その怪しい見た目と言動のおかげで、早速クラスから不審がられる坂田銀時。
そしてそんな彼を、A組を厳しく取り締まる生徒「いいんちょ」こと雪広あやかが厳しく聴取する事になったのだ。
「改めまして、わたくしがこのクラスの学級委員長を務める雪広あやかですわ、よろしくお願いいたします」
「よろしくも何も俺はとっとと帰りたいんだけど?」
「今からこのわたくしがクラスを代表し、あなたが本当にこのクラスの教師としての資格があるのかテストさせて頂きますわ、覚悟なさいませ」
「なんなのこのクラス? 人の言い分を聞かずに自分勝手に物事を進めろという悪しき教育でも受けてんの?」
教壇に立ってめんどくさそうにしかめっ面を浮かべる銀時だが、あやかを除く他の生徒達の中からも「やれやれー!」とこの状況を愉しんでいる者がチラホラと
彼の隣に立っているネギも「頑張ってください!」とエールを送られ、ますます帰れない状況に
「しゃあねぇな、テストだかなんだか知らねぇがなんでも答えてやるから手短にな、俺この後見たいドラマあるんだよ」
「ご心配なく、あなたの回答が合格に足るならばすぐにそのドラマを見せて差し上げますわ」
仕方なく彼女のテストとやらを受けて立とうとする銀時に、不敵な笑みを浮かべながら真っ向から対峙するあやか、どうやら負かす自信は十分あるらしい。
「しかしもしそうでなかった場合……最悪、今日一日の授業が潰れます」
「いや待って下さいいいんちょ! それ先生である僕としては許容出来ないんですけど!? 授業はちゃんとやって下さいちゃんと!」
「あらヤダ冗談ですわネギ先生、優等生であるわたくしが授業を疎かにしようとするなんてあり得ませんオホホホホホ、どこぞのバカレッドさんと違って」
銀時に対する態度とは打って変わってネギに対して変に口調が甘くなるあやか。そして再度銀時に話しかける時はすぐにジロリと睨みつけ
「ちなみにわたくしの前では嘘やハッタリは通じません、もし虚言を吐いたと判断したら、雪広家代々伝わる拳法が炸裂する事をお忘れなく……」
「はいはいわかったわかった、良いからさっさと始めろ、坂田家代々伝わっても無い鉄拳かますぞコラ」
「わ、わかりました……それでは第一問」
腕を組んで得意げに彼に脅しを吹っ掛けてみるあやかであったが、銀時は全く動じずにさっさとやれとけだるそうに催促するので
少々調子が狂いそうになりながらも彼女はすぐに態勢を整え直すと早速テストを始めるのであった。
「もしクラスの中で一人だけどうしても成績が上がらない生徒さんがいたら、一体あなたはどのような教育をして対処しますか?」
「縄なり鎖なり使って拘束して、泣こうが喚こうが血反吐ぶちまけようがわかるまで脳みそに勉学を叩きこむ」
「思っていた以上に即答ですわね……しかし」
早速いかにも教師向けの問題を提示するあやかだが、銀時はまさかの仏頂面でとんでもない答えを即答。
すると彼女は彼の答えを聞いた後、額から汗を垂らしながらごくりと生唾を飲み込むと
「正解ですわ……」
「え、ウソ!? 今ので正解なの!? いや答えた俺が言うのもなんだけど! ちょっと教師としてはマズくない!? そこはこうツッコむ所じゃない!?」
「確かに普通の学校では即刻問題行為と判断されますが、この麻帆良学園、ましてやこのA組であれば話は別」
思ってたの違う反応に銀時の方が驚いていると、あやかは平然とした様子で他の生徒を見渡し
「全国トップクラスのおバカさんが混入されているこのクラスでは、時にスパルタ教育もまたありですわ」
「スパルタというのはよくわからないけど! 勝負なら受けて立つアル!」
「ハハハ、血反吐撒き散らす程の教育とはいささか興味があるでござるな~、是非とも拙者にご教授を」
このクラスではまた武力行使を交えた教育もまた必要と述べるあやかに、いかにもアホっぽい二人の生徒が望む所だという反応。
これには銀時も絶句の表情
