名門大卒ニートの俺が、動画投稿者で居続ける訳   作:motetyan

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映画の主演として選ばれた、高橋幸樹は脚本への不信感を抱いていた。
「この脚本の、ヒロインは広瀬さんではなく…。」そんな感情を抱きつつも撮影が始まる。

そんな中、広瀬舞が幸樹に抱く気持ちが垣間見える前回。
今回は、そんな広瀬の過去をたどる物語。


広瀬が、特別な感情を抱いた訳

第9章

「よーーーし、今日はここで撮影終了ね!お疲れ様!」

 保健室での撮影が終了し、俺たちは学校を後にした。俺と広瀬さんは帰り道が同じのため、柊とは校門で別れを告げ駅に向かった。駅は庄戸高校から徒歩6分の場所にあり、周囲には飲食店や洋服屋が軒を連ねているため学生のたまり場となっていた。

「なんかこうして二人で帰るの初めてだよね。」

「確かにそうだね。広瀬さんと俺なんかが一緒にいると釣り合ってない感じがにじみ出てるけどねw」

 すれ違う男どもは、こちらを必ず振り返る。原因は、俺の隣にいる広瀬舞という女性の人並外れた可愛さにあった。

「そんなことないよ!私は一緒に帰れて嬉しいけどな…」

「ん?今なにか言ってた?」

広瀬さんがこの時つぶやいた言葉に俺は気づくことができなかった。もしこの時気づいていれば俺の人生は大きく変わっていたのかもしれない。

「いや何でもないよ!それより高橋君受験勉強ははかどってるの?」

「実のことを言うと、全然ダメなんだよね。まだ第一志望の大学もD判定しかもらえてないし少し本腰入れていかないとちょっと辛いかも。」

「やっぱり一般受験は大変だね。そういえば聞いてなかったけど高橋君ってどこ大学志望してるの?」

 俺は言葉に詰まった。広瀬さんの前で同じ大学を志望していることを言いづらかった。もし広瀬さんに俺が告白したことを今でも気にしているのであれば、同じ大学に行きたいという神経はどうかしていると思われてしまうのではないかと心配になったのだ。

「あーっと。もし受からなかったらかっこつかないし、受かったら報告するよ!」

「そっか!これからも大変だと思うけど頑張ってね!私ここ右だからまた明日ね!」

 そういうと広瀬さんは、自分の岐路についた。

(もし本当のことを言っていたら広瀬さんはなんて思うのだろうか。優しいから頑張ってと言ってくれるのだろうけど本当にそう思ってくれるのだろうか。)

 俺も一人自問自答を繰り返しながら、帰路についた。

「やっぱり、高橋君が同じ大学なんてことないよね。あーあ、どうして私高橋君の告白に本音出せなかったんだろう。私の人生の一生の『後悔』だな。」

第10章

 高橋幸樹含めた現高3が高1だった時に時間はさかのぼる。

 庄戸高校に入学した私は、友人もでき充実した高校生活を送っていた。しかし、毎日憂鬱な時間は来る。私にとってそれは放課後の時間であった。

「広瀬さん、一目見た時から好きでした、付き合ってください。」

「広瀬、俺と付き合ってよ。」

「舞さんのことを考えると夜も寝れません。よかったらお付き合いしてください。」

 魔の時間であった。炭酸の泡がはじける様にスカッとお断りができるのであれば苦労はしないのであろうけど、私はどうしても相手の気持ちを優先してしまい傷つけてしまうのではないかという心配が先立ってしまいうまく断れなかった。

