ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
第1話:戦場での新たな出会い
キリト達が76層へと向かおうとしていたころ。
「……?」
一人の青年が、密林の中で、ふと、自分の両の掌を見る。
今まで普通に攻略を行っていた彼は、何か違和感を感じたかのように。
しかし、自分の手、服装、腰に携えて、納刀した装備。
何を見ても違和感はない。
しかし。
「……」
宙を見上げる。
そこから見えるのは、日の光がまともに入らないほどに鬱蒼とした密林。
微かに入る光が、今が昼間であることを知らせてくる。
「っ……」
記憶が混乱してか、右手で頭を押さえる。
とはいえ、頭痛というわけでもないので、それが無意味であることに気づくのに時間はかからなかった。
顔を上げ、辺りを警戒する。
見覚えのない土地だからこそ、警戒が必要だと感じた。
そうして警戒を始めて数分した頃。
「…っ」
どこからか、足音が聞こえる。
敵の気配かと警戒し、携えた刀の柄に手をかける。
しかし。
「っ!?」
それは、『彼』が知った装備とは違っていた。
あまりに、軽い。
自分のようで、自分でない違和感に一瞬の隙ができる。
その瞬間に足音は青年のすぐ近くまで迫っていて。
「っ……」
「うっ…!」
勢いが止まらず、足音の主が青年に、その勢いのままでぶつかる。
互いに反作用で弾き飛ばされるが、青年は身を翻し、そのまま着地し、警戒態勢をとる。
一方で足音の主である女性は受け身を取り切れず、地面を転がる。
しかし、並のプレイヤーでは出来ないような反応で態勢を整え、武器である短剣を構えて青年に斬りかかる。
「はぁっ!」
「…」
それに青年も刀を抜き、短剣を受け止める。
短剣で何度も素早く斬りかかるその斬撃の速度はなかなか、と考えていたが、以前共に行動していた『黒の剣士』には及ばない、と考える青年。
やがて、女性は手数では相手に一撃が入らないと悟ったのか、逆手に持ち替え、鍔迫り合いで押し切る方向に考える。
そこで、女性は、自分の斬撃を息一つ乱さずに受け止めている青年を見て。
「…あんた、誰…?」
そう、言葉を漏らす。
けれど青年はそれに答えず、短剣を弾き上げることで答える。
「あっ…!」
舞い上がった短剣は宙を舞い、やがて地面に落ちる。
それを見て、青年は構えを解き。
「……」
無言で刀を鞘に納める。
そうして、振り返ろうとしたところで、青年は明後日の方向の宙を見て。
「ちっ…!」
「な、え、ちょっ…!?」
女性を抱きしめるように抱え、視線の方向とは逆方向に飛ぶ。
女性は突然の事に驚き半分、恥ずかしさ半分に抗議をするが、すぐにそれどころではないと察する。
先ほどまでいた場所に着陸する巨大な影。
「っ……」
青年は女性から既に手を放しており、刀を抜きながら、着陸で巻き起こった砂塵を空いた手で防ぐ。
一方の女性も、砂塵を手で防ぎながら、その方向に警戒を向ける。
やがて、砂塵が晴れ、その先にいたのは。
「……こいつは」
不気味に蠢く骸骨の魔物。
75層のボスであった、スカルリーパー。
青年は見覚えのあるその魔物に対峙しながら。
「…そこのお前」
「……何よ」
「戦う気がないなら退いていろ…邪魔だ」
青年が話しかけると、女性が答える。
それは互いが互いを警戒しているような、そんな雰囲気だった。
「…戦っているあんたの背後から、斬りかかるかもしれないけど?」
「……好きにしろ」
女性の言葉に青年は短く返し、振り下ろされる鎌を避けながら敵の方へと突っ込んでいく。