自由が望みと言うけれど 作:ほうれんそう
─────痛いのも、辛いのも苦しいのも大嫌いだ。
だから、この地へ脚を縫い付ける鎖が憎い。
俺みたいな将来有望な美少年が、衛生もなってないような場所で鎖つけられて監禁とか、どう考えたって事案だろ。
最悪極まりない状況に、日々の気分は底辺を這っている。
メーデーメーデー!応答なし。ついでに浮上する気配もなし。
更に暴力もサービスで付けちゃいます、ってか?
元一般人の打たれ弱さ舐めんなよ。
せっかく転生しても、転生先がこれじゃあな。
イケメンとイケボを確約された逸材でも、補えないくらいに最悪すぎる環境だ。
早死したぶん生きる気満々だったのに、前世より生きれるかどうかも怪しい。
マイナーな性癖持ってるやつでもなければ、こんな状況クソくらえだろう。
俺もクソくらえって思ってる。
この苦痛を与える存在にも、自然と嫌悪を向けるというものだ。
そう考えると、俺も一応マイナーな部類に入るのかね。
ストックホルム症候群とは、ちょっと違うと思うんだけど。
「…………。」
格子から微かに差し込む月明かりに、鈍くきらめく、俺のじゃない緑髪と。
閉じられた目蓋をなんとはなしに見つめて、冷たい壁に背を預けた。
嫌いだけど、嫌いになり切れなかった。
この熱を持ち痛む頬も、じくじくと眠りを妨げる腹の痣も。
全てこの男がもたらしたものだというのに。
同じ色をした髪のせい?
同じ化け物の様な足のせい?
同じこの身を蝕む宿命のせい?
同族意識。同情。憐れみ。
自分よりも精神的に追い詰められた相手を見て、自分の不幸を偽るため。
いーや、違うな。
確かに残る、記憶のせい。
血の繋がりもない、境遇が同じだけの男の。
優しく髪を梳く手を知っている。
苦しそうに歪む目を知っている。
夜中に懺悔する心を知っている。
『なに、やってんだ。こんな、不毛な……、』
震える声。
月の光もない真夜中に、ぐしゃりと髪を崩して、俯いて。
奥底から出た、心が引き裂かれそうな、その小さな叫びを。
『俺は、クズか……!』
それでも決して、その能力を他人に向けないのを、知っている。
「一緒に、」
きっと、同じ様に自由を翔ける脚のせい。
「空を飛べたらいーのになぁ。」
きっと、たったそれだけの願いのせい。
自由が望みと言うけれど
生まれ変わったら、女の子を守って傷だらけになっちゃうような、少女漫画の登場人物に成ってるだなんて誰が思う?
古代アジアをモチーフにした世界観は悪かないけど、不便さは否めないし。
主人公のように皇女サマだったらまだ違ったのかもしれないが、生憎俺のマイホームは排他的な里の汚い小部屋だ。現代人には辛いものがある。
生まれ変わりだって現実味のない現実だってのに、さらに過去!この境遇!そんで二次元!しかも知ってる登場人物!
