突如宇宙から異星人・天人が現れてから数十年
長らく支配し続けていた天人から侍の誇りを取り戻し、この国が新たなる出発を踏み切ったその頃
攘夷戦争時代は白夜叉と呼ばれ、散々暴れ回っていた男もまた
一人の友と師が消えてしまってからも、相変わらずダラダラした生活を送っていた。
「おいジーサン、俺のスクーターまだ修理終わんねぇのか」
「うるせぇなちょっと待ってろ、ったく国が平和になっても相変わらずからくりを乱暴に扱いやがって」
からくりばかりの研究所内で、ゴーグルを付けたいかつい老人に話しかけているのは坂田銀時。
腰に洞爺湖と彫られた木刀を差し、万年死んだ魚の様な目をしたこの銀髪天然パーマの男こそ、この国を救う事に貢献した侍の一人である。
しかし今となってはそれも過去の思い出に過ぎず、昔と変わらずてんで稼ぎの無い万事屋で働いており
度々やって来る家賃の催促から雲隠れしながらダラダラと暇な日々を送る毎日だ。
「っつうかオメェ金あんのか? 金出さねぇなら直さねぇぞ俺は」
「それにしてもアレだよな~、世間では時代が大きく移り変わり文明開化だのなんだの言われてっけど、ウチは相変わらず何も変わらずずっと素寒貧な毎日で生活もままならなくてよ」
「おい、聞いてんのか天パ、金持ってんのかって言ってんだよこっちは」
「これじゃあ文明開化じゃなくて文明大火だっつうの、家計がもう完全に火だるまになってんの、オーバーヒートしてんのウチ」
「知らねぇよ、いいから金払え」
突然誤魔化すように顎に手を当てブツブツと世間に対しての愚痴を呟く銀時に対し
からくり技師兼元テロリストの平賀源外は彼が修理を依頼して持ってきたスクーターからそっと手を放す。
「言っておくがウチだって家計キツイんだ、こちとら天人の脅威から自慢のからくり兵器で護ってやったというのにお上の連中は金一封さえ寄越しやしなかったモンでな」
「その自慢のからくりとやらで昔、将軍を殺そうとしてた奴って一体どこのジーサンだっけ?」
かつて自分が造り上げたからくりを用いて、数年前までこの国にいた偉大な将軍を暗殺しようと企んでいた源外
そんな彼に上の連中が金など出す筈ないだろうと銀時は皮肉交じりに返す。
「お互い金が無いってのはよくわかったからさ、ここは金無し同士として協力し合おうぜ」
「悪いがそいつは無理な話だな、ボランティア感覚でテメェのバイクを直すなんて余裕はウチにはねぇ、わかったならとっととこのオンボロバイク持ってとっとと失せろ、貧乏人」
「良いだろうがもう老い先短いんだから、それまでに善行の一つや二つ積んで置けば少しは地獄の刑期が減るかもしれねぇんだぞ」
「はん、この年になって今更死後の事で清算つける気なんざねぇ、やっちまったモンはしっかりと償わせてもらう事にするわ」
金が無ければスクーターは修理出来ないと言われ、しかめっ面で失礼な事を散々浴びせてる銀時だが、源外は屁でもない様子でへらへら笑いながら受け流す。だが
「ま、金がねぇなら別の形で工面してくれんなら修理してやっても構わねぇぜ」
「じーさん……そうかアンタ……最初から俺の体を目的に……!」
「んな訳ねぇだろ殺すぞ! 俺が言いてぇのはちぃとばっか手伝って欲しい事があるってこったよ!」
自分の両肩に手を置いて驚愕の表情を浮かべる銀時に即座にツッコミを入れると、源外はふと傍にあった、人一人は容易に入れるであろう大きな箱型のからくりを指差す。
「最近俺が作ったからくりなんだけどよ、上手く稼働できるかどうかはまだわからねぇんだわ、だから銀の字、お前ちょっとコイツの実験体になってくれ」
「いやなに普通な感じでサラッと恐ろしい事言ってんのだクソジジィ、なんだよ実験体って、一体俺に何やらせる気だ」
「まあそう言うな、上手くいけばお前さん、人類がずっと求めていた夢の一つを一番最初に叶えられる男になれるんだぞ」
