ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第102話:戦いの前の、微かな平穏

皆が思い思いに過ごし、やがて時間が過ぎ。

シグレ達も75層に転移する。

ヒースクリフとは別行動で、まだ来ていないようで場は少しだけ和んでいた。

 

 

「よう、キリトー!」

 

 

そんな皆の方向に声をかけてくる二人の男性。

うち一人はシグレも見覚えがあった、雑貨屋店主、エギル。

声をかけてきたのはもう一人の方で。

 

 

「よぉ、お前さん、もう大丈夫なのか?」

「?」

 

 

もう一人…クラインに声を掛けられ、シグレは疑問符を浮かべる。

74層で背負われていたのだが、気を失っていたために覚えがなかった。

視線をキリトに向けると。

 

 

「気を失ったお前を22層まで運んでくれたんだよ、そいつが」

「…そうだったのか。世話になった」

「困ったときはお互い様…ってな。俺はクライン。今更だが、よろしくな」

「……シグレだ」

 

 

残りが25層という段階ともなれば今更、という感がなくもないが、挨拶を交わす二人。

二人が握手を交わす隣で。

 

 

「なんだ…エギルも参加するのか」

「なんだとは何だ。こちとら商売を休んでここまで来たんだ。この無欲な精神を評価してほしいもんだぜ」

「…じゃ、お前は戦利品の分配からは除外していいんだな?」

「そ、そりゃないぜキリトぉ…」

 

 

屈強な男が自分より年下に頭が上がらなくなる状況に、軽く笑いが起こる。

 

 

「…よ、久しぶりだな、シグレ」

「……ケイタ」

 

 

ふと、声をかけられた方を見れば、シグレにとっては見知った顔。

ギルド『月夜の黒猫団』。

そのリーダーのケイタだった。

見れば、メンバーの皆が彼のすぐ後ろについてくる形になっていた。

 

 

「まさか最前線で再会するとはな」

「言ったろ?追いつくって」

 

 

有言実行を成し遂げる彼らに苦笑するシグレ。

けれど、どこかでそうなるだろうと考えていた部分も少なからずあり、全てが全て意外というわけでもなかったが。

 

 

「そういや、サチとはあれから仲良くやってるのか?」

「…それなり、ではないか?」

「いや、俺達に聞かれても…」

「……というより、心配するくらいなら俺を追いかけさせるべきではなかったのではないか?」

 

 

そんな会話を交わしていると、こちらに気付いたのか、サチがシグレに近づき。

 

 

「久しぶり、みんな」

 

 

自然にシグレの隣に並び、ギルドメンバーの皆に挨拶を交わすサチ。

サチはギルドを抜けたわけではないので、他人というわけでもないのだが、久しぶり、という言葉が妙にしっくり来てしまう。

 

 

「仲は悪くないけど…ライバルが増えちゃって」

「…へーぇ、幻影の死神サマは女たらしだったと」

 

 

苦笑するサチに、からかい半分に言うケイタ。

見ようによってはそう取れてしまうので、実際のところ何も言えないのだが。

 

 

「とりあえず、サチ…この層のボスを倒したら、作戦会議だな」

「…作戦会議?」

「あぁ…シグレ攻略作戦」

 

 

テツオの言葉に、サチが一瞬ハッとなり、けれどすぐに真剣な視線になり。

 

 

「…うん、頑張る。手伝ってくれる?」

「もちろん!」

 

 

離れていても仲間は仲間、ということだろう。

とても長いこと離れていたとは思わせないその雰囲気に微笑ましさすら覚えるシグレ。

 

 

…けれど、その和やかな雰囲気は、すぐに緊迫に包まれることになる。


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