終わってんな。
意味わかんないし。
外には出らんないし。
酷いもんだ。これでも俺、緑龍の末裔なのにさぁ。
「あー……。」
良いことなんてなんにもない。
握った拳に応えるように、繋がる鎖が音を立てた。
─────かつて、高華王国、初代国王の座には赤き龍の化身がいた。
天界から地上へ降り、人間となった彼の龍。
緋龍王を護りしは四体の龍。
彼等は赤き龍の力となるため、人間に血を与え、その力の一端を授けた。
白龍の爪は全てを切り裂き。
青龍の瞳は千里をも見通す。
黄龍の体は頑強で傷つかず、
……ってな具合で。
その一角が緑龍の、ただひとりの末裔。
次代の緑龍とは俺の事、ってね。
そんな俺を含めた、四人の龍もどきはまとめて四龍と呼ばれている。
四龍は、今は亡き彼の王の復活を、血が予感しているためにその能力を繋ぎ続けているらしい。
とはいえ、それは遥か昔の話。建国神話として語られるもの。
その存在を御伽噺とは思っても、実在すると考える人間はほとんどいない。
そう。俺のいるような、龍の血を継ぐ里なんか以外は。
四龍はその力を人の手には余るものとし、それぞれ里を作り、人との交流を断った。それが今も尚続いている。
まぁ、例外もありけり。
あと、一部の変人や、信心深いやつなんかも龍の存在は信じてるかもな。
ちなみに、緑龍の力は足に宿る。
鱗の生えた緑の龍足。
その龍の宿った右足で、天高くを自由に翔ける。
……ことが出来るはずなんだけど。
生憎そんな経験は1度もない。
生まれてこの方、生まれ落ちた里から出たことがないからだ。
最近では、この小部屋からもほとんど出ていない。
いくら特別な力があろうとも、この足が異形で、異端である以上、忌避されるのは仕方がない……。
と、言いたいところだが。
ここに監禁紛いのことをされてるのは、何代も前の緑龍が、この脚の自由さ故に里にもたらした罪が故。
くだらない尻拭いのために、おそらく短いだろう命をこんな薄汚れた場所で使うなんて冗談きつい。
緑龍の血を引く者は数いるが、その里の中で能力を受け継ぐのはただひとり。他の龍もまた然り、だ。
俺の場合、次代の緑龍が生まれた時点で、能力の後継者は変わる。
緑龍と呼ばれるのは常にひとりだ。
つまり、俺がいるということは先代の緑龍……ガロウは、能力の継承と共に緩やかに死へと向かっていく。
今世の唯一の知り合いと言ってもいい男は、この状況を恐れれている。
そりゃそうだ。
目の前にいるガキが力を増す度、自分は死へと向かっていくのだから。
抗いようのない、一方通行の道にいる。
生意気で、ガキらしい可愛げもない。得体の知れない俺の存在が、憎く思えるのもさもありなん。
不器用な男だ。
自分を正当化し、周りを悪とすれば楽なのに。
それは彼の中では悪であり、耐えられず、憎しみをぶつけられるのも年の離れた
そうして、さらに自分を責めて、ぼろぼろになって。
その事実が少しだけやるせない。
まぁ、原作の様に能力を使ってここから脱走とかしてないのに殴んのはやめて欲しいけど。
いや、出られるなら出たいが、この男が。
この先代緑龍がいる限り、俺はここから出ることはできないだろう。無駄なことはやんねーよ。
どうせ、俺の記憶が正しければ、そろそろ出ることになるしな。
きっと、今はこの脚で逃げ出したって、引きずり降ろされて終いだ。
ただ。
この閉鎖された場所で、何年も、自分の命を喰う人間と関わり続けることが、どれだけ酷なことなのか。
俺が生まれてから、もう12年経っている。
本来ならもっと早く受け継がれるはずの能力が、12年も。
八つ当たりもしたくなって当然だろう。
むしろ理性を保てることに驚くわ。
それでも里の人間に力を向けなければ、俺も自分の腕力で殴るだけなんだから。
優しすぎるぐらいだ。
殴られる俺はたまったもんじゃないけどな。
痛いのは慣れないし、嫌いだ。
ま、他人の心境なんて、想像することしか、できないだろう。
そう、想像するだけ。
俺に出来ることはなにもない。
「……お前。」
普段、俺たちの間に、会話らしい会話はほとんどない。
昔はまだ、もう少し話してたと思うけど。まぁ、それも仕方がない。
最近聞くのは、食べ物を持ってきた時の「飯。」とか、こいつの悪役ムーヴとか、それだけ。
あと、ほんっっとにたまーに、俺が聞いてないと思ってる独り言。
だから、今日は、珍しい。
「なに。」
「外に出ようと、思わないのか。」
……、?
なにかと思えば。
「出てどうすんだよ?
