ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第4話:過酷な世界の、僅かな温かさ / Philia

*** Side Philia ***

 

 

 

森で出会ったのは、変わったプレイヤーだった。

装備している武器…刀だろうか…は、見た感じでは初期装備レベルのもの。

にもかかわらず、巨大な敵を圧倒するプレイヤースキル。

そして、オレンジカーソルである私を少しも警戒しない、プレイヤーとしての常識から外れている事。

 

 

「…」

 

 

私は、彼の背中について歩く。

さっき、背後から斬りかかるかも、といったのに私に背を見せている、今の状況。

信用されているのか、それとも私如き、いつでもどうにでもできる、とでもいうのだろうか。

もしそうなら、いくらなんでも舐められすぎな気もする。

 

 

「…ねぇ、シグレ」

「?」

 

 

呼びかけると、彼が視線を向けてくる。

 

 

「あんた…私が怖くないの?背後から斬りかかるかも…って言ったよね」

 

 

聞きようによっては、挑発するような発言。

下手をすれば、私はここに置き去りにされるだろう。

いくらシグレが強いとはいえ、わざわざ私というリスクを背負う理由はない。

私が同行を頼んだ立場ではあるが、シグレは私を助ける義務はない。

 

 

「……確かに、聞いたな」

「だったら…」

「だが」

 

 

シグレは否定しない。

だったら、私なんか放っておけばいいのに。

 

 

「…さっきの戦い、お前は俺を助けた」

「え…?」

 

 

確かに、私は協力した、かもしれない。

けれどそれは、シグレの指示通りに動いただけ。

それを、私がシグレを助けた、なんていうつもりはない。

いくらなんでも烏滸がましいというか。

 

 

「……だからこれは、その借りを返すためだ」

 

 

そんな私の思っている事など関係ないといわんばかりにシグレははっきりと続けた。

信用しているわけでもない。

私を斬るつもりでもない。

ただ、シグレの都合で私に借りを返しているだけ。

つまり、私の意志はそんなに関係がなかったらしい。

 

 

「…ふふっ」

 

 

思わず、笑みが零れる。

だって、可笑しいじゃない。

客観的に見れば私の方が助けられてるのに。

 

 

「……」

 

 

あ、少し顰め面になった。

戦いのときはあれだけ冷静な判断ができるのに、そうでないときはどこか抜けているような。

そのギャップが。

 

 

「…シグレって…お人好しって言われない?」

「……ないな」

 

 

思ったことを尋ねるが、返ってきたのは否定の答え。

でも、絶対嘘だな、と私は思う。

仮に彼に仲間がいて、それでも本当に言われたことがないとしても、内心ではそう思っていただろう。

そうでなければ、その仲間はシグレの事を分かってない。

 

 

「でもお人好しだよ。少なくとも見ず知らずのプレイヤーを助けるために、あんなデカいモンスターと単独で戦うくらいだし」

「…俺でなくとも、誰でもそうするだろう」

 

 

普通は逃げると思うけど。

そんな普通じゃない事を普通にやってのける、シグレは凄いと思う。

それにしても、ここにきて、誰かとこんなに話すのはいつ以来だろう。

 

 

「…」

 

 

誰かと話をして、ここまで温かい気分になったのは久しぶりだった。

シグレとは、圏内、または安全エリアを探すまでの暫定的なコンビだが。

 

 

「……んー…」

 

 

そこで終わっちゃうのも、なんか嫌だなぁ、なんて考える自分に驚きながら考える。

安全エリアを探して、全てが終わるわけではない。

きっと、シグレはシグレで一人、行動を続けるつもりだろう。

そういう意味では、私だって行動は続けるつもりだ。

だったらついていけばいいのでは、と考える。

少なくともこのエリアに関しては、私の方が先輩っぽいし、戦えないわけでもないし、ついていく理由には十分だろう。

 

 

「…どうした?」

「別に何でも?」

 

 

物思いに耽っていたからか、声をかけてくるシグレに、私は何でもないと返す。

シグレはそんな私が怪しかったか。

 

 

「……?」

 

 

少しだけ怪訝な表情を向けられる。

とはいえ、それほど気にしていなかったのか、すぐに振り返り、歩き出す。

 

 

…私の中に燻り始める、温かさ。

 

…その正体に気付くのは、もう少しだけ先の話。

 

 

 

*** Side Philia End ***

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