「は?」
急にからくりの実験の生け贄になってくれと言われては流石に銀時もすぐに断ろうとする。
しかし源外の話はまだ終わっていない。
「コイツはな、いわば多くの者達が求めていた夢の未来道具って奴だ。銀の字、お前さんこんな事たまに思う事はねぇか? 長い時間をかけて移動して目的地に辿り着くのではなく、一瞬であらゆる場所に行ける事が出来たらいいなって」
「そんな事、社会人になれば誰だって思うだろ、特にドラえもん読んでた奴とか……ってまさかアンタ……」
「その通りだ銀の字、俺はな、遂にあの猫型ロボットが持っていた、未来の秘密道具の一つを作る事に成功した」
「!?」
逸れには流石に銀時も驚きを隠せず目を大きく見開いてみせた。
未来の秘密道具……恐らく源外が言っているそれは、ここから遥か遠くにある場所でも、一瞬で行けるというあの……
「ま、まさかアンタ……! いよいよ作りやがったのか!? 誰もが欲しがるあの! どこでも……!」
「まずは現物を見てくれ、驚くのはそこからだ」
銀時の頭にあるピンクのドアがはっきりとイメージされている中で、源外はその電話ボックスみたいな形状をした銀利の箱に付いているいかにもなドアノブに手をかけて、ゆっくりと回して開けてみせた。
ドアを開いた先で銀時が見た光景は……
「とくと見やがれ、コイツは俺が長年造り上げて来たからくりの中でも屈指の最高傑作、名付けて……!」
「どこでもトイレ!!!!」
「ってふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ」
それはキラキラに輝く銀色の……
まごう事無きウオシュレット機能なしの素朴な洋式の厠であった。
「本当は「どこでも厠」って名前にしようとしたんだがちょいと捻りが足りないと思ってな、時代が変わっている今をイメージして洋風呼びのトイレにしてみた、どうだ、捻りがきいてるだろ?」
「いやテメェの頭を捻り千切ってやろうか!? この野郎あんなに期待させておいて結局いつもの下らねぇ発明品かよ!」
「聞き捨てならねぇな、言っただろ、「どこでもトイレ」って、コイツはホントにやべぇ代物なんだぞ」
内装は緻密な機械仕掛けなのはわかるがそれ以外は何てことない普通のトイレ
てっきりドアの先には南米とか常夏のハワイとか、はたまた宇宙のどこかにある異星の光景が現れるのかと想像していた銀時は、激しく憤慨するが、源外は静かに首を横に振り
「この厠は便をすればその量に応じて四次元を超え、あらゆる場所に置かれた厠に一瞬で転移出来てしまうんだ、つまりクソを出せば出す程より遠くの場所に移動する事が出来るんだぜ」
「だぜ、じゃねぇよ! 今すぐ不二子先生に土下座して来い! 先生が造り上げた未来の秘密道具をこんな下ネタ要因に使いやがって!!」
彼の説明を聞いても未だ凄いと理解出来ない様子で、銀時は「どこでもトイレ」を指差す。
「ていうか出すウンコの量によって移動する場所が決まるって事は、自分が望んだ場所には行けねぇって事だろ! 役に立つかそんなモン!」
「安心しろ、それはあくまで現段階での話だ、今後改造を加え続ければ、目的地を設定し、そこまで行ける程の量に達すれば認識して時空移動できるようになる予定だ」
「結局ウンコする必要があんのかよ! どうして厠で造ったんだよ! ただのドアで良いだろうが!」
「そのまんまパクったら訴えられるだろうが、これはあくまでアレとは別物だと主張する為にどうしても厠にしなきゃならなかったんだ」
「いやそれでも厠にする必要はどこにもねぇだろ!」
どうして今後歴史に残るかもしれない様な稀代の大発明を、こんなきわどい形で再現してしまうのかと不思議で仕方ない銀時。