「あーだめだめ、あなたたちみたいな人とは舞ちゃんは付き合わないよ。あんたたちモテる男の定義を勘違いしてるよ。大体モテる男っていうのはね…。」

 いつも私の気持ちを代弁してくれるのは、真奈ちゃんであった。

「いやー今日も骨のある男子はいなかったね。私が強く言うとすぐに泣きべそかいて逃げていくんだから。舞ちゃんはしっかりといい男見つけてね!」

「いつもありがとう。私に彼氏ができるのなんてずいぶん先の話になると思うな。真奈ちゃんの方こそどうなの?最近隣の男の子と仲良さそうだけど!」

「あー幸樹君ね。確かに他の男子とは違って思った事ずばずばいうし人の気持ちは読めるし面白いけど、彼は私の永遠のパシリ君だ!」

(思ったことをズバズバいえるんだ。いいなあ私とは違って。真奈ちゃんみたいな子なのかな。)

 私にとって、本音を相手に対して発言できるのは羨ましいことだった。家庭内でも学校内でも控えめの私は本音とは裏腹に言いたいことを言えない生活を送っていた。本音を言わないことが人を傷つけない最善の行動だと考えていたからだ。

 そんな私と高橋君の出会いは唐突なものであった。

「えー入学して早一か月がたったわけだが、そろそろクラスの係を決めるぞー。まず初めにクラスの各係の取り決めを総括して学年会議で発表するなどなど、学級の責任者として行動するが学級委員長を決める。誰か立候補者いるかー。」

 クラスでは、担任の指揮のもと係決めが行われていた。学級委員長の立候補者には誰も手をあげず場は静まり返っていた。

「やっぱりいないか。毎年学級委員長やりたいって奴いないんだよなー。先生が決めちゃおっかなー。柊、お前成績も学年トップだしコミュニティも広い、やってみないか?」

「先生!私生徒会立候補するので立候補者は委員長を兼任できません!他の人でお願いします!」

「そうかお前生徒会やるんだったなー。うーん他の奴他の奴。」

 嫌な予感はしていた。成績やコミュニティの面で決めるのだとしたら次の候補は…。

「広瀬お前はどうだ!」

 やっぱり私になった。『嫌です。』この一言が言えない私にとってこの決め方は半ば強制的なものになっていた。真奈ちゃんみたいな正当な理由のない私にとって断る理由も思い浮かばなかった。

「わかりまし…」

「先生、僕がやります。内申点も上がりそうですしめんどくさそうだけど。」

「そうか、高橋がやるか!助かるぞー。」

 いきなりの出来事に頭の整理が追い付かずにいた。私の返答を待たずして高橋君が学級委員長に立候補していた。

(真奈ちゃんが言ってた、人の気持ちを読めるってこういうところなのかな。)

 そう自分の中で認識するとともに恥ずかしさが出てきた。もしかして私は顔に嫌悪の表情が出ていたのではないかと考えたからであった。

 クラスの係決めが終わり迎えた放課後に、私は真奈ちゃんのところへ向かった。

「ねえ私もしかして学級委員長決めの時、嫌そうな顔してた!?」

「舞ちゃんに真実を言う時が来たか…。残念ながら舞ちゃんは自分が思ってる以上にいつも表情に出てるよ。放課後の告白タイムの時もそうだしさっきの係決めの時も。まあそこが素直でかわいいところなんだけどね。」

 表情に出ているという言葉を聞き赤面した。私は今まで、自分で気づかなかっただけで全部表面に出ていたんだ。だとしたらあの時高橋君はクラスの中で唯一私の本心を尊重し立候補してくれたのではないか。

しかし、高橋君自身も「内申点が上がるから。」と言っていたし私の思い違いかもしれないと考えるようにした。

この時私の中で何かが動く音がしたような気がしたが、私はその感情を明確化できなかった。

「こーきが学級委員長とか笑えるな。目立つの嫌いなお前が学級委員長って(笑)。」

「元、お前笑いすぎだ。しょうがないだろ、クラスみんなやりたくない中で先生が指定したら正当な理由がないと断りづらくもなるしな。」

「だからってお前が犠牲になる必要あるか?さては広瀬さんかわいいからって見栄張ったな!」

 帰路についた私は、高橋君が友人と話している姿を目の当たりにし、木陰に隠れ話を聞いていた。

(何をしているんだ私は…!)