あんたが、連れ戻すんだろうが。」
それに、例え出ても、行く場所なんてないっていうのに。
俺は別に、それでも構わないけどさ。異能もっての一人旅とか夢あるし。
けど、たぶん、大事なことなんだろ。あんたにとっては、行く宛て、ってやつが。
そのことを、あんたは身をもって知ってたはずだ。
原作知識ももちろんあるが、緑龍は、自由を愛する質だから。
はじめは、こんなにも諦めきっていなかったはず。
かつては、あんただって。
どんな意図の質問だと、自然と歪んだ表情でガロウを見た。
なんのいじめだ。
なんの、自虐だ。
そんで、だから。
「……そ、うだな。」
なんで、あんたが、傷ついた、みたいな顔をするんだよ。
「……あぁ、そうだろうな。」
一瞬見せたその表情は、すぐさま仮面に覆われた。
「クソ生意気なガキだ。
お前をいじめるのが俺の余生の楽しみなんだ。もっと惨めに足掻けよ。
逃げたなら、俺が引きずり下ろしてやったのに。すましやがって。」
鋭い双眸がこちらを睨む。
でも、そこには憎しみなんかよりよっぽど深い感情がある気がした。
「ハッ、ばかばかしい。」
笑って、顔を逸らして。
ばかばかしい、と小さくもう一度繰り返す。
そうしてこちらも見ないまま、ぽつりと。
「……早く、俺に死んでほしいか。」
死んでほしいんだろう、と。
そんなこと言いはしなかったけど、聞こえた気がした。
どれだけの理不尽だろうと。
どれだけ追い詰められても。
この男は決して他人にその脚を使わない。
知ってるんだよ。知ってしまった。
恨めと?嫌えと?死ねと願うほどに?
「あんたは、」
あんたが、俺を、心底嫌ってなんかいないのに?
『飛べ。』と。
そうこぼすのを、知ってしまった。
無意識か、本当に何気なく、ぽろりと落ちてきた言葉。
『お前は、飛べよ。』
なのに。
「っ、……。」
なんて、返せばよかったんだ。
そんなの、そんなこと俺に聞くんじゃねーよ。
─────能力は、徐々に継承されていく。
時間は止まらない。
『あぁあああぁああっ……!』
重くなる足と。絶望した瞳で。
抵抗しないガキを殴って死にそうな顔をする、あんたのことを。
ただ見るしかできない、俺の気にもなってくれ。
……泣けば、いいのに。
死への恐怖、自由への渇望。その、激情を宿す瞳の奥。
悲しいと、恐ろしいと、泣けばいい。
苦しいと吐き出せばいい。
理不尽を嘆いて、俺の前で、泣いてくれるだけでいい。
傷の舐め合いがしたいんじゃない、ただ、その本心の一端でも見せてくれたなら。
そうしたら、ただ、何かが変わるんじゃないかと。
『何か』が、何なのかなんて、わからないけど。
俺を殴る度に心をぼろぼろにするくらいなら。
俺の知らない所で謝るんじゃなくて、ちゃんと俺に面と向かって、泣いて謝るぐらいしたらその罪悪感も減るんじゃないの。
謝る資格もないだって?その資格はどこで取れんだよ。講習と試験でも受けてこい。
独り善がりもいい加減にしろよ。
憎まれ役もやり切れてない。似合ってもいない。
怒りや憎しみでしか感情を昇華できないこの人は、いったいどうやって笑うんだろう。
どうしたら、笑うんだろう。
もし。
もしも。
もしも別の場所で、出会っていたら。
なんて。
何度だって繰り返されて、いつだって叶うはずのない。
陳腐な言葉を飲み込んだ。
泣きたいくらいに、変わらない現実がそこに横たわっている。
……この先の未来が、原作の通りなら。
俺はここを抜け出して、赤髪の少女と歩むのだろう。
俺の先祖が、彼の王を護ったように。
何があっても。どんな壁にぶつかっても。
……さいあくだ。
俺は、貰えるもんは、貰っとく質だし、この右足も便利だとは思ってるけど。
だからといって、欲しかったかと聞かれると、Yesと頷くことはできないだろう。
俺もガロウも、こんな脚が欲しくて生まれてきたんじゃないし。
いつ蘇るとも知らない、王様のために生きているんでもない。
知りもしない人物を、護るためにここにいるってのも違うだろう。
四龍が集まる?運命?緋龍王の再来?