やはり発明家というのは常人とは発想が一味も二味も違うらしい。
「ったく誰がこんなからくりなんかの実験体になるか……変な場所に飛ばされちゃたまったもんじゃねぇしな」
「そう言われずに協力してくれよ、俺は上手く使えるかどうかここで見とかねぇといけねぇし、からくり供は便を出す事は出来ねぇから実験に使えねぇ、だから生身の人間であるお前さんの手を借りる必要があんだよ」
「手というかケツを借りてぇだけだろアンタは、付き合ってられっか……」
あらゆる修羅場を乗り越えて来た銀時であってもこればっかりはリスクがデカすぎてやる気になれない。
源外の協力依頼を断わって彼はさっさとその場に立ち去ろうとする、だがその時……
「うわーヤバいヤバい! 漏れるってコレ絶対!」
そこへカランカランと下駄の音を鳴らしながら、便意を我慢した様子で通路を走って来る中年の男性が一人
この国が救われて尚未だに救われない人生を送る、グラサンがトレードマークのまるでダメなおっさん・長谷川泰三だ。
「お! なんだよこんな所に厠があるじゃねぇか! 助かったー! おいじいさん! ちょいと貸してくれ!」
「っておい、長谷川さんそれは……」
源外の研究所に厠があるのを発見した長谷川が、銀時の声も届いてない様子で脇目も振らずに「どこでもトイレ」の中へ
そしてドアを閉め、非常に不快な音が中から聞こえた後……
突然、どこでもトイレがガタガタガタと左右に大きく揺れ始めたのだ。
「あ、あれぇ!? ちょっとなにコレ!? どうなってんのぉ!?」
ただのトイレだと思っていた長谷川が中でかなり焦っている様子だ、しかし揺れは収まらないどころかどんどん激しくなっていき
「うわコレ絶対ヤバいって! もしかしまた天人が地球を襲いに来たのか!? ちょ! 誰か助け……!」」
中からパニクった様子で長谷川が助けを求めさけぼうとした瞬間
突然「チン!」と音が鳴り響くと、その直後、どこでもトイレの揺れがすぐにおさまったのだ。
銀時と源外が固唾を飲んで見守っていると、厠のドアがキィッとゆっくり開き
「フゥ~~、我ながらかなりの特大サイズを産み落とせたぜ~~」
まるで何事も無かったかのようにドアの中からヌッと出て来たのだ
紅いバンダナを頭に巻いた、日焼け肌の筋骨隆々の大男が
「出す時思わず”ラカンフィーバー”って叫んじまったぜ! いやー快便快便! 今日も俺は絶好調!!」
明らかに先程中へと入った長谷川泰三とは似ても似つかない全くの別人が、真顔で固まる銀時と源外の前に現れたのだ。
見知らぬ男は銀時達の事をよそに機嫌良さそうに鼻歌交じりで研究所から出て行くと
「ってああ!? なんだここ! こんな所魔法世界にあったか!? まあいいか! ガハハハハハハ!!」
高らかに笑い声を上げながら見慣れぬ土地を前にしてもさほど気にしてない様子でズンズンとどこかへと去っていくのであった。
それをしばしの間銀時が無言で見送っていると、源外がボソッと
「よしじゃあ、実験やるか、銀の字」
「いや何事も無かったかのように流すんじゃねぇぇぇぇ!!!」
平然としながら実験に参加させようとするマッドサイエンティストに、我に返った銀時が声を荒げてツッコんだ。
「どういう事だおい! 長谷川さんどこ行った!?」
「なに言ってんだ、さっき出て来たじゃねぇか」
「あんなムキムキでガングロのおっさんのどこが長谷川さんだよ! 完全に別人だろうが! 真撰組のゴリラをチンパンジーと錯覚してしまう程の大ゴリラだったぞ!」
アレは間違いなく長谷川さんでは無かった、何より彼特有のダメ人間オーラが先程出てきた大男からは微塵も感じられなかったのが何よりの証拠。
しかし源外は頑なにその事実を受け止めずに
「まあ人間、体に溜まったモンを全部吐き出しちまえば、あっという間に別人と思えるぐらいに見た目が大きく変わる事なんざよくある事だ」
