名門大卒ニートの俺が、動画投稿者で居続ける訳 作:motetyan
皆様内容を覚えていらっしゃるでしょうか。
僕は全く覚えていませんでした。
第14章
海辺が、季節外れの紅葉のように真っ赤になった頃に俺たちは宿に戻った。宿では俺たちの帰りを祝うように豪勢な食事が大広間に用意されており、みな高揚感で胸がいっぱいになった。
「ハイじゃあ皆さん、目の前にあるコップを掲げて下さい。大人はきっとビールで乾杯するのでしょうが、私たちは未成年ですのでジュースです。今日は一日お疲れさまでした。明日から残り3日間の撮影もこの調子で張り切っていきましょう!乾杯!」
「「「「乾杯!!!!」」」」
柊の掛け声に合わせ、俺たちはコップになみなみにつがれたオレンジジュースで乾杯した。机の中央に用意された舟盛りに恐る恐る箸を伸ばしていた俺に対して、隣にいる元が耳元でささやいてきた。
「こーきこーき、この合宿中にこくるんだろうな(笑)。」
俺は、元の言葉に思わず箸でつかんでいた赤身を机の上に落してしまった。
「おいおい動揺しすぎだよ(笑)。」
「お前がいきなり突拍子もないことを言ってくるからだろうが!広瀬さんには告白しようとしたよ。まあ、邪魔者のせいで結果的には言えなかったけど。」
俺は、机に落してしまった赤身を拾い上げ刺身皿に戻しながら話した。
「広瀬さんに告白?俺が聞いたのは、広瀬さんに対しての告白じゃないんだけどな。」
刺身皿に入った醤油に赤身をつけ口に運ぶ俺に対して元はまた意味の分からないことを言った。
「は?俺が好きなのはずっと広瀬さんだろうが。他に誰に告白するっていうんだよ。」
「お前が言う邪魔者にだよ。」
俺は、また赤身を机に落してしまった。
「さすがに2回も落としたもんは食えないよな。諦めて違うもん食べろよ。」
元の言葉は、刺身に対して言っているのではないと直感的に感じた。付き合いが長い分、元の考えていることは大体わかる。元も俺のことをよく理解しているのは知っているはずだった。
「お前、俺のことよく理解できてなかったんだな。」
「こーきのことよく理解できてるから、言ったんだよ。」
俺は言葉に詰まった。返答の言葉が思いつかなかったからだ。自分でも理解できないが、元の言葉を正面から否定することができなかったのだ。
「まあ、お前の人生だ!後悔しないように行動しろよ。俺は奈菜ちゃんと幸せな学園ライフを楽しむからな(笑)。」
「他人事だからって、適当なこと言いやがって。」
元は笑みをこぼしながら、井上さんのもとへ向かった。
俺の目の前には、広瀬さんと柊が談笑している。その姿を横目に俺は自分の頭の中を整理していた。
【俺は、柊のことが…。】
第15章
「君さ、暇なら購買にパン買いに行くからついてきて。」
高校一年の春、俺は教室で一人昼食をとっていると一人の女生徒から話しかけられた。これが俺と柊の出会いである。
元は部活動の集会があるため、俺は一人で昼食をとっていた。特に断る理由もなかったが、見ず知らずの女生徒から声を掛けられ言葉に詰まっていた。
「いきなり美少女に話しかけられちゃって緊張してるのかな??おませさんね(笑)。」
「いや、いきなり上から目線な唯我独尊系女子に話しかけられて織田信長の歴史について思い出してた。」
「意味わかんないこと言わないでよ(笑)。とにかく行くよ!」
彼女は、俺の手を引っ張ると勢いよく購買に向けて走りだした。
「購買に行くくらいなら、別に一人でもいいだろ。」
「よくないよ!数量限定のスペシャルドックはおひとり様一人まで!つまり、自分一人で買いに来ても一つしか買えないんだよ!それで私のお腹が満たされるわけないでしょ!あ、私柊真奈、よろしく。」
「自己紹介の部分簡素すぎるだろ。」
「前にも一回あったことあるし、自己紹介なんてこんなもんでいいでしょ高橋幸樹君。」
「なんで俺の名前知って。」
「あ、列進んだよ!ほらフィジカル入れてもっと前に言って!!」
俺は、柊が俺の名前を知っていることを不審に思った。『前にもあったことがある。』柊はそう言ったが俺にその記憶はなかった。しかし、この時俺に考える暇などなかった。購買の前にあふれかえる人混みが俺を飲み込み生き延びることに専念しなくてはいけなくなったからだ。
「あ、お帰り!どう、買えた?」
「現世にも、地獄が存在することを今日初めて知った。ほらよ。」
俺は、右手に握りしめたスペシャルドックなる者を柊に手渡した。
「おお!ありがとう!お返しにこれあげるよ!」
俺は柊が、初めから握りしめていたスペシャルドックを手渡された。
「どういうことだ?」
「お礼のつもりだけど?大体初めから、こんなでっかいパン一人で二つも食べれないしね。」
「それなら初めから一人で行けばよかっただろ!!」
「君が教室で一人寂しそうに昼食をとっている姿を見て、心優しい柊さんはほっとけなくなってしまったのですよ。」
俺はあっけにとられ何も言えなくなってしまった。
「幸樹君はよく黙りこくるね。」
「いや、君の言っていることとやってることが本末転倒過ぎて呆れてるんだよ。」
「ま、それは置いといてご飯食べに行こ!」
こうして俺と柊は、出会い今の関係を気付くようになった。
【あいつはあの時からもう自己中心的だったな。】
「今私のこと考えてたでしょ。」
俺の耳元で柊が囁いてきた。図星なことを言われた俺は嘘をつくのも苦手だったので本音で答えることにした。
「まあそうだな。」
「え、ああそうなんだ。」
柊は、思ってもいなかった返答に驚いたのか俺と逆の方向を眺める。柊の顔が月の光に照らされているせいで鮮明に見える。その横顔は少し赤みがかっていた。
「どうした?いつもみたいに、私のこと本当に好きだねとか茶化してこないのか?」
俺は、柊の反応に驚き思わず聞いてしまった。
「この反応にご不満でもあるのかな?そんな茶化しはしませんよーだ。早く舞ちゃんに告白しなさい!意気地なし!」
そう言い残すと、柊は俺の前を去っていった。いつもこうなのだ。柊は何をしたいのか、そして何を言いたいのか本当のことを言おうとはしない。だから俺も、長い付き合いになるが今でもあいつのことを理解できていないのだ。
【もしあいつのことを理解できたのなら俺は…。】
元の発言が頭の中で反復される。きっと長時間の撮影の影響で疲れているせいだ。
「じゃあ、皆食べ終わったみたいだし、とりあえず今日はこれでお開きということで!明日に備えて皆さんゆっくり休んでください!」
柊の一言で、宴会はお開きとなった。俺と元は早々に温泉に向かい湯を浴び終えると部屋に戻り各々の布団で眠りについた。
【その日俺は、夢を見た。幼いころの夢だ。】
PCの不調が原因で投稿がだいぶ遅れてしまいました。
今後ともご愛読お願いいたします。