名門大卒ニートの俺が、動画投稿者で居続ける訳 作:motetyan
今回は、映画撮影メンバーのグループ名が決定する。
第11章
広瀬さんと一緒に帰宅した翌日俺は普段通り放課後の撮影会議に参加していた。しかし、その会議に参加したメンバーは普段通りではなかった。
「じゃあ早速撮影会議始めるねーっと前に!新メンバーの紹介!!自己紹介お願いします!!!」
いつも通り元気いっぱいに広瀬が、新メンバーなる人たちに話題を振った。
「どもー。高橋こーきの一番の親友にして映画内でも親友役を演じさせてもらいます武藤元です。自己紹介って何話せばいいのかわかんないなー。うーん。好きなものはこーき君の驚く姿です(笑)。よろしく。」
「おい元!お前が撮影に参加するなんて聞いてないぞ!」
俺は事前に新メンバーが加入するということは、柊から聞いていた。しかし、そこに元がいるとは知らなかった。友人が参加して心強いような、自分の素性がばれるのではないかという心配のような複雑な気持ちになった。
「ということで、武藤君でしたー。私も、幸樹君の驚く姿は面白いので好きです(笑)。ハイ!次!」
「あ、わ、私は、井上奈菜華(いのうえななか)と、も、申します。あの、ど、どうぞよ、よろしく、おねがい…。あ、あの、映画では、恐縮ながら、む、武藤君のか、彼女役を…。」
すごく控えめな性格なのか、彼女はぼそぼそと下を向きながら話していた。井上さんは目元まで前髪を伸ばし、後ろ髪は腰まで届きそうな長いロングヘアであった。いかにも目立ちたくないという振る舞いをしている。俺には、彼女が映画に参加した理由が理解できなかった。
「奈菜華ちゃんでしたー。てなわけで、今日からこの二人を加えた5人で新生『Tomorrow』の活動をスタートしていきまーす。」
「ちょっと待て、その『Tomorrow』ってなんだ?」
俺はいきなり柊の口から出た初めて聞く単語に疑問を抱き質問した。
「あ、言ってなかったっけ。グループ名だよ!私たち5人の!」
「広瀬ちゃーん俺も質問だけど、なんでそんな名前にしたのー?」
元も疑問に思ったのか広瀬に質問した。
「『Tomorrow』は『明日』って意味があって、この5人で見る人と私たちの明日の楽しみをつくっていきたいって気持ちからこの名前にしましたー!後は、明日が来るかわからない人に明日への希望を与えたいって思って。」
「いいじゃん!『Tomorrow』ね!明日への楽しみと希望か!俺は毎日楽しいから、この楽しさを皆に分け与えられるようにするわ!」
元は、元気よく賛同する。元以外のみんなもその名前に賛同していた。俺だけを覗いて。
『明日が来るかわからない人への希望』この言葉に引っかかった。
(対象者が具体的すぎる。)
抽象的であり、不特定多数の全体的に呼びかけるような「見る人」「私たち」の明日をつくっていきたいという気持ちはわかる。しかし、二つ目の『明日が来るかわからない人』だけ対象が具体的なのだ。「明日に希望を抱けない人」や「何となく明日を迎える人」という他の選択肢を具体的に表すことだってできるはずなのに、柊はあえて『明日が来るかわからない人』を対象とした。俺はこの言葉に、疑問とともに不安を覚えていた。
もしかしたら、柊が動画作成を始めたきっかけを話したがらなかったことにつながるのではないか、とも考えたが俺の考えすぎだと深く考えないようにした。
「じゃあ、新メンバーも加わったことだしさっそく撮影始めるよー!今日は帰り道で主人公が親友に相談するシーンね!さっそく外に移動!!」
元気な姿の柊を目の前にさっきの疑問を聞くことはできなかった。そのまま俺は、指示されたまま撮影場所へと移動した。
この時俺が、無理にでも聞いていれば今の俺は動画投稿などせず、『Tomorrow』もこの時に解散していたのだと思う。それこそが、臨むべき未来だったのかもしれないとも。
第12章
撮影が佳境に入ったのは、期末考査が終わり夏休みも残すところ1週間を切った夏の終わりごろである。俺は、受験勉強と撮影の両方に追われていた。
【みんなに提案します!夏休みもラスト5日間!ここいらで撮影を終わらすために合宿をしましょう!!】
スマホの画面が光り、柊からメンバー全体に送られたメッセージを表示した。こいつにとっては、一般受験の俺や元、井上さんの意見などどうでもよいのかと苛立ちを覚えた。しかし、現状、元や井上さんは志望校の判定がA判定であり俺よりも圧倒的な余裕を持っていた。そんな天才が集まるTomorrowの中で唯一俺だけ少し成績が上がったもののC判定というお粗末な結果であった。
(俺たちというか、俺の意見はどうでもいいって感じだな。)
俺は、スマホを起動するとともに【了解】と送信し深々と後悔した。
メンバーが招集されたのは、柊からメッセージが届いた翌日の午前6時であった。
「お前いくら何でも急すぎだろ。みんなにだって予定があるだろうし、受験勉強だって。」
みんなの気持ちを代表するように、俺は柊に向かって話した。
「あ、俺は大丈夫だよ!ちょうど集中的な夏期講習も終わったし、過去問も9割位取れてたしな。」
「わ、私も、だ、大丈夫です。」
「武藤君と奈菜華ちゃんはということらしいのでまずいのは主役の高橋幸樹君だけですな。」
分かっていた。少しでも元や井上さんが共感してくれるのではないかと考えた俺がバカであった。天才と凡人の違いを改めて実感した。
「高橋君が勉強で困ってるなら、空いた時間で私が勉強教えるよ!私は一般受験ではないけど、大学入学後に勉強ついていけないことがないように一般受験の勉強もしてるし。」
「ありがとう、広瀬さん。恩に着るよ。本当にありがとう。」
「じゃあ問題解決ねー。まあ、舞ちゃんだけに任せるのもかわいそうだから、空いた時間はみんなで勉強会ってことで!それじゃあレッツゴー!!」
こうして俺たち、Tomorrowの最初で【最後】の撮影合宿が始まった。
次回から合宿編が始まります!