよ。そもそも普通の竜は人に変身なんてしないもの」
「どういうこと?お姉ちゃん」
「うんとね、それを説明するにはまず『亜竜』と『至竜』について話さないといけないね」
「ありゅう?しりゅう?」
「うん。まず亜竜はね、身体的に竜の特性を備えているもの。鱗や翼があったり、力が強くて炎を吐いたりとかね」
「獣属性のワイバーンとか?」
「そうそう。そういう如何にも竜、って感じなのが亜竜かな」
「なるほど…」
「それでは、至竜と言うのは?」
「亜竜の特性に加えて高い知性と魔力を持っているの。人間よりも遥かに長生きで、年老いた至竜はあらゆる知識を有していると言われているわ。それらを用いて人には不可能な、理解出来ない奇跡を起こせるらしいの」
「じゃあこの子が人間の姿になってたのって…」
「うん…きっと至竜の力なんだと思う。けど、どんなに凄くってもまだまだ産まれたばかりの子供。だから無理して力を使いすぎると…」
「バテて倒れちゃった、てことね」
「そうなるね」
「そっか…」
「取り敢えず今日は私がこの子のことを診るね。回復したらまた明日の朝連れて帰ってあげて」
「うん、分かった。色々ありがとね、ミントお姉ちゃん」
「ううん、良いの。文献でしか見ることの出来ない至竜をこの目で見られて私もちょっと舞い上がってるし」
「それじゃあまたね、ミントさん」
「あの子のこと、お願いします」
「では、私も失礼させてもらいますね」
「ほ、本官もこれにて通常業務に戻らせていただきます」
フェアに続いてリシェルとルシアン、それに私もミントの家を後にすることにした
グラッドも見回りに戻るようだが、名残惜しいのが手に取るように分かる
これだけあからさまなのにミントが気付く様子は全くない
教養はとても深いが、こういうことには凄く鈍感らしい
宿への道を辿る途中、徐ろにルシアンが口を開いた
「それにしても…あんなに凄い子だったなんてね。そりゃ悪党達が欲しがるわけだよ」
「その事なんだけどさ、皆昨日の彼奴らのことは話した?」
リシェルの問いにフェアとルシアンは否定の意を示した
「話してないよ。それを話したらきっとあの子を取り上げられちゃう」
「そうだよね、私も同じ考えだよ」
「そうよね…安心したわ」
「安心してる場合ではありませんよ、三人とも」
「「「え?」」」
「見つけたぞ!お前達だな、昨日邪魔した子供達というのは」
2mは軽く越えているであろう大男が全身に鎧を着込み、巨大な戦斧を手に持って声をかけてきた
その後ろには同じ鎧を身に付けた集団がいる
明らかに軍属、もしくは元軍属の者達だ
昨日の奴らとは着ている鎧が違うが、繋がりがあるかもしれない
「そして貴公か、我輩の部下を叩きのめした滅法強い女というのは」
繋がりがあるどころか部下か
こいつが親玉…というわけでもなさそうだ
彼等は騎士か兵士か、どちらにせよ言い方は悪いが目的を達するための手駒である可能性が高い
そうだとすればそれを扱う者が裏にいるはずだ
「…だったらどうだと言うのです?」
「まずは先日の部下達の非礼を詫びよう。そちらの子らが対話を望んだというのにいきなり剣を向けるなど騎士の風上にも置けん」
「ふむ…」
そう言って軽く頭を下げてくる
意外だった
てっきり私は彼等もいきなり襲いかかってくると思っていたが、どうやら騎士としての誇りを持っているようだ
「だがな、部下をやられて鎧も剣も滅茶苦茶にされた以上詫びるだけというわけにはいかぬ。それにあの竜の子は我等には必要なものなのだ。素直に渡してくれれば決して危害は加えぬ…だがあくまでも抵抗するのなら」
そこまで言うと大男は戦斧を構える
それが合図なのか後ろにいた者達も剣や槍を構えて陣形を取った
「力ずくで奪わせてもらうぞ!!」
先程までの威圧的ながらも穏やかな雰囲気は一瞬で消え失せ、凄まじい気合いと共に闘気が放たれる
「くっ…」
余りにもの闘気にフェアでさえ二の足を踏んでいる
私は受け流せたが、屍達やオラクルでの創造神との戦いを経験してなければ当てられていたかもしれない
それほどのものだった
この大男を相手しながら他の者達も制圧し、フェア達を護るのは呪いの力を最大限使用しなければ…屍化しなければ不可能だ
大男は私が倒すとして、その他はフェア達にやってもらうしかない
しかし今動けそうなのはフェアしかいない
リシェルとルシアンは声も出せなくなっている
このままではどうしようもないので私は優しさで包んだ闘気を発し、その闘気を用いてフェア達を囲んだ
そうして相手の闘気から守って三人に聞く
「動けそうですか、皆さん?」
「うん、ありがとうアウルさん。お陰でなんとかやれそうだよ」
「さっきまで指も動かせなかったけど、急にやる気が湧いてきたわ。心地良くて安心感すら覚えるけど、あんたがやったの?」
「ええ、そうです。ルシアンはどうですか?戦えますか?」
「はい、やれます!」
リシェルが杖とサモナイト石、ルシアンは剣と盾を構える
フェアは武器を携帯していなかったので私のナイフを貸した
すぐにでも敵から武器を奪ってそれを使うことだろう
それまでの繋ぎになれば良い
彼女等が戦えることを確認した私は大男の元へと歩いていく
「私達に降伏の意はありません。よって…」
「合戦だな。我が名はレンドラー、『剣の軍団』を率いる『将軍』だ。始める前に貴公の名を聞いておこう」
「私の名はアウル。今はあの子達の保護者のようなものです」
「ではアウルよ。悪いが全力で潰させてもらうぞ!」
「望むところです!」
そして戦いの火蓋は切って落とされた
レンドラーは原作での序盤の小物臭と後半の高潔な騎士のイメージにギャップがありすぎると感じたので、セリフを大幅に変更しますた
リィンバウムや各キャラの紹介をするコーナーというか話を設けた方が良いですか?
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欲しい
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要らない