 人の話を陰から聞くなんて卑劣なことだとは分かっていた。ましてや主題として私の話をしているのに。しかし、高橋君が学級院長に立候補した本当の理由が気になっていた。

 周りの人は私をかわいいや頭がいいとスペックの評価をしてくる。私はそれが嫌だった。中身ではなく、私の生まれ持ったものだけを評価されている気がして、私自身を見ていない感覚を覚えるからであった。もしかしたら、高橋君も…。

「かわいいって、確かにかわいいけどちげーよ。表情だよ。あの時広瀬さんすんげーいやそうな顔してたろ。」

「確かにな。クラスの奴らも気づいてただろうけど、皆広瀬さんへの恩恵と学級委員長への重圧を天秤にかけて悩んでたのは事実だな。まあ昔から人の表情を読んで人様のために行動して自分が犠牲になることだけがこーきの取り柄だもんな(笑)。」

「おい人を悲劇のヒーローみたいにいうなよ。言いたいことがあるのに言えない人なんてこの世に何万といるだろーが。そんな人たちが自分の意見も言えないまま忌み嫌われる立場に任命されて犠牲になっていくのが嫌なの。」

「それで代わりにお前が犠牲になるのなら本末転倒だな(笑)。しかも事実お前自身の行動が相手に対して恩を着せることになるんじゃないか?」

「俺はいいんだよ、実際内申が上がるからってのも本心だしな。もし相手に恩を着せたとしても、そいつは結果的にはやりたくない仕事をやらずに済んだろ。それで解決だ。しかも、都合のいいことに俺はクラスでは空気のような存在。もし恩を感じても空気にはその恩を返す必要はないよな。だから、時間とともにその恩自体忘れていく。俺は代わりになるのに適任なんだよ。」

 高橋君は、私の内心を尊重して行動してくれたのだ。私の外見やスペックを評価してやったのではない。私だけのためではなく、様々な人に代わって自己犠牲をしてきたのだ。

 私の中で動いてたものの正体が分かった。ドクンドクンと音を立ててうごめくもの。これは、『心臓』の鼓動だ。私は、高橋君に対して他の人には抱かない特別な感情を持っているのだと理解した。

 この時から私は、毎日の生活の中で無意識のうちに高橋君の存在を気にし始めるようになった。そして、それから2か月がたった頃に高橋君から放課後に呼び出しを受け告白された。

「あんまり話したことないし、広瀬さんにとって誰かもわからないかもしれないけど広瀬さんの素直な感情を抱く姿に惹かれました。よろしければお付き合いしてください。」

 彼の表情は、緊張しこわばっていた。私も素直な気持ちを伝えなければ。高橋君は私の内面を好きになってくれている。人の内面を尊重する高橋君が私に特別な感情を抱いてくれた。他の人とは違う高橋君のことを好きになっている。もちろん返事は…。

「ごめんなさい。」

 私は、頭の中が真っ白になっていた。次の瞬間口からは自分の答えとは正反対の言葉が出ていた。この時感じた、人はそう簡単には変われないのだと。今まで自分の気持ちを押し隠して、相手の気持ちを尊重していた私の本音は『NO』というものばかりであったということ。もちろん私は『YES』というつもりであった。しかし、今まで言えなかった気持ちがこの時に爆発したのであろう。これまでは、真奈ちゃんが答えていた返事を私は答えていた。

「そうですよね。はは…。失礼します。」

 高橋君はその場を去っていった。『ちょっと待って。』という本音を私は出せなかった。後悔は、『後』に『悔しい』と感じると書く。まさに私は後悔していた。

 こうして私は、高橋君の返事を断るとともに、現在に至るまで高橋君を好きでいるようになったのだ。

「ああ、時間巻き戻ってくれないかな。」

 そんな独り言をつぶやきながら私は家についた。

 




物語が終盤に向かって動き出していきます。

いや、本当に投稿遅くてごめんなさい。
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