「変わり過ぎだろ! ウンコ出せば見た目も声も変化するとか! 全生物の進化論を真っ向から否定してんだろうが!! CV碇ゲンドウからCVジャック・バウアーになってたんだぞ!」
「ゲンドウだろうがバウアーだろうが大した違いはねぇだろ、両方ともおっさんだって事に変わりねぇ、そんな微々たる変化を一々気にしてちゃこの文明開化の時代に置いてかれるぞ」
そう言って彼は攻撃を続ける銀時をスルーして、自慢の発明品である「どこでもトイレ」をカチャカチャと弄り始めた。
「よし、そんじゃもう一度起動すっから、入れ銀の字、溜まったモン吐き出せ、CV変わるぐらい」
「おいちょっと待って! 今もう一度起動するって言わなかった!? それってつまり長谷川さんが入った時に一回起動したって事だよな! ひょっとして長谷川さん! 本当にどっか別の場所に飛ばされたんじゃ!」
「つべこべ言ってねぇでさっさと入れって、CV坂田銀時から、CVフリーザになれるチャンスなんだぞ」
「CVフリーザになれるチャンスなんざ今まで一度も掴もうとした事ねぇよ!! どんな誘い方だそれ!」
徐々に強引に話を進めて行ことする源外にいい加減にしろと銀時は全力で拒否、あのような現象を目の当たりにしておいて、はいわかりましたと言えるほど銀時はそこまでバカではない。
「俺を釣るならもっと上等な餌持って来いや! CVフリーザで釣れると思ったら大間違いなんだよ! せめてCVベジータにしろ!」
「仕方ねぇな、じゃあほれ、バイク直してやっから」
「無理だつってんだろ!」
「そんじゃ、今日コンビニで買って来たジャンプ、これやるから乗れ」
「いくら俺が純粋な少年の心を持つジャンプ愛読者でも、数百円のジャンプの為に見知らぬ場所に飛ばされてたまるか!!」
「強情な野郎だな、ったく仕方ねぇ」
ふと傍にあった最新号のジャンプをヒョイと掲げて、それを気前よく譲ってやろうとするのだがそれでも銀時は動こうとしない。
全く交渉に応じない彼に源外は軽く舌打ちすると、頭をポリポリと掻いて嫌そうにしながら
「わかった、これでどうだ、テメェがお登勢の奴に滞納している家の家賃、俺が肩代わりしてやる」
「え、マジで……?」
「お前さんの事だ、どうせまた2カ月分ぐらい溜まってんだろ? それ俺が払ってやるから手伝え」
「……」
溜まっている家賃の肩代わりとはこれまた随分と太っ腹な話だ。
それ程までに源外はこのからくりの開発に必死なのであろう。
銀時はしばらく顎に手を当て考え込むと、額から一滴の汗を流しながら
「……ホントに大丈夫このからくり?」
「問題ない問題ない、俺はいつだってお客様に安全なからくりを作る事を心がけているんだ」
「突然の事故とかトラブルに遭遇して大変な目に巻き込まれるとかもない?」
「そんな事ある訳ねぇだろうが、お前さんはただケツから出せばいいだけなんだから」
「いや俺さっきの長谷川さんの件を踏まえて尋ねてんだけど? アンタが言ってる事全く信用できないよねアレじゃ」
「ウダウダ言ってねぇでさっさと決めろって、いいか銀の字、お前さんただウンコするだけで家賃チャラになるんだぞ、それって火だるま状態の家計にとって大いに助かる事なんじゃねぇのか?」
「……」
コレは明らかに大きなリスクが伴う危険な賭け。
実験が何事もなく終われば大した労力も使わずに源外に家賃を負担してもらえるという経済面的にかなりのプラスに繋がるが
もし失敗すればどうなるか全く分からない、そもそも時空を超えるとはどういう意味なのであろう、一体どこまでの距離まで移動できるのだろうか……
しばらく悩みに悩んで考え込んだ後、首を捻っていた銀時の出した結論は
「おいジジィ」
「あん?」
迷いに迷った結果、銀時はスッと源外に向かって手を差し出す。
