ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
55層、血盟騎士団本部。
「…偵察隊が全滅、か」
「あぁ」
シグレの言葉にヒースクリフは頷く。
「我々は5ギルド合同の偵察部隊20名を送り込んだ。まずそのうち10名がボス部屋に侵入したところ、部屋の扉が閉じてしまったのだ」
「クリスタル無効化エリアか…!」
「おそらく。そしてその五分後…扉が開いたら、そこには文字通り、誰もいなかった」
10名の偵察隊も、ボスさえも。
ヒースクリフはそう続ける。
「相打ち…?」
「もしそうなら、次の層への扉が開いたはず。だけどそれがないっていうことは…」
「…ボスが偵察隊を全滅させて…どこかに隠れた」
サチが推測を述べるが、それを否定するアスナ。
そんな彼女にストレアが続く。
「おそらくそうだろう。実際…残り10名の偵察隊も全滅したわけだからな」
ストレアの推測を肯定するヒースクリフ。
だからこそ、全力をもってあたらなければならない、と彼は続ける。
攻略を諦めれば、この世界から出られない。
だからこそ、諦めずに進むしかない。
「…話は分かりました。協力はします…但し、俺が守るべき対象は、今ここにいる四人が最優先だ。もし危険に陥った場合は…」
ここにいる皆を優先する、とキリトははっきり断言する。
けれど、分かっていたといわんばかりにヒースクリフは笑みを浮かべ。
「何かを守ろうとする者は強いものだ…君の、いや…君達の勇戦を期待するよ」
そう、キリトに告げる。
その不敵な笑みに言い返す者は、その場にはいなかった。
その後。
「あと三時間…」
「…サチ、大丈夫?」
「うん…平気。ありがと…ストレア」
恐怖を隠し切れないサチにストレアが声をかける。
カウンセリングプログラムとしての本来の役割を失ったとはいえ、彼女自身が変わったわけではない。
だからこれはストレア自身の心配であったのだろう。
その一方。
「…キリト君、どうしたの?怖い顔して」
「いや…」
真剣に何かを考えるキリトにアスナが声をかける。
キリトは考えながら顔を上げ。
「俺は正直…シグレは参戦しないほうがいいと思ってるんだ」
「え…?」
考えを述べる。
その考えに問い返すアスナだが、一方でユイは賛成のようで。
「…私も、正直…パパの言う通りだと思ってます。74層と同じように…何かがあるとも言い切れませんし、危険を避けるという意味では…」
「……そう、ね」
74層での事はこの場にいる誰にとっても記憶に新しい。
だからこそ、アスナもそれには反論できなかったが。
「…だけど、そうなったら尚の事、シグレ君は参加をすると思う。あの人は…攻略の為に自分を犠牲にする事を…厭わないから」
「そうだな…だから俺も、皆も苦しむことになった」
アスナはシグレを止めることはできないと言い切る。
キリトも同意するが、彼はそれで終わるつもりはないようで。
「……だから今度は、何としてもあいつを守る。守って…皆で76層に行こう」
「…うん」
キリトが決意を述べる。
それにアスナも頷く。
二人の目は、決意に溢れていた。