艦隊これくしょん~呉鎮守府の日常~   作:猫フランお嬢様

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江風の誕生日大作戦です

 時刻は午前8時を回った頃

 白露型駆逐艦9番艦江風は、陽気な雰囲気を出し鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。

 その日江風の陽気な雰囲気は、他の駆逐艦達にも伝わり、口を揃えて「江風今日はいつも以上に機嫌がいいね!」

や「江風さんなんだか、輝いているのです」と噂が口から口へと広まっていったのである。

 何故江風が、そこまで上機嫌なのかと言えば、今日11月1日は江風の進水日であり、いわば誕生日なのである。

 流石に、子供のように馬鹿はしゃぎする事は出来ないが、それでも

高揚する気持ちは、江風の心を水平線から顔を出す太陽のように明るく照らした。

 海風「ふふ江風、今日はなんだか楽しそうね♪」

 姉である海風は、微笑みを浮かべそう言った。

 その言葉に、江風も満面の笑みで「そうかい?」と答え、海風の方に振り返った。

 江風「そりゃあ、今日はあたしの特別な日だからねぇ♪、、海風の姉貴は分かるだろう?」

 江風の問いに、一瞬クスッと笑ったが、天井を見回し足早に歩き始めた。

 海風「えぇ?、、それはどうだったかしらね♪」

 江風「おいおい汗、、その冗談はきついよぉ汗」

 苦笑いを浮かべ海風の後を追いかけた。

 海風「さぁ、冗談かどうかは分からないわね~♪、、そんな事より、これから洗濯しにいきますよ

江風も自分の洗濯物あるなら籠に入れておきなさいよ?」

 海風は、そう言うとそそくさと自分の部屋へと戻っていった。

 最初は不満そうな表情を浮かべていた江風だったが、海風の姉貴だけだろうと他を当たりに行った。

 まず、江風が向かったのは、時雨たちの部屋であった。

 江風「時雨の姉貴たちなら、覚えてくれてるよな」

 不安はあるものの、自分に言い聞かし勢い良くドアを開けた。

 開かれたドアの向こうには、ピンクの多い部屋が広がっており、その中央に置かれた机を挟んで

時雨と夕立がいた。

 二人は、紅茶を入れてお菓子を嗜んでいる最中であった。

 時雨(改二)「江風じゃないか、どうしたんだい?」

 クッキーを咥えたまま江風のほうに振り返った。

 夕立はクッキーを頬張りリスのように両頬を膨らませ江風の方を向く。

 江風「ちょっとね、確かめたい事と言うか、聞きたい事があってさ、まぁとりあえず、クッキーを一つ」

 手を伸ばし机の上に置かれたお皿からクッキーを摘むとヒョイっと口の中に放り込んだ。

 そして、甘い味を堪能しながら嚙み砕き飲み込んだ。

 夕立「ヒャッテたヴぇるひょ、ヴぉぎょうぎぃヴぁりゅいびょい!」

   翻訳(立って食べるの、お行儀悪いっぽい!)

 夕立は口いっぱいに頬張ったクッキーが、零れないように口を両手で押さえながら言葉を発していたが、

解読できるわけもなく、江風は首を傾げた。

 江風「夕立の姉貴何言ってるか分からないよ汗」

 時雨「ああは汗、、それより江風僕たちに、聞きたい事って?」

 紅茶を飲み、口の中のクッキーを流し込む夕立を尻目に時雨は、

江風を見つめた。

 江風「あ、そうだった、時雨の姉貴らは今日何の日か知ってる?」

 江風は、満面の笑みを浮かべながら時雨たちに聞いた。

 その問いに一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、笑みを浮かべ首を横に振った。

 時雨「うーん、、僕たちは分からないな汗、、夕立は何か知っているかい?」

 夕立「ゆ、夕立も知らないっぽい汗」

 時雨に振られた夕立も、クッキーを食いついたまま首を横に振る。

 そんな時雨たちに江風も驚きを隠せなかったが、「またまた~」と

本音を聞きだそうとした。

 時雨「あはは汗、、本当に知らないんだ汗ごめんね」

 江風「そ、、そうなんだ、、、ま、まぁ知らないなら仕方ないよね、、、、あはは汗」

 苦笑いを浮かべながら、クッキーをもう一つ摘み部屋を出た。

 時雨たちが知らなかったという事に、少しショックを受けた江風だったが、

偶然と自分に言い聞かせ、別の子達の部屋に向かった。

ーーー提督室

 江風が、艦娘の部屋を訪ねては、自分の特別日を言い当てれる子を探し回っている頃。

提督室では、海崎と海風が江風の誕生日でのイベントに関して話し合われていた。

 料理を考え、会場つくりの状況を把握した後修正案を出したりと、着々と準備が進められている。

 海崎「とりあえず、料理はこんなものでいいと思う、」

 海崎は、間宮から送られてきたメニュー表に目を通しながら一つ一つ確認していく。

 海風「はい♪、、ケーキも間宮さんに手配していたものが、既に食堂に準備されてますよ♪」

 海崎「あぁ、ありがとう♪、、よし予定時刻には間に合いそうだ♪、、、江風にはまだ、パーティーの

事は話してないよな?」

 海風「はい!もちろんですよ♪、、江風以外の全艦に極秘を徹底させています♪」

 海崎「よし♪、、、じゃあそろそろ我々も移動しようか、」

 海崎は、そういうと立ち上がり正帽を被った。

 海風「では、私は江風を呼んできますね♪」

 海風も、一礼し部屋を後にした。

 