「な、なんてことだ……新八なら即ツッコミを入れる俺のボケをあっさりと潰しにかかるなんて……! コイツ等ただもんじゃねぇ……!」
「銀さん、あなた一体なにと戦ってるんですか?」
どうやらこの学校のクラスはかなりの曲者の集いの様だ。
元の世界ではぶいぶい言わせてい自分がここまで狼狽えるなんて……銀時が一人戦慄を覚える中、隣からネギが冷静に口を挟む。
「まあ確かに明日菜さん相手だとそれぐらいしないと効果が無いかもしれませんね、彼女はこのクラス随一のおバカさんですし、僕がやっても間違いなく返り討ちにあうんで、今後機会があればよろしくお願いしますね、銀さん」
「なにをよろしくされたの!? いいの銀さんやっちゃうよ! ウチの世界のノリで思いきりドロップキックかましたりするよ!?」
「ああ全然大丈夫です、明日奈さん相手ならいつでもやっちゃってください」
「ねぇネギ君、薄々気づいてたけど……お前って結構酷い所あるよな」
生徒の一人を教育の為なら遠慮なくボコってくれてもいいと笑顔で言ってのけるネギに、銀時は唖然としながらすっかり彼等にペースを握られてしまっていると
不意にあやかが「第二問!」と叫んで再びテストを始めるのであった。
「なかなかやりますわね坂田さん、しかしこっからが本番ですわ!」
「まだ続くのかよ、もういいんじゃね? お前等がどうしようもなくまともじゃないってのはよくわかったから」
「失敬ですねわたくしはまともです! それではいきますわよ!」
元々いた世界と同じくこちらの世界もまた「まともではない」と立証された時点で、銀時はますます帰りたそうに目を細めるが、それをあやかが許さない。
「想像してください、今このクラスに性格最悪で救いようのないおバカさんのツインテールがいたとします」
「なんかえらく限定的な例えになってね? おい、明らか特定の人物を挙げてるだろ」
「その明日菜さ……その生徒が授業中、それもわたくし達が敬愛する天使の様な御方であられるネギ先生が教壇に立っている時にも関わらず突然暴れ回りました」
「名前言いかけてんじゃねぇか、ていうかどうせアレだろ、そいつをどう対処するかって事だろ? そんなの簡単だろ、さっきみてぇに問題児なんざはっ倒せば……」
もはや問題の内容じゃ自分がいる状況ですら無くなってるが、それでも要はさっきみたいに殴って解決で済むんだろと銀時が回答しようとしたその時
「そのおかげでネギ先生との幸せの一時を邪魔された”わたくし”をフォローする為にどう対処しますか?」
「お前が対処される側なんかいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「さあいいんちょをどうやって慰めるんだ天パ教師!」
「全ての力を振り絞っていいんちょの心の呪縛を解き明かすんだ!!」
「知らねぇよそんな事! なんで暴れるガキを放置してお前のフォローに回らなきゃいけねぇんだよ!!」
まさかの問題の続きがあった事に銀時はツッコミを叫びながら、またもや騒ぎ出す生徒達を一喝するかのように教壇を勢いよく手で叩く。
「やってられっかこんなの! そもそも教師の仕事でもなんでもねぇじゃねぇか! 勝手に一人で落ち込んでろ! 勝手に一人で立ち直ってろ! 勝手に一人で幸せに生きろ!」
「まあ、お見事です、またしても正解ですわ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「だってそもそもあなたみたいな品の無い人が、このわたくしを励まそうとするなんておこがましいにも程がある事、自分の悩みは自分で解決できる年頃ですし、ここはわたくしに「何もしない」が答えなんですの」
「うぜぇぇぇぇぇぇぇ!!! 結局なんの意味も為さない問題だからよりうぜぇんだけどコイツ!!」
問題も訳わからないが答えもまた理解不能、銀時が次第に彼女を相手する事に苛立ちすら覚え始めていると、そんな事も知らずにあやかは得意げに
