ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

109 / 251
第105話:決着と、裏切り

そうして、ボス討伐後。

 

 

「…おう、生きてるか?」

「あぁ…」

 

 

クラインとキリトが肩で息をしながら言葉を交わす。

 

 

「……死者は、ないようだな」

「そう、だね…」

 

 

シグレの言葉にストレアが頷く。

しかし、この状況に楽観できないのも事実であった。

なぜなら、更に上の層に行けば行くほど危険度は大きくなる。

そうなれば、今回のように死者ゼロでクリアできる可能性は減る。

そう懸念するプレイヤーと、ボスを倒せたことを喜ぶプレイヤーが半々の中。

 

 

「……」

 

 

一人、キリトは、皆が疲労で座り込む中で一人、余裕そうに佇むヒースクリフに目を向ける。

 

 

「…キリト?」

 

 

その様子に、エギルが不審気に声をかける。

けれど、そんな彼の声が聞こえていないのか、それとも聞こえていても無視しているのか、剣を握り締め。

 

 

「っ……!」

 

 

キリトはヒースクリフに剣を向け、攻撃をかけようと突進する。

……しかし。

 

 

「なっ…!?」

 

 

キリトとヒースクリフの間に割って入った陰により、キリトは剣を弾き飛ばされる。

突然の事に、キリトは動きを止める。

…こんな事ができるのは。

 

 

「……シグレ?」

 

 

抜刀したシグレがキリトの前に立つ。

弾き飛ばされ、宙を舞った剣が地面に落ち、重い金属の音が辺りに鈍く響く。

何故、シグレが対峙しているのか。

理解が及ばないキリトはシグレの名を呼ぶ。

けれどシグレは答えず、振り返り。

 

 

「…気づかれたのではないか?ヒースクリフ…いや、茅場昌彦」

 

 

シグレが、全プレイヤーが忌むべき名を呼ぶ。

その名に、全員の視線がヒースクリフに集まる。

しかし、ヒースクリフはその視線を何とも思わなかったか、シグレを見返す。

 

 

「君がバラしてしまっては元も子もないだろう、シグレ君」

「…よく言う。俺が止めなくてもキリトの攻撃が届けば、気づかれただろう」

「かもしれんな」

 

 

シグレと言葉を交わした後、ヒースクリフはキリトに視線を向ける。

 

 

「キリト君、君は気づいていたのかね?」

「…あぁ。気づいていたさ」

 

 

ふむ、と頷きながらヒースクリフは辺りを見回す。

 

 

「…確かに、私は茅場昌彦だ。付け加えるなら、最上階で君達を待つはずだった、このゲームの最終ボスでもある」

 

 

そして、とヒースクリフは続ける。

 

 

「…ここにいるシグレ君は、私に仕え、99層で君達に立ちはだかる障害となる役割となるはずだったプレイヤーだ」

 

 

ヒースクリフの言葉に、シグレは何も言い返さない。

 

 

「嘘…嘘だよね、シグレ君…?」

 

 

アスナが嘘であると言ってほしい、と言わんばかりに震える声でシグレに尋ねる。

けれどシグレは無情にも、その切っ先をアスナに向け。

 

 

「…事実だ。俺はこの男の手先で、いずれはお前たちの敵として立ちはだかる予定だった」

 

 

無情にもアスナの手を払う。

アスナは絶望からか、その場にへたり込んでしまう。

 

 

「…趣味がいいとは言えないな。ボス攻略の先陣を切る実力のあるプレイヤーが一転して敵に変わるなんてな」

「そうかね?いいシナリオだと思っていたんだが…」

 

 

キリトの責めるような口調にヒースクリフは動じない。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。