ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第98話:死神と呼ばれる者の戦い方

それからしばらくしてキリト、ユイ、サチも揃い、全員でシグレとコーバッツの決闘を見守ることになったのだが。

 

 

「いくら貴様が憎らしいからといって殺す気はないからこそ半減決着としたが…本気で叩きのめしてくれる!」

 

 

剣と盾を構えながら、シグレに対し啖呵を切るコーバッツ。

一方のシグレも緋月を構え、カウントが0になるのを待つ。

 

 

「……やってみろ」

 

 

やがて、カウントが0になり、シグレが動く。

観戦をしていた皆のうち、キリトだけが知っているその動き。

けれどそれをコーバッツが知るはずもなく。

 

 

「っ!?」

 

 

コーバッツからすれば、突然目の前から消えた相手。

どこに行ったのか追い切れず狼狽え、すぐにシグレを探し、辺りを見回す。

そうして、やがて後ろに視線を向けると、シグレは既に眼前に迫っており、その刀がコーバッツの首元を捉えていた。

 

 

「ぐっ…!」

 

 

コーバッツが持っている盾を構えようとするが。

 

 

「…遅いな」

 

 

シグレが振るう刀が、コーバッツの首を捉え、その峰が彼の喉に打撃を与える。

 

 

「が、はぁっ!!」

 

 

喉への衝撃にコーバッツは息を吐き出す。

HPとしては1/4程度減ったのだが、コーバッツが受けたダメージは戦闘継続不能なほどに致命的で、蹲って息を整えようとする。

そんな彼の眼前に、シグレは刀の切っ先を向ける。

 

 

「…どうした。俺を本気で叩きのめすのではなかったのか?」

「は、ぁ…くっ…!」

 

 

まるで感情がないかのように言葉を投げるシグレに、コーバッツは悔し気に視線を向ける。

その手に握りしめる剣で、隙あらば目の前の男に反撃をしようと。

しかし、シグレに目を向けて、コーバッツは動きを止める。

 

 

「っ…!」

 

 

コーバッツもまた、戦いに身を置くものだからこそ、気づいてしまった。

シグレの放つ威圧感。

そして、彼が放つ視線、それがあまりに冷め切っていた事。

 

 

「…どうした」

 

 

その視線は、シグレの目の前にいるコーバッツを対戦相手どころか、プレイヤー…あるいは人としてではなく、モンスターと認識していると言わんばかり。

そう感じた、否、感じてしまったコーバッツは怯む。

少しでも動けば、敵意を見せようものなら、目の前の刀は自分の命を容赦なく刈り取るだろう。

それは、まるで。

 

 

「死神…!…そうか、貴様『幻影の死神』か!だから第一層のボスを知ったような口ぶりで…!」

「…」

 

 

コーバッツが声を上げるが、シグレは興味ない、と言わんばかりに剣の切っ先を喉にあてる。

切っ先が触れ、コーバッツに僅かながらダメージが与えられる。

 

 

「う、ううおおああぁぁぁっ!!」

 

 

このままでは、狩られると思ったコーバッツが自棄を起こしたように、剣を振り上げ、シグレに振り下ろそうとする。

しかし、シグレはやれやれ、といった感じで目を閉じ。

 

 

「……」

 

 

溜息交じりに、コーバッツの剣を弾き飛ばす。

重量的には明らかにシグレの刀の方が軽く見え、物理的にはシグレが押し負けそうなものだが。

弾き飛ばされた剣は宙を舞い。

 

 

「ひぃっ!?」

 

 

後ろで観戦していた、コーバッツの連れの兵士の目の前に突き刺さり、兵士は腰を抜かす。

シグレはそちらに視線をくれることもなく、コーバッツの首元に剣をあて。

 

 

「…最後まで、戦意を失わなかったのは流石だが……それだけだな」

 

 

その一言を言い、シグレは刀を袈裟形に振り下ろす。

コーバッツの鎧に斜めの傷が入り。

 

 

「うああぁっ!」

 

 

コーバッツは弾き飛ばされ、HPが1/4にまで減らされ決着。

シグレはHPを減らすこともなく、完封だった。

決闘の決着表示を見届け。

 

 

「……」

 

 

シグレは刀を一度払い、それを鞘に納める。

その動作の間、シグレは無言であった。


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