そんなことはどうだっていい。
どうだっていいから、俺たちに、どこへでも行ける自由をくれたらよかったんだ。
死んでほしいか、と言ったな。
あえて答えるなら、「会いたくなかった。」。
こんなところに転生なんてしなければ、出会うことだってなかった。
漫画の、メインキャラの番外編。回想に出てきたキャラクター。
それだけの認識の人間が死んだって、俺はなんとも思わない。むしろ考えを割くことすらしないだろう。
いつかその話を知ったとしても、悲しいね、の一言で終わるもの。
終わらせられるもの。
そう、それだけのもの。なのに。
なのに、こんな。こんな思い。
「……痛いのも、辛いのも、苦しいのも、大嫌いだ。」
どうやら、俺の未来にあんたはいないらしい。
「……、いてぇ。」
生まれた時から知っていた、ひとつの事実が、この心臓を貫いた。
◇
─────能力が、継承された。
この鎖を蹴り砕いて足を踏み出せば、この陰気臭い場所ともおさらばだ。
能力から逃れられはしないのだから、正しく自由を得たとは言えないだろうが。
それでも。
「ガロウ。」
嫌いだ。
痛いのも、辛いのも苦しいのも。
それをもたらすあんただって、決して好きになれはしない。
でも、嫌いだなんて言葉だって、ぐちゃぐちゃな俺の心を整えるには役不足で。
絡まって、絡まって、絡まって。
単純な一言では表せないほどに複雑で、多くを占める感情の波が、掻き回していく。
「嫌いだ。」「清々する。」「さようなら。」
恐らく相手が想像するだろう言葉を、押し流して沈めていく。
どうしようもないくらい、嫌いになれたらよかったのに。
同族意識。同情。憐れみ。
どれも違う。
ただ、もしもが存在しないと言うのなら。
この脚で、一緒に空を翔けてみたかった。
「俺を笑うか。」
能力の消えた足を引きずって、ガロウは俺を見据えた。
真っ直ぐに。
一度だって向き合うことはなかったくせに、今更。
死にかけとは思えないくらい、真摯で強い光を宿していた。
顔を歪めて、似合わない笑みを形作って。
「なんで。」
「お前を殴った。何度も。何度も。何度も。
でも、俺にはもう力がない。ただの、にんげんだ。
もう、俺は、お前の道を阻むことはできない。」
自嘲気味に言葉を紡ぐ。
「俺は、お前にもう追いつけない。追いかけられない。
俺を置いて行く。行っちまう。どこにでも、きっと。俺と違って、どこまでも。
……なぁ、俺を、惨めだと笑うか?」
泣き笑いみたいな、顔だった。
なんだそれ、知るかよ。ふざけんな。
ほんといい加減にしろよ。なんかもう全部面倒くさいわ。
某詐欺師も言っていた。土壇場で、色々とどうでもよくなることはある、って。
だから俺は悪くない。
この状況も、この男のことも、これから先の未来も。全部が全部、面倒極まりなく思うこと。
なにも考えたくなくなってくる。
ずっと緊張し通しで、いつかくると知っていた今日が来て。
珍しく色々と考えていたはずなのに、頭が真っ白になる。
でも、それと同時に今までにないほどクリアで。
なんのって聞かれたら困るけど、覚悟が決まった気がした。
ありがとうこの大馬鹿者野郎。
お陰でちょっと前向きになれる。
笑う許可も本人から貰ったことだし、ついでに。
この鬱々とした男に引きずられて言えてなかった文句も、胸の内から引きずり出してやる。
息を吸った。
「惨めだとは思わねーけど、大馬鹿野郎だとは思ってる。
笑ってやるよ。この、っばかガロウ!
