「はぁ~~~~~~~~」
長いため息をはいて町を見下ろす青年が一人
彼の名は 月夜 晴斗
現在、山の上から町の風景を見下ろしていた。
「何で俺、こんなとこに居るんだろ...?」
事の顛末は、数分前 彼が気分転換に散歩でもしようかと家を出た所
「え...?」
突然、誰かに後頭部目掛けて何かを振り下ろされその場にうつ伏せになってしまった。
「痛...って~~.....何すんだ!!!」
振り向くとそこには、見ず知らずの男性が棍棒を片手にこちらを睨んでいた。
「ウルセェ!...お前がムカつくから殴ったんだ....文句でもあるのか!!」
聞いてるぶんにはなんとも理不尽な言い訳だが、
(ああ...またか、
晴斗はいつも通りだと受け入れ、立ち上がった。
「何立ち上がってんだ!...オラァ!!!」
男は立ち上がった晴斗に再度、怒りを覚えて棍棒を振り下ろす。
が、
「え?」
晴斗は振り下ろされた棍棒を片手で掴み、奪い取るとそのまま男の顔面にぶつける。
「ぐぁぁぁぁぁ!!!!」
「何悲鳴あげてんだ....オイ...!」
あまりの痛みに男はその場にうずくまり、晴斗は頭を踏みつけて動けなくする。
「人の頭に棍棒振り下ろした癖に....自分がやられたら被害者面か....オイ!」
「ひっ!.....ひぃぃぃぃ...!」
男の態度は先程とは異なり、怯えきっていた。
「何の騒ぎだ!」
「....町長。」
晴斗の目の前に現れたのは、この町の町長であった。
「晴斗....
(ああ....またか.....またなのか。)
町長は一方的に晴斗が悪いと決めつけ、彼を責めた。
(この町は.....俺の敵だ。)
最早、自分の味方はこの町にはいないのだと思うしかなかった。
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そして現在に至る。
町長の追及から逃れて山へと逃げてきた。
「やっぱり...この
晴斗が触れた右目。それは普通の瞳の色ではなく、眼球全てが
(思えば、この瞳がこうなってから町の人間の様子がガラリと変わってしまった。)
そう、まるで....自分とは違う生き物をいたぶる外道のように。
(まぁ、変化したからといって...見えなくなった訳じゃないし。...むしろ、)
「あ~あ、どうせ居場所が無いなら異世界でも行って一生そこで暮らしたいな~~....な~んて。」
ありもしない妄想を口に出したが、現実は非情で何も変わらない。
今まで通り、理不尽な暴力を受け続けるのだろう...そう思うしかなかった。
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「おっ...あったあった。」
山の中を歩いていくと、様々な木の実を見つけ採取していく。
「これは食べられて、これは食べられない。」
木や草花から実を採取してはそう呟く。
(一度食べてるし、食べられるかどうかは分かるな。)
と言っても自分から進んで食べたのではなく、幼少期に近所の子供に無理矢理食べさせられ、吐き出せば蹴られるという醜悪な虐めを受けて身に付けた特技である。
「これは....おっ、林檎が生ってる...!」
もぎ取り、即座にかぶりつく。
「うん、やっぱり旨い。」
林檎を食べる晴斗の左頬に一筋の涙が流れたが、彼自身が気付くことは無かった。
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日が暮れて、もうすぐ夜になりそうな時間帯。
「そろそろ戻るか。」
家路につこうと山を降りる。
すると、
「!?...な、何だ!?」
突如として、彼の背後から強烈な光を放つものが現れる。
振り向くとそこには、小さなお堂が一つ、ポツンと佇んでいる。
「凄い眩しくて、近付けない!」
どんなものか確認しようと近付くも、光が眩しすぎて直視できないでいる。
(晴斗、晴斗よ。)
「な、何だ!?.....今の声、何処から?」
周りを見渡すも周囲に人の気配は無く、自分の聞き間違いかと思ったが、
(月夜晴斗よ。)
「!!!」
(聞こえた....今度はフルネームで俺を呼ぶ声が....。)
「誰だ、何故俺の名を知っている。」
誰のものかも分からない声に返答し、目的を尋ねる。
(....今、私の事を話すことは出来ません....しかし、私は貴方を知っていました。)
「俺を......知っている...?」
(はい、厳密に言えば....その"右目"がそうなった"時"からずっと....。)
「まさか、俺の目をこうしたのはあんたなのか....?」
(........)
「答えてくれ!.....あんたが俺をこんな目に会わせたのか!!?」
晴斗の言葉には若干の怒りが孕んでおり、恐らくそれは、現在までの自分の境遇に対しての怒りだと思われた。
(私ではありません.....ですが、
「!...ホントか!?」
(はい、ですが.....その為には、貴方にやって貰わなければならないことが有ります。)
(俺にやって貰うこと....?)「それは...一体?」
「それは....貴方に、異世界へと旅に出て貰わなければなりません。」
「異世界....?」
晴斗はその言葉に幾つかの疑問を覚えた。
今まで数々の小説やアニメで使用されたテーマ等で彼自身もその存在は理解していた。しかし、それと同時にこうも思っていた。
"所詮は空想の話だろう"...と。
「ホントに....存在するのか....異世界なんて...。」
(ええ、あなたがた人々が存在すると"認識"した時、それは確実に存在します。)
(マジか....。)
本当に存在するのか....。その事実を知った事で、次に彼がとるべき選択と行動を声が説明する。
(異世界へ行き、
「....分かった、今はあんたの言葉を信じよう。」
(....宜しいのですか?)
「元々、こんな所に居ても、何も解決しないんじゃ..意味がない。ならあんたの言葉を信じて、異世界へ旅に出るのも悪くない....そう思ったのさ。」
(....分かりました。)
声の主は晴斗の意思は固いと理解し、彼の近くに"あるもの"を作り出す。
「これは?」
(異世界への入り口です。それを潜れば、別の世界へと移動が可能になります。)
「そうか...。」
(では、あなたが戻ってくるまでこの街の時間は停止させておきます。)
「え?....そんなこと出来るの?」
(はい....ですが、あまり長くはとめていられません...それだけは理解してください。)
「分かった....でも、その前に。」
晴斗は町の方に身体を向けると、
「行ってきます。」
そう言い残して、入り口を潜った。
これから始まるのは、彼が迫害される以前の状態に戻るため。
そして、BAD ENDをHAPPY ENDに変えるため。異世界へと旅に出るのだった。