ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
それで、決闘が終わりを告げたかと思われる、次の瞬間。
「っ!?」
一瞬、空…というより、天井の部分に亀裂が入り、血のような真っ赤な液体が不気味に流れ落ちて一ヶ所に集まる。
その光景は、ここにいる誰もが、覚えていた。
「…なんで今、『これ』がここに…!?」
クラインが立ち上がり、けれど驚いたのか、たじろぎながら言う。
それは第一層で、SAOがデスゲームであることを告げた、あの赤いローブ。
「…どういうことだ、茅場!」
キリトがヒースクリフに問い詰めるが、ヒースクリフは答えなかった。
…否、答えられなかった。
そんな混乱を知ってか知らずか、赤ローブは、霧散していく光…シグレをそのローブの中へと、吸い込むように取り込んでいく。
「シグレを…取り込んだ!?」
サチがその様子に、そう結論付ける。
赤ローブは周りの混乱を知ってか知らずか。
それ以前に意思があるかどうかも疑わしいが、光の粒を取り込んだ後に、ゆらめきながらその場から姿を消した。
その様子は、何もかもが第一層のそれと同じだった。
突然の事に、皆が固まる中。
「…そういえば、ログアウトの件は、どうなったんだ」
誰かが、そう呟く。
確かに、元々はログアウトを賭けての戦いだったのだ。
しかし、ヒースクリフは目を伏せ。
「先程確認したが…私から、管理者権限が外れている。今の私に、君達をログアウトさせることはできない」
淡々と、事実を述べる。
「な…そんなのってありか!?お前が最初に言い出したんだろうが!!」
「ふざけるな!」
皆から非難の声が上がる。
だがそれ以上に。
「じゃあ…私は、何のために、シグレ君を……!」
アスナのショックは大きかった。
ログアウトをかけて戦い、アスナの件はシグレを貫き、シグレはその命を犠牲にした。
しかし、それが叶わないというなら、シグレは何のために剣を受け、命を散らしたのか。
先ほどの戦いが無意味だったと、暗に言われているようで。
「アスナ…」
ストレアが、そんなアスナに近づき、彼女の背を撫でる。
戦いでは凛々しかったアスナの背は、震えていた。
「…だが、私がきっかけを作ったことは事実だ。本当に私を恨むなら、私を貫くがいい…今は私は不死ではないし、抵抗をするつもりもない。今の諸君なら簡単に討てるはずだ」
ヒースクリフが言うが、アスナの様子を見た皆は動けなかった。
戦う前のやりとりも含めて見ていた彼らにとって、一番その資格があるのはきっと彼女であり、自分ではないと、皆が思っていた。
「…次の層への扉が、開いてる」
ぼんやりと、ケイタが呟く。
その言葉に、まだこの戦いは終わらないのだと、皆が絶望に捉われる。
……終わると思われた戦いは、一人の犠牲と共に、終わることなく続いていくことが確定した瞬間だった。
To be continued to next chapter...