ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
** Side Kirito **
このゲーム開始から1ヶ月。
第1層ボス攻略会議。
「はーい!それじゃあそろそろ始めさせてもらいます!俺はディアベル、職業は…気持ち的に騎士(ナイト)やってます!」
そう自己紹介をすると周りからいろいろ突っ込みが入り、場が和む。
しかしそれはすぐに終わる。
「…今日、俺たちのパーティが塔の最上階でボスを発見した。俺たちはボスを倒し、このゲームがいつかクリアできることを示さなきゃならない!そうだろ、みんな!?」
その呼びかけに、周りの士気が高まる。
「…OK、じゃあまずは、6人のパーティを組んでみてくれ!」
どうしようにも、ゲーム内に知り合いなんて、せいぜいクラインと…あいつくらいだが。
あたりを見回してもそれらしき人影がない。
どうする…!?と思いながら見回すと、一人離れたところに座る…ローブを被ったプレイヤーが一人。
「…あんたも、あぶれたのか?」
「あぶれてない。周りが皆お仲間同士だったみたいだから…遠慮しただけ」
「……ソロプレイヤーか。なら、俺と組まないか?…今回だけの、暫定だ」
俺の言葉に頷いてくれた。
パーティ申請を出し、受理してもらうと相手の名前が表示される。
Asuna…アスナ?
その後、一悶着あったりしたが、無事に会議は終了。
出発は翌朝10時ということになり、解散となった。
その夜、街の路地裏。
ここに来た理由というと。
「結構旨いよな、それ」
パーティメンバとの会話。
「座ってもいいか?」
尋ねるが、返事は無し。
近くに座ると、あからさまに離れられた。
…別にいいけど、少しだけ傷ついたのは秘密だ。
「…本気で美味しいと思ってるの?」
「もちろん…ただ、少し工夫はするけど」
言いながら、あるアイテムを実体化し、渡す。
相手はアスナ、というのだろうけど名乗ってもらったわけでもないし、読み方が間違ってたらということもあって呼びにくい。
…なんか怖いし。
「…クリーム?」
「そのパンに使ってみろよ」
恐る恐るクリームをつけたパンを口に入れ、気に入ったのか一気に食べていた。
クリームはなくなってしまったが、まぁいいか。
「一個前の村で受けられる、逆襲の雌牛ってクエストの報酬。やるならコツを教えるよ」
「…美味しいものを食べるために、私はここに来たわけじゃない」
「じゃあ…何のために?」
まぁ、このゲームでグルメ街道みたいなことをするプレイヤーはいないだろうとは思っていたし、仮にそうだとしても攻略会議には出てこないだろうと思っていたが。
「…人を探してるの」
「人?」
「このゲームが始まった日に絶望しそうになった私を救ってくれた人。その人の言葉があったから、今、私はここにいる」
…絶望から引っ張りあげるほどの言葉をかけられる人物、か。
「そうか…会えると、いいな」
「…会えるといい、じゃなくて、必ず追いつく。言ってやりたいことがあるから」
言ってやりたいこと、か。
そのあたりのことに突っ込むのは野暮かな。
「じゃあ…明日の朝10時に、また」
それだけ言うと、頷いてくれた。
** Side Kirito End **