AS好きな俺が艦これ世界に転生、提督になったのだがどうしてこうなった? 作:アインスト
「未だにほとんどの艦娘たちと会話が出来ていない司令官さんは龍田さんの勧めもあり、食堂に赴く事にしました」
「ですが、やっぱり司令官さんを良く思ってない子もいるみたいなのですが‥‥‥大丈夫なのでしょうか‥‥‥?」
「どろどろと艦娘の黒い感情が渦巻くなかでの第七話、ビッグ7のプライド。どうぞご覧下さい」
────────さて。
食堂の出入口までやってきた訳だが、中からひしひしと剣呑した雰囲気が伝わってくる。
あからさまに歓迎されていないだろう。
しかし、ここでまごついている訳にはいかない。
そういう物だと割りきり、扉を開く。
「────ッ!」
「‥‥‥。」
「──、───。」
やはり。
警戒されているな。
射殺さんばかりに視線が刺さる。
これは‥‥‥参ったな。
さて、どうするか。
まぁ突っ立っている訳にはいかないので、鳳翔と呼ばれる艦娘の元へ歩いていく。
「────貴方にお出しする物はありません」
「‥‥‥そうか。すまない、邪魔をした」
「ええ。例え提督が変わったとしても貴方がここに居られると不愉快な子がいますから。お引き取りください」
「‥‥‥了解した」
正に取りつく島もない、と。
しかし食料問題は致命的だ。
一体何をどうやらかせばこうなるんだ‥‥‥。
仕方がないので執務室に戻る事にする。
道中、確か机の中に携帯糧食があったはずと思い返し、自然と歩みが速くなる。
「‥‥‥はぁ。しばらくはこれで我慢、だな」
『どうされました、軍曹?』
「何でもない。ただ"取りつく島もない"だけだ」
『致命的ですね』
「さて、どうするかな‥‥‥」
『軍曹、いっそのこと彼女らをしばらく休養させてはいかがでしょう』
「それも手だな。やってみるか」
『こちらから館内放送をかけておきます。少し休まれては』
「そうさせてもらう。すまないなアル」
『いえ』
しかし‥‥‥疲れた‥‥‥。
少し休むか‥‥‥。
sub-side
駆逐艦の奴らを相手にしているとふいに館内放送が流れ出した。
声は少し機械的で、しかし何処か人間らしさがある。
確か提督の相棒の"アル"つったか。
そう思考を巡らせていると、"貴女方には無期限に出撃を停止、休養を取っていただきます"とだけ言い、館内放送が切れた。
どういう考えしてんだ‥‥‥?
「あの、天龍さん」
「ん‥‥‥おう」
「司令官さんは、何を考えられているのでしょうか‥‥‥」
「確かに、な。休ませてもらえんのはいいがその間の補給とか警備とかどうすんだ‥‥‥?」
「しかもいきなり、だものね」
「流石にレディーの私にもわからないわよ‥‥‥」
「ま、知るのはただ提督一人って訳だな。龍田、行くぞ」
「わかったわぁ。天龍ちゃんは心配性ねぇ」
「ばっ!ちげぇし!」
「はいはい」
「天龍さんは素直じゃないのです」
「わかってんよ、そんな事‥‥‥」
sub-side out
さて、あれから一時間程経った。
とりあえず今後の方針としては、"補給"と"修繕"だろう。
補給の件は俺がアーバレストで出撃して回収できれば上々。
修繕に関しては先日工廠に出向いた際、"明石"と"夕張"という工作艦とその"妖精"と呼ばれる存在に会った。
彼女らはそれほど前任とは関わっていないそうで、いつの間にか変わっていたので大層驚いたそう。
そうして話をしていく中で、彼女らはアーバレストに興味を向けた。
どうやらかなり気になるようで、目をかなり輝かせていた。
せっかくなので、アーバレストの技術提供をする代わりに、無理のない範囲での鎮守府内外の修繕をお願いした。
彼女らは二つ返事で答え、"量産機作ったらぁ!"と息巻いていたのは余談だ。
「アル」
『イエス、サージェント』
「現在の修繕状況を報告しろ」
『現在入渠施設は30%程まで修繕終了。宿舎施設は45%まで修繕が終了しています』
「後は」
『食堂施設及び工廠施設はほぼ全ての修繕を終了しています。』
「そうか。さて、どうしたものか‥‥‥」
『───サージェント。客人です』
「ん?」
