名門大卒ニートの俺が、動画投稿者で居続ける訳 作:motetyan
第三章
「おう!こーき時間ギリギリだぞ!」
俺は、結局柊に二時間近く付き合わされ貴重な実習時間を奪われてしまっていた。
「すまん、元(はじめ)。実習の時間に待ち合わせてたのに間に合わなくって。」
「また嫁さんとイチャイチャしてたんだろ。なら仕方ない、俺以外の男からは殺されるだろうがな。」
「こいつは武藤元。俺の隣近所に住んでいて、幼少期から親のつながりもあり仲良くしている。俺と柊を熟年夫婦扱いしてくるとても、かなり、すんごくおせっかいな奴だ。」
「誰に話してるんだ?ていうか、悪意を感じる説明なんだが。」
「作者が、お前の説明をどうつければいいのか悩んだ挙句、俺の話に盛り込んだらしい。」「なるほど。」
俺と元はたわいのない話をしながら塾の教室へと向かった。
「今日の範囲は受験で最重要となる部分でもあるからわからない部分があったら聞きに来るように。では、今日はここまでだ。」
授業が終わり、そそくさと受講生は教室を後にする。
「帰るぞーこーき。」
「すまん、ちょっと質問してくから先帰っててくれ。」
「りょーかーい。それとお前、やっぱいいやどうせ明日話題になるだろうし。じゃあな!」
元は意味深な言葉を残して、教室を後にした。明日話題になるという言葉の意味が理解できないまま俺は講師のもとへと向かった。
翌日の朝、昨日の元の言葉をすっかり忘れていた俺は普段通りの学校へ向かった。学校につき席に着くと、普段とは違う光景に俺は不信感を覚えた。クラスメイトが全員こちらを向いて何かを話している。これは非常におかしな光景であった。普段通りであれば、俺は着席 後空気のような存在になる。まるでそこにいないような存在として扱われるはずなのだ。 今日の俺はまるでスーパーヒーローそのもののようであった。
不意に肩をたたかれ振り向くとそこには広瀬がいた。
「高橋君動画投稿はじめたの!?Dwitterですんごい広まってたよ!すごいね!」
彼女は、生き生きとした顔で話していた。落ち着いた彼女の姿はそこにはなく高揚感に満ち溢れているようだった。その顔に一瞬我を忘れていたが、落ち着きを取り戻した俺は昨日の元の言葉の意味をようやく理解した。
「広瀬さん久しぶり。えっと、Dwitterで何が広まってるって?」
「高橋君の動画だよ!あいさつしながら顔にパイ投げられるやつ!私すごい笑っちゃったよ!」
彼女の笑顔を見れて俺は幸せな気持ちになれたと同時に、柊を処刑する決意を固め、奴の教室へと足を運んだ。
第四章
俺が柊の教室に入ると、クラスの人間が一斉にこっちに視線を向けひそひそと話している。八割以上の人間からDwitterという単語が漏れている。まったく、ひそひそ話は当事者に声が聞こえないようにするものだろ。
そんなことを考えていると目の前に柊が現れた。
「おっはよーーーさん!!朝から私にラブコールをしに来たのかね幸樹君。でもごめんなさい。」
「おい、俺がフラれたみたいにするな。話があるから来い。」
そう言い終えると俺は、柊の腕を引き渡り廊下に連れて行った。
「女の子に乱暴はよくないって習わなかったのかな?」
「今は、例外だ。何を言いたいか俺から言わなくてもわかるよな?」
「愛の告白ならさっきごめんって。」
「あほか!Dwitterで広まってる俺の動画のことだよ。あの動画はUtube用の挨拶動画のはずだろ。」
俺はこみ上げる怒りを抑えながら、柊を問いただした。
「Utubeはまだマイナーな動画サイトだからなあ。あそこで挨拶したところで集客効果が見込まれないのだよ幸樹君。老若男女すべての人に効果的に宣伝をするなら、Dwitter一択!というわけだよ。敬意を払いたまえ。」
(こいつは何を言っているんだ。集客効果?宣伝?いったいどこを目指して動画作成をしている。ただの娯楽や趣味の一環その程度じゃないのか?)
俺はすっかり忘れていた、柊真奈という人間が常人離れした考えしかできないということを。
「Dwitterのおかげで動画の期待度は高まってるよ!ということでこれからもよろしくね、コーチャンネル!」
彼女はその言葉を後にして、その場を去っていった。やり場のない不思議な感情とともに、俺は今後の絶望感から崩れ落ちた。
放課後のチャイムとともに、全校生徒がそれぞれの活動場所に向かい歩を進めていた。部活・勉学・帰宅し趣味の探求己の私利私欲を満たすために彼らは活動していく。そんな中俺は、例の空き地に柊といた。
「さー今日も元気いっぱい、コーチャンネルを撮っていっくよー!」
「待て、この際もうDwitterの動画はどうでもいい。だがしかし、俺の約束を忘れたとは言わせない。動画のジャンルは学生創作映画だ。この場に俺一人しかいないのに取れないだろ。」
「もちろん忘れてないよ!だからこうして、新メンバーを連れてきたんだよ!ご紹介しましょう!どうぞお越しください!」
そう柊が言い終えると、空き地に面した道路わきから広瀬舞が現れた。
「こ、こんにちは!広瀬でーす!」
広瀬さんは、顔を赤らめながら必死に声を張り上げ自己紹介をしながら登場した。
(かわいい。いや、今はそんなこと言ってられない。が、しかしかわいい。)
「おいこら幸樹君、舞ちゃんがかわいいからって見惚れてないであなたの仕事をしなさい。」
「見惚れてないから。というか広瀬さんがどうして?」
「いや私も最初は断ったんだけどね。真奈ちゃんにどうしてもって一日中頼まれたから。」
広瀬さんは少し困ったような表情を見せながら、答えた。
「無理に応える必要ないんだよ!柊のわがままに答える必要だってないし!」
「いやいや、真奈ちゃんには前々から動画に興味あるって話していたし、いつか一緒に撮りたいねとも約束してたから。」
広瀬さんは、微笑ながら話した。その瞬間、俺は自分の発言の重さを再確認した。
(学生創作映画をつくるためには頭数が必要であった。俺は自分が目立たないように『あえて』こう答えたつもりであった。しかし、その裏を突かれたのだ広瀬に。)
「柊…こっち来い。」
柊を空き地の端に招き、俺は問いただした。
「お前、図ったな。」
その時の俺の言葉にはまるで、能寺を燃やされ怒り狂った織田信長が明智光秀に対して放った言葉のような重みを帯びていた。
「こうすれば、逃げるに逃げられないでしょ(笑)」
本当に、彼女は化け物ではない『悪魔』だ。
ストックがない、、、だ、、と、、、