「ジャンプ寄越せ、厠で気合の一発出す時は、ジャンプ読んで熱く心を燃やしながらに限るのが俺の流儀なんだよ」
「そんな流儀死ぬ程どうでもいいが、そいつはつまり、受けるって事だな俺の依頼を」
「俺は万事屋だ、依頼があればなんだってやってるさ、例えそれがどんなに下らねぇ事でもな」
腹はくくったと、得意の決め顔を作りながらそう言うと、源外からジャンプを受け取り、銀時は処刑台にでも向かうかのように一歩一歩しっかりと踏みしめながら「どこでもトイレ」の中に
「じぃさんがもし俺に何かあった時はあのガキ共によろしく言っておいてくれ、俺がいなくなったのは他でもなく平賀源外とかいうクソジジィの発明品に巻き込まれたせいだって」
「そいつは無理だな、言ったら俺が責任取らなきゃいけなくなるだろ」
「完膚なきまでジジィをボコボコにして4分の4殺しでお願いしますって」
「4分の4ってもうそれ完全に殺してね?」
万事屋に残したメンバーに伝言を頼むと言いながら銀時が厠の上に座ると
源外は責任逃れの為に彼の伝言を受け止めた上で誰にも流さないと頷く。
そして最後に銀時はドアを閉めると同時に
「それじゃあじーさん、家賃の件頼んだぜ、しっかりとあのババァに払っておいてくれよ」
「2年分」
「っておい! 2年分ってどういう事だ!」
ガチャリとドアを閉めた後に思いもよらぬことを言い残した銀時に、源外は慌ててドアの前へ
「おい待て開けろ! 俺はせいぜい2カ月ぐらいの滞納だと思ってたんだぞ!」
「知らねぇよそんな事、こちとら2年近く家を空けてたんだ、戻って来たならその分の家賃もちゃんと払えってババァがうるせぇからよろしく頼む」
「ふざけんなそんなの払えるか! 無し無し! やっぱさっきの依頼は無しで!」
「あ~そいつは無理だわ、残念ながら俺は既にアンタに頼まれた仕事をやっている最中だからな、この座り心地最悪の便器に座りながら、腹に溜まったモンをブリブリ吐き出す作業を……」
バンバン!とドアを強く叩いて出て来いと叫ぶ源外が時すでに遅し
銀時はもう中で既に作業に入っているのか、長谷川の時と同じようにガタガタと「どこでもトイレ」が大きく揺れ始める。
「ってあれ? こうして体験するとホントに揺れるんだな……てかちょっと揺れすぎじゃね?」
なんだか思ってたのよりも揺れが激しい、中でそう感じて心配そうに呟く銀時をよそに、どこでもトイレは倒れんばかりの勢いで更に激しく揺れ始め
「あれ!? やっぱこれマズイよね! なんか周りが光り出したし明らかヤバい事になってるよね! おいじーさん実験は一旦中止だ! このままだと俺……!」
徐々に天パり始めた銀時だが、激しい揺れはやがてまた「チン」という心地い良い音がなった瞬間ピタリと止んだ。
するとさっきまで騒がしかった銀時の叫び声もまた聞こえなくなり、しばらく源外は見つめた後、ゆっくりとどこでもトイレのドアを開けてみる、すると
そこにいた筈の銀時が、跡形もなくその場からいなくなってしまっていたのだ。
たった一つだけ、彼がそこにいた形跡を残しているのは便器の中にある……
「くっさ! あの野郎、こんなデカいモン残すんなら流しとけっつうの……」
坂田銀時という男がいたという唯一の証明になるそのモザイクまみれの”それ”を、源外が躊躇なく水で流して跡形もなく消し去ってしまう。
そして流し終えた後、源外はドアをパタリと閉め
「さて、俺もちょっくら出してくるか、普通の厠で」
あたかも何事も無かったかのように、最初から銀時との約束など無かったかのように振る舞いながら、一人研究所内にあるちゃんとした厠へと向かうのであった。
果たしてかつてこの国で自慢の木刀を振り回し、数々の激戦を戦い抜いて来た一人の侍、坂田銀時は何処へ行ったのだろうか……
次回、本編開始。