ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
皆が地に伏す中、剣がぶつかる音が部屋に響く。
「せやぁっ!!」
「っ…」
アスナの細剣による、正確で高速な突きの攻撃。
それを正確に刀で受け止めるシグレ。
二人とも速度重視のスタイルであるものの、単純な速度だけでいえばアスナの方が速い。
それは持っている武器の重さによる違いであるのだが、しかしシグレもまた、決して劣っているわけではない。
「…なるほど、速いな…伊達に『閃光』と呼ばれているわけではない…か」
「っ…!」
剣を受けながら呟くシグレにアスナはバックステップで距離をとる。
シグレの言葉から、アスナは察した。
はじめは、自分の剣が相手を翻弄していると。
隙を見てスキルを発動すれば一撃を与えられると。
うまくいけば、勝てると思っていた。
しかし。
「くっ…」
アスナはシグレを見て、それが勘違いだったと気づく。
見れば、シグレのHPは殆ど減っていない。
多少掠った程度、という表現が正しい感じである。
そして、何より。
「…結構本気だったのだけど、息も切らさないのね」
シグレは、少しも息を切らしていない。
自分は息を切らすほどの連撃だったというのに。
シグレは一つも息を切らしていない。
あるいは、それが狙いだったのだろうか。
「まさか。さすがに強いなと思っていたところだ」
「…その割には、ずいぶん余裕そうに見えるわよ」
アスナの言葉に、シグレは笑みを浮かべる。
その反応に、やられた、とアスナは舌打ちをする。
「あれほどの連撃…そうそう長くはもたないことは分かっていた。だからこそ防戦一方だったが…」
シグレが刀を構える。
それを見て、アスナも剣を構え直す。
キリトとの訓練という名の決闘で、シグレの戦い方は見ている。
それが決して油断ならないことも、当然ながらアスナは知っている。
「…そろそろ、攻撃に転じさせてもらおうか」
だから、彼がいかに速いかも知っている。
その知識こそが。
「っ…!」
彼の斬撃を止める。
男女の力の差、更に言えば現実での経験の差か、シグレの斬撃が予想以上に重く感じたアスナだが、止められる程度だった。
その殺気も、受け止める。
「く、ぅ…!」
「…止めるか」
刀を止められ、シグレはバックステップで距離をとる。
シグレが力で押し切るタイプなら押し切られていたかもしれない。
だが、シグレは退いた。
これなら、いける、と。
戦える、と。
「…負けないよ、シグレ君。負けられないの」
アスナはシグレに剣を構えながら、そう告げる。
シグレも刀を構えることで、アスナに応える。