名門大卒ニートの俺が、動画投稿者で居続ける訳   作:motetyan

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新たなメンバーとして、学生創作映画の一因となった広瀬舞。
高橋幸樹・柊真奈・広瀬舞は、動画制作に踏み出ることになる。


柊が、動画投稿を始めた訳

第五章

「それじゃあ、おふたりさーんもっとよってよって。撮るよー。」

 柊が、カメラを覗きながらこちらに指示を仰いだ。彼女は、学校にいるときも常にハイテンションだが動画のこととなるとより一層テンションをあがる。

「これから、このチャンネルで創作映画を投稿していくつもりです。よかったら見てな!」

 俺は精一杯のハイテンションを演じカメラに向かって話した。

「カーーーーーット!幸樹君やればできるじゃん!でもまだ足りないものがあるんだよ!わかる!?」

「わからんしこれが俺の精一杯だ。これ以上何をどうしろと?」

少しいら立っている俺を前に、柊はお構いなしに続けた。

「スマイルだよスマイル!笑顔を見せなきゃ見てる人に嫌々やってるって伝わっちゃうぞ!」

          (嫌々やらされてるのは事実だろ!) 

内心では、そう思ったが広瀬さんがいる手前本音を出せずにいた。

「私は何も話さないでいいの?」

 広瀬さんは心配そうに柊に対して質問していた。

「いいのいいの!舞ちゃんは立ってるだけで華になってるから!」

「華になってる?」

 広瀬さんは柊の言葉の意味を理解していないようだった。彼女は、立っているだけでまさに『華』なのだ。そこにいるだけで光り輝ける存在なのだ…。その意味は、3日後に証明されることになった。

         【かわいい人が映ってる誰これ期待!】

         【男は地味だけど、女の子かわいい!】

     【どこの女優さん!?男じゃなくて女の子しゃべって欲しい!】

 三日後に投稿された初めての動画のコメント欄は、広瀬さんに対してのもので埋め尽くされていた。俺に対してのコメントは、邪魔だの地味だのアンチめいたものばかりであった。もちろんアンチ以外のコメントもあった。

          【笑顔が不自然だよwwこーさんww】

これがきっかけで俺のチャンネル内の名前が確立した。感謝しないとな『元』には。いつか血祭りにあげてやることを決意し、いつもの空き地に向かって俺は歩を進めた。

 この頃からだろうか、カメラの前に立つことが楽しくなり始めていたのは。

 そして、俺が名門大学を出てまでニートを続けることとなった人生の歯車が動き出したのは…。

 

第6章

「今日はメンバー集めに行くぞおおおおおおおおおお!」

 いつも柊は唐突に物事を提案する。

「メンバー集めって、そろそろ本格的に活動を始めるってことか?」

 俺と広瀬さんで撮った初めての動画を投稿してから1週間がたっていたこの時期は、夏休み前の期末考査2日前であった。

「モチのロンだよ!1週間時期を開けたのも、視聴者に待ちきれない期待感を溢れさせて もらうため!作戦を順調!夏休み中には一本完成させよう!」

「でも、広瀬さんも柊も期末考査の勉強はいいのか?学年1.2位の二人がこの時期のテ ストで成績落とすわけにはいかないだろ。」

「あ!私は大丈夫だよ!授業ごとに、予習復習やってるから試験前に特別勉強を追い込む ことはないから。」

 広瀬さんは、焦りの表情一つ見せず答えた。才色兼備という言葉がここまで違和感なく似合う女性はこの世を探しても広瀬さんしかいないと自分の中で確信した。

「私は勉強一切してない!めんどくさいし、授業聞いてれば撮れる簡単な問題ばっかだか ら何の問題もないのさ!」

 柊が天災なのも伝わってくる。確かにこいつも世の中的には才色兼備という言葉が似合う女性の一人なのであろう。しかし、なぜだろう、こいつに才色兼備の言葉を使うのは腹が立つ。

「幸樹君今私の悪口考えてなかった?」

「俺の考えてることはお見通しってか。」

「そういえば、高橋君は受験勉強大丈夫なの?私と真奈ちゃんは指定校推薦で大学決めて るからいいけど、確か一般受験だよね?」

「ああ、まあ今はボーダーギリギリってところだけど、動画投稿の活動も毎日ってわけで はないし、空いた時間は全部勉強にあてられてるから大丈夫だよ!」

「よーーし!今の不安要素はないということでさっさとメンバー集めに行きましょー!」

 柊はいつも以上に張りきっているのが一見してすぐに分かった。

「そういえば柊、お前にまだ聞いてないことがあった。」

「愛の告白の返事?それについては…」

「そのくだりはもういいから。お前なんで動画投稿なんてしようと思ったんだ?」

 その質問をした瞬間、俺と柊の間に空白の時間が空いた。ぽっかりとあいたその時間は何か狂気すら感じるかのような静けさであった。

「その答えそんなに大事?」

 そう答えた柊の表情からは笑顔が消え、この先の未来すべてが見えないような、まさにはかない目をしていた。俺は、まずいことを聞いてしまったのだと悟った。

『人には聞かれたくないことがある、それを言及してはならない。』

昔そんなセリフを何かの空まで聞いたことを思い出した。

「いや何でもない。気にしないでくれ。」

「そっか!じゃあ早速行くぞ!あれ、舞ちゃんは?」

「さっきお手洗いに行くって言って教室出ていったぞ。」

「ならよかった。」

 この『ならよかった』は、きっと今の狂気染みた雰囲気の中に広瀬さんがいてほしくなかったのだと理解した。俺はそれ以上、柊が動画投稿をする訳を言及できなかった。

 




ストーリーがついに動き始めます!
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