ははっ、ははははっ!ばーか!!」
俺の返しに、目の前の男は驚愕も顕にこちらを見る。
混乱が見て取れて、少しだけ気分が晴れた。さっきの顔より断然いい。
「この際、言いたいこと全部言っとくけどな。
俺は!殴られんの大嫌いなんだよ!!いてぇわボケふざけんな!
てめーの事情なんて知るかっ!殴られんのって痛いんだぞ!!
勝手に罪悪感抱くくらいなら!俺に!謝れ!!
自己嫌悪すんのは勝手だがな!こっちは痛いんだよ!!
謝れよ!そしたら、いくらだって許してた!!
いややっぱ嘘!殴り返してチャラにしてやる!!
それがひとつ!!
あとな!惨めがなんだって!?
こんなクソみてぇな環境で、他人に能力のひとつも向けねぇお人好しの!なにが惨めだって!?
俺を殴ったから!?あのヘッタクソな悪役ムーヴで殴って、意地の悪い態度とったやつが、俺に追いつけないのを笑えって!?
無理に決まってんだろ!
だって!あんたのこと!そこまで嫌いになれてねーから!!」
見開いた目に、情けない顔をした俺がいる。
一度、荒くなった息を落ち着けて、続けた声は思いの外弱くて、震えていた。
でも、もっと早く、こうしていたらよかったのかもしれない。
「それで、だから、俺は、
……俺が、言いたいのは。」
あつい。
感情のままに紡ぐのは、思ったよりも力を使う。
目元まであつくなってきた。視界が悪い。
「おれ、は。
ただ、あんたと、一緒に空を、飛んでみたかった。」
他に望むことは、意外なことになにも出てこなくて。
鎖だっていらないし、できたらふかふかのベッドで寝たい。美味しいものだってたくさん食べたい。
でも、そうじゃなくて。そういうものじゃなくて。
俺が、とにかく叶えたいと思うこと。望んでいること。
共に、空を翔ける自由。
一番はじめに出てくるのは、なんでかいつもそれだった。
ぽた、と一滴、地面に雫が落ちた。
あーあ。せっかくの男前が、情けない。でも、言ったことに後悔はない。
「……は、ははっ、ははは、あんた、そんなこと知らなかっただろ。
じゃなきゃ、あんなこと言えないだろうし。
なにが、なぁにが死んでほしいか、だ。
そんなこと、一度だって思ったことねぇよ!
俺にとって、そんなこと願えるような男じゃないんだよ、お前!!
そんなこと、言ったって。信じないだろうから、言わなかったけど。
思わせてくれなかったのは、あんただ。
こんなこと言わせてんのは、あんただ!
くだらねぇこと考えて、勝手に死に場所決めんのは、
その責任くらい、取ってからにしろ……!」
強気に口角を上げてみせる。
この感情と、少しの緊張に震える拳を握りしめた。断られたって、絶対に連れて行く。
口を開いてから、声が、もっと震えてしまいそうで。一度下を向く。
目を、拭った。
「……ジェハ。」
能力の衰えは里の人間も知るところ。
代替わりと同時に、俺が里を出ることを危惧して、最近はよく様子を見に来ていた。
俺が里を出て、この能力が白日の下に晒され、この場所に力を求める人間が攻めてくるのが怖いから。
過去に起こった惨劇が、今も尚爪痕を残している。
誰を、嫌いになったらいいんだろうなぁ。
こんなタイミングだけど、笑えてしまった。
これだけ大声も出してるし、おそらく里の人間もすぐに来るだろう。
その前に、言いたいことは全部言ってしまおう。
鎖を、蹴り砕く。
「……だから、行こう。ガロウ。
─────空に。……一緒に。」
その一言は、目を見て言えた。