その言葉の後、扉が開かれ一人の長身の女性が入ってくる。
ツカツカとヒールの音を立て、目の前まで来ると。
「長門型戦艦一番艦、長門だ。貴様が件の新任か」
「肯定だ。まだ4日しか経っていないが、よろしく頼む」
「先駆けて言っておくが、馴れ合うために来たわけではない」
「‥‥‥というと?」
「貴様が提督にふさわしい人材か、見極めさせてもらうぞ。こちらとしては認めた訳ではないからな」
「なるほど。てっきり拳の一発や二発くらい飛んでくると思ったのだがな」
「‥‥‥私とてもう子供ではない。それぐらいの簡単な判断はできる」
「それで、話はそれだけか?」
「いや、まだだ」
「‥‥‥言ってみろ」
「貴様は私たちを嘗めているのか?」
「‥‥‥」
「放送を聞かせてもらったが、何なのだあの放送は。無期限に出撃を停止だと?その間の補給はどうするつもりだ?それに、戦う事が私たちの役目だ。それを無くすとはどういう考えをしている?お前は、私たちを否定したいのか?」
「‥‥‥説明には時間がかかる。とは言っても納得はしなさそうだが」
「当然だ。あのまま嘗められたままはいそうですか、と身を引ける訳がないだろうが!」
「説明不足で申し訳ないが、これだけは言わせてもらう。お前たちはもう傷つかなくて良い」
「‥‥‥何?」
うぉぉ、とんでもないくらいに睨まれている。
明らかに"何言ってんだこいつ"みたいな目で睨んでいる。
まぁ唐突に傷つかなくて良いなんて言われたらそりゃ疑念を向けられてもおかしくはない。
だが、その言葉は事実だ。
彼女らが休養を取っている間は俺とアルで出撃する。
これは決定事項だ。
むしろ何故女性である彼女らが傷ついて、男性である俺たちが引きこもっていなければならん。
確かに戦えるのは彼女らだけかもしれないが、それでもやりようはあるはずだ。
とにもかくにも、タダでさえ前任に傷つけられた彼女らを今すぐには戦場には出せない。
精神的なケアが必要だ。
「‥‥‥まぁいい。だがその言葉、虚無に帰すなよ」
「了解だ。君たちは(戦力的に)魅力的だからな。ケアをしっかりとしつつ、いつの日か共に戦ってもらおう」
「──ッ!?」
「どうした?」
「‥‥‥いや、何でもない。では失礼する」
若干早足になりながらも退室していった。
早足になるぐらいここにいるのが嫌だったのか‥‥‥。
これは早々に問題解決に向けてしっかりしないとな。
「‥‥‥アル」
『イエス、サージェント』
「明石と夕張に連絡を取ってくれ。出撃する」
『了解。単独任務になるためより慎重な行動を推奨します、軍曹』
「わかっている。弾薬も限られているからな」
sub-side
──連絡を取ってくれ──出撃‥‥‥。
「‥‥‥聞いたか?」
「聞いたわぁ」
「バッチリ聞こえたのです」
「出撃って言っていたね」
「でもさっき無期限にって言ってなかった?」
「‥‥‥龍田」
「ええ、まさかとは思うけどこれ‥‥‥」
「提督が、出撃するってのか?」
「それは無茶じゃないのかな。私たちのように艤装があるわけじゃないんだろう?」
「そのはずよ。司令官に艤装だなんて‥‥‥」
「だが出撃するってんなら話は別だ。工廠にいるかもな」
「それじゃあ向かいましょうかぁ~」
「おう!」
盗み聞きをするつもりはなかったんだが、聞いてしまった。
あの長門さんを若干ながら納得させたのか‥‥‥。
やっぱすげぇな、提督。
出撃、という単語を聞いた瞬間おれたちはすぐに話し合い、先回りして何をするのか調べる事にした。
「‥‥‥青葉、聞いちゃいましたっ」
sub-side out
工廠に置いてあるあの大きなお人形さん、ゴツゴツしててカッコいいっぽい!
あれ、提督さん‥‥‥何をしてるんだろう?
夕立、気になるっぽい!
‥‥‥って、青葉さんも何をしてるっぽい?
次回、"追跡するジャーナリスト"
次回もよろしくっぽい!
という訳でいかがだったでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです。
では、次回更新でお会いしましょう。
ではでは(*´∀`)ノシ