名門大卒ニートの俺が、動画投稿者で居続ける訳   作:motetyan

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Tomorrowというグループ名が決定した前回。

高橋幸樹たちの合宿が始まる。


合宿が、始まった訳

第13章

「そもそもこんなに撮影を急ぐ必要はあるのか?」

 宿のエントランスで、チェックインを済ませた俺たちはテーブルを囲んで話し合っていた。そんな中で俺は、柊に向かって質問をぶつけた。この宿というのも、広瀬の親戚が営む高級旅館であり、俺たちのような学生だけで宿泊できるような場所ではない。

「あーそっかそれも言ってなかったね!この映画、有志として文化祭で発表します!文化祭は、夏休みが終わって1週間後だから私の編集時間も合わせてこの合宿で最後まで終わらせようと思って。」

「は!?文化祭で!?聞いてないぞ!!」

「いいじゃんいいじゃん!こーきもついにクラスの空気から有機物質に買われる時が来たんだよ(笑)。」

「いやいや、望んでないし!大体、広瀬さんや井上さんもそれでいいの!?」

「私は大丈夫だよ。そもそも、Utubeで公開した時点で目立つだろうし。」

「わ、私も。」

「いつでも幸樹君の味方はいませんな。てなわけで、多数決の結果これで決まりで。」

 また俺は柊の意見に流されてしまっていた。

「じゃあそんなわけで、さっそく部屋に荷物置いたらまたエントランス集合で!」

 柊の指示のもと俺たちは部屋に向かった。部屋は、男子と女子に分かれて二部屋用意されていた。男子の部屋は、旅館の中央階段を上り二階の207号室。女子の部屋は、その隣の208号室であった。部屋は男子女子同じ仕様となっており、入ってすぐにある大きなダイニングにはその空間の大きさに合わせたソファが位置していた。ソファの前には、これまた大きなテレビが用意されており、向かって左の部屋は室内浴槽(これも大きな)があり、右の部屋は寝室でふかふかのベッドが2つ(女子部屋には3つあった)位置していた。

「なあ俺たちこんなところに留まって本当にいいのか?」

「せっかく広瀬ちゃんのおかげでただで泊まらせてもらえるんだしそんなお堅いこと考えなくてもいいでしょ!こーきはいつもそうやって周囲ばっかり気にするよな(笑)。」

「お前が考えなさすぎなんだよ!」

「いや、俺だって周りの気持ちを考えてるよ。ただ、こーきみたいに過敏ではないだけ(笑)。」

「そうやっていつも笑いながら話す奴のどこが相手の気持ちを考えてるんだか教えてくれ。」

「強いて言うなら、俺と奈菜華ちゃんが付き合ったことかな(笑)」

 俺の中で時間が止まった。実際には止まっていないが、そんな感覚に陥ったのだ。

(今こいつはなんていった?井上さんと付き合ったといったのか?)

 頭の中の整理が追い付かないでいた俺を横目に、元は撮影に使う水着に着替えていた。

「おいおいおいおい、いきなり驚きの真実を親友に伝えたのによくもまあ平気でいられるな!え、いつからだよ!というかなんで!?いや、それよりもまずどこに惹かれたんだ!?」

 俺自身も自分の言葉がまとまっていないことに気づいていた。元もまた、親友が目の前で慌てふためく様を見て笑いながら答えた。

「まあ落ち着けよ(笑)。俺の話は、番外編でな(笑)。親友の話は、本編で描くよりも番外編をつくった方が盛り上がるだろ。」

「いや、番外編ってなんだよ。」

「【名門大卒ニートの俺が、動画投稿者で居続ける訳~番外編~】近日公開ということで。」

「お前誰に宣伝してるんだよ。」

「そりゃ読者に対してに決まってるだろ。」

「なるほどな。」

俺は、元の話をひとまず流し撮影の準備に戻った。俺と元の準備が整いエントランスに向かうと女性陣はすでに座って談笑していた。もちろん話題は、元と井上さんの関係についてであった。

「確かに、武藤君の方が幸樹君に比べて何倍もいい男だよね。うんうん、本当によかったよ、奈菜華ちゃんと武藤君が栄華を超えて本当のカップルになれて!」

「羨ましいなあ、自分が思ってた人と一緒に慣れて!デートはもうしたの?」

「あ、あ、ありがとうございます。で、デートはしましたよ!な、夏休みちゅ、中盤にふ、2人では、花火大会に行かせていただきました。」

「「きゃーー。奈菜華ちゃん可愛すぎる!!」」

 柊と広瀬さんが声をそろえて叫ぶと同時に俺たちは女性陣に合流した。

「あ、もしかして話聞こえてました(笑)?」

 柊は、にやつきながら初めに対して聞いた。

「もろ聞こえてましたよ(笑)。今俺はとても幸せです(笑)。」

 柊の質問に対して、満面の笑みで元は答えてみせた。その言動を目の前に、井上さんは顔を赤らめ下を向いている。

「は、はじくん、み、みなさんの前でそ、そんなこと平気で言わないでく、ください。」

「またどもってるよ奈菜ちゃん!もっと自信もって話していいんだよ!それに、前髪も分けて目だした方がかわいいんだから分けるように言ったじゃん!まあ、強要はしないけど(笑)。どんな奈菜ちゃんでも俺は好きだから(笑)。」

