ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
一方。
「…それで、話とは?」
ヒースクリフが部屋を後にした後、シグレは彼からメッセージを受け取っていた。
内容はシンプルで、話をしたい、といったもの。
メッセージにしたのは、仲間達から悟られぬように出てきてほしい、との理由からだった。
討伐に向かうまでの間、皆が皆話をしていたので、こうして目を盗んで出てくるのはそれほど難しくなかった。
「あまり警戒はしなくていい…ちょっとした交渉だ」
「…内容によるな。ついさっき、三下のギルドに交渉という名の喧嘩を売られたばかりだ。内容如何では…」
容赦はしない、とシグレの目が物語っていた。
そんな彼にヒースクリフは待った、と片手で制止をかける。
「…なに、別に君の仲間にどうこうするつもりもない。安心していい」
「……」
ヒースクリフが言うが、シグレは警戒を解かない。
やれやれ、といった感じで。
「……ならば、こう言えばいいだろうか?…私は茅場昌彦である、と」
「っ…」
ヒースクリフの言葉に、シグレは一瞬息を呑む。
そんな馬鹿な、といった感じの表情でシグレはヒースクリフを見る。
「私はこのゲームの開発者だ。カーディナルは自己メンテナンスの機能を持ってはいるが、私が管理コンソールから操作すれば、君をカーディナルの調整対象から外すことは容易だ」
「……別にそれはどうでもいいが、それをちらつかせる理由はなんだ」
ヒースクリフの言葉にシグレは溜息交じりに警戒を解く。
その様子にヒースクリフは笑みを浮かべて続ける。
「…実に単純な理由だ。私が正体を明かせば、これから討伐に来る皆は私を討とうとするだろう。こちらとしても、手札が欲しいものでね」
つまりは、キリト達を裏切り、自分の側につけ。
そうすればカーディナルの調整対象から外し、安心を与える、と。
シグレはそう理解する。
「…なに、今すぐ、というわけではない…私自身は第100層のボスという設定だ。そこで私は正体を明かす…それまでに決めてくれればいい。無論それまでは彼らの仲間として振舞ってもらって構わない…悪い条件ではないと思うがね」
「………俺を誘い込もうとする理由は、本当に手札を増やしたい、というだけか?」
シグレは少し考え、ヒースクリフに尋ねる。
その言葉に、ヒースクリフは勿論、と返す。
裏を読ませないポーカーフェイスのヒースクリフにシグレは目を閉じ、考え。
「…いいだろう。お前の手札になろう」
「ほう?」
「だが…一つ条件がある」
「無茶でないものであれば」
シグレは一つ、交換条件をヒースクリフにつきつける。
その言葉に、ヒースクリフは応じる。
彼らの契約が、成立した瞬間だった。
「君の働きには、期待しているよ」
「……」
ヒースクリフが握手を求めシグレに手を差し出すが、それにシグレは応じなかった。