ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
「っ…!」
青年は、魔物の懐に潜り込み、刀での斬撃を当てる。
「…あの時と、変わらないな」
75層での戦い。
その時と、動きや癖が似すぎていた。
同じといってもいい程に。
だからこそ、一人でも対処ができていた。
決して効率がいいわけではない。
しかし、相手の攻撃を避けながらの青年はダメージを受けずに、ボスに僅かずつ、けれど着実にダメージを与えていく。
戦いの隙をついて武器を拾い、構える女性。
しかし、巨大なモンスターに1対1で挑み、善戦する青年に動きを止める。
「あいつ…」
戦い慣れしている。
それが女性が率直に感じた事だった。
それは武器の性能や、プレイヤーステータスといった意味ではない。
そうではなく、状況判断の面。
ある程度単調であるとはいえ、相手の攻撃を見切り、どう動くかの対処が上手い。
そいつから逃げて、撒こうとしかしなかった女性。
戦い、確実に追い詰めている。
この男が、あいつらの仲間でなければいい、という希望を持ちながら、女性は万が一に備えて警戒を続けていた。
やがて、HPのゲージ最後の一本が赤く染まる頃。
「っ…!」
青年は素早く懐から抜け出し、女性の脇辺りまで退避する。
「どうしたのよ。今の調子でいけば…」
「……いや」
女性が青年に意見をすれば、青年は否定する。
あのままいけば倒せたのではないか、という意見。
しかし、スカルリーパーもやられっぱなしではなく、自分の鎌を大振りする。
その範囲は広大で、青年が退避していなければ簡単に切り刻まれていただろう。
HPゲージが減ってきた影響か、攻撃が激しさを増し、近づくのが若干困難になっていた。
「……今だけ」
「?」
「あいつを倒す間だけ…協力するわ。どうしたらいい?」
「……」
どういった心境の変化か、女性が青年に討伐の協力を申し出る。
青年は武器を構えながら、女性を見る。
女性は恐怖からか若干震えながらも、スカルリーパーに対し武器を構えていた。
その様子を見た青年は。
「……奴の鎌は基本的に前方が攻撃範囲だ。俺が奴の攻撃は引き受ける…お前は隙を見て背後に回って攻撃しろ」
「…分かったわ」
できるだけ安全になるであろう方法を提示し、スカルリーパーに正面から斬りこんでいく。
とはいえ、今度の目的はダメージを与えることではない。
主な目的は注意を引き、背後に回らせる女性の安全確保だった。
一方の女性も、持ち前の速度を活かしつつ、木の影を利用しながらスカルリーパーの背後に回り込む。
「っ…今!」
スカルリーパーの注意は青年に向いており、背後はがら空きだった。
好機と判断し、女性は持っていた短剣で斬撃を与える。
蓄積したダメージと、相手の注意を逸らした斬撃が重なり、スカルリーパーは光の粒となって消滅するのだった。