「は、はじくん!!!恥ずかしいよお…。」

 二人は目も当てられないくらいの熱愛っぷりを見せつけてきた。

「あれあれ、お二人さんあだ名呼びなんてお熱いですなあ(笑)。どれどれ、奈菜華ちゃん前髪を分けてみようか!」

 そういうと、柊は井上さんの前髪に手をかけ分け目をつくった。前髪の間からのぞいた井上さんの眼を俺はこの時初めて見た。ぱっちりとした目にはくっきりとした二重の線が入り、性格とは正反対のきりっとした眉が印象的であった。かわいいというより、奇麗と呼ぶのが正しい表現になる気がした。

「「絶対こっちの方がいい!!めちゃめちゃ奇麗だよ奈菜華ちゃん!!」」

 柊と広瀬さんは再び声を合わせて叫んだ。広瀬さんは持っていたヘアピンで井上さんの前髪に分け目をつくり今後の井上さんのシーンは、分けたままで行おうと満場一致で決定した。

「前髪を分けると美少女とかまさに漫画の世界だね!!脚本もこの事実に合わせて少し変更を加えるから安心してその美少女のままでいて下さい。」

 井上さんの事実を話の中に取り入れるために、柊は必死になって脚本に内容を書き加えた。こうして再度完成した、美少女が一人追加された作品の撮影のために俺たちは旅館を出て目の前に広がる海へと向かった。

 

第14章

 落ち着いた波の音を立てて、透き通った海では泳いでいる小魚の姿を容易に確認することさえできた。

「それじゃあ、ラストシーンに向かって今日は撮っていくよー!記憶をなくしてしまう猪瀬に対して辰見が日々の生活を楽しんでもらうために企画した旅行でのワンシーン!」

 シーンの説明を大雑把にすると同時に撮影が始まった。

「カット!!いいよいいよ!みんなの協力のおかげで、今日のノルマ余裕で終わったよ。それじゃあ、遊びにいこー!」

 ストーリーの終盤ということもあってか、一発OKを連発し撮影は3時間で終了した。

「みんなすごい楽しそうだね!高校生活最後の夏休みにみんなでこうやって合宿に来れてうれしいなあ。」

 広瀬さんが俺の横でつぶやいたのが聞こえた。

「高校入学して、このメンバーで集まるなんて予想もつかなかったのにね。こうやって多種多様な人間が集まったからこそ変な化学変化が起きて本音で話し合える仲間になれたんだろうね。」

「ふふっ、今高橋君すごいくさいこと言ってるよ(笑)。」

「あ!そんな聞こえ方してた!?待って恥ずかしいなあ。今のなしにしてくれない?」

「だめでーす!高橋君がくさいこと言うなんて一生で一回聞けるか聞けないかなんだから私のお宝にします!」

 俺と広瀬さんは不思議と和やかでいい雰囲気をかもしだていた。広瀬さんが素直に笑って本音で話す姿など告白に失敗したあの時の俺には想像すらつかなかった。

 今なら言えるのかもしれない。俺の本当の気持ちを。恋愛漫画ではあるまいし、ここで告白を止めるような邪魔者が都合よく来るとも思えない。言うしかないんだ、俺の本当の気持ちを。

「俺、広瀬さんのことが…。」

「あれれ、また告白ですかお兄さん。」

 耳元でつぶやかれた声には聞き覚えがあった。また邪魔をされてしまった。いや、俺がフラグをたてていたのかもしれない。神様どうかこの声の主が柊ではありませんように。

「残念柊ちゃんです!」

「お前はエスパーか!人の心でも読む力があるのかよ。」

「人の心なんて読めないよ!漫画じゃあるまいし!ただ、幸樹君の考えてることは何でもわかる能力者ではあるけどね。」

「お前ってやつは!!今からまさに、こ…。」

 告白という言葉を言いかけていた。目の前には、俺と柊の様子をうかがう広瀬さんがいる。この状況で、広瀬さんに告白しようとしていたなんて言うやつはこの世のどこを探してもいないであろう。俺もまさにその一人であった。

「これからの予定について話し合おうとしてたんだよ!」

「そかそか、それじゃあこれからみんなでビーチバレーするってことを伝えておくよ。ほんじゃあ早く来てな。」

 柊は適当に話すとともに元と井上さんに合流した。

「私たちも行こっか。」

「そうだね。」

 俺は気持ちを伝えられないまま、柊たちのもとへ向かう広瀬さんを追いかけた。

「私の思い違いかもしれないけど、今度さっき言おうとしてた本当のこと教えてね。」

「え?」

 広瀬さんはこちらを振り向かずに、誰に対して呼びかけたのかもわからぬような口調でつぶやいた。

 その言葉に、俺はしっかりとした返事ができなかった。

 




僕は、『広瀬舞』推しですが皆さんはどうですか?
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