 その頃江風は、堤防に一人座り水平線を見つめていた。

 時雨達の部屋を後にした江風は、駆逐艦寮や軽巡寮、戦艦寮でも聞いて回り、

聞いた全ての子達が、「知らない」と言い慌てた様子で江風から逃げられていた。

 今日は、江風にとって特別な日であり、皆が知っていて、祝ってくれるだろうと

思っていただけあって、その事実はあまりにショックが大きかった。

 江風「はぁ、、、皆何で知ってないんだよ~、、、しかも何故か逃げられるし~、、

まぁ最近新しい奴がいっぱい来たし、あたしはお役ごめんなのかね汗」

 そう考えれば考えるほど、気持ちが落ち込んでいった。

 それと同時に寂しさがこみ上げてきて、江風の目に大粒の涙が溢れ出てきた。

 涙を流すなんて自分のキャラじゃないと思っていた江風は驚き涙を拭うが、

次から次へと溢れ出てきて収集がつかなくなっていた。

 そんな所に、江風を探しに来た海風が走ってきた。

 海風「あ、居た居た♪江風ー!、、って、江風どうしたの!?なんで泣いてるの!?」

 あまりにもの光景に驚いた海風は、江風の隣に座り、顔を見つめる。

 江風「泣いてないけどさ、、拭っても出てくんだよ~泣」

 海風「それは泣いてるのよ、、、ほら、私に言ってくれないと、分からないわよ?」

 海風は、泣いている江風を慰めながら優しい口調で問いかける。

 江風「、、、今日は江風の誕生日なのに、、誰に聞いても知らない、知らないって言うんだよ、、

それに最近新しい奴もたくさん来てさ、、あたしはお役ごめんなのかって思ったら、寂しくなっちまってよ、、、」

 自分でも、自分のキャラに合わないなと思った江風だが、高まった感情を上手く制御できず、

そのまま思ったことを吐いた。

 それを聞いた海風も、罪悪感を感じたのか、顔を引きつらせたが、顔を横に振り、

笑みを浮かべると江風を抱きしめた。

 海風「なんだそんな事で泣いてたのね、、、大丈夫よ江風、私も提督も、艦隊の皆さんも、ここ呉鎮守府に所属する皆さんが江風を要らないなんて思った事ないわよ、、、だって皆仲間でしょ♪だから大丈夫」

 江風の頭を撫で、強く抱きしめたままそう言った。

 その優しい言葉が心に来たのだろう、江風は、ついに声を出して泣き始めてしまった。

 江風「海風の姉貴ー!泣、、、わぁぁん」

 海風「まったくもう、、今泣いちゃってどうするの~?、ほら皆待ってるわ、、行きましょ♪」

 そう言うとゆっくり立ち上がり江風も立たせる。

 江風「皆待ってるって?」

 海風「それは、行ってからのお楽しみよ」

 江風を連れて食堂に向かった。

 

ーーーー食堂

 海風の手を握り、食堂の扉前にまで来た江風は目を擦り前を向いた。

 海風「江風大丈夫?」

 ドアノブを握った海風は、開く前の確認にと江風を見つめる。

 泣いた事に少し恥じらいを感じたのか顔は少し赤いが、いつもの江風に戻っているような気がした。

 江風「あぁ♪、、あたしはいつでも大丈夫さ♪」

 江風は、いつものように無邪気な笑みを浮かべてみせた。

 その笑みに、海風も安心して同じく笑みを浮かべた。

 海風「じゃあ行くわよ♪」

 そして海風が食堂の扉を開け江風が1歩中に入った途端

大量のクラッカーが鳴らされ、紙ふぶきが舞った。

 皆「江風!お誕生日おめでとう!!」

 呉鎮守府に所属する艦娘達による、サプライズに驚いた江風は、

その場に立ち尽くしていた。

 「知らない」と一点張りしていた時雨たちをはじめ、聞いて回った子達も

おり、嬉しさと安心感を感じた江風の目にはまた涙が浮かび、満面の笑みを浮かべた。

 海風「江風、、お誕生日おめでとう♪」

 江風「皆、、、ありがとう♪」

 こうして、無事江風の誕生日作戦は成功に終わったのである。

 

 5話終わり

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かなり遅くなったけど

11月1日江風の(進水日)

江風お誕生日おめでとうーーーーー!!!!

 

第5話のご閲覧ありがとうございます。

 

 

もしよろしければ、ご感想、ご評価をよろしくお願いします。

 

(勉強になります)

 

 

 

ではまた、次回にお会いしましょう

 

 


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