ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
翌朝。
「……?」
キリトはユイと部屋でまだ寝ているのか起きてきておらず、サチはまだ部屋で支度をしているとの事。
女性はいろいろ大変なのだろう、とシグレはぼんやり考えていたが、ふと、家の外に数人の気配を感じる。
その様子に、そこにいたストレアとアスナがシグレに目を向ける。
「…どうしたの、シグレ君?」
「誰かが来たな…」
「ひょっとして…キリトの知り合いかな」
「いや…」
シグレが物々しい気配を感じ、何かを言おうとする前に、扉がノックされる。
こうなるだろうとわかっていた事もあり、シグレが席を立ち、応対に出ることにした。
そうして、二人に待つように伝え、扉を開けると、鎧を纏った兵士。
自身気に立つ一人が面に立ち、後に続く兵士が四人。
その様子を見るに、今目の前にいる男がリーダーだろうと察するシグレ。
「…朝早くに、何の用だ」
シグレが溜息交じりに尋ねると、男はそれを気にすることもなく。
「うむ、私はアインクラッド解放軍、コーバッツ中佐である。君達が74層のフロアボスを討伐したという話を聞き、交渉に伺った次第…ついては、諸君らのリーダーと話がしたい」
アインクラッド解放軍、という名前にシグレは警戒を強める。
というのも、ユイの件で第1層に行った際に徴税と称した恐喝をしていた事を思い出したからだった。
とはいえ、門前払いもどうかと考えるシグレは、コーバッツの言葉に少し考え、リーダーと言われ誰だろうかと考えキリトが浮かぶが。
「…リーダーというのは誰になるんだ?」
「さぁ?」
気になって来ていたストレアに尋ねると、彼女は疑問で返す。
一緒にいたアスナがストレアに続き。
「…一応、シグレ君を追いかけて集まってるわけだし、シグレ君でいいんじゃないかな?」
アスナの言葉にシグレは面倒そうな溜息を吐きながら。
「……ということらしい。用件を聞くが」
「うむ」
シグレがコーバッツに尋ね返すと、コーバッツは一つ頷き。
「用件は…攻略の実力を持つ貴殿らに、我等の傘下に入ってもらいたい!」
「…は?」
突然の言葉に、シグレは気の抜けた返事を返す。
ストレアとアスナも驚き半分、疑問半分といった感じだった。
「…攻略をしたければ、勝手にすればいい。少なくとも…こちらにそれを強制される謂れはない」
「貴様…ふざけているのか?我々は、一日でも早く全プレイヤーを解放するために日夜戦っているのだぞ!?」
「……で?」
熱が上がるコーバッツと、いたって平静なシグレ。
それが一層コーバッツを興奮させているのだが、シグレは気づいていない。
「故に!諸君らが力を持つのなら、攻略のために我々に力を貸すのは当然の義務であるはずだ!」
「っ…ちょっと!」
さすがに身勝手な物言いに、アスナが何かを言おうとするが、シグレがそれを片手で制する。
傍から見れば仲裁であるが。
「…少なくとも俺が攻略している間、アインクラッド解放軍、等という名前は聞いたことがないが」
「我々も戦っているとはいえ、現状戦力はぎりぎりだ。だからこその交渉なのだが」
「少し凄んで言えば誰でも自分の言うことを聞くと信じ切った上での威圧的な態度。それが交渉とは…な」
「貴様…!」
シグレがコーバッツを軽く睨みつけると、その威圧感に若干押され、コーバッツは一瞬怯む。
隊長格でさえそれなのだから、後ろにいる兵士がどうなるかといえば、立ち竦んでしまうのは無理もないのかもしれない。
けれど、シグレはその様子に溜息を一つ。
「…この程度で怯むようで攻略?笑わせるな…貴様らでは最前線はおろか、第一層ですらまともに倒せまい」
「我々を愚弄するか…小僧が!」
しかし、その溜息にいよいよ怒り心頭になったのか、コーバッツはウィンドウを操作し始める。
少ししてシグレの目の前に表示されたのは決闘の申請であった。
ルールは半減決着だった。
全損決着にしなかったあたりは多少冷静なのかもしれない、とシグレは思うが。
「…いいだろう」
シグレは申請を受理し、決闘が始まるのだった。