「オホホホホ、勝ち誇るのも今の内ですわよ坂田さん、さて、ここまではほんの余興、三問目からはいよいよ本番とさせて頂きますわ」
「それさっきも言ってただろうが!」
「三問目はそうですわね……少し趣向を変えまして」
最初は高飛車なお嬢様だという印象であったが、今となってはウチの世界にいる住人と同じ変人、と雪広あやかの評価が銀時の頭の中で確定されていると、彼女は少し考え込むとゆっくりとした口調で
「そういえばあなた、エヴァさんと同じ家にお住まいになられてるんですわよね?」
「あ? まあ一時的に住んでるだけだがな」
「ならばそれを踏まえて問題を出させて頂きますわ」
自分がエヴァと住んでいる事がなんの問題になるのかと、銀時だけでなく生徒達の中にいるエヴァも怪訝な様子で首を傾げていると、あやかはコホンと一つ咳をすると
「……その前にエヴァさんが家ではどんな感じなのか出来るだけ詳細に答えてくれませんか?」
「はぁ?」
急な質問に銀時はどういう事だと顔をしかめる。
つい先日にエヴァと出会ったばかりの彼が、彼女がどんな風に生活してるかなんてわかる訳がない。
「いやそれは答えられねぇわ、一個人のプライベートだし、そもそも俺、アイツと会ったばかりでロクに知らねぇし」
「そうですか……いや実は彼女、学校でも茶々丸さん以外の生徒さん達と関わろうとしてませんし、委員長として少々心配なんですわよね……授業中でも寝てばかりであまり成績もよろしくないですし……」
そう呟くとあやかはチラリと後ろの席で腕を組んでワナワナと震えているエヴァの方へ目をやる。
「あのまま同年代に対しての積極性や協調性が欠けていると、ぶっちゃけ将来まともな社会人になれそうにないので、どうか今の内に、あなたが彼女を更生させて対処してくれませんか?」
「もはや問題すらですらねぇ! ただのお願いじゃねぇか!」
「ふざけるな! なんでこの私がそんな下らん事に付き合わされなきゃならんのだ!」
学級委員長として真面目に彼女の将来を不安に感じていたあやかが、思い切って銀時にエヴァの今後の人生をフォローして欲しいと頼むと、当人である自分を置いて勝手に話を進めるなとすぐにエヴァが席から立ち上がる。
「私の人生は私が決める! 平和ボケした貴様等のような小娘供に口出しされるほど! この私が行く覇道は温くは無いわぁ!!」
「ほら聞きました今の? 他人を見下すのはともかくあの厨二満載の台詞を堂々と言えるなんて、見た目がまんまお子様サイズだから余計に恥ずかしくて見ていられませんわ」
「本当だね、ありゃあ友達出来ないしロクな大人になれないだろうね、負け組まっしらだね」
「貴様等今日はまっすぐ帰れると思うなよ!!」
二人で顔を合わせてヒソヒソと明らかに自分の事を乏しめている事を感じ取ったエヴァは、苛立ちを通り越して殺意が芽生えて来た。
「おい茶々丸! 早く私の事をフォローしろフォロー!」
「安心してくださいマスター、私は例えマスターがジャージ姿で部屋に引き篭もって、毎日パソコンの前に座ってネットに悪口を書く事が何よりの楽しみだと思うようになっても、私は決してマスターを見捨てたりはしません」
「そういうフォローは求めておらんわぁ!!」
これではクラスで変に噂されてしまうと急いで茶々丸に助力を求むエヴァだったが、彼女が真顔で呟く何のフォローにもなってないフォローのおかげで、ますます周りの空気がおかしくなっていく。
「そういえば私達ってエヴァちゃんとお話した事ないね……一人で笑ってる事あるし普段なにやってるんだろう、ちょっと怖い……」
「大丈夫ですよのどか、ああいうのは触れないでおくのが一番の策なんです、それが誰も傷つかない最善の優しさなんです」
「それは優しさって呼べるの夕映……」
「あぁぁぁぁもう! いつの間にか私が周りから「可哀想な子」という設定になりかけてるではないかぁ!」
前の方の二人組の生徒が話してるのを耳にして、悪化していく状況に髪の毛をクシャクシャに掻き毟りながら悶えるエヴァ。
そして教壇に立つ銀時の隣にいたネギさえも首を傾げて
「そういえば僕もエヴァさんの事あまり知らないんですよね……なんかいつもクラス行事に関わろうとしないですから心配だとは思ってたんですけど……」
同じ魔法使い同士ではあるが、ネギは現在彼女が魔法使いだの闇の福音と恐れられた吸血鬼だというのは知られておらず、ただの一生徒として扱っている。
故に彼にとってエヴァは、問題事は起こさないが人との関わりを避ける傾向があり、ちょっとした心配のタネとしか思っておらず
「よし、ではここは坂田先生が彼女が個別指導する形でいきましょう、これからは彼女の面倒を見て立派に自立できるよう優しく導いてあげてください」
「うおいコラ坊主! なにがよしだ! 勝手にその男を私の指導役にするとかなに考えてんだぁ!!」
「しょうがねぇな、ならせめて将来はフリーターとしてちゃんと自分で稼げるようになるぐらいには成長させてやるか」
「結局私の未来はフリーターではないか! 全然私の人生明るくなってないぞ! フリーターだと老後が心配なんだぞ! 私に老後無いけど!!」
勝手にエヴァの更生の手伝いをして欲しいと頼むネギ、そしてそれを適当に安請け合いして親指を立てる銀時
これには遂に、エヴァはバンと自分の机を叩くと
「もう勘弁ならん!!」
怒り心頭の様子でツカツカと歩き出して教室のドアの方へと向かい始めたのだ。
「お前等なんぞと付き合ってられるか! 私はもう早退する!!」
「えぇ! 何言ってるんですかエヴァさん! まだ一時間目も始まってないんですよ!」
「うるさい! 授業など私には不要だ! そんなモノを受けなくても私は既に!! 誰からもそ恐れられる存在として世に君臨して……」
ドアの前に立つエヴァにネギが慌てて叫ぶと、彼女は振り返ってムキになった様子で反論する。
だがその台詞を言い終える前に……
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ギンタさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
「はんぶらびッ!!!」
彼女がドアを開ける前に勝手に勢いよく開かれ
その瞬間、ドアの向こうから奇声を上げながら教室に飛び込んでくる一人の生徒
突然の出来事にエヴァが一瞬ギョッとして面食らったのも束の間、彼女は為す総べなくその生徒によって派手に吹っ飛ばされてしまう。
そしてエヴァが銀時の足元まで転がって来て頭をぶつけて白目剥いて気絶すると
彼女を倒した張本人である遅刻してきた生徒は突然教室の床に泣き崩れて
「どうして終わってしまったのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「……おい、あのいかにもバカっぽいツインテールってもしかして……」
「はい、察しの通り……」
「明日菜さんですわ、我がクラス、いえ、我が校一の問題児です」
現れた彼女の特徴が、先程ネギとあやかが言っていたのと酷く似ていると銀時は静かに察した。
彼女こそが神楽坂明日菜
万年成績順位ビリっけつをキープするが、そんな事などどうでもいいと豪語し、常に己の思うがままに生きる少女……
台風の様に突如として目の前に現れた彼女に銀時がドン引きしていると、そんな彼の所へおもむろにあやかが近づき、ポンと優しく肩に手で叩くと……
「それでは最終問題ですわ坂田さん」
「あのおバカさんを授業の妨げにならないよう大人しくさせなさい」
「……」
「ギンタマァァァァァァァァン!!! カムバァァァァァァァァァク!!!!」
最終問題はまさかの実技試験
教師として認められる為に、嵐を呼ぶ問題児・明日菜との対決が幕を開けるのであった
次回へ続く。