名門大卒ニートの俺が、動画投稿者で居続ける訳   作:motetyan

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幸樹と柊の出会い。
そして、物語は最終章に向かっていく。


俺が、夢を見た訳

第16章

 俺の目の前には、夕暮れの公園に一人たたずむ少女がいた。少女は、悲しそうな顔をして一人でブランコに乗っている。

「何をしてるの?」

 夢の中に出てきた少年の姿をした俺は、彼女に向かって問いかけた。

「…。」

 少女は口を開こうとしない。まるで目の前にいる俺が見えていないかのような反応のなさにどうしていいのかわからなくなった俺は隣のブランコに腰かけた。

 無言の時間は、長く続いた。来た時には夕日で真っ赤に染まっていた公園が今では闇に包まれている。目の前の視界が鮮明としない中でも、隣に少女がまだいるような気がしていた。

「あなた帰らなくていいの?」

 少女は、やっと口を開いた。

「君にも言えることだよね。」

 少女を初めて見た時から、俺はその少女を一人にはできないと考えていた。だから、少女が帰るまでは自分も帰らないつもりでいた。

「私は、あそこにはもう行きたくないの。」

「あそこって?」

「真っ白な部屋。真っ白なベットを取り囲む真っ白なカーテン。私は、そこで一日中寝てるの。」

「それって、病院?」

「…。お母さんはね、私が大人になったら王子様がそこから連れ出してくれるって言ってるんだ。でも、4年も待ってるのに王子様は来てくれない。だから私逃げ出してきたの。」

 彼女の言葉が自分の胸に刺さった。無神経に、少女に対して病院にいるのかと聞いてしまった自分を悔いた。

「じゃあ、大人になったら僕が君を迎えに行くよ!」

「居場所もわからないのにどうやって?その時にはもう今の場所にはいないのかもしれないよ?」

「最近ニュースで見たんだけど、Utubeっていう動画サイトを使ってけーさつが行方不明の人を見つけたんだって!だから僕もそれを使って君を迎えに行く!」

「うーちゅーぶ?その動画さいとっていうのはよくわからないけどテレビみたいなもの?でも、それを使ってどうやって見つけるの?私その動画さいと使ってないかもよ?」

「うーん、そこまで深く考えてなかったな。じゃあこうしよう!僕が世界で一番有名なUtuberになって君がどこにいても僕の存在が確認できるような人間になる!それで君が僕に対してtomorrowって声かけてよ。明日も私はいるよって意味を込めて!」

「変な人だね。」

 そう言うと少女は少し微笑んで見せた気がした。最も暗闇の中で少女の表情は鮮明出なかったため実際はどうだったのかわからない。ただ何となくそんな気がしたのだ。

「幸樹!!」

 公園の外から、母親の怒鳴る声が聞こえてきた。帰りがあまりにも遅かった俺を心配して探しに来たのだろう。

「僕もう行かなくちゃ。そうだ、また会ったときに君の名前分からないんじゃ君かどうか判断できないし君の名前教えてよ!」

「私は…。」

 少女が名前言おうとしたところで、俺は目を覚ました。窓からの木漏れ日を浴びて、俺は夢の内容を振り返っていた。思い出した。これは俺自身の過去の記憶だ。どうして今まで忘れていたのだろうか。

 俺は少女の名前を知っていた。聞く必要なんてなかった。彼女の名前は…だ。

 

第17章

「こーき昨日だいぶうなされてたけど大丈夫か?」

 撮影に向かうために身支度をしていると、元が俺に話しかけてきた。

「俺もしかして寝言とか言ってたか?」

「君の名は。って言ってたのは聞こえたけど。あの映画面白いよな、俺5回も見に行ったしなあ。まさかこーきも夢に出るくらい好きだったなんて。ずっと一緒にいたのに知らなかったよ。」

「すまんそれについては忘れてくれ。」

 俺は冷静に、元に対応すると足早に部屋を出ようとした。

「なんか用事か?」

「ちょっと野暮用をな。」

 元は、俺が急いで支度している姿を不審に思ったのか質問してきた。しかし、すぐに何かを察したのか一言「いってら。」というと軽くこちらに手を振ってきた。俺はいい友達を持ったものだ。

 部屋を出てエントランスに行くとそこには、夢に出てきた少女がいた。いや、そこには柊真奈がいた。

「すべて思い出した気がする。俺がお前と初めて出会ったのは高校一年の頃なんかじゃない。お前とは…。」

「おっはよーーー!あれれ、朝に弱い幸樹君のはずなのに今日はやけにはきはきしてるね!撮影のやる気満々なのかな!?」

 柊はいつものように、こちらの話をさえぎってくる。いつだって重要なことは聞く耳を持とうとしない。

「今はそんなこと言ってる暇ないんだよ。今日夢で見たんだ。それで思い出した。お前は俺が幼いころに公園で会ったことのある少女だ。」

「…。そんなの知らないよ。」

 少しの間が空いてから重い口を開いた。ごまかしてるようにしか思えなかった。

「そんなはずはない!あの時俺は、もう一度会えたらtomorrowといってくれとお前に言った。それで、俺たちのグループ名もtomorrowになったんだろ!それに、あの脚本もヒロインはどうしても広瀬さんをモチーフにしたとは思えなかった。あれは柊自身だろ!病気を抱えているのは柊なんだ。公園で出会った時、お前は病院を抜け出していた!いつ退院できるかわからないとも!お前もしかしてまだ体が悪いんじゃないか!?」

「だってそれ、夢でしょ?」

「え…?」

「幸樹君考えすぎだよ。寝ぼけて夢と現実がごっちゃになってるよ。」

 柊は俺の発言を認めようとはしなかった。何を言おうとも、柊は知らぬ存ぜぬの一点張りでこちらの発言はすべて否定された。俺は、そのうちにだんだん自分の見た夢は本当にただの夢でフィクションであったのかもしれないと思うようになっていた。

「ほら、そんな私と幸樹君のロマンスな過去はなかったってこともわかったでしょ?いい加減撮影に行くよ!昨日せっかくスムーズに進んだんだから今日も順調に進めよう!」

 そう言うと柊は、撮影機材を持ち上げて現場に向かっていった。

 その日の撮影に集中できなかった俺は、NGを連発し部屋に戻されてしまった。心の中で黒い何かがうごめくのを感じた。

 

 




そろそろ物語は終わりを迎えます。
温かい目